綾辻やる夫は双葉山の惨劇を小説化するようです　第一話

2016/10/07
21:18

　

1 名前：◆Ek0ngtnZ.U[] 投稿日：2016/10/05(Wed) 19:30:20 ID:fc745f42
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　　　　　　　　　　　　　　　　 │　　.綾辻やる夫は双葉山の惨劇を小説化するようです.　　┃
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　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　原作：殺人鬼　　　　　　　　　　　　　　　著：綾辻行人　│
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｨ劣王ﾐ::､..___
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,...._　　　寸圭圭圭圭圭}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r:升圭少　　　｀`x圭圭少´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀¨´　　　　　　￣　　　＿__
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {圭圭圭圭圭圭ヽ　　￣¨¨¨´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__........__寸圭圭圭圭圭ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.......xｭｮｮｭｭ.、,....ｨ升圭圭圭圭圭圭圭圭少
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`寸圭圭圭}　寸圭圭圭圭圭圭圭圭圭K._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀¨¨¨¨´ ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭王圭圭}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{少r:ゞミ王王圭圭圭圭少'´￣¨¨¨´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {圭圭圭沁　｀¨¨¨´　f壬心
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　寸少'￣ r劣}　　　弋圭ｦ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣

・ジャンル：新本格スプラッタ・ホラー。
・全四回。
・明日 10月6日(木) 21時より四夜連続投下予定。

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　　　│ 注意 │
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・本作には残酷な表現が含まれます。各自注意の上でご覧ください。

・残酷な表現は主に地の文に多く含まれます。そのような表現が苦手な方は、当該のシーンではＡＡのみを見るなどの対処をお願いします。

・作品の都合上、キャラの口調が出典元と異なる場合がありますが、ご了承下さい。
・ネタバレはＮＧです。
・合いの手歓迎です。
・疑問点、ご指摘等ありましたら、本文には書かず、メール欄に書いてください。

8 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:00:25 ID:976fb80c

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　　　┃　はしがき　┃
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￣￣| |　| |　　　　 (人_)　　　　::::::::|　　　　　　　.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;..;
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￣￣￣￣￣￣￣￣￣／　　　　ノ　　　　ｶﾁｬｶﾁｬｶﾁｬｶﾁｬ　.;...;.;.;.;.;
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9 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:00:55 ID:976fb80c

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┃ファイル(F)　編集(E)　書式(O)　表示(V)　ヘルプ(H)
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┃　読者諸氏の中には、双葉山で起こったいくつかの忌まわしい出来事について、
┃
┃あるいはすでにお聞き及びの方もおられるかもしれない。
┃
┃　が、そのうちでも最も多くの犠牲者を出した事件──「TCメンバーズ」の一行が見舞われたあの事件に関して、
┃
┃詳細を知る人はほとんどいないはずである。
┃
┃　それを、これからお話ししようと思う。|
┃
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┃ファイル(F)　編集(E)　書式(O)　表示(V)　ヘルプ(H)
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┃　読者諸氏の中には、双葉山で起こったいくつかの忌まわしい出来事について、
┃
┃あるいはすでにお聞き及びの方もおられるかもしれない。
┃
┃　が、そのうちでも最も多くの犠牲者を出した事件──「TCメンバーズ」の一行が見舞われたあの事件に関して、
┃
┃詳細を知る人はほとんどいないはずである。
┃
┃　それを、これからお話ししようと思う。
┃
┃
┃
┃　我が国の犯罪史を見渡しても、あれほどに異常な殺人事件は他に例がないのではないか。
┃
┃　それは、犯行そのものの残虐性や非人間性といった点においてだけでなく、
┃
┃　事件に付随して起こったある非常に不可思議な現象について思うことでもある。|
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10 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:01:25 ID:976fb80c

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事件が発生したのは、1980年代も終わり、いよいよ世紀末も差し迫ったある年の八月のことだった。

多くの男女の命を虫けらのように奪った、あの恐るべき大量殺人の犯人が何者だったのか、

その真相の少なくとも半分は、いまだに謎のヴェールに包まれたままである。

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ﾊﾊ从'从∧::::∧::::::::::::::::::::::::::::,,;.;.''　;;;;;''":::::::::::::::::::::::::::::::::::＿＿／kkkkkkkkkﾉﾉヾ从ﾉﾉ;
ﾉﾉゞゞ"ヾハ∧从∧:::::::::::::::::::::::''''""::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／kkkkkkkkkk∧kk,',,彡ミ彡爻',
〃ﾞゞ∧ﾉﾉ',ゞ从ﾞゞソ∧,,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ノ¨kkkkkkkk,,∧从从ﾞゞ;:;"ゞ,,ｿゞ从
∧ﾞミ爻彡从爻"ﾊﾊ彡ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,．ノkkkkk∧kk∧ミ从ミゞ',从ﾘ冫';',彡ﾝゞ,
爻Y;'ハﾘ从ｿゞミハ∧ゞﾞヽ￣￣)　冫￣￣￣￣￣￣从;爻ﾞヾ,,∧ﾞヾ彡,,"彡ゞ,,∧ゞ;,ﾞヾ"
iiiiｿヾii彡Y;;ミソハ人爻,;'ゞ',,..／　 (＿　　　　　　　　从ゞ从,,У,ヾ::爻::;人ﾝ;爻ﾊﾊﾉ爻ゞ;
||||||||||ゞ八;;";;}iiiiiゞ从ﾊゞミ';,　＿＿　￣￣¨三二ﾆ=┤ﾉﾉｿハ,;;"爻ﾝiiiiiiソiiiii',ハヾソiiiiii
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「双葉山の殺人鬼」として、それは早くも一つの伝説になろうとさえしているし、

双葉山はあれ以来「魔の山」としてそれまで以上に恐れられるようになり、

今ではもう、よほどの物好きでもない限り誰も近づこうとしない。

11 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:01:55 ID:976fb80c

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この物語は、あの惨劇でかろうじて生き残った二人の人間が語った話を基に構成されたものである。

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但し、あくまでも、これは事件の記録ではなくて一個のフィクションである、と受け取っていただきたい。

作者の個人的な解釈や想像が、そこにはかなりの割合で差し挟まれているからである。

12 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:02:25 ID:976fb80c

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そしてなおかつ、そういった「小説化」の作業にあたって、作者はそこにちょっとした趣向を凝らしてみることにした。

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;;./　..,..｡x≦圭才″ﾆィ升圭( ﾆ/ﾆﾆニ二| 　｀¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨´　 |ﾆﾆ二∧ ∥ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆニi
/　　　　.㍉㌢ﾆ∴二二）少二/=ﾆﾆニ二|ー‐t―--　　　 --┬― |=ﾆﾆニ./∥ﾆﾆﾆﾆニ/ﾆニ二|

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趣向──と云うよりも、一種の罠、いや、悪戯、と云ってしまった方がいいかもしれない。

13 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:02:55 ID:976fb80c

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　　　　　　 .|/　　　　　　　ﾉ　　　　　 .ｌ;;; !　 l;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ　!;;./ 　　　　　 ,,ilｒ'"　　　　　,i'./　　　　　　　 ,./ ,／ .,.
　　　　　　 :lﾞ　　　　　　　　　　　　 | !　 /;;;;;;;;;;;; /　 /./ 　　　　　　　 '″　　　　　 .,l./ 　　　　　　 ,,ﾉン"　 .ﾌ;;
　　　　　　　　　　　　　 _,,　　　　　 !ﾞ.,,.,i";;;;;;;;;,./ 　.iУ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i'／　.,..ｒ'";;;;;
　　 .i}′　　　　　　　 / ;;,!　.,　　　　　　/;ﾞ;;;;;;;;; / 　　.l″　　　　　　　　　　　　,ν　　　　　　　　　/ /_..-'";;;;;;;;;;;;;;
　　｀　　　　　　 i";;;,/　 _＿___, 　 ./;;;;;;;;;;;;/　　　　　　　　　　　　　　 il ｌ′ 　　　　 _..-";;;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,.
　　　　　　　　　　　ｌ　ノ)／:::::::∠..-..、_.;;;;;;;;/　　　　　　　　　 _　　　　,,i!!″　　　　 .,..ｒ'";;;;;;;;;;;;;;;;;;.,,,r‐ｰ'″
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　　　　,ｌゾ　　.ノノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　 .／　　　　 ,r'./ 　　　　.,　　　 ._／;;;;;;;;;;;;;;,,,./ ゛　　　　　 . _,,-へ.iｉｉ
　　　.〃　　 ..`7::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　 ..,ノﾝ′　　.,,ir'"　　_／丶;;;;;;,ン'″　　　　,, ;;二二r‐''''､;;;;;;;.
　　〃　 .,ﾉ~; .ﾚ:::::::::::／:／::;ｲ::::::/:::i::::::::::::i::!ﾍ　　　...,i'ﾝ"　　　,iｉ'"　.,..-'";;;;;;;;;;;,／゛　　_,,,,,__ ,ir!'"　　　　　　｀'''″
　 .il″　/ ;;;;;/ ,!ヘ:::/／i／//:::;ｲ:::/|::;:::::::::ﾄゝ　　 ,-/'"　,.. ;;/!"._./ ";;;;;;;;;;;.,./ _..-､., /＞'"゛
. ,i|′ ,/;;;;;;;;lﾞ./.に)|/了心／／/:/　|∧:|:::/ ,.iｌ!ﾝ''／...-彡 '',ﾞ..-'";;;;;;;;;,..;;二―'",,／'!'"
// .／;;;;;;;;;iﾚﾞ;;;;;;ﾄゝ `弋:シヾ /´ ,斤jﾌi/i/ |/‐ンン'∠ﾞ‐'ﾞ´;;;;;;;;;;;;,i;;ｉＵﾞ‐'''^ﾞﾞ''″ 　　　　 _..i
/ｒ'";;;;;;;;;;; ..._,､／く｀､.u'､　　　ノﾍヾ-'/　′.ﾞ´,iﾃ '´;;;;´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;フ"　　　　　　_,,,...i;;;;iv＝ゞ´
;;;;;;;;;;;;;;/;;.／ゝ:::::::::ヽ＼　￣ ´　ゝ＞′.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ／　＿_..;;ﾒ｀-ｰ'"゛　　　　　　 _,,.. -ｰ'''''ﾞﾞ''ﾞ￣,ﾞ/
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;;;;./:::/:ゝ;:ヽ-‐―ｒ;;,::::::::|Υ|:0::::::::::::::::::/::::i.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,./ ″　　 .＿,,,,＿,,,..;;ﾆﾆ!ﾞ彡''彡-‐'"゛　　　　　　　　‐‐‐'"
,,,/__/_冫;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼::::i　j:::::::::::::::!::::/:::::::l;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;./ ._,,　ｰ'''ﾞﾞ´;;;_.. ;;ﾆ｀-￣ﾞﾞﾞ‐'"゛
"｀ヽ;:;:;;;:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:从∨::::::::::::::Y/::::::::::!.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_.. ｀-'''''"
i: く::::〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:）::::::O:::::::::::::::i:!'::::::::,'.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iiijj⊇....--‐',ﾞ,ﾞ,,
l:/ ,,__);:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ::::::::::::::::::::::::/::/:::::/.;;;;;;;;;;;;;;;_,,..r‐ '"￣゛ . _..yrｰ''“''''"　　　 . _,,.. -;;ﾆﾆコﾆ;;r‐
|ヘ(;:;:ノｒ-´^~;;r-ー⌒｀:::::::::::::::::/::/:::::::i..‐'' 二ﾆ　―ﾆﾆ｀-'”'"゛　　　　 .,_iiir=｀-''''"´

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三人称多視点の小説という形式で書かれたこの物語を読み進むにつれて、

勘の良い読者ならばおそらく、何かしらの違和感を覚えられることだろう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_,...---- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　:,:　　　　 .／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`丶
　　　　　　　　　　　　ﾉ霜斧ﾐx,./:::::::／:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　(圭圭圭{!/:::::::/:::::::::::::::::::/:::::|::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::､ヽ.
　　　　　　　　　　　寸圭圭 ./:::::/:::::::::::::::::::::/:::::j|::::::l::::::::::::l::::ﾊ:::::::::ヽ::iﾍ:ヽ
　　　　　　　　　　 τ'{{7⌒ /:::::/::::::::::::,:::::::/::::::/|:::::::|::::::::::::|::::|ヽ:::::::::l:::i　ﾞヾ､
　　　　　　　　　　　 )/　　 .|::://:::::::::/:::::::/::::::/ !:::::::ﾊ:::::::::::|::::|　!::::::::|::::|　　ﾞ|
　　　　　　　　　。∴{!　　...|://::::::::::/:::::::/_:::/__!:::i::::| ﾞ!::::::::::|:::｣=-|::ﾊ:|:::::|　　||
　　　　　＿,ｨ(　　　　 /:,':::::::::/:::::::::/,z"≧､､ヽ''　ヽ',ｨ,ｪ≦x､ /:||::::::::|　　|
　　　　　,ｨ圭||ｱ　'’ 　　 /:/::::::::/::l:::::::/{{f::●;:ﾊヽ　　 i/.{i●;ｯj ,'::::|:|::::::::!　　　　　　　　 ,ｨ(＿
　　　　　炸圭( 　　　 ,./:::::!:::::::/::::l::::::i　 ` ｰ "　　　　　｀ﾞｰ"　i:::::|::|ヽ､:| 　　　　 .。　佳圭心､_
　　　　 ⌒`寸ﾄ､　　 ,{./:::::::::｀>':::::::i､::|　　　　　　　　丶　　　　 i::::::|::|...･　　　　　　　　 _ノ佳佳佳て。
　　　　　　゜　　　　ﾉ./:::::::::::::/:::::::/:ヽ　u 　　　　　　 ´　　　　 ,'::::::|:::i　　　　　 ',.:,：･'｀¨∵¨¨⌒´
　　　　　,,、　　　／../:::::::::::::/::::::::/:::::ﾄヽ　　　　　f⌒ヽ　u ／::::::::::|:::ヽ.,.｡x≦少"・　　　　　　　,ｨ(＿∴_,：･・
　　π_ノ心､_ノ(,炸|/:::::::::::::::/::::::::/ﾍヽﾉ　` ､　　　ゝ-ィ　／::::|､:::::::::|::::ヽ.炒⌒;.　　　　c=≠二,ｨ炸圭圭(;''
　　　)圭圭圭圭 . /:::::::::::::::/:::::::::,'　＼＼　　　`　‐-　_イi｀ヽ､:|､_､::::::|::::::ヽ　...･　　　　　⌒　寸筵τ'._,,.``
　τ｀Ⅷ:圭圭圭 ./::_:-‐="/:::::::::,'　　＼＼　　　　　　 ,' |　　ヽ　ヽ:::::|:::::ヽ　　　　　　　　　　　　　　ﾞ‐'　|.ｌ
　　　)}圭圭圭　 /／｀ヽ､ /:::::::::,＼　　　＼＼　　　　/.! |　　ヽ　　ヽ::::ﾄ､:::ヽ　　　　　　　 .,,,　　　　 .　ｌ､;ﾞ￢．
　_,ｨ炸圭圭才 /'　l　　　/::::::::::/.,ｨ劣王ﾐ::､＼＼　〈 .| |　　　!　　ヽ|　ヽ:::::ヽ　　　　　 !;;ﾞ''┐　　　　.ﾞ'ｰ'"
　　　⌒`寸ﾄ /'　 l 　 . ,/:::::::::/　寸圭圭圭圭圭}＼　 i |　　　 |　　　＼＼ヽ:::::＼　　　　　 .!､;;;丿
　　　　　　..//　 ,'　r:升圭少　　　｀`x圭圭少´ ヽヾ.| |　　　| 　　　　`i､＼ﾞ､::::::＼　　　　　.´　　 ,,、　　　,、
　　　　　　/　　 i　　..｀¨´::::/　　　　　￣ヽ　＿__.ヽ|　　　 !　　　　 ,'　＼ヽ:::::::::: . ,i'''；　　　　 .|;;;;ﾞﾞ''''''";;.ｌ､
　　　　　 <:少　|　 /:::::::::::/,..xｭｭｭｭ､　　　　　〈圭圭心,　　　.| 　　ヽ|　　 iヽ:::::::::::::::: `''".ｨ;;-一'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　　./　　　 | ／:::::::::::: {圭圭圭圭圭圭ヽ　　￣¨¨¨´　　　 |　　　　〈　　　l　＼::::::::::::::::＼｀''-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｨ
　　　../　　　　ﾒ:::::::.__........__寸圭圭圭圭圭ﾘ　　　...`､　|.　　　 |　　　　ヽ　　|　.._.. ;;i　　　　　　 .｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
,.......xｭｮｮｭｭ.、,....ｨ升圭圭圭圭圭圭圭圭少　　　　　ヽ|　　　 |　　　　ﾞ! 　i　　二..,,,＿,..--'''";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゛
`寸圭圭圭}　寸圭圭圭圭圭圭圭圭圭K._ 　　　　 /　　　　 |　　　　　| /　　 .ﾞ'―'''''''^ﾞﾞﾞﾞﾞﾞ'l,,_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　.. ｀¨¨¨¨´ ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭王圭圭}　　　／　　　　 ./　　　　　 |/＿ -‐＝=‐　＼:::::.: ,ii;;,ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　/ ／:.{少r:ゞミ王王圭圭圭圭少'´￣¨¨¨´　　...／＿　　　 ./　　　　　　|　　　　 ..,.. -ﾆ＝''"゛　./;/''''i;;;;;;;;;;;;;;;;
／::::::::::::::.{圭圭圭沁　｀¨¨¨´　f壬心 . -‐＝二メ二二三￣￣ﾞ＝=─-､/ヽ　　　　."'"　　　　　.．　 . l-ｘ,;;;;;;;;;

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

何が変なのか。

どこがおかしいのか。

14 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:03:25 ID:976fb80c

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!;;;|l;;;;;;;;;ｹ;;;;;;;;;;;;;;;;;.! .!;;;;;;;;;;;;;;;;;,!|;;;;;|:!;;;;;;;;;;.!.!;;;;;;;l|;;;| l;;;;;;;;;;;.;;;;;;;;;|!;;;;,!;;;;;;;;;;;;|.|;;;;;;;;;;;;';.;;;;;;;;!l;;;;;;|!;;,l|;;;;;;;;;;､;;; ﾈ;;;;;;;
;;;;;|.!;;;;;;|l;;;;;;;;;;;;;;;;i､!　l;;;;;;r‐i;;;;;;! !;;;;ﾞ|;;;;;;;;;;/ |;;lﾞ};|!;;;! !;;;;;;;;;;||;;;;;;;;ll;;;;;li;;;;;∥;.!,!;;;;;;;;;;;;i!|;;;;;; ﾈ;;;;;;"/.|;;;;;;;;ili.!;;;";i;;;;
;;;;;｝l;;;;/.|;;;;;;;;;;;;;;;|i.!　.!;;;;;|　l;;;;;;! l;;;;;|!ﾉ.!;;;;.! |;/,!;|.!;;.ｌ|;;;;;;;;;;| !;;;;;;lﾞ|;;;.!|;;;;lﾞ|;;;;!.!;;;;;;;;;;;.! |;;;;;;;";;;;;;;lﾞ .l;;;;;;iﾘ;||;;;;;;l!;;;
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;;;;;/.l;;,! .|;;;;;/l,;;;{ .!;;.! !;;;.!　|;;;;;;| |;;;;;;l　 ,!;;;! !;l.!;;;; ,　＜　￣￣　＞　、.[|!;;l |;;;;;;;;;;;;.! .l;;;;|L;;;l|;;;;'ヘ;;;/!;,l!;;;;;;;;;;;;
;;;/　l;;l .:!;;r;{ .!;;.! |_;lﾞ|;;;;｝　|;;;;;lﾞ.l;;;;;;;.!　!;;;;{ .ﾞ.!.／　　　　　　　　ヽ. ＼、...!;;;;;;､;;;;｝ l;;;|.|;;;;.!.!;;;;;;;;;;;lﾞ|;;l";;;;;;;;;l
;;;|　.|;;｝ |;;;;;｝ .!;;.!　　!;;;;|　.|;;;/ .!;;;;;;;;.ｌ..!;;;;｝　/::... 　　　　　　　　....V::ﾑ＼.|;;;;/ .!;;".!;;.! !;;;;.! ｌ;;;;;;;;;l |;;./ ;;;;;;;;|
;;;!　|";| |;;;;;;.! |;;;;!　 .|;;;;;|　 l;;lﾞ /;;;;;;;]､ﾞ";;;≦.ｌ::::::::::::::::::::;イ:::::/|lV:::::::i::::::l . .|;;;｝　!;;! !;;;! |;;;;;｝/.i|;;;;| .!;,ll;､;;_;;;;｝
;;;.!　l;;;;l.!;;;;;;;! |;;;|　 .ﾄ;;;;;.!..≫' l;;;;;;;;;;!　ｌ;;;;;lﾞVｌ:::::::::::::::::× |::jﾘ／ V:::/:::ﾊ}...l;;;;|　 l;;.!.!;;,! .!;;;;|lﾞ/l;;;;,! :!;.!Ｔ｀ !;;;.!
;;;;.!　!;;;||;;;;;;;| ,!;;l　 ..厂丁　 .!;;;;;;;;;;|　 !;;;;.!.{.ﾚｲ:::::::ヾ●>ﾚ' <●>∨}W　　!;;;lﾞ　 .!;;|｀゛ .l;;;;;;/ .!;;;;! .|;;{　　.!;;;;|
;;;､|　l;;;〔;;;;;;;! |;;,! . __}　乂/≫;;;;;;;;;;|==!;;;;.!ヽ　 V::::::::| 　　, 　　　/|/.　＼..|;;;;|　　|;;;|　　!;;;;;|　l;;;;,! .|;;.!　 .lﾞ;;;;|
;;;;ﾞ;|　!;;;;;;;;;;;! .!;;l..У　｀　T　|;;;;;;;;;;.!　 !;;;;;.!./ 　ﾏⅣ:|. 　っ　＜ﾚ'≪ 　ﾊ.;;;;｝　 .|;;;.!　 .|;;;;;;l　!;;;｝ .|;;｝　 |;;;;;l
､;;;;;| :!;;;;;;;;;;;l .|;;.ｌ(r‐ｧｲ/ 　 l;;;;;;;;;;;｝ ≫'"´ 　　ｲ .ヾ| ≧≦イ/ 　　　 /|;;;;|　　l;;;;,!　 |;;;;;;;| .ゞゞ |;;;l　 .|;;;;;|
l;;;;;/　ｌ､;;;;;;;;｝.!;;.!　.し'し.lﾞ;.! .|;;;;;;;;;;|'´ 　≫'==ミ_',　　　　.{. 　 | 　　　 /..|;;;;|　　|;;;;lﾞ　 !;;;;;;.!　　　l;;;,!　 .!;;;;;!
.ﾞ‐'　　ｌ､;;;;;|゛.|;;;.!　　　 .i!;;l.≫;;;;;;;;|≫'´ 　　　 .}　　　　.∨ .∧ 　　 .i　ヽ!　　l;;;;.!　 l;;;;;;;lﾞ　　 /;;;,!　　ﾞｰ'ﾞ
　　　　 !;;;;;l　l;;;;l　　　ｌ;;;l/ |;;;;;;;;;,! 　＿　　　})　　　　 ∨ 　} 　　/ 　　　 .!;;;;l　 .!;;;;;;｝　　 ,!;;;;l
　　　　 .ﾞ'i;;.!　ｌ;;/　　 .l.彡'≫ﾞ''''″￣　￣ ─ﾉ　　　　　 ∨　i 　　!　　　　 .|;;;;|　 lﾞ;;;;;;;!　　 .l;;;;,!
　　　　　 `'ﾞ　.!;;.!、　厶イ　　　　　　　　ミイ二{{]( }] }二ﾆ＼| 　　!＼　　　　.ﾞ''"　 .!;;;;;;;l　　　｀"
　　　　　　　　l;;;;l　　ﾞ''"　　　　　　 .≫'　　　　　　　　　 / 　　|　＼　　　　 .ｌ;;;;;lﾞ
　　　　　　　　｀'"　　　　　　　　　 ≫''　　　　　　　　　　　 / 　　 /､　　＼　　　　　｀''"
　　　　　　　　　　　　　　 ≫'　　　　　　　　 ./＼　　/ 　　 ∧ .＼　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 .≫　　　　　　　≫'三ヾ　 l　./ 　　 ./　∨　ヽ.　　，
　　　　　　　　　　　　 .〃　　　　 .≫'//}三三!　　∨ 　　 ./　　.∨､∧.　　’
　　　　　　　　　　 /　　　　　≫'///' /三三! 　厶=ミ　 /　　　.}　.`∧　　，
　　　　　　　　　　　　丶　　≫'-=彳　　/三三/　／＿__ ∨　　　 /　　 .∧　　’
　　　　　　　　　　　￣　ゝ-=彡'　　　　__/　　i i ｢ﾌﾊ　　 /　　　　　＼＿ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠ イ /! .!.| ､ヽ　　7´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | i :! .! ヽ)ゝ'￣

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「読者よ欺かるるなかれ」などと、たいそうなことを云える類のものでもない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　　 r‐　　　　　　 .ィ==､
　　 |;;;;;;;;;;;;;.;v―ｰi;;,,v-ｰ'"　　　　　 ,,-- 、　　　　　　　　　　　　　　／ _rチ´　　　　　　　 .ｲニニﾆ!
,, ..,,lﾞ;;;;;;;;;;./ 　　　　　　　　　　　 _,,iiiﾆｿ一'"　　　　　　　　　　　　　　　 _ r ⌒　　　　　　 ._。rｲﾆ／　 )!
ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ‐'―― .... r;;;;ッr‐'''''"゛　　　　　　　　　　　　　　　　　ィ ´　　　　 .__　　r＜',ｲﾆ'/￣ヽ/∥
r''ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｨ´　　　　／　　Yﾆ/／r⌒'　　　ヽ/｀
､,,-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r‐┘ : :lﾆ;;．　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '　　　　　　　　　 |／　 '　　　　　　}!
,.l´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ-'''''-、　　　　　　 .j/／　／＼ヽ∨/／∠ヽ.　　　＼＼. ＼　　 ._ィﾆ/｀　　　　　　　ノ｀
..ﾐ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;7　　　　　 ._／　∠≠ﾆ二ﾆ≧=＜´　ﾍ.　　　 ', ﾍ＼ヽ.／⌒/r‐,　　　　　　/｀
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.!　　..＿ -‐´／　´､_,　'⌒｀^　､＼::＼　} l 　　　ヽﾍヽ/　　 /,' ,/　　　　 '
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,..;＞ｰ'ﾞﾞﾞﾞﾞヽ／　　　　　　　　　丶＼::V| |　　　　 Vl 　　 ./∥/
'ｯ;;;;;;;;;;.,,.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　｀''､_;;;;;;;;|　　　　　　　　　　　　　　｀Vヽl |　　　ヽ ' 　 /;'／｀
: l.;;;;;;;;;;lﾞﾞ'<;,v､;;;;;;;;;;/'　　　 .｀''''"　　　　　　　　　　　　　　　 Ⅵ/,　　　ヽ...∥｀
tナ‐'￣″ ∥ .｀'―ｰ!lｌt;;． .'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨ﾍ　　　　 ./∥ . _
;ヽ、　.,ﾉ７ﾘ'i　　　　　 ./　　　 /　/　　.／ {　　l　　　　　　 ∨|　　　 ./イ｀
'''-､ﾞﾞア'".=!.!.ｌ　　　　　 .l ., 　　/ ,ｲ　 ,ｲ　　l　　ﾄ､ヽ　　 / |　　 l :｀丶､_ ./,ノ .‐､
　 ...ｌ′　　 :l";二ﾞ''''┐　　| |　 l/‐},≦､l　　　 |　 l＿V 　 ∧/　　 |/ : : : : ｀ヽlヽ .r‐z_
._..．　　　_.　 ´　,〉;;;;;;ﾞ'ｰ､,.|｜　|　 | r_| 　　　 | .|_;ｨ､ .ﾄ i|' /:ﾉ /:｣!: : : :＿＿ : : ヽ.￣.､　　　 ._,,
;;;lﾞ　　　.ヽ;;￣￣;;;;;;;;;;;;;;;;;.!　 ';　l'　| トl､_　、　_,,ﾚ',,=| ﾄ|:ﾉ|/゛ _,／|ﾉ: :／´ ＿＿｀ヽ、'､: ! :＼　 .ﾞ‐'　|.ｌ
.､!､　　 .,i┘;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ^'''"　...';:! l;'Vヾ''=ヽ `゛　''゛　'´_ ., -y､'::!| /／ .／, -― ､｀ヽ｀ヾ、 : : :ヽ　　 .ｌ､;ﾞ￢．
..l;;;;ﾞゝy レ;;;;广'L;;_..ｺ　　　 .'　|:＼.ﾍ __,l. __,.、　 /´./　//::::'/:/ ／／ : : : : : ヽ　＼ .!;;ﾞ''┐.ヽ　　　ﾞ'ｰ'"
. ﾞ'''''″ .ﾐ､;;;;ﾞ''''l:ﾞ'"　　　　　 .（ヽ、`l　　 _ノ￣　 /　//‐ァ' / / / : : : : : : : : : ヽ　｀|.!､;;;丿.: i
　　　　,-シ､;;_ﾉ　　　　　　　　 {｀:.:.｀ヽ､￣　　 '" ´- 'ノﾍiii|:.:| :ｌ /: : :,;､;_: : : : : : : ヽ. |: :.´: : : :|,、　　　,、
;/　　,r./ 　l;/　　　　　　　　　　ゝ.:.;(::|　`　､ __,'´ィ'"´:.:.:.:!i|:.:.:!:|/ :／:::_;､-''゛: : : :,i'''； !: : : : : .|;;;;ﾞﾞ''''''";;.ｌ､
,! .／　　,i";;{_　　　　　　　　 .|:.:.:| ＼　　　/l　ヽ:.:.:.:.:.:.:|i!:.:.:＞‐ ''"´: : : : : : : : .`''".ｨ;;-一'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
! 　　　　ﾞL;;;;;ﾞ＞　　　　　　　 |:.:.:|:.:.:.:.｀ヽ./:ハ　ヽ:.:.:.:.:.:|:.:.l´ : : : : : : : : : : : : : : : ﾉ: :.｀''-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｨ
..,i￢―''>.ｌ..､/ﾞ　　　　i'ﾞﾞ~ﾞﾞﾞ'-|!!ゝ:.:ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:l::/::::}　　｀' ー''ｧ': : : : : : : : : : : :_.. ;;i ／: : : : : : :.｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
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..!､_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ!-ﾞ;|,`''″　 .,／;;;;;ゝ..r‐┐:.:.:.:.:lﾉ　　／ : : : : : : : : : : : ／ヽ_／..,.. -ﾆ＝''"゛　./;/''''i;;;;;;;;;;;;;;;;
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.;v ..,,,,､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ'―- -ヘ;;ﾞ'---､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l7　　　l
.ｌ´|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ﾝ- ／　　　ゝ-..､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;￢';;ナ'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !
;;;;;;.,,_.;;;;;;;;;;;;;/　　　　　　　 |;;;;;;;;;;i￢ｰ-,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;{´

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これはまったく、作者のどうしようもない茶目っ気の所産なので、

とりあえずはさして気に懸けていただく必要もないと思う──。

15 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:04:49 ID:976fb80c

　　　┏─━─━┐
　　 │ 第1部 B ┃
　　　┗─━─━┘

16 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:05:34 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　　山に来て海の話をするのもアレだけど……
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　　あ、これね、うちの兄貴から聞いた話なんです。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |　　　　　　　　　僕自身は、幸か不幸かその手の体験には恵まれなくって。
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

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軽く髪を撫でつけながら、洲藤敏彦が話を始めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',
　　　　　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､
　　　　　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
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背はあまり高くないが、顔はなかなかの二枚目である。

ジーンズに黒いTシャツ、長袖の赤いブルゾンを腕を通さずにひっかけている。

二十四歳の、自称カメラマン。

フォト・スタジオで適当にアルバイトをしながら、資産家の親の金で優雅に暮らしている身分だ。

17 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:06:19 ID:976fb80c

　　　　　　　　ﾊﾟﾁ　　　` 　 ,ヾ､
　　　　　　　　`　ヽ、　,ﾉ）´(　､ゝ
　　　　　　　　　　　　　 )　Y　人　ヽ)ゝ'
　　　　　　　　　 (:.､）ﾉ'　ﾉ ,（　`ﾉﾙ'　　ﾊﾟﾁ
　　　　　　　　ﾊﾟﾁ　　 _,ノ　　　..　　　 t ｿ
　　　　　　　　　　｀ﾍ(　　从;: .:;､丿）ﾉ
　　　　　　　　　　i　/_）　　　,;　　　;,,. 　Y
　　　　　　　　　　 ⌒ヽ　　 .;:　　　　::;,　ヽ
　　　　　　　　丶　_人ﾉ,　 ;: 　　　　;　(
　　　　　　　　　　从ヽ　　.;: 　　　　　;,ﾉ
　　　　　　　　　r===＜彡-'"ｿ_;;#;;从ﾉ="(ン(",,
　　　　　　　 (＼,ノ´フ,{='に}/{てニ}r=ｨへ,）≡==-
　　　　　　　　＞｀てk-'ﾄ､iﾉ//ヽ)ー'ﾚr小)人ミ三≧
　　　　　　　　（ノメ'ﾄf 　//けi」（ノ'(ツハ）ﾄ)三≧
　　　　　　　　　　＾^''"'"ｹ) (ハ)"(ハ)ヽ)"^＾

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

暗闇に赤々と燃えるキャンプファイヤー。

洲藤を入れて八名の男女が、風下を避けてそれを取り囲んでいた。

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|　　　　　　　　うちの兄貴、大学時代にロック・バンドでベースを弾いてて、
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!　　　　　　　　　よく深夜にスタジオで練習してたんです。
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |　　　　　　　　　　三年前の夏のことなんですけどね、
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l　　　　　　　　　　　その深夜練習のあとでスタジオのメンバーの一人が、
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|　　　　　　　　　　　海に行こうぜってね、軽いノリで云い出した。
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

18 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:07:05 ID:976fb80c

　　　＿＿＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿　＿＿＿＿＿＿＿
＿,.　l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l　　　　　　　　　　　　　　 |:::::::::::::::, - ―――| |;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;i､:;:|
＿ｌ__,l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l　l￣l￣l￣l￣l l￣l￣l￣l￣l |:::::: ／＿　　　　|_l:;:;:／二""二二　>!l￣l￣l￣l￣l l￣l￣ｌ￣:::
`-､　l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣.|::::/　　／l 　＿＿|_|:;:;:l ｌ;:;:;:;:ゝヽ_:;:;:;':; |￣￣￣￣￣￣￣￣￣:::
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l l l l l l `-､;;;;_;;;l　　　　　　　　　　　　　　 l/　　減　速！ :::::::| |:;:;:l l:;:;::;:;:;:;:;====:;:|
l l l l l l l l l `-､　_,　　　　　　　　　　　_　　　￣￣￣￣￣￣￣　￣￣￣￣￣￣￣
l l l l l l l l l l l ｌｌ`-､　_ 　　　　　　l l＿__γ ヽ
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌ`-､　_ 　　　　 .l ｢￣　､ _ノｧ .ｒ‐ｧ　　ｨ‐ｧ　　　　　　　　　　　　　　　　　< "ﾞ、　　　< "ﾞ、
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌl`-､　_　　　　l l===lﾆﾆﾆl.　ｌｌ＾　　　.ｌl^ 　　　　　　　　　　　　　　　＾l ｌ,　　　　^l l
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllll`‐､　_　　l l　　　　ｌｌ　　ｌｌ　　　　ｌl　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l l　　　　　l l
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllllllllllll`‐､　_.l l　　　　ｌｌ　　ｌｌ　　　　ｌl　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l l　　　　　l l
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllllllllllllllllll `‐-｢`''''''ｰ―---- ､､､､､､､､､::..　　　　　　　　　　　　 ..::＿＿＿,,,,,,,,,､､､､､
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllllllllllllllllllllllllllｌ|lllllllｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌ　ｌ　ｌ::..　　　　　　　　　　　　..:: llllllllllllllllllllllllllｌｌｌｌｌｌｌｌｌ
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllllllllllllllllllllllllllｌ|lllllllｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌ　ｌ　ｌ::..　　　　　　　　　 ..:::llllllllllllllllllllllllllｌｌｌｌｌｌｌｌｌ
l l l l l l l l l l l ｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌｌlllllllllllllllllllllllllllllｌ|lllllllｌｌｌｌｌｌｌｌ＿_,,,,,,,,､､､､､､､､:::..　　　　　　　　　　 ..:::llllllllllllllllllllllllllｌｌｌｌｌｌｌｌｌ
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　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　んで、兄貴の乗ってたRZ7とギタリストのMR2、二台つるんで湘南までドライヴとあいなったわけです　 |
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　野郎ばっか、五人でね　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　　　　　　ｪｪｮ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　　　　　　　　／,;;;＼
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　　ｪｪｮ　　　　　　　　　　　　　　　　 | : : : : : : : : : : : : : : |　　　　　 _　　　　 |.::|
_／,;;; '＼　　　　　　　　　　　　＼: : : : : : : : : : : ／　 _,:;=‐''"_,,〉　　　　 !.::!
,;;;;'''"　'';;;;""''''''ｰ‐--,,,,, i　　　　　_,-ー´　　　　　 _,,-''"_,,;-‐''"◎ .:i}＿,,,,　　!.::!
;;;'　　　 ';;;;;　　　　　　　)　　　　 /　　　　　　　　　〈!-''"◎　　　'i''"~~F--t'l　 |.::|
'''''ﾂァ‐‐‐‐-------'i'"´l　　　　,!　　　,!　　　　　　 {|::::.:.　　　　　''"~~'l,　|_|＿_!.::!
／／　　　　　　　i,i' il　|　　l i　 |　　　|　　　　　　　'i:::..:.　　　　　　　.::i　l;;;;;;;;;;;;;;;;]'　　　　　　|P
／　　　　　　　 i |,'i　!|　|　li,,,.i..ﾑ　　 |　　　　　　　　 'i::::. .　　　　　　 .::i　　　 !.::!　＿,,,,,,,,,,.;;へ,,,,,,,,,＿
　　　　　　　　 l|i i ! i　| ,;i"　i,!　　　　!,　　　　　　　 'i::::::.:.　　　　 ◎.::i}＼　 |.::|三───────‐三＞
　　　　　　'　 ,|il !lL'-!ﾆﾆUｺ　i　.＿ノ〉　　　　　　　　 {i;;;;;;◎;;,, -‐''ﾆ"ﾆ)⌒ヽ |.::|　 ~~"""""□~~~~~￣
　　　　　'　, ' |レ!'''￣　　"''''""~　　　|　　　　　　　　　〈_ｯニ二--''''"てノｼﾉﾉ[;;;;;]　　　　　　 !.:!
　iニニニニニニニニニニﾆコ　　　 ,|_,,.--‐''''''二二''''''‐-.,_lニニニニニニﾆﾆ:|.::|;ニﾆｺ　　 !.:!
　 0}::::::...◎. .　　◎　　.:◎::::|}　　 ,::'",,-‐'''~￣　　　￣~'''‐-,,"'''◎:::..: .◎ 　 . (|.::|:::::::|}　　　　|.:|
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　 .!:::::::.:.: .　　　　　　 ..:.::..:::::|　 / /:::　　　　 ( d |「i.ｎ.「i 　　　　　';::ヽ. 　　　 .|.::|:::::::|　　　[;;;;]
　 !:::::.::.:.: .　　　　　　..:.::.:::::::|　,' ;!::　　　　　　｀'''´｀''＾''´　　　　　　'':; ':,. 　　　 |.::|:::::::| 　　　 |.:|
　.|:::::.::.:.: ..　　　　　. .:.: :.:::::::| .! :!::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'i. !◎　　 (|:::|:::::::|}　　　　|.:|
　.!::::::.:::.:. .　　　　　　.:.::.:::::::| | '|::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'ｌ '!ニニニ!.::!ﾆΠｺ　　　 !.:!
..0}:::::::::.◎:.:　　.◎　.:..::◎:::|}|, |::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '! l─|:.|─|:::|─┘ 　　　.|.:|

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　兄貴の車にはドラマーとヴォーカルが乗ってたんだけど、途中、どうもそのドラマーが元気がない　　|
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　どうしたのか訊いてみると、何だかいやに肩が重いんだって云う　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　こう、後ろに引っ張られるみたいな感じで、重い、重い……って　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　そりゃあ単なる肩凝りだろうって、まあ、その時は誰も大して気には懸けなかった　　　　　　　　　 |
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

19 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:07:52 ID:976fb80c

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡　　　　　　海に着いたのがもう夜明け頃。
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃　　　　　　　　天気が良かったもんだから、みんな結構はしゃいじゃってね、
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､　　　　　一泳ぎしよう、ということになって……。
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

洲藤は、血色のいい薄い唇をゆっくりと舌で湿らせた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　 |三三二　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼三三二　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/──----　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 /三二　三二二　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　ｌ三二　三三二二　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l三二　三三.二二　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　 ,'三二　三三.二二. 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /三二 :∧:三三二二　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　 /三二 :/　∧三三二二　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　/三二 :/　/　 Y三三.二二　　 ',.

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　みんなが泳ぎはじめても、そのドラマーだけは、やっぱり気分がすぐれないって、浜でぼんやりしていたんです　 |
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　けれどそのうちに彼も、ふらふらと海に入っていった　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

20 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:08:37 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 | 　　　　そしてね──、
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|　　　　　　そのまま戻ってこなかったんですよ。
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

　　　　　　　　／　／　　※　　,　== ＝＝＝＝＝ ==　､　　※　｀＜.　　　　＼
　　　　　／　／　　　＞ ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀＜　　　　｀＜　　　＼
　　　　　 /　　〃※ ＞ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀＜　※　＼　　　ヽ
　　　　 ./　　〃 .／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　　＼　　　',
　　　　〈　　　i／.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.＼　※　ヽ
　　　　＼／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｧ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　ｉ　　　',
　　　　　 /: : : : : : : : : : : : : :,:＝:＝:≠ ﾄ : :∧: : : : : : : : : : :／＼: : : : : : : : : : : :＼　ｉ　　　〉
　　　　 i: : : : : : : : : : : : : :´ : : :／　　ｉ : /　i: : : : : : : : :≠＝= ､ヽ: : : : : : : : : : : :∨　　./
　　　　 | : : : : : : : : : : : : : : :／, ===､､:/ 　 !: : : : : :.／　　　　ヽｉ : : : : : : : : : : : i 　／
　　　　 l : : : :/.: : : : : : :.:.／／〃=､心ヽ　　!: : : :／ , =＝=､､　　 ! : : : : : : : : : : : !／
　　　　 |.: : :/: : : : : : i:／〃　ｧ､__ﾉ:::::ｉ　　/.: :／　 .〃=､心ヾ　ｉ: : : : : : : : : : : :ｉ
　　　　ｌ : /: : : : : : : :!　《　　ｉ:::::::::::::::i 　/:／　　　ｧ､__ﾉ:::::ｉ　',', ｉ: : : : : : : : i : : :!
　　　　　 ∨､: : : : : : : :ｉ　　　弋:::::::::ノ　 '´　　　　　ｉ:::::::::::::::!　ｉi l: : : : : : : :∧: /i}　　　　　　　　　戻ってこなかった？
　　　　　　ｉ＼: : : : :.:.ヽ　　　　￣　　　　　　　　弋:::::::::ノ　〃 !:.: : : : :.:./　У ｉ}
　　　　　　i: : :＼: : : : : :＼　　　　　　　　　　　　　￣　　 ´ /: : : : : :./. 」 _　 i}
　　　　　　 l: : :{i　＼: : : : : :＞　　　　　　 '　　　　　　　　　　／: : : : :.／ｉ　下　.ｉ}
　　　　　　 l: : :{ｉ　　｀＝ ´　　　　　＿　　　　　　＜.: : : : :／: :.{ｉ　　　ｉ}ヽ
　　　　　/ : : {ｉ　」 _　.ｉ}＼　　　　　　（　）　　　　　　 У= ´: : : : {ｉ　　　ｉ} : ＼
　　　　　　/ : : : {ｉ.　下　.ｉ}.:.: : : .　　　　　　　　　　　　　 . : : : : : : : : : :.{i 　」 _　ｉ} : : : ＼
　　　　 .∧: : : :.{ｉ　　　　ｉ}.:.: : : : :＞　.　　　＿　 .　＜.: : : : : : : : : :.／{ｉ.　下　.ｉ} : : : : : ヽ
　　　　 /: : ＼: :.{ｉ　　　　ｉ}.: : :.:／: :ｉ　　￣　　　ｉ: : : : :ヽ: : : : : : :／: : :{ｉ　　　ｉ} : : : : : : :〉
　　　 ./.: : : :.:.:ヽ{ｉ　」 _　ｉ}_:_:_/_:_:r´＝＝＝＝＝＝｀7､:_:_:ｉ_:_:_: :／: : : : : {ｉ　　　ｉ} : : : : : ∧
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洲藤の隣に坐っていた千歳エリが、肩に当てていた片手を外して訊いた。

ぴっちりしたスリムの黒いパンツに、これもまた身体の線がくっきり分かる黒い長袖のブラウス。

洲藤よりも一つ年下、二十三歳のOLである。

21 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:09:22 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　 . ＿_ ,. 二二 ___‐-=ミ
　　　　　　　　　 ,　　´／⌒＾´＿＿＿￣｀⌒ヽ、｀　　.
.　　　　　　　　　／　　/ __r‐=彡'⌒⌒⌒ー=ミ､　＼　　＼
.　　　　　　　　　 /　　 /_ノ⌒′: : : : : : : : : : : : :ｰ=ミヽ　　冫
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　　　　　　　　　　ｉ : : : : : : : : ／|: / /´ ｘ=ミｘ : : : |{{ {{.: :|
　　　　　　　　　　 |{: : ､＿彡≧x.}/ 　〃fてﾊ}} : : 八　}}: |
　　　　　　　　　　　　八: : : : :|{｢fてﾊ　　　 V::ツ: : :/》　《: : |　　　　　　　　溺れちゃったわけ？
.　　　　　　　　　　 / ＼: : |゛乂ﾉ　 ,　　　　厶ィ〃　》 : |
.　　　　　　　　　／{{　　＼{ｰﾍ　　　　､　　ｲ: : : {{　　 {{.:.:.|
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　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,　　　　　　　　　そう。そういうことになるね。
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
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神妙な面持ちで、洲藤は頷いた。

22 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:10:07 ID:976fb80c

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　　　 |::::::::イ~~~`"~~~~~~~~ﾍ::::::::::::::::|::::::::|
　　　 |::::::/　　　　　　　　　　 |:::::::|::::::::::::::::|　　　　　いつまで経っても戻ってこないし、姿も見えない。
　　　|:::::/　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::|
　　　|::::|　　　　　　　　　　　＿|:::::::::::::|:::::::::|　　　　　　こりゃあ大変だってんで、残りの四人で探しまわったんだけれども、
　　　|::::|~―-､　ヽ　　,,-―~ 　 |:::::|:::::::::::::::::|
　　　|::::::| ,-―-､`/､､_,ノ-―--､ |::::::::::|::::::::::|　　　　　　やっぱり見つからない。
　　　|::::::::| －ﾟ―` |　､　`－ﾟ―"|:::::::::::::::::::::|
　　　|:::::::ヽ　　　　|　　　　　　　　|::::::::::|:::::::::::|
　　　|::::::::|　　　　|　　　　　　 |:::::::::::::::::::::::|　　　　結局警察に連絡して、一大捜索となって……。
　　　 |:::::::|　　　/ 、　　　　　　 |:::::::::::::|::::::::::|
　　　 |::::::::ヽ　　-`--― ､　　　 |::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |::::::::::l|il|i　ヽ_￣￣　/　　l|i|::::::::::|:::|:::::::::|
　　　 |:::::::::::::::l|i　二￣　　 l|i|-|::::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |:::::::::::::::::|＼州_＿l|i/　 |:::::::::::::::|::::::::::::|

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼　　　　　　　　　　　その日の夕方、やっと彼は見つかった。
　　.　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼　　　　　　　　死んで、浜に打ち上げられてきたんです。
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、　　　　　ところが──。
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

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洲藤はそこで、いかにもといった間を取った。
　　　　　　　 ¨¨¨¨¨¨¨

23 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:10:52 ID:976fb80c

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡　　　　　　その彼の死体にね、もう一つ死体がくっついていた。
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃　　　　　　背中におぶさり、肩にすがりつくようにして、
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､　　　　　　　グズグズになった老婆の水死体がね、こう……！
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

　　　　　　　　　　　　　　　/⌒Y　　／⌒l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i⌒ヽ　　　 /⌒Y
　　　　　　　　　　 /　　/　　′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　,
　　　　　　　　　　　′ 　　 i　　　;′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ　　　i
　　　　　　　　ｉ⌒V　 |　　 ;　　!　　 !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　 ! 　 ;　　 i.　/⌒i
　　　　　　　　　 ,　 ∨ i　　乂ﾉ　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　乂ﾉ　　 l /　　,
　　　　　　　 ‘, 　 V　　　　　　 i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ　　　　　　　 ′　/
　　　　　　　　　 ,　　　　　　　　　 :　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ; 　　　　　　　 ,
　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　　　　､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　乂
　　　　　（￣　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　￣）
　　　　　｀丶　　　　　　　　　　　　　　　｀　ｰ一　¨￣￣｀i　　　　　 i´￣￣¨　ｰ一　´　　　　　　　　　　　　　　　 r　´
　　　　　　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丿　　　　人　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i
　　　　　ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　｀　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　.． ´　　　　　　　　　　　　　　　　｀　、　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　 ´　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`
　　´　　　　　　　　　　　　　　　 _　　 ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀　　 _　　　　　　　　　　　　　　　｀
　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ

　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼

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いきなり両手を前へ差し上げ、千歳の方へぐわっと迫っていく。

24 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:11:37 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　「　へ　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　 | （● ）（● ）　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　 |　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 　 ___｀___　　　　 |
.　　　　 ‐ ＞=====＜_‐　　　| 　 `ー '´　　　　 |
　　　／／　 ※　　※　＼　　ヽ　　　　　　/
. 　 / ／ ※ ＞―　―＜,※＼　ヽ／￣ヽ　　/ ゝ,
　 / /,　／: : : : : : : : : : :＼　＞‐<　　　　＼＼//
. /　|※/: : : : : : : : : :∧: : : У　　　≧=-　＿∨/|
/　　'. /: : : :/: /: : : /　}: : :/ 　<ﾆニヽ　　　　 ∧ ヽ＼
`ｰ―/: : : :/__/:/|: /⌒刈: !　　 >―ｲ　　　 /　|　 ∨＼
.　　/: : : :/'; ｲ/_ !/　　ｘ=ﾐ|　　ヽ＞'　　　　　　　　 ∨　＼
. ／!:.:|: :|:K〃⌒ﾞ　　 ,,, /　　　 ∧　　　　　　　　　　＼　ヽ
※∧ |: :|:ﾄ､:ﾝ '''　、-ｧ　/　　/￣ﾆヽ　　　　　　　　　ヽ
／　ﾊ|Ⅵ/⌒ヽ＞ｭ- _ く{くｆУ 　ニ7　　　　　　　　　　 ∨
　／/: : ｲ::::::::::::'iﾍ／()＼V ﾊ　 ┌∧　　　　　　　　　　 ∨
　 , ': : : ﾘ:|::::::::::＼ト､/!∨| ヽ＼人.!　〉　　　　　　　　　　　　|
／: : : : :ゝ|::::::::::::::::∨ | | ﾉ　　＼/ ∨　　　　　　　　　 lヽ
: : : : : : : ﾉ|::::::::::::::::::∨∨　　／　 ∧　　　　　　　　　　　　　/
: ＿＞=7/,＼:::::::::::::人/　　∧　　 '/＼　　　　　　　　　　　∧
:::::::::￣＼///＼＿＿/　　/: :|＿＿＿_〉
::::::::::::::::::::＼/／::::::::/　　 /!: : : : :|　　 |　　　　　　　　　　　ﾉ
::::::::::::::::::::::／:::::::::::ｲ　　_//: : : : : !　　ヽ　　　　　　　　　　／
::::::::::::::::／::::::::::::/::::`７￣´ : : : : /　　ト､〉￣￣￣￣￣￣
:::::::::::::::ｉ::::::::::::::::ｉ:::::::∧: : : : : : : :|/| | | |
:::::::::::::::|::::::::::::::::|:::::::|::::＼＿ : : : : ヽl人〉　　　　 |
::::::::::::::::＼::::::::::::､:::::|:::::::::::::::｀ヽ、: :|　　　　　　　　 |
::::::::::::::::::::::＼::::::::＼ヽ:::::::::::::::::::::＼|　　　　　　　　 |

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キャッと黄色い声を上げて、彼女は、反対隣に坐っている大八木鉄男の腕にしがみついた。

　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　／　　／￣￣｀´￣￣｀ヽ　　　　＼
　　　　　　　　／ _＿〃　　＊　　　＊　￣｀ヽ　　＼
　　　　　　　　　　／／　　　　 _＿,、＿＿,、＿_　＊　￣｀ヽ .＼
　　　　　　　／　〃＊　_＿ノ. : : : : : : : : : : : :｀ヽ._　　　i}　　＼
　　　　　　 '　／　　　 l}. : : : : : : : :| : : :ヽ : : : : : : : ｀ｰ‐､ .l　　　＼
.　　　　　 /　 {l　　　_ ノ. :/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :.､: : : : ヽ.　　　　 >
　　　　　 /　〃＊ _ ノ. : : /: : : : : : : : : : : : : : : :､: : : : ヽ : : : :∨　　／
.　　　　 /　 :{l　　/. : /.: : : : : : : :. :. :.i: : : : :.､: : : ＼: : : :': : : : :.V. ／
.　　　　　　 ∨ //. :.'. :././ . : : : : : : |l : : : :ﾊ＼: : : ヽ: : :'.:. : : :..V
.　　　 ′　　V ' : : i. /./ :// : /. :.:.!|l : : : : :} : :_＿ : Y.: :|: : : : : i
　　　 , 　　　|i : : :.l/./ :/// / :/: 八:、: : :/´　ヽ＼｀|:.:.ｉ|: : : :i :.|
.　　　　|＿＿＿|l : .:.:.∨ //７/￣／｀　ヽ:.:./ ,,z斗＝ミ､: :ﾘ. : : :| ﾘ!
.　　　　　　 | ∧: : : :..∨// '　　　　　　 )/〃Vr':::::ﾟﾘ/|.:/.: : :/,'/.:|　　　　　　　　　　　イヤだ、もう
　　　　　　 ,.:{ｌ.∧: : :.:.:.＼ z斗＝ミ､　　/　　ゞ─ ' ﾉ// : // i}: |!
.　　　　　 ,.:八 ∧ : ＼: : ＼　　　　　　 /／/ ／/ : //　《:.:|!i
　　　　　　 //.: :》　丶: : :＼: :.:ヽ/／/ 　｀　　　　ι 厶イ　　 i} |i∧
.　　　　　 //.: : {i　　＼: : :＼:.:_:＞　　　r -っ　　／ {i　　　　ﾉ |ｌ:.∧
　　　　　//.: : :八　＊　《￣￣/:＞､　　　　　　　ｲ: : : :》　＊　《: :|l: :.∧
.　　　　//.: : :/ , - ─ - ';／.ﾉ/:/ : : : !　｀　ー ´　{￣j〃　　　ｉ}┬-.､ ∧
　　　 //.: :.:, '´─_= '´', ' ,.'´／ﾉ: :.／}　　　　　＼{i　　　ﾉ'､入:::丶丶
.　　 //.: :.:./ /, '´_ -'/　/,;'´.／,:､/ ノ　　　　　　　 i｀》　　　《 ∧　入::::＼
　　//.: :.:./ //, '´/ /　//　/／ﾉ､　　　　　　厶-‐ _ﾞ!i　　　ｉ}　∧　入::::::＼
.　//.: :.:./ / / _ ;' /　/　 /　,, ''´、丶￣｀　 ´　　（. {i　　　　ﾉ Y ∧　入:::::::::＼
. // : : / / , '´_ i　　　　'　 / r'＝==z＼　　　　 /ヾ》　　　　《　 |　∧ 　入:::::::::::＼
// : : / / /, '´　i　　　　　 i　| !　　　ﾞﾐ､丶　　ﾉ　〃　＊　 i}.　|　 ∧　　入::::::::::::::＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

くすくすと笑い声が場に湧いた。

25 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:12:22 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　だから彼、肩が重い肩が重いって云っていたのか、ってね、
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　兄貴たちは愕然としたということです。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |　　　　　　　　──おしまい。
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

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洲藤は澄ました顔で続ける。

　　 ,　　´ 　　／　　 ,..:.:.:´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀　　　　＼　　　｀　　_
　　＼　　　 /　　,..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/i:.:.:.:.:.:..｀:....　※ヽ　　　／
　　　　＼　　/※／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:i:.:i:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:｀:.､　l 　／
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　　　　　　 l /:.:.:.:.:.:.:.://.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.ィ// }::ﾄ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:.',
　　　　　　 ' !:.:.:.:.:.:.:.//:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:／ /　〃＼:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:l
　　　　　　l! !:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:./__.:.:.;,;.:ィ‐　 /　〃‐-- ＼:.:.:i:.:.:.l:.:.:.:.:.:l
　　　　 {! !:.:.:.:.:.:.:l.:.:/,┬‐‐‐┬ ／　〃┬―‐┬＼.ト:.|:.:.:.:.:.:l
　　　　　 {{　l:.:.:.:.:.:.:∨　 |::::::::::::|　　／　　|::::::::::::| 　 |:.:/:.:.:.:.:∧　　　　　　　　　　　　それ、ほんとの話なの。
　　　　 }}※',::,:.:.:.:.:.i　　ｌ::::::::::::|　　　　　ｌ::::::::::::ｌ　ﾚ:.:.:.:.:.∧::',
　　　　　∧､. ヽ :.:.:.:.:.ヽ　`ー‐ '　　　　　 `ー‐ '　／:.:.:.／/:.:i.:.:.
　　　　 /:.:.{{　　}}:.｀:.:.:..;.＼　　　　　　　　　　　／_ ,.ィ´　 }}.:.:.l:.:.:.
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　　 /:.:.:.:.:.:ハ　 l!:.:.:l.:.:.ト ,　__ _ 　　　　 __　,. イ.::.}}　　}}.:.:.:.:.:.:i:..:.
　　 '.:.:.:.:.:.:/.:..{!　l!.:.:.:i.:i:.ｉ.:.:.:.／、￣￣￣　,＼.:.l:.l.:.:.:{!　 }}:.:.i:.:.:.:.:.:i:.:..
　 /:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.∨! l:.i.:i:.:.:／　　＼　　　／　　＼i:.:.:.{{　i}:.:.::.i.:.:.:.:.:.:i.:.:.
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/.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:./　 {{ i}　　　　 ≪￣Ｘ￣≫　　　　 {! l}}　｀ヽ:i:.:.:.:.:.:i:.:.::...

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千歳が横目で睨みつける。

26 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:13:07 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　だそうだよ。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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悪戯っぽく笑って、洲藤はウイスキーの水割りが入った紙コップを口に運んだ。

　　　　　　　 , ':::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::ヽ
　　　　　　　 /::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:ヽ
　　　　　　　　/:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.'
　　　　　　　 ,'.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::i
　　　　　 !::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.::|:.:::.:::|!:::.:::.:::.:::.:::.|
　　　　　　　l:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::|.:::.:|ｌ|::.:::.:||:.:::.:::.:::.:::.::.!
　　　　　　　|::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:!l::.:::.:::.:::.:::.:::|.::.::|｣|:.::.::|!L:.__:｣::.::.::.l
　　　　　　　|:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::._:|:|.::.:::.:::.l:::.::.|Ｌ:::｣ｰ=ﾐ;　　　ﾊ|.:::.:l:.:!
　　　　　　　|::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:/　|]::.:::.:::.::|:.:::.||　{ ｡● i　　 {;;;!::.::ｌ|:l　　　　　さ、お次。
　　　　　 !.:::.:::.:::.:::.:::.:::..i　/|:!::.:::.:::.:|::.:::l|l　ゞー 'ﾟ　　　'V:.::l.|:!|
　　　　　 |::.:::.:::.:::.:::.::: 八ヽ.||.:::.:::.:::|.:::.:l||　　　　　　ヽ川
　　　　　　 |.:::.:::.:::.:::.:::.,':.:::.＼l|::.|::.:::.|!::.::||　　　　　　 r '´
　　　　　　　 |::.:::.:::.:::.:::.:i::.:::.:::.:::|.:.!:::.:::|L::」|　　　　　 ‐ｾ′
　　　　　　　 |.:::.:::.:::.:::.:::|.:::.:::.:::.:|:.|:.:::.::||　　　　　　 /|
　　　　　　 !::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.::: |.:|:::.:::.|　えﾆ_ー‐一1|:!
　　　　　 ,':.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::./|:::!:.:::.::| /、＼｀`ヽ.:/ !|
　　　　　　/:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:／/:ハ::.:::.:l'　＼　ヽ　＼|!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

進行役である磯部夫人が、そう云って皆を見まわした。

27 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:13:52 ID:976fb80c

　　　　　　. : "´ ￣｀ : ､
　　　　 .,:::::::::::::::::::::::::::ヽ::､
　　　 //:::,::::::,:::::::､:::::::､::ヾ:.
.　　　ｌ,f:::i|_:::::|:::::::||:::::_|i::::i::|
　　　 |:|:::::|（●)　 (●）|::::::|:|
　　　 |:|::::_| 　　､　　 |_::::|::|
　　　 |:|:´:|ﾞ:､_　‐‐　_,.ｨ|:｀::|::|
　　　 |:|::::|:::::/ ヽ//ヽ:::1::::|::|
　　┌─────────┐
　　{ ）　　　　　　　　　　　　（ }
　　│　　百　　物　語　　 |
　　│　　　　　　　　　 │
　　└─────────┘
　　＿,ﾉ　,| |　　　　 ,| ヾ､＿
　　｀￣￣｀￣￣￣　￣￣´

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

宴もいくらか盛り上がってきたところで、

こういった怪談──いわゆる「百物語」──を始めよう、と云いだした張本人でもある。

　　　　　　／.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.::::::::::::::.＼
　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:ヽ
　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.',
　　　　 ,′.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:l.:l.:.:.:l.:.:.:|.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:|:.|.:.:.|.:.:.:.',
　　　 i.:.:.:.:.:.:.: l.:.:.:.:.:.:l.:l.:.:.:l.:.:.:ﾄ､. |.:.:.:.:.:.:.:|.:|.:.:.|.:.:.:.:.i
　　　 |:.:.|:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:. ハ.:.l{.::_」_L.|:.:.:.:.:.:.:.|十メ､.:.;ﾊ!
　　　 |.:.:|.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:. |, LｲL.:」　LL, -‐＞行そ.「
　　　 |.:.:|.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:. | 　 ,. cﾃ〒　　　´ tりﾉ !::|　　　　　　　　あと残ってるのは、大八木君とユッコちゃんね。
　　　 |.:.:|.:.:.:.:ﾊ.:.:.:.: . |　くヽﾋｿﾉ　　　辷ｿ｛::!
　　　 |.:.:|.:.:.:.:い:.:.:.:.:.:i　　｀ー'　　　 '　　　 .l:l　　　　　　大八木君？
　　　 |.:.:l.:.:.:.:ヽ|:.:.:.:.:.:|　　　　　　　　　　　ﾉl
　　　 |.:.:l.:.:.:.:.:.ﾊ.:.:.:.:.:ﾄ､　　　ﾔｖ--vｱ　,.ｲ.:.|
　　　 |.:.:|.:.:.:.:.:.:.:ｉ.:.:.:.:.|　丶､　　　｀一',.ィ´.:l.:.:|
　　　　 !:.:.!:.:.:.:..:.:.:!.:.:.:.:.!｀ヽ、　｀ーr＜ヽ:l.:.:.:l.:.:|
　　　 |:.:.|:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:ト､　ヽ、　　〈　　〉 >､.:l.:.:|
　　　 |:.:.|:.:.:.:.:／!:.:.:.:.:!　＼　＼　Ｖ / / . `l.:.:|､
　　　 |:.:.l:.:.／＼!:.:.:.:.:!　　　＼　＼ ,/ /　　 |.:.:i/ヽ
　　　 |:.:／　　　|:.:.:.:.:|.　　　ヽ、У/　　 .|:.:.|.　ヽ
　　　ﾚ'⌒ヽ　　|:.:.:.:.:|、　　　　　/ ,/　　　 |.:.:|　　 ',

28 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:14:38 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　／　「　　へ＼
　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |　　　　　　　　　　俺はトリを取らせてもらいます。
.　　　　　　　　　　　| 　　　 | 　　 |
　　　　　　　　　　　 | 　　 __´___ 　 |　　　　　　　　　　とっておきの話があるんで。
.　　　　　　　　　　　 |　　　｀ー'´ 　 }
.　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }
　　　　　　　　　 ,､ヽ　　　　　ノ-､
　　　　　　　　／;;;i/　　　　　　'､!＼
　　　　　 _,､-／;;;;;;;;|　i　　　　i　 i;;;;;ﾞ､-､_
　　　 ,-‐'''";;;;;<;;;;;;;;;;;;;!､_｀ヽ　､-'_／!;;;;;;ヽ;;;;;｀'';;ｰ;;-,
.　　　!;;;|;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;|'ｰニ_ー_ニﾞ／.|;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;!
　　　|;;;;;i;;;;;;;;;;;;／´;;;;;;|　　　　　　 |;;;＼;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
.　　 |;;;;;;;ﾞi;;;;;;;;;'､;;;;;;;;;;;;!─┐　　┌─.|;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;/;;;;;;;;i
　　/;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;ﾞ､;;;;;;;;;!　　l　　　l　　l;;;;;;;;;;/;;;;;;ﾉ;;;;;;;;;;|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

と、大八木が答えた。

二十七歳の会社員。八人の中で最も大柄な男である。

身長だけ比べてみても、中背の洲藤と二十センチ以上も違うだろうか。

百九十センチはあろうかという巨体だ。

　　　　 ,'::::::::::,':::::::::::::::/:::::::／':::/:::::/:∧::::::::､ヽ::::::::ﾍ:::::ﾍ.
　　　　,'::::::::::,'::::::::::::::/::::: /:/:::/:::::〃ｉ::::|::::::::Y､::ヽ::::::::Y::::ｌ
　　　　,':::::::::::':::::::::::::,'::::ｉ::/:/:::/::::::::!l:::|::::!::::::::ｌ|:ﾄ;:::::Y::::::ｉ:::::i
　　　,':::::::::;ｲ:::::::::::::ｉ::ｉ::トL」::_!:::::::: ﾊ::ｌ::::ｌ::::::::ｌ|:|:|::::::ｌ:::::::ｌ:::::ｌ
　　　ｉ::::::::/ |:::::::::::::ﾄ::ｌ::ｌ:::iy=≠ミ､　ﾘ|::::ｌ::::::::j|:|:|::::::i::::::::ﾄｉ::ｌ
　　 j:::::::ﾍ｣:::::::::::::|:::ﾄ:ｌ::::ｌち少j　　　ｰ┴三」ﾙ!:::::j:::::::::!:ｌ::ｌ
　　 /|::::::::::ﾍ!:::::::::::::!:::!::ｌ:::lrっzン　　　　　.,ｨ=ミゝ:/:::::::::|:j:!!　　　　　　　　そ。
　 / ,'::::::::::::::!::::::::::::::ﾄi､:ｌ､::ｌ.!ｌ.ｌ　　　　　 oん::〉/ :::::::::::! !
　/ノ::::::::::::::::|:::::::::::::::::|ﾍ!ﾍ:! ! |　　　　　　らrっ'::::::::::::::::ﾄ,　　　　　　　　じゃ、次はユッコちゃんね
./'/:::::::::::::::::::!:::::::::::::::::ｌ　　ﾍ.! ｌ　　　'　　　　 /:::::::::::::::i::::ｌ
／/::::::::::::::::::ﾄi::::::::::::::::ﾄ､　　ｌ　ｰ -　　　　,ｲ::::::::::::::::::ﾄ:::ｌ
／:::::::::::::::／ﾊ:::::::::::::::ﾍ. 丶､ j!　　　 , ィ:´:::::::::::､::::::::ﾍ:::ﾄ
::::::_;　-‐'　　ｌ:::::::::::::::ﾍ　　ﾒ､__,　ィｉ::ｌ:::|ﾄ:::::::::::::::ヽ::::::::ヽ
＜丶　　　　　ﾍ::::::::::::::::ﾍ　/ ∧､:::::||:::!:::ｌｌ::ｉ:::::::::::::::::ヽ::::::
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　＼＼＼　　　ｌ::::::::::::::::::ﾍ.　 ∨ 　ヽ　＼ﾄ!::ﾄi::::::::::::::::::ヾ

29 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:15:23 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　ｲ´／￣イ-
　　　　　　　　　　　　　 {、 | {/　＿―二ア、
　　　　　　　　　　　　　ゝ＼´＿_ ´　　　　＞、
　　　　　　　　　　 , イ´　￣　　￣ヽ、"´　　＼
　　　　　　　／´｀/、　_　　　　　　／´￣｀ヽ　、　　,
　　　　　　 /　／　　｀　　　　　　　　　　　　ヽ　 ',
　　　　　 ,'　/　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 }　 }
　　　　　ｉ /　　　　　　 /　　　　ヽ　　 ',　　　 }　.l　 |
　　　　　 |'　_i 斗-‐＝/、.ｉ　　　斗-‐=| 、　ﾘ　, 　 }
　　　　　 | ´ }　|　 /、_ {　|　　　　}.　　 |　｀ /　/　　ﾘ
　　　　　 |　 :|　ゞ‐-r、_ヽﾊ　　　 }_z-r=ｧ　 ,　 {　　ﾄ　　　　　　　　あの──、
　　　　　　 ,　.|　 { | ら云ド　ヽ　 /ら云} "　ﾊ、ﾊ　　{
　　　　　　ヽ ! 、ヾ弋-ソ　　　｀"弋‐ｿ　/ ｲ　} ヽ　 |ヽ　　　　　　　わたし、こういう話するの、苦手で……。
　　　　　　　ヾ　ゝ＼_　　　　,　　　　　//}　ノヽヽ l
　　　　　　　　 ,　ヽ￣　　　　　　 ij　人　　　ヽﾐ
　　　　　　　 ,.-―', 　ｉ＼　　　 r‐っ　　イ -――--､ヽ、
　　　　　　 !＿　ゝ、ｌ￣￣￢ｰ-＝ニ二-＝＝＝＝ﾐ､
　　　　　 /三三≧=-＿＿　　　　　￣ｰ=三三三三ミ､
　　　　　 /三三三三三三三≧=-＿_　　　　　　￣ｰ=ミ､
　　　　　/￣ー＝ﾆ三三三三三三三三≧=-＿＿　　　＼
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磯部夫人に促され、茜由美子は焦った。

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　　　　　　　ｌｌ::::::∥::::::::: ! i~癶必、::::::::::ｌﾘ.ｌ|::::::::::::::::∥.::::::
　　　　　　　　ｌｌ::::::i ｌ::::ｌ:::::::ｌ l|ｉﾐメ弋ﾉ `ー′! !!;;;;;;;;;;;;;;∥.::::::::
　　　　　　　ｌｌ::::::ｌｌ::::ｌ:::::::ｌ.ﾘ乂廴汐i　　　　, イ弋勿/.::::::::::::　　　　　　だめだめ。
　　　　　　　　　 !、ﾉｌ::::ｌ::::::::ｌ.ｌ　 ` -' 　　　 '´ ｌ=刈刃 :::::::::::::
　　　　　　　　　　　　 `ｿ:::::::ｌ|　　　　　　　　　 `込リ/.:::::::::/ｌ:
　　　　　　　　　　　　ｌ::::::::::ﾊ,ｒ'~`　、　　　　　/.//.::::::::::〃:
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　　　　　　　　 /.::::::/　　　　　　　　ヽ　　　　　`フ.ｌ::::::
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アルコールで上気した丸い顔いっぱいに口を広げ、磯部夫人はからからと笑う。

30 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:16:08 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　 i:::::|:::::::::::|:::::::|:::::::::::::::::::::|::::::::::|:::::::::::::|:::::!
　　　　　　　　　　 i:::!::|:::::::::::|r‐-ﾄ､-──‐-!ｨ─:.|:::::::::::::|:::::!.
　　　　　　　　　 |::|:::|:::::::::::|!｡●ﾟ !　　　 !｡●ﾟ ||:::::::::::::|:::i::!.　　　　　　　　　　　みんな話したんだから。
　　　　　　　　　　,:::ｲ::|_:::::::::|ﾞー "　　　　　`ー:ｲ|::::::::::::::|::::|!:､
　　　　　　　　　　j:::ﾙ:::|::｀:ﾔ. 　　　　　､　　　　 └-‐:=:i"::::|ﾞ::i.　　　　　　　　　　　ね。
　　　　　　　　　 /::j |::::|:::::::|::.､　　　　　　　　 |:::::::::::|:::::::|ﾔ::i.
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　　　　　　　　　|/　 |:::|::::::::|::::::::::｀ﾄ .　　　 ,. : "|:::j::::::::::::|:::::::|　!:::i
　　　　　　　　　|! 　.|:::|::::::::|:::::,.ｲ､:|.　｀ ´　　,ｨﾄ/|::::::::::::|:::::::|　l::::i
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　　　　　　　　 |::!　_!:,.|:::::::::|.　　 i　∨ ／,／　　 |:::::::::::::|ヽﾄ､!　|::::i
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　　　　　　　　/ .i　　 |:::::::::|　　　ﾞﾔ／　　　　,/'|:::::::::::::|　　　　 ,ヽ!
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　　　　　､-ー'｀Ｙ＜,__＿
　　_＿≦ー`__＿　_二ｚ<＿
　　＞７￣､-‐ ´￣｀'┴＜
　＜之′Ｙ´／　　　　　　　＼
　　 >{　 ,' 　|､　,　,.　 ,.l　　, 　ｉ
　　|　!､{　　| 寸寸T　ハT７} ｨ,ｌ
　　′Ｊﾞｉ, ﾞｉﾞｉ（ ●）　（●）|ハ|　　　　　　　でも
　　　　　ﾞｉ|ﾞｉ'(1　　　 -　 .ノ川
　　　　　　　ｨ二三三三ﾆ}l
　　　　　　 / 仁／　 A ｀ﾄ

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眼前で燃える炎ら目をそらし、茜は何となく背後を振り返った。

31 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:16:53 ID:976fb80c

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ゞ::::;;;:;:;;;;;;;;;:::;;;;;::;;:;,,-'':::）ｉ;::: ::;;;;;;;/7777i⌒＼＼:.:.:.:.:.:.|／囗囗ゞ:::;;;;;;:;:;;;:ゞ;:::::;;;;;;;;;
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'""':.::.:"'~''~'"':.:""'"'''"':.:'':.:'"~'"'"'':.:'""'':.:'~"'"'''"~~:.:"'''"'''":.:"'"'':.:'""'~'''"":.:'"'''"~
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暗闇の向こうに、山小屋の影がうずくまっている。

それを取り囲む黒い森の木々。

炎の音に混じって聞こえる虫の鳴き声、草のざわめき……。

　　　　　　　　　　　　　 ,ｲ
　　　　　　　　　／　⌒ﾐ三ﾆ＝ー‐--
　　　　　　　　　　 ‐r´-ー‐‐‐ー..　、　イ´
.　　　　　　　／　　　　　　　　｀、　ﾟ｡　＼
　　　　　　／　　　　 ::i　　　、　＼::::: 、　ヽ
　　　　／　　　　/!　　　　ヽ　　、:::',　　＼
　　　　　{ ..::/ .:/　　 / {　　　　　{::: 　　＼',　　　　ヽ
　　　　　i　/　:i　　 /　 !　　　　　{＼､　　　i}:　　、　｝
　　　　 ,'　　:|　.ﾊ{　　∨　　　 {　＼　　i}:: 　　､ｙ
　　　　　{ 　　V_{＿＿__,.＼　　__{＿__j{　　i::: 　　　＼
　　　　　　',::{ :::Ｖ＿二,__　　＼___廴_＿{､　{:::: 　　　　＼　　　　　　　　こんな場所でこんな話ばっかり……
　　　　　　　{ 　弋忙尤}”　　　弌忙朮｢ﾊ　{:: 　　　＼::: }
　　　　　　　ヽ　＼￣　　　　＼厂/ノ}　}::: 　､　　ヽl　　　　　　　　あの、あんまり好きじゃなくって。
　　　　　　　　ヽ　ゝ　　　　　　 .∧, }ﾊ{::　　:::ヽ::　　ヽ
　　　　　　　　　ﾟ｡ｲ､　　　‐ｰ　　　ｲ::　＼::::　　　ハ:::::　　｡ﾟ
　　　　　　　　　　｀s。　 __ 　.イ、ヽ:::.　＼..　ｲ　ヽ::::/
.　　　　　,　-――--_._ 　}　　　　 {__＼::::::,:: 　ヽ　', 　　 ´
.　　　　/-＿＿　　　￣　ｰ-‐‐‐― ≧-.＿_:::::: ﾊ::}
　　　　/三三三≧=-＿　　　￣ｰ=三三ﾆ―-ｲ.　ｖ
.　　　{_三三三三三三三≧=-＿　　￣ｰ=三｀ヽ
　　　 ',_￣ｰ=三三三三三三三三≧=-＿＿＿_ヽ
.　　　 };;;;;;;;`,,,,,、　￣ｰﾆﾆ三三三三三三三三ミ､
.　　　{;;;;;;;;;;;;;;;;;/｀ｰ- ＿　ｰ- ＿￣￣￣￣￣￣＿ヽ
.　　　　i;;;;;;;;;;;;;;;;;{: : : : : : : : : : : : : : :￣ : :￣: :};;;;;;;;;;;;}/
　　　　i;;;;;;;;;;;;;;;;;i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :i;;;;;;;;;;;;;i
　　　ﾊ;;;;;;;;;;;;;;;;|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/;;;;;;;;;;;/

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云いながら、茜はふと、この夜のこの空間そのものに働きかける、何かしら異様なカ（圧力のような）を感じた。

32 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:17:38 ID:976fb80c

　　　　　　　.....-─:::::-..､
　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　/:::::::::::::::::;::::::::::::::::::::::ヽ
　　　 ,:::::::::::::i:::i:i::::::::::::::i:L::::::::ﾊ
　　　 i:::::::i:::::i:;ｨｿ:::::::::::::込､:;ﾉ:ﾊ
　　　 |:::::::i:::::!､;jｨ彳'"´'{ﾟ●;::::!`　　　　　　　どうして。
　　　 |:::::::ﾊ::ﾍ`ﾟ●〉　､　""}:::!
　　　 V:::::ヽVﾍ""　　　　/::::i
　　　　|::::::::::Vﾍ:ｪ　＿´／ l::::l
　　　　|::::::::::::,Vﾍ｀ヽ､ﾄ.ヽ.ｊ:::::|
　　　　|:::::／ .｀Vﾍ　ヽ.|　||:::::l
　　　　|::/ヽ　　Vﾞ:.､　ﾞ!　|ヽ:j'
　　　　|::i　ヽ|　　　'‐ｧ､ |　|　ﾞﾔ
　　　　|:::! 　＼　　　　j 　|　　l|
　　　　|::::!　　　ヽ、 /　 / 　_ﾉ|!
　　　　|::::| 　　　 V 　 / _,.ｨ'"! i
　　　　|::::ﾔ　　　　ﾔ'´　　　　|　!
　　　　|::::/､　　　　ヽ　　　_,ｲ　|
　　　 |::/　｀＼.　　　| _,. -'",ｲ　 |
　　　 //　　　ヽ,　　|_,.ｨ-''"　|　 l
　　 /∧　　　　　　　}　　ヽ /　　}

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磯部夫人が云った。

　　　　　　　／::::::::::::/::::::::::::::::::､:::::::::＼
.　　　　　　 //::::::::j::::::::::::::::::ｉ:::::::::ヽ::::::::::.',
　　　　　　 i |l:::::::ｉ::ﾊ::::i:::::::ｌ::::l:::::::::::l:::::::::::::
　　　　　　 |ｒ::::::ｉ:|::| |::::::::::::::::i |::|ヾ::|::::i::::::i
　　　　　　 |::::::::|七 T'､─‐┘T＝ﾚ| :::|:::::|
　　　　　　 |:::|::ﾊ !｡●ﾟ;　　 !｡●ﾟ,!:| :::ﾚ::::|　　　　　　　　　こういう場所だから面白いんじゃないの
　　　　　　 |´ヽ:::l ｀" ´ 　,　｀ "´　|:::::i:::::|
　　　　　　　　|::人　　　ｧ ―,　　　ｲ:::::l:::::|
.　　　　　　　ノ:::::::＞ .　ー'　　／ l::::::'::::::|
　　　　　　 /´ｉ:::l::::::::::::｀ r-‐ ",. -::ｉ::::/:::::::|
　　　　　　　　|::ｉ::::_;／ !|'　／／/:::/i__:i::::|
.　　　　　　　,ｨ|::|´| !　 ! |／,ｲ　/::/"　｀ヾ､
　　　　　　 ∧l::::!.|　! 　|У"　,/::::,'　　　 / ! ヽ
　　　　　 /　,|:::| !　! .／　　,/:::::/　　　./ j　　ヽ
.　　　　　/　/:::::| |　|/　　　/.|:::::|　　　/　l 　:.　ヽ
　　　　 /　|.|:::::::| .!/　　 ,ｲ' ,::::::|　　./　/　　:::....∧
.　　　 / 　 |!:::::::!,ｲ　　 //　,::::::| 　 / /　　　::'　丶
.　　　,'丶　,::::::::|"　　 /,' 　 !:::::| 　 l /:　　　_,.ｨ'"´ﾞ､
　　 ,'　　 ,:::::::::|　　　/ l　　|:::::::| ／,' 　_,..ｨ'"´　　　ヽ
　　 /　　 |:::::::::|￣￣￣￣~|::::::::|｀ヽ-'".　　　　　　　　ヽ

33 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:18:23 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /イ
　　　　　　　　　　　　　 -──　／￣　　＼＿　,ノ
　　　　　　　　＞─'´　　　　　＼　　　　＼ー'
　　　　　　／　　　　　　　　　　　　＼　　　　 !
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　 ∨　　　＼
.　　　　　　/　　　　　　　　＼　＼　　　　　|　　　　 |
.　　　　 ′　　|　　　　ｲ⌒＞､＼　ヽ　 }　　　　　|
　　　　 | 　 i|.人　 /Ⅴi. | / ,. ヽ_　＼}⌒ﾊ　　　人
　　　　 |　八ｲ｢｀｣、　∨ 　ヾ＝"八彡ﾉ　　 |.　 !　　　　　　　　　でも……。
　　　　　八　　∨ヾ＝"　　　　　　 l .!　　　ヽ　!
　　　　　ヽ　人　　　　　　　　　u　,|/ 　　　 | ￣
　　　　　　　　ﾊ　　　 r‐ ､　　　ｲ仄㌃　丶 /i
　　　　　　／￣￣ｰ-　_　＿イ/／ -―　￢、
　　　　　　　　,!=‐-＿＿　　　　　￣ー=ﾆ三三三ﾞ、
　　　　　　 /三三三三三≧=-＿　　　　￣ｰ=三､
　　　　　　 /￣ー=三三三三三三三≧‐-＿＿＿｀ヽ
.　　　　／=＝ｰ-＿￣ｰ=三三三三三三三三三三ミ､
　　　　{ ／´￣　―‐-　＿　　￣￣ー＝＝＝＝＝＝‐ ヽ

　　　　　　　　　　　　__{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀::.....
　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ＼
　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::.
.　　　　　 /／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::､:::::|ヽ:::::::::::::::::::::ヾヽ}
　　　　　 '´　}:::::::::::::::::ｌl::ヽ::',ヽ:::::|';:::|　ヽ:}';lヽ:::::::::::}ヽ
.　　　　　　　 И:::::::::|r==≧､ヽヽ::l.ヾ}≦＝=x}:;:::Nヾ
　　　　　　　　　　从;lヾ}ヽ乏汐ヽ_＿_/ 乏:汐/lﾊﾉ .ﾉ　　　　　　　　　　悪い霊が寄ってくる、とか？
　　　　　　　　　　　　､_　｀￣´ .ﾉ　　､　｀￣´ﾉ/.／
.　　　　　　　　　　人`　--　　 |　　 -- ´/´
　　　　　　　　　　＼　　　　　　　 , '
　　　　　　　　　　　　　 }＼　｀￣￣　／{
　　　　　　　　　　　　　　　(_|　`　＿　_´　|_)
　　　　　　　　　　　　／|'/////l　　 l/////,|､
　　　　　　　　　／'//,＜///,|_　__|///＞///'- ､
.　　　＿＿,.．-‐"'///////////Ⅳ○/'//////////,''‐- ．._
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とってつけたようなタイミングで茶々を入れたのは、沖元優介である。

汚れた白いジーンズに茶色いチェック柄のシャツ。

少々脂気の多い顔に度の強そうな黒縁の眼鏡をかけている。

大学三年。年齢は大八木や洲藤より下なのだが、風貌は二人よりもむしろ老けて見える。

34 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:19:08 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　__, ィ/
　　　　　　　 /{, ィﾁ::::::／ ,....イ／
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　　{／l:::::::::::::::::::::::::Ⅳ::ハ::/,ｨｒ=／､｀l／　__}::::ﾉ/
　　　 l::::::::::::::::::::_::::::Ⅴ .ⅴ.＼　l:::l ｀Y　 r=l／　　　　　　いいなあ。
　　　　}:::::::::::::/´　｀,￣￣￣{　｀ゞﾘ　}━ l:l　}
　　　　Ⅳ;:::::::{　　l､ ';l　　　乂　　　ノ　 .ヽ' ﾉ　　　　　　　僕さ、一回でいいから、本物の幽霊ってやつ見てみたいんだよな。
.　　　　ヽ::::＼　､　　　　　 ` 　´　　 ´'
.　　　　　　ヽ:::::::｀ｰ､.　　　　　 `　─/
　　　　　　　ヽ:::::::::ｌ＼.　　　　　　　 /
　　　　　　　　 ∧::ﾊl　　＞ -　　　 '
　　　　　　　__＿'l＿＿＿＿　　 |──ｉ
　　　　　　 |////////////lー.､Ⅵﾍ'/l＿＿
　　　　　　 |////////////l＿|__､lヘl､////l
　　　　　　ｉ┘////////////○'/|　　　∨'/,l

／　/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ＼
. 　/: /: : : : /.: : : : : : :/: : /: : : : :＼: : : : : i　 '.,
　/: /: : : : /: : : :_,: : :/: `ﾒ-――--､ヽ: : : :| 　 i
./ ;ｲ.: : : :/:／￣: : 〃: :/　　＼: :＿: :.i: : : :.!　　|／
' /｜: : : |": : : : ／/:.／　ｘ=≦云¨ﾞ》､!: : : :|　　|:ヽ　　　　　　　あたしだって、ほんとは気が進まないのを
i/　|: : : :.|ｘ=≦云/; '　　　　Kノ　} 　 .}: : : ;'　　ヽ
　　|: : : :.《　Kノ:::}　　　，　　`¨¨~´　/.: : :∧　　　　　　　　　　無理して話したんだから。
.　八 : : : ヽゞ¨~　　　　　　　　 /.: :／.: :ヽ
　　＼: : : ＼　　　 i￣ヽ　　　,/:／: : : : : :i
　／: : ` =―-≧　　　ヽ-‐'　　　／: : : : : : : ヽ
. /_,.z=ヽ＿: : ＞ .､ _　　　　　 ,ィ: : : : : : : : : : : :＼
/:::::::::::::::ヽヽゝ＼: : :.｢　＝=＜.｜: : : : : : : : : : : : : :
:::::::::::::::::::::{ | {　　￣＼　＿　 .」: : : : : : : : : : : : : :
:::::::::::::::::::::{ | {　　　　zｪｪｪｭ､二､＼: : : : : : : : : : :
::::::::::::::::::ヾ} | }　　〃　　　,ｲハ¨ﾞヾｭ､￣Y´,￣ヽ

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鼻にかかった舌足らずな声で、千歳が云った。

ソバージュの長い髪に指を通し、ゆっくりと掻き上げる。

35 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:19:53 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 -―＜¨¨_¨ ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ｀ヽ. ＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : ＼＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　／: /: : : : : : : /: :}､: : : : :ヽ＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　 / / /: : :/: : :.〃: :/_ ＼:.＼ l 　＼　＼
　　　　　　　　　　　　 / ｲ /: : :/: __://／ ´　　｀トミ__ 　 :|　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|/: :／ｘ　／　　ｰ=''´ |: : ｢　　 |￣￣　　　　　　　　　＿＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　∠イ : : 《　ｰ='″ ，　　　ﾉ: :人　　＼　　　　　　　 .／　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　 / 八: : : ＼__　　、ノ　彡ｲ : : ＼　　＼　　　　　　／　　＿＿＿＿_　 |
　　　　　　　　　　　　　　　 /　　ｉ――＜._　　　　イ: : : : : : :.＼_　　＼　　／　＿./ 　　　　＼|
　　　　／)ノ)　_　　　　　／　　　ﾉ: : : ＿_ :_ノＴ ¨ ＿〉＾Y７⌒ヽ: : :|ヽ　二二／
　　　ｒ┴く{ ｛_/ ｛＿＿_／　　　／: _／:::〃⌒≫≪⌒i}　/７::::::::::::＼|　　　　　　　　　 ,　―う
　　Γつく　 (　｛／⌒¨ア¨¨￣: :／:::::／{レ／イ＾ト__ﾉ' /７::::::::::::::::::::＼　　　　　　ノｰ'　￣ｰ三ぅ
.　　＼　　　　人　／ : : : : : ／::__／　〈／〃7　|「　　|__|:::::::::::::::::::::::::::＼　　　　_/　　　　 ‐_っ’
.　　／｀　Ｔマ＾ヽｘく : : : : : : _ﾚタ＾　　 .丈/辷ｉ　　　　＼＼:::::::::::::::::::::::::/　　　人_ 　,>-　￣
　　/　　 /＾弋¨´　　＼: : :∠／　　　　.丈/x辷i　　　　　ﾉ＾7::::::::::::::::::::::/ 　　／｀ﾆ､ヾﾍ
.　/　　 /　　∧　　　　＼{辷辷辷辷辷ｲΧ辷辷辷辷辷ｘく::::::::::::::::＿/／))／　　　　}7´
　￣￣　　/}}:∧　　　　　下ﾐ乂　　|/l Χ ////////|: : : : :.＼:::::((__〃|￣　　　　／
　　　　／:.〃:::∧　　　　　ﾉ:::::::_:＞く//777//////〈！: : : : : : :￣｢７/::|　　　　／
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気が進まないようには見えなかった、と茜は思う。

洲藤の前に、近所の歩道橋から飛び降り自殺した少女の幽霊の話を、嬉々として語っていたのは彼女である。

　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヘ　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼,　　　　　ヽ
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　V∧　　　　Vヽ,
　 /　　　│　　　　　 !　　　　　　　　 V|ヾ　　　　　ゝ
　.　　! 　│ 　　 │　　|　　ヽ:　　　ヽハ　　　　　　＼
　　| ∧ ハ　　　.│　　 |　　　　ﾊ　　　　ヾゝ::.:.:.:.:.:. 　ヽヘ
　 ::, -┴ ､　　　::/l　　:::ﾄ､　　　 ::l　　　　..:::Nl :.:.:.:.:.ヽ:.:. |
∠´　　　ヽ ::__:ｉ l　　:::l　｀､　　 :l　　　　.:::::ｊ:::.:.:.:.:.:.ハ:. ,
　　￣｀~ヽ｀y　l　l :∧:l＿_ ｀､ .::l　::::::::::::___:ｊ:::.:.:.:.:.:!　j/　　　　　　　　　じゃあ。
　　ヽ､　　 l/　/| -V￣ヽ　　　W|　::::「二ヽ|.:.:.:.ﾘ V
､　　　l 　 /イ´:::! __＿＿＿＿＿ |　:::|┌j　l.:.:.:/
_ ＼.　L／ /!::::::| '￣|「::::::::::|「　〉 |　:::|/／/ .:（
ｉ　ノ｀'´　 ∧ ヽ::|　　￣￣￣　´　l　::::|　／　:.:ゝ＼
二__ __ ,イ /　　｀　　　　　　　　 }　::::|く´　 :.|　`ー
　||　|「　|l |　　r､　　　　　　　,ィ　:::::|　ヽ　jﾉ

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仕方なく、茜は口を開いた。

36 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:20:38 ID:976fb80c

.　　　　　　　　　　　　　　 /ﾍ⌒{// ／イ´　　　―-}
　　　　　　　　　　　　／７ /ヽｲ/ /´　　　　―＝-ミヽ
. 　　　　　　　　　　　ｲ-‐-＝ミ、( 〉ノ_ｿ∠"勹ミ＼　ヾ｀ヽヽ、
.　　　　　　　　 _ , -‐"´ハ　ﾊ　ﾏｨ――-ミ、_、｀ヾ‐-、ゝ＼｀￣
.　　　 _,,. -‐''"´　　　／　　　　　　　　　　　＼　　　＼　　ﾍ
.　　　￣￣／　　／　　　　　／　l　　ﾍ　　　　＼　　　　＼　ﾍ
　　　　　／　　／　　　　　／/　　l　　　ﾍ　＼　　　　　　　ヘ　ハ
　　　／　　 ./　　　　　／　/　　 l　　　　ﾍ　　＼　ハ　　　ヽヽ　ヽ
.　　 /　　　/　　　　／　　　　　　l　　　　　ﾍ　　　＼　　ゝ、ﾊ ',　ハ
　　/ 　　　/　　　／　／l　 / 　l　 l　　 l　　　＼　　　＼　i 　ﾊ V}
.　 l　　　/　　／　／　 l-/ 　 .|、　　　l ,.ｨ≠=ミi＼　　ﾍ　ﾏ∧　}　}',
　 l　　 /　　 /　／i　　 l/二二 l　　　ﾉ"　.frﾊ　》ﾍ＼　ﾍ　ﾏ∧,ヽ i}　　　　　　　　　一つだけ、今でも不思議だなって
.　 l / ﾒ　　／　 l　　／ fｒﾊヾ.l　　/　　 .乂ﾂ　/ / 　|　 i| 　　＼＼
.　 /　i　／/ l　　彡ｲ《　乂ﾂ　 l: :/　　　　ｰ= ./ / 　i|　ﾘ　　　ハ≧=－　　　　　　思ってることがあって。
　／ヽ{/l　 l　 i　弋`　ヾ　_ ノ　.|i/ 　　　 '''' /イ} 　ﾘ　/　＼　　　＼
　　　 .l　　ﾍ k 　ヽ＼＼　,,,,　　　,　　　　　　ハ/ ／ |i　＼　　ハ
　　　　 l　　　-ﾍ　ヽ .}‐一　　　　　__　　　 u　/} //　　　 i!　　ハ　　 |　　　　　　　あの、それを……
　　　 l　　　 l lli＼ヽﾄ､:ヽ　　　　　｀　　　ｲ| 〉∧　　|　ﾊ　　 /}　　i!
　　　 l　　　iﾍ　l　　ヽﾘ　＞　　　　＿_,.ィ --――-､ .l　/　}　 ./ i| 　/
　　　　l/l　　l　 .／￣￣￣｀￢ｰ-￣＿　　　　＿＿＿_ヽ　　 |　イ　|//
.　　　　　ヽ　l　 }=‐-＿＿_　　　　　　　￣ｰ=三三三三ﾐ､　 /／　 /
.　　　　　　ヽl ./三三三三三≧=-＿_　　　　　￣ｰ=三三!
　　　　　　 /-=ﾆ三三三三三三三三≧-＿_　　　　￣`＼
.　　　　　　／ｰ-_､　￣‐=三三三三三三三三三三三ニ＝-ヽ
.　　　　／=‐＿＿＞､_　　￣ｰ＝三三三三三三三三三三ミ､
　　　　 i／￣　　　　　￣ｰ- ＿　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣＿_ }

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

上目使いに、皆の様子を窺う。

　　　　　　　　　/　　 /　　/
　　　　　　　　./　.／/ 　 /　　　　　　　　　　　.仆
　　　　　　　 / ／　,′　 }　　　　　　　　　＼　 /｜
　　　　　　ｰ ´　　｜　 /|　　　　　　.ﾊ　ﾙi　Χ　｜
　　　　　　　　　　 .,!　 / |.　　　　　 l　V 　V　＼｜
　　　　　　　　　　ﾉ.!　ﾊ l　　　　　　 | xぁ壬ミヽ　 X　　　　　　　}
　　　　　　　　　 ´　!´　ハ. 　　　　　ド;Vｲ￣｀ヾヽ.　｀、 ,　　　　.ﾊ
　　　　　　　　　　　i! 　 ;|. ｀　　　　　.| V ﾊﾟCxz::ヾ＼　y'!　　　 ./{ .X´
　　　　　　　　　　/　　;|　　　　　　.|　か::ゞﾂ::::::バ　　i!,从　/　￣ヽ、
　　　　　　　　　／　　　| 　　　　1､ .!　ゞ.＿_＞'　　　　´　 .)　　　　 ,,x示
　　　　　　　｀ｰ――´ 　∧　　　　 |.!ヽ|　　ー-‐　　　　　　　　　　　　　 ,か
　　　　　　　　　　　　　1 　ﾍ　　　　|l.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　L_x
　　　　　　　　　　　　　! 　.ﾊ　　　 .|::'.　　　　　　　　　　　　　　　　　　た_
　　　　　　　　　　　　　 !人　}从　　|::丶　　　　　　　　　　 , 　　　　　　ゞ≠
　　　　　　　　　　　　　´　 V|　 .).从:::::::|＼　　　　　　　　＿＿ --――――
　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣￣｀￢ｰ----＿― ￣￣＿＿＿＿＿＿＿_
　　　　　　　　　　＿}-＿＿＿＿＿＿_　　　　￣ｰ=三三三三三三三三三

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ざわざわとしていたのがふっと静まり、火を囲んだ七人の注目がこちらに集まる。

茜はこの春二十歳になったばかりの女子大生だが、こんなふうに大勢の前で話をすること自体、本当に苦手だった。

37 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:21:23 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　、　 ,バ
　　　　　　　　　　　 ,.ﾉ　　 }ｉ／　} }
　　　　　　　　／/　　.ノ'´　 _,ノ厶 ____ .ノ'　、
　　　　　　　　 /　.′ ／　 .　´_.彡'て⌒¨´　　 }ヽ
　　　　　　　 i　 {.∠..__／,__＿___⌒ヽ、　　ノ　 }　　　,
　　　　　 _　___j,／ r‐ ､{　{三三三≧z,,_.＞ ´ __,.ノ　 _,ノ}
　　　　　__彡‐ 　/　　ｉｌ三弐. ｀⌒¨¨¨¨ア´　　　　‘⌒¨´__,.ノ
　　　／　　　/　　,|ｉア´　　___.　　 ′　　　　　　　｀¨て.._ __＿__.,ノ
　　　 /　　　 /　　 i｣′　 __,／　　　　　　　　　　　　　　_　｀弋⌒¨´
.　　　　／　'　　　ｉｌi廴 _,／　　　　　　　 .　,　　　　、　　｀丶. ｀ヽ、
　　ｉ　/j/ 　　　 | |｢　 /　　　　　　 / / i、　　　ヽ　　、＼、＼
　　 |,/ .′ｉ　i　､八{｀¨7　　　　　 /_,/_∧_|_＼ヽ　　}　　､＼弋ト-`
　　ｌ{　{　 |　|　　l＼_ _j　i　　　　　,/　_}.厶.斗{__ ヽi　_,ﾊi　　ｌ、　ヽ.}｀
　　　　 ‘,　l　、　l＼7^1､|、　　　ノ{　_人_jぅ_j厂｀　|　瓜j　　|､＼　＼　　　　ええと、これ、
　　　　　‘, { 　＼}〉, { r{　い.　　　 ∨ 　｀¨¨`　　 j.ノ迅}　 ,jハ　｀ト--`ｰ
　　　　　 ,}人　 .　i'∧ヽ.＼l八ヽ、　 |　　　　　　　　　〉|.ノi{　_j　ノ　　　　　　　わたしがまだ幼稚園の頃の話なんですけど。
　　　　　　　ヽi　|//i＼＼__、ヽ、`ト| 　　　　　　 / 从弋て´
　　　　　　　　　l　|//|　,ｉ'>､_{,＼＼}　　し　　　 __，　 ′`　ミ_,
　　　　　　　 ,ノ　∨∧_}//,厶　　　　　　　<´　ﾉ　/
　　　　　／／}　＼{///{,//〉、　　｀　.._　　　　　,.′
　　　　　 /　./.　i'"￣￣￣￣｀ｰ-＜二￣￣￣￣￣￣二ﾆヽ
　　　　　,{　ｉ{..ﾞ├-＿＿_　　　　　　　　　￣'ｰﾆ三三三三三!
　　　ノ' 、弋../三三三三三≧‐-＿　　　　　　￣ーﾆ三三ﾞ、
　　　　　｀¨ﾞ/三三三三三三三三三≧=-＿_　　　　　￣ーヽ、
　　　　　　／＿　￣ｰﾆ三三三三三三三三三三≧=ｰ--＿＿_ ヽ
.　　　　／==＝｀ｰ _　　　￣ｰ=三三三三三三三三三三三三三ミ､
　　　 /'",.．-――-￣- _　　　　　￣ー＝三三三三三三三三三ﾆヽ
. 　　 {／　　　　　　　　　￣ ‐-.＿　　　　　　　　　　　　　　　　＿_..、ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

彼女には、由起子という名前の姉が一人いる。

その姉との間に起こった、それは「不思議」な出来事だった。

　　　　　　　　＿＿　　＿
　　　　　　　　￣ヽ、｀Y´/ _｀-―-、
　　　　　　　　／￣ヾ、 } ﾚ　＿＿＿＼
　　　　　　　／, ィニﾆ大　ヾ‐-、　　ヾ｀
　　　　　 ,ｲ ´　　　　　　　　　ヽ＼　　＼
　　　　／　　　　　　　　　　　　、 }ヽ｀ト､ヽ　　　　　　　わたし、その日は病気で、幼稚園を休んでたんです。
.　　　 / 　 ,　　　　 :ﾄ　　　　ｉ　ヽ}　｀ヽ｀
.　　 ,'　　f:　:i　　　　:| ヽ :|、　　 |　　ヽ　:}　　　　　　　　ずっと家で寝てて、その時、凄く怖い夢を見たんです。
　　ｉ　　 l　 :ﾄ　　　 |　 | | ヽ　 |　　　 }　ヽ
　　 | i､　{　 :|　＼　 :|　 !/　ヽ　|　　 :/ﾄ＿ヽ
　　 | ハ　ヽ |.┃　＼|　　┃　 }ハ　 l/　＼｀　　　　　　　細かいことはよく覚えてないんですけど、
　　ﾚ　ヽ : :ﾄ┃ 　　　 ┃　　　}　:| ）ｲ、＼
　　　　　　＼{　　　　　　　　　" ｲ　ﾄ　{　￣　　　　　　　とにかくとっても恐ろしい夢で……。
　　　　　　,.-‐l .iヽ＿　- 　. イ.ｰ}　ﾉ‐-､
　　　　 }=- !ﾉ_　　　￢‐-=ﾆ三|/三三i

38 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:22:08 ID:976fb80c

　　　　　　　　／　　　　　ヘ　　　　＼　　　ミ巛　　　　ヽ
　　　　　　/　　　　　　　　　　ヘ　　　　　　　　巛　　　　　＜
　　　　　　　　ミ　　　　　　＼　　　　　　　　　==-巛
　　　／　/　　　ヽ　　ヽ　　　＼　　　　　　　　　　巛
　　 /　　/l　　 l　　ヽ　　ヽ　　　ミ　　　　　　　　彡　　　　　　∧
　　/　 / /l　　 l　　l　ヽ　 i　　　　　　　ニニー　　彡　　　　　　　　　　　　　　　その話を、あとで由起子姉さんにしたんです。
　 j　 /　i　i　　 l　　l　_,,ヽ-l‐''"´　　　 r t　ミz_　　　ミ　　　　　 {
　 li /　　l　　　　k　'' x==-ﾘzx　　　　ヽヽ　　　　　　ﾉﾄ　　　　　ト
　 l/l　　ﾊ　k　　ヽﾍｲヾ汐'ｲ　ヽ　　ﾍﾍ　i　　　／/VI　}　　　　　ヽ　　　　　　　そうしたら、姉さんが云うには、
　　　l　li　　zxミ　 kﾍ　 '　　 l　　ヽ　ﾍﾍ iﾉ　　　　/　VI
　　　i　lﾍ　弋ﾀ `　、　　　　j　　　i　 l ﾉヽ　　　ハ／ VIi{　　　　　　{　　　　　　その日の幼稚園の帰りに
　　　ヽ {　ヽ　ﾍl　　　　　　 /ｲ　il　l /　　／/　l　ト　 VI ﾍ　　　　　∧
　　　　ヽk　ヽ　 `　 _　　　　/　/ l　l　　　　　lk　　ハ　VI　从　　　　入　　　　自分もおんなじ体験をしたんだ、って。
　　　　　ヽ　l　 iﾍ　 -` 　 /／l/ l　lﾍﾊﾍ　k il,,. -‐''"´ VI＼　ハ　从
　　　　　　　　l lﾍ k.ヽ　　　　　　ﾘ　l_x‐''"ヽﾉ　三三三三三＼
　　　　　　　　l/　ヽ　ﾍ　　イ-‐''l/　三三三三三三三三三　ﾍ
　　　　　　　　　　_,,. -‐''"´　　三三三三三三三三三三三三　ｌ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　　＿,-‐='/////`‐-.､
　　　　　　　　　　／/////｀////////////ヽ
　　　　　　　　　 ///////////////////////ヽ
　　　　　　　 ///////////////.//////ヽ//ヽ
　　　　　　　　 ,'///////////////l//////ハ//ヾ､
　　　　　　　　,////////////////,!///////ヽ//ヽ､
　　　　　　　　|////,/////////l//,|////////l///lﾞヽ
　　　　　　　　!////,|////////,|//||//////ィ´j///lヾ
　　　　　　　　|////,|/////////!/ﾊ//＜　　ヽﾊ/,r､ij
　　　　　　 !////|/////////ﾄ' !f ●j;　　　　!/!　　　　　　　　ふうん。
　　　　　　　　 i/|//,|/////////,'| ゝﾞ='" 　　 ,　!/|
　　　　　　　　 |/!//,|//////////|　　　　　　,ｨ //,|
　　　　　　　　 .l////｀＞､‐---､.‐‐　　　　 '´///,|
　　　　　　　　.ﾘ/,／／　l////,l｀　　─-‐r‐≦///,'l
　　　　　　　　 /,'〈ｰ=＝=Ａ////l 　　　 /≧ﾄ､///,'!
　　　　　　　　///ヽ　　　　l////,l､､　　〈ヾ.､ヽ.ヽ//|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

磯部夫人が唸った。

39 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:22:53 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　 .　-‐ : : : ´: : : : : ｀: ヽ、
　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　. 　　／: : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　 /: : : : : : : : : : : : : : l : : : : : : : : 丶: : ヽ
　. 　 /: : : : : : : : : : : : : : : l : : : l : : l : : : 丶: : ヽ
　　 /: : : : :f: : : : : : : : : : : l : : : l : : l : : : : : ' : : :,
　　 |: : : : /: : : : : : : : : : : ﾊ: : : :ﾄ; : l : : : : : : : : : ,
　　 |: : : : |: : : ヽ: : : : : : :{__}: : : ||: :.| : : /: : : : : : :l
　　 |: : : : |: : : : :ﾄ; : : :ｨ勾ﾃヽ; : |l: :.| : /: : ; : : : : :l
　　 |: : : : |: : : : :| ､: : 弋ノ　　｀`ヾ/ﾙｲ: : /: : : : : l
　　 |: : : ∧: : : :ﾊ　｀´　　　　　　勾ﾃ〉 /: : : : :ｲ l　　　　　　　　　あなたの夢と同じ体験を？
　　 |: : : ,ォﾍ: : : ∧＼　　_　　　└'"/ /i : ﾊ_:_ﾉﾘ
　　 |: : / ,ォﾍ: : : :∧_.＼＿＿_　／: /　'" ´
　　 |: / /　　 ∨: : ∧｀ヽ(_|: : |_:´: : : |
　　 |: |/　　　　∨: : ∧　ヾl: : | ｀`l: :.:|
　　 |: {　　　　　 ∨: : : ＼ ∨/　{ |; :.:|
　　 |∧　　　　＼: : : : ＼/　 Y , : |
　　 |: ∧　　　　　　　ヽ: : : : ＼＿}ヽ: ヽ
　　 |: : ∧　　　＿　　　ヽ: : ＿; -‐ ￣￣｀|‐ 、
　　 |: : : : |　　＿_,＞―　￣　　　　　　 |　　 >
　　 |: : : : |　　／　　　　　　　　　　　　　 |＿ /
　　 |: : : : |　 ´　　　　　　　　　　　　 |: 匕
　　 |: : : : |　　　　　　　　　　　　＿＿＿　}: :ﾊ
　　 |: : : :∧　　　　　　　＿＿／　　　＿人: : :',
　　 |: : : : : 廴＿＿＿＜＿＿＿＿／　　　ヾ、}

　　　　　/　　／　　／　　　　ヽ　　　　ヽ　　　ヽ　　ヽミ　　ハ l
　　　　/　　　　　／i　　　 l　　ﾍ　ヽ　　　ﾍ　　　ヽ　　　　　　 l　 l
　　／　 /　　 /　　l　　　l　　　ﾍ　ヽ　　　ﾊ　　　＼　　　　l　ヽl
　／／ /　　　l　　 i　　　l　　ﾊ　　 i　ヽ　　　　　　　　　ト　　　　　lヽ
　イ/ ｲ　　ｽ　ヘ _l　　　l　 l　l ,ﾍ il　　i　l　ヘ　　　/ノ　　＼　li　i
　 /　ﾊ　　l ﾍzxｭv_ﾍ　　l￣i　ﾄ--l l-- i一 l　　ヽ　　　/
　　/　l　　l ﾘ i弋f;yliﾊ　 lﾍ lzxﾘ-z_ﾘ　 l　 l　l　　l　　　　il　　 l　　ﾍ　　　　　　　そうなんです。
j　/l　ﾍ　 l ヽﾄ　　ヽlﾍ l　ﾘｲ込気ﾃﾞi/　il　l　　l tﾍ　 il　　　l　　ﾊ
　　 l l ヽ　l　ヽ.ヽ　ﾉ　　ヽ　　　　　　/　/ l　l　ﾊ　l l　　/　　　l　　　}
　　 i l　ヽl　　iヽ `、　　　　　　　　/　/　l　.l　 lソﾉ　ﾉ　　／　l　＼ヽ
　　　ヽ i l ﾍ .ハ　　 _　　　　　　　/／　 /l　l　l イ VIヽ　ノ　　　l　　　ﾍ
　　　　 il　　y　l　　 `_-`　　　　／　j　/ / //　l　/VI／ﾆl　　　　ヽ
　　　　ｿ　　 i　ﾊ　ﾍ　　　　　　　　/　　/／　　 l/　VI三ニl
　　　　　　　 l/　ヽl ヽ　_ _　 -‐　/／_,,. -‐''"´三三VI三三＼
　　　　　　　　　/　￣　　￣　￣　　　　三三三三三VI三三　ヽ
　　　　　　　　/　　三三三三三三三三三三三三三三三三　 l
　　　　　　　/　l　　三三三三三三三三三三三三三三三三　 l
　　　　　／　　lヽ三三三三三三三三三三三三三三三三三　l

40 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:23:38 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　....::´／:::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::＼
　　　　　　　 / .:::::::/ :::::::::::::::::::::::::::::;::::::ﾊ
　　　　　 /.:::::::::/::/::i:::::::::::::i::::::::::::;:::::::ﾊ
　　　　　 ,::::::::::::;::〃:ﾊ::::::::::::ﾊ::ﾊ:::j::::::::|::i
　　　　　　ﾊ:::::::::ﾊ:Ｈ:廾L::::::::」廾::h::::::::::!:|
　　　　　　W::::::::::_|! ●ﾟi　　 i ●ﾟ!:|_:::::::|::!　　　　　　　　　どんな夢を見たの。
　　　　　　 i:::i:::､.｀"´ 　 ,　｀"´ ,'!::::::｀::|
　　　　　　 |:::!:::ﾊ　　　_ _　　,/::i:::::::i::::!
　　　　　　 |:::!:::i::::ゝ.､　　 .ィ:::::::!::::::j::::|
　　　　　　 i:::!::::i:::､くj　￣　,ｨ∧:i::::::j::::::!
　　　　　　　 j::::!::::i'-＼ヽ　,//　　/::::/:::::::!
　　　　　／´!::::i　rvﾍ, ﾞ//　　.//::/~｀ヽ!
　　　　　　/　 , |::::ﾞ､// 　 ∨　　/'::::,'　　!　ヽ
　　　　 l 　.l .|::::|､!　　　〉　/ i::::j 　　i　　`.
　　　　　 /　 l　!::::| ヽ　　,/　/ !::::::!　　 |　　ﾞ.
　　　　 /＼ |　!:::| /　　 /　 / j::::::|　　 |-‐"´ﾞ.
　　　 /　　 i　!:::|/ 　　/　 /　!:::::|　　　|　　　ヽ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_／`ー――‐- ､＿
　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＞　　　　　　＜￣｀
　　　　　　　　　（＿_＿／￣　　　　　￣￣ミメ、V⌒ヽ　　＼
　　　　　　　　　　 ⌒ﾌ　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　⌒ヽ　　　　　　　　｝　　　 |　　　　　　､
　　　　　　　／　　　　　　　　｛　　｛　　　 /　　 :｝　 | 　＼　　＼
.　　　　　　／⌒/　　　　　　　｛　　｛:　　 /　　 .′　|　　　　　 }⌒ヽ
　　　　　　　ｲ|　　　 ′　　｛　　｛: ／　　　/　　 :|　　　　人　　　　　だからあの、よく覚えてはいないんですけど、
　　　　　　　从　　 /　　　　　、　　　　 /　　 }乂　　／　ヽ,
　　　　　　　　　 /.:| 　/ ｲ|.:ｉ　　　　　　＼　　　　　　　　∧　ヽ　　　　　　∧　　　確か──誰か知らない男の人が、
　　　　　　　／: :ﾉイ＼从:ﾄ､　＼　　　　／　　 / :ｌ| 　　} 　　∧　/　}
.　　　　　　／: : : : :ノ　　　　　＼　＼　ｉ |　　　　 ./: : ﾘ　　　　　.|　}/　　　　　踏切で電車に飛び込んでしまう……。
　　　　　 . : : : : : :∧　　　　 :;　 }　　　　ｌ| |　　　　 . : : :/　　　　　Ｎ
.　　　　 /.: .: .: : :/.八　､　　　j　ﾉｲ　　ﾘ |　　　／ . : :/ 　　　ｉ｜
　　　　/.: .: .: .: 　（: :心　　　＿　/　　　 /l | 　／.: .: :／{　　 | 　 |｜
.　　　 ′: : ／　　）l: :ﾊ ___⌒フ　　 .／/l |:.:.:.:.:.:.:／　　＼　 l　 ∧|
. 　　 {　　　　　 |/　　 ∠.,,＿_／ ― リ‐wｙ⌒＿___　　丶　/
　　　　　　　　　　 fﾆ¨￣￣￣ミ､＿_　　　　{::7⌒ヽ::::＼　）′

41 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:24:23 ID:976fb80c

　　　　　　　 , : ´ ￣｀゛ ::　.
　　　　　　 ,::´:,::':::::::::::::::::::::::::＼
　　　　 .:::::/:::::,::::::::,:::::::､:::::､:::ﾞ:.
　　　　 .|:::::i::::::|i:::::_||::::::_|:::::,|iﾞl::ｌ　　　　　飛び込み自殺？
　　　　　 |:::::|::::::|（●）　（●)|::::|::|
　　　　　 |:::::|:::::_| 　　 ,　　 j:::::| ｀　　　　　　それを、現実にお姉さんが目撃していたわけ？
　　　　　 |:::::|:´:|､_ 　／ﾔ:.ノ:::i ｀
　　　　　 |:::::|:::::{´,／　.∧:|:::::|
　　　　 |:::::|:::::|ｲ　　　 ,/:|:::::|
　　　　 |:i|:|:::::|　　　　/l'i:|:::::|
　　　　 |:||:|::,i'l､_,. ィ" j__||,､i'|
　　　　 || |ッ'ﾞ＼　　 /‐ｲヽ.
　　　　　 |　|:::|| 　`iｰ　　|ィ´
　　　　　　　 |　　| 　　 |
　　　　　　　 |　　|　　　 |
　　　　　　　 | 　 | 　　　|
　　　　　　　 |＿_|＿＿_,|
　　　　　　　　 {ｰｲ　ﾘrﾍ､
　　　　　　　　 `ｰ' 　.`ｰ"

　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　―――--　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛　／　　--―＜⌒
　　　　　　　　　　　　　　　 __｛_｛／へ ⌒⌒
　　　　　　　　　　 -=ニ　　⌒＾⌒　　｝ヽ: .　　　　＼
.　　　　　　　　　／　　　 /　　　　　　　　｝卜.: .　　　 ,　＼
　　　　　　　　　／　　　 /　　　　　　　　　｝Λ ﾟ｡: .　　　′⌒＼
.　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 /′｝　ﾟ｡　　　 ′
　　　　　　 /　　　　　　　　　 |　　　　 /　 /　　　　　　　 |
.　　　　　 /　　　　|　　 |　　　 | l |　　　　｜　　　 |　　　　 |
.　　　　　　　　斗―-|:: 　　 | l | __|: :|: : |　　　　 |　　　　 |
　　　　　｛　｛　　　|l人八Ν.:. .:.|ﾊ八人ﾉ￣}　　 |　八 . . : : :|
.　　　　　 /｝: . . :[(汀刈　＼｛, 斗r矛ミ､　　 | /. : . : . : Λ　　　　　　　　　　　だそうです。
　　　　　 / 小: : Ν　Vツ　　ヽ　　Vｰツ７:. : : /И.: : : :. :./　｝
.　　　　　 / 从丿ハ　　　　　　　　厶/: :/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./　丿
　　　　　　　 /: : :.仏込、　　｀　　　　　 /／:.:.:.:.:.:.:.:. : :/
.　　　　　　 /: :/^7ニニ=-　　ヽ　　　　　/:.:.:.:.:.:.:|:.:.:|:.:.: |′
. 　　　　 /ノΛ/ニ二二二个ｰｧ　　　.::〈]:.:.:.:.:.:.|:.:.:|:.:Ν
.　　　　　　　〈ﾆニ二二二二/[／[／[／＼:. : |:.:.:|:. |
　　　　　　　　丿ﾆ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ二二二二＼八人 |

42 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:25:08 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ　　　　 ,...イ
　　　　　　　　　　　　　 ,ィ　／/_,..｡ｒ:≦::::／＿
　　　　　　　　　　　　　　　　／/／:::::´::::::::::::::::::´:＜´
　　　　　　　　　　　ﾙ':::::´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀≧:..､
　　　　　　　　　　　 {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::へ、
　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::､::`メ､
　　　　　　　　　　 /;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　 l'/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽー
.　　　　　　　　　　 {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
　　　　　　　　　　 l/ ､:::::::::::::,ヽ:ﾊ:::ヽ:::::ヽ::::ｌ';::ﾊ::::::::::从:}
　　　　　　　　　　　　ｌ　l;:::ヽ;l,ィ==ミｘ::ﾊ:::::ハ;ィ=くｌ:::::;:::::} l'　　　　　　　　それってさ、えっと、
　　　　　　　　　　　　,ィ＼ヽヽヽ込ﾂ｀''｀`ノ ,ｨ乏ｿﾉl'ｌ;:ﾊ:/
　　　　　　　 ,.イ//∧'/ヽ､` { ｀¨¨´　ﾉ￣｀｀¨´ /ﾉ'　'　　　　　　　　　　いわゆる精神感応の一種なんじゃないかなあ。
　　　　　　　,.イ//////∧/∧.､ゝ　-　´ 　', ゝ --'≧x､_
　　　　　,.イ//////////∧'/,＼､　　、＿_　　／////八
　　 , イ//////////////,ﾍ'//,＼､　　　／Ⅴ/////八
.　　//////＞､//////////へ//ハ ` --, ///ﾉ////////`l
.　./////////∧'///////////ヽ／　　///',´/////////∧

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沖元が口を挟んだ。

酔って真っ赤になった顔で、ずり落ちてくる重そうな眼鏡を押し上げ、

　　　　　　　　　　 -＜,..-- 　　　`￣ミ.
　　　　　　　　　　 /￣　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　./, 　　　　　ヽ. 　　　'!`
　　　　　　　　　 /ｨ' / !.,　! ,ヽ_＼ヽ.ヽ, 　　 i
　　　　　　　　　　.! .! !| '! .ヽヽヽ.,__,,.＼　r.、,|　　　　　　　　僕さ、何かで読んだことがあるよ。
　　　　　　　　　　.'!|, .!ヽ__.,_＼<',r<''''ｱ〉!(　V
　　　　　　　　　　ヽ'.,ノ)-.``'-.i ''　'-''! 'f_.ｨ'　　　　　　　同じような事件のこと。
　　　　　　　　　　 .!"r",>='"ｨ'ヽ.,__,ノ　/.|,!
　　　　　　　　　　,ノ .''".-'"-....,--‐'　／　||
　　　　　　. 　　　／　　`"三''"i'`'--r"---''''`!
　　　　　　　,r-('く.,_ 　　,r'――'".,!|￣!........--''"~'-.,,_
　　　　　　.／" 　`'-.''yi" 　　　'-// 　　 _,,..--'"''"`'''''-_
　　　　　／　　　　,/.| 　　　　// 　　　　　　　./　.ヽ.
　　　　 ./ 　　　　／ / 　　　 .ﾚ' 　　　　　. 　　/ 　.ヽ＼
　　　 .／　　　　／　| 　　　 .(.) 　　　　　　 .`〈　　ヽ '!
　　　／　　　　／　　| 　　　　　　　　　　　.八　　　ヽ!
　　,／　　　　 / 　　 ,! 　　　　 ! 　　　　　　 .i 　`, 　　　`'!
　r" 　　　　 /　,.r ,-"| 　　　 ,.,　! 　　　　　　.,.r7'!,　`., 　　　＼
　! 　　　　／,／-'"　.! 　　　 `'　!, 　 .i 　　　 '" /　'.,　.ヽ　　　'!.
｜　　　,ノ.',.-'" 　　 ! 　　　　　.＼　 ! .i 　　　/. 　＼ `. 　　　ヽ
　`-.,_,,.---''" 　　　　| 　　　　　　ヽ. ! .| 　　ノ　　　ヽ. '! 　　　.ヽ
　　　　　　　　　r" 　　 ,., 　　　＼! | 　／　　　　ヽ.! 　　　 `.,
　　　　　　　　 r'7 　　　'-' 　　　　　`く、　　　　　,ゝ,.r＼　　`,
　　　　　　　　λ＼　　　　　　　,.- 　 .| 　　　　,..-' 　　　　　 '!
　　　　　　　　/ .'!　＼　　　 _,,.--'"_,,.r''''"`'.,__,,..-''" 　　　　　　／
　　　　　　　 / 　 ! 　＼,...--'"　,,.-''ノ　　,..--''" 　　　　　　　,／
　　　　　　　 ! 　　'! 　　　 ,r'''",.-'" 　　.λ 　　　　　　_,,..-'''"
　　　　　　　/ 　　ヽ　　(.) " ''" 　　　/.,_'!, 　　__ 　_,.-'''"
　　　　　　　.| 　　　ヽ　.ﾄ, 　　　　 ./ 　 `'!, r,..-'＜'.,
　　　　　.　　/ 　　　.　　ﾄ,`. 　　　 / 　　　`'i 　　　`
　　　　　　 i 　　　　　! '! '! 　　 ./ 　　　　'!
　　　　　　 | 　　　　　|　`.,ヽ　 /　! 　　　　.|

43 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:25:53 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　_,､-―‐---､_＿_
　　　　　　　　,､-‐.'´XxXxXxXxXxX｀ヽ､`ヽ､
.　　　　　,ｨ´xXxXxXxXxXxXxXxXxXxヽ　＼
　　　　　,ｨ´XｘXxXxX_,､-―‐- ､XxXxXxXヽ　　＼
　　　　//XxXxXx,ｨ'´: : : : : : : : : :`ヽxXxXxX､　　　｀ヽ､
　　　 //XxXx,ｨ'´: : : : :: : : :l: : : : : : :ヽxXxXxヽ　　､　_,ゝ
　　　l lXxX,ｨ´: : : : : : : :.l: : |: :|: : : : : : :ヽXxXxヽ .／￣
.　　 i .lxX/: : : : : : : : : : l: :.:l: : l: l: : : : : : :､xXxXi/: i!
　　l .lX/: : : : : : : : : : :/!: :/l: :.|: ﾄ､: : : : : :ヽxXx.l: : ﾍ
　　 l .|/: : : : : :/: : : :/:/: :/:/!:./!:.! i!: : : : : :.lXxX.|: : :ﾍ
.　　l .l: : : : : : /: : : /:/: : /:/.|/_ﾑ!ｭ､!: : : : : lxXxX!: : : ﾍ
　　l　i: : : : : /: : :／:/:.／!/ /f:::::::ﾊﾘl: : : :.:ﾘXxX!l:|: : : :.ﾍ　　　　　　　　　　　精神感応って……テレパシーとか？
　　| ,ｨ: : : :/: :／:／!／ ./ /　乂:::ﾉ'´l: : : /xXxX.l:.|: : : : :.ﾍ
　　'´ i!: :./l／／ﾔ示` /　　　　｀´　/: ／xXxXxl: :|: : : : : :.ﾍ
　　　ﾍ: : :|: : |!､.弋ｼ　　,　　　　 /／ iXxXxX/!:.|: : : : : : : ﾍ
.　　　　ﾍ: :ﾄ､:.|`∧. 　　　, _　　　´　/lxXxXx.i:.l:.:l: : : : : : : : :.:ヽ
.　　　　　ﾍ! `､! 　ヽ､　　｀´　　　／ lXxXxXl: |:.l: : :＼: : : : : : : ヽ
　　　　　 |:.|XxXxXx|: :＞-　　,_,／　 /XxXxX.l: |:l: : : : :.＼: : : : : : : ヽ
　　　　　 |:.|xXxXxX|: : : : : : : __|　　 lxXxXxX/､|!: : : ,､,: : :＼: : : : : : :ヽ
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　　　　　l: ::lXxXx/ﾉ　　　ゞ､〃ij!／xXx／　　　|!`_,ｲ..............}: : : : : : : : : : : :ヽ

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千歳が小首を傾げた。

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iilll:;;;;;:::::::::::;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::`'.-,,_
lllllllllll:::::;;iiilllllll::::::::::::::;;;;::::::::::::::::::::::::::i,
llllllll;;;;;iilllllllllllllllll;;illl::::llll::;;;;:::lll::::::::::::::i
lllllllllllllllllllllllllllllllliillllll::llllll:::lllllllli:::ii::::::'i
lliiillllllllllllllllllllllllllllllllll::lllllllllllllllllll:::lll::::::i,
llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll:::::lllll:::::::i
llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll::;;;;llllll:::::i
lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll_;;;7'''>llll:liilllllll::i::i
lllllllllllllllllllllllllllllllll;ｲ. i´/´;ｲlillillilllllll:/i/　　　　　　　　　ああ、はい。
lllllllllllllllllllllllllll;;ｲl//　ヽi. il/////i／
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／ﾌ／.　　　　　　　　　　　／
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ヽ、　　　　　 /ヽ___／
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沖元は、洲藤と大八木に挟まれた彼女の方に、ちらりと物欲しそうな視線をくれ、

44 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:26:38 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_＿_＿＼::｀::::::....､ヽ:.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀＞:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ::＼
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＿　　　　　　　　　　　 ∠:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　　,
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////////f/´///,::::::::::::::::::::; ´　ヽ:::::::::／／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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/////////∧////∧　　　ヽ　､　ｉ'　　　　､／{:l/`／彡 ´.:::::ノ/::://ノ　　　　　僕が読んだのはね、
//////////∧'////∧　　　`-'　　　　　　 `　¨ /／／:::／ /／/
///////////∧'////∧　　　　l　　　　　　　　　 '´ ／ィ ´　 /´　　　　　　　　　アメリカのどっかの州で誰それが殺されて、
///////////ヽ'//////∧　─‐ヽ　　　　　　　　　　　 {
/////////////////////, 　　　､　　　　 -　､　　　´　　　　　　　　　　　　　別の州にいたその双子の弟だか兄だかが、
'////////////＼//＞　´　　　　　＼　　　　／
////////////////､ｰ'　　　　　　　　　｀　 -　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同じような状態で死んでいたってやつで。
////////////////ﾉ
////////////////,
／//////////////,
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'///////////////　　　　　　　　　　　　　　　　＿_　　　／　　　　　　　　　　　＼
'//////////////　　　　　　　　　　　　／￣￣　　｀`丶　 _　　　　　　　　　　　＼
'/////////////　　　　　　　　　　　／　　　 `＜¨ >､,,_＿ノ===- ､　　　＿　　=＝ｦ
'///////////´　　　　　　　　　　／　　　　　､　｀ヽ_　　　　　　　 /== /　　　　 /
'//////////　　　　　　　　　　／　　　　　　　 `丶 /ｰ)､＿＿　-‐'　　ゝ-----‐"
'/////////　　　　　　　　　／　　　　　　　丶、　 /´
///////ノ　　　　　　　, -'"　　　　　　　　　　｀ヽ〈
'//＞ ´　　　　　　　／　 l　　　　　　　 _..,, ＞　／
'/ノ　　　　　　　　／　　　丶　　　　　　ﾉ　(_,..､-'
'　　　　　　, -'" 　　　　丶　　　／

　　　　　　　　＞-´￣｀ ‐-､
　　　　　　／　　　　　　　　｀Y
　　　　　/:::::::::::::／{:::::∧:::::::::::ヽ:.
　　.　　　ｌ::::::::::::ノ寸::ﾉﾅ弋:::::::::::|
　　　　　 |:li::::ヽ●>　 <●ﾌi:::::::ﾉ　　　　　　　　テレパシーていうのとは、意味合いが違うんじゃないですかぁ
　　　　　 .ﾘヽ::::| 　　､　　 .|)::/
　　　　　　　ヽﾄ､_　‐‐　_,.ｨ':/
　　　　　　　　ﾘ:lハi　.lハl:ﾘ
　 ⊂てヽ　　／　<ﾄ-ｲ> 　ヽ
{三＿ｨ/`,-.´ ／|　|　.|　ｨ　 |
　　　　 `<__／　 |　|￣|　 |　 |

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茜の隣でジュースを飲んでいた麻宮守が云った。

パーティーの中では唯一の未成年である。

十四歳、まだ中学二年の、それにしては小柄であどけなさが残る少年だ。

45 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:27:23 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　- ―― -
　　　　　　　　 ,　´　 _:::::::::::::ﾊ::::::`ヽ、
　　　　　　　,r':::　 , ':::::::::ﾒ::::::ヽ::::::::::::::ヽ
　　　　　　 /:::::::/:::/´::::/:::::::::::;::::::、:::::::::',
.　　　　 i::::::ｲ:::::::::::::::::::;ｨ::::/l::;::::::ヽ::::::::!
　　　　　　ｌ:::::ｌ:::/:::/::;／　l::/ .l;ハ:::::::l:::::::l
　　　　　　i::::::::,':::/::/‐-　 l'　-― l;::::i:::::::!
　　　　　人::::;:l::::::/t:ﾗ､　　ィ:ラﾌl::;i::::::,'　　　　　　　　　　それって、単なる偶然じゃあ。
.　　　　　　入::::::ｌ　　　　,　　　''',!ﾉ:::; '
　　　　　　　　ヾ::::l　　　_ _　　 , ﾚ;／
　　　　　　　　ヽ|`r 、_　, イ" ´
　　　　　　　　　　 ,-l 　　　　ト､
　　　　　　　　. -‐く　ゝ　　_ ,ｿ　ゝ-
　　　　　　,ｨ'´.　　ﾍ　 | ￣ |　,/　　　｀ヽ
　　　　/ 　{　ヽ　　ﾍ |　　| /　　　ﾉ　}　ﾍ

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麻宮が云いかけるのを、沖元はむっとしたように遮った。

　　　　　　　　　　／/
　　　 i　　 /　／:;:;:;/　, -
　　　ﾊ　 //:;':;:;:;:;/／:;:;/二＝一
　　 i:;:;:;V:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;￣二=
　　 |:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;三二＼
ヽ　 |:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ーヽ
　ヽ弋:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼＼
　　小:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ:;:;ヽ:;:;ヽ:;:;ヽヽトー-　＿
　 i　ﾊ:;:;:;:;i:;:;:;i:;:;:;:;ヽヽ:;:;:;:;>弋:;:;ヽヽｨ-､　　　　￣　ー-　、　　　　　　　　　　　　　　双子で精神が通じていたから、
　 | ハ:;:;:;i:;:;:;:;ハゝ､ヽヽソヵかゝヽﾄi ﾉ　　　　　　　　　　　＼
　 |/　i:;:;i:;:;:;ハ_＼ヽ､ヽゞ-´　　ﾄｿ::::::::::::::::::::::...........　　　　　＼　　　　　　　　　　　肉体も同じように変化したんだ。
　　　　 i 个::::､丶 i　　　　　　丿ﾉ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::........　　　＼
　　　　　　|:::::::ヽ､｀　＿__　　/ ﾉ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....　　　＼
　　　　　 |:::::::::::::::ヽ､　　ノ　 >::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... 　　＼
　　　　 |::::::::::::::::::::::￣::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... 　　＼

46 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:28:08 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　 - ――― -
　　　　　　　　　ィ´ .:::,::::::::,ｨ::::::::::::、:::`ヽ、
　　　　　　　／　..::::::::::／:;::: 、::::::::::::、::::::ヽ
　　　　　　　/　 ..::::::::::::′∧::::::､:::::::::::::ヽ、:::::' ,
　　　　　 ′/:::::::::::/:::::::::; ﾍ'.::ﾄ ::::::::;;:::::ヽ:::::::',
　　　　　 , ..〃::::::::/::::::／　　}::|　ヽ;ハ ::::::';::::::ｌ
.　　　　　　!:::′::::::,':::; "　　　ﾚ′　　　i::::::::|::::::|
.　　　　 |:::ｌ:::::::::/:/―‐-.　　　 -――j::::::l::::::l
.　　　　 |:::ｌ:::::::::;':l〒ﾞt､　　　 ,ｨｔ"ﾃ７|::::ﾚ::::l
　　　　　ｌ:::l:::ヽ/::ｌ、v ﾉ　　　　　、Ｖノ .l::::l:::::ﾘ　　　　　　けど……。
　　　　　　ﾍ::::::ヾ::::l ,,,, 　　　,　　　　,,,ﾉ::;':::;/
　　　　　　　ヾ:::::::､:l　　　　　　　　　　 /::::／
　　　　　　ヽ、::ﾍ＼　　(⌒ヽ　ｨ'/／
　　　　　　　　　　`ヽ| . ヽ､　 __ ,　´｜
　　　　　　　　　　＿＿｜　　　ﾍ￣￣７
　　　　　　　　ヽ　ﾌ　　　　　　|　　　L＿＿
　　　　　　　　　　ｌ　ヽ　　　　 ,|　　 .|　　　　￣ヽ
　　　　　　＿ _ ,ｨ'| 　　ﾄ＝===ィ.|　　 /　　　　　　　ｌ
　　　／￣　　　　 .＼　 .| 　　　 |　　/
　　　 /　　　　　　　　　ヽ､|　　　　 | ,ｒ´

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　馬鹿げてるなあ。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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洲藤が肩をすくめて云った。

47 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:28:54 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
　　.　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼　　　　　　　　　　　　そもそも、テレパシーなんてものの存在自体、
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼　　　　　　　　僕は絶対に認めないねえ。
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

　　　　　　　_ 　 -─- 　 _
　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::ヽ--　_
　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
　　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::;-､::::::::::::::::::::::::＼
　　 /::::::,､:::::::::::::::::::::::::／　　"'''- ．:::::::::::::::i
　　.l:::／　"'''- __　- '"　　　　　　ノ:::::::::::::::::＼
　　〉l　　　　　　　　　　　　　　　丶:::::::::::::::::::::ヽ
　　l:::l　　　　　　　　　　_　--､　　 <:::::::::::::::::::::::l
　　l:::lr─-､ ,　　　l, -'"::::::; -､ヽ　　丶::::::::::::::::::l
　　ヽl; - ､:::::ヽ　　l{, -'"示 ‐　　　　 l:::::::l,-､:/
　　　l　 ¨巨ゝ〉　　　､＿ノ　　　　 l:::::::lγヽ　　　　　　　　いや、そう一概に馬鹿げたこととも云えんと、俺は思うが。
　　　l　ゝ--' ｲ　　　　　　　　　　　 l　l:::::::lヽ l |
　　　l　　　 j　　　　　　　　　　　ﾉノ::::::::} ﾉ /
　　　入　　　丶　 ‐- 〉　　　　 'ζ:::::::::::） /
　　　ｌ:::ﾄ　　/￣￣￣￣￣＼　　　(＿ _／'"::ゝ
　　 /::::l　　l::::::r───-､::::::l　　　　　 l/:::::::::::ﾉ
　　￣l　　l::::/`ー── ´＼j　　　　　ﾉヽ-‐'"
　　　　丶　 ~ ､　　　　　　　　　　　イ　 l-､
　　　　　　ヽ､　ヽ　　　　　＜　　 , -'"　l
　　　　 .／l　｀　＿＿　＜　_,,..-‐''　　　　丶

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しかつめらしい声で云ったのは、磯部秀二である。

八人の中では最年長の三十八歳。

一応このパーティーのリーダーということになっている。

48 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:29:39 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　r':::::::::::::::::::::::::::'､
　　　　　　　　　ノ::::::／~ゝ─‐'^ヽ',
　　　　　　　 !::::::::ｲ r─､ヽ , - l/　　　　　　　　　　例えばだな、双子は双子でも、
　　　　　　　 VY::i'　Ｔ・〉　ｌﾞ・ﾃl
　　　　　　　　　lvj::ゝ,　　' ､_ j｀　ﾉ　　　　　　　　　ほら、シャム双生児っていうのがあるだろ。
　　　　　　　　　(:ゝ::::) r/￣￣ヽｲ〉
　　　　　　　　　/Y ゝ､ゝ'￣￣~ﾉ
　　　　　　_ -v〈　｀丶丶＿ィヽ
　　　, -'"¨ : : ＼＼　　 r 1 /j〈､ゝ─､
　　/ : : : : : : : : 丶＼_ノ､ゝ∨ﾉヽl: : : : ヽ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , 　-------　　、
　　　　　　　　　　　　　　　　, ＜´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀＞､
　　　　　　　　　　　　　　, ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　　　 , '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　 , '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀､
　　　　　　　　　　, '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀,
　　　　　　　　　 .,´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,＞ｧ:::::::::ﾉi::::::::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　 i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,＞´／:::::::／ .{:::::::::::::::::::::::::::::::::i
　　　　　　　 i:::::::::::::::::::::::::::::::::／｀∨:::::::::／　　{::/{::::::::::::::::::::::::::::}
　　　　　　　 {::;ｨ:::::::::::::::::::::::::/　｀,./:::/i:,'＜´￣.{:トi::::::::::::::::::::::::::::::}
　　　　　　　 i:i i:::::::::::::::::::::::::ﾐﾐト､ｲ::/ iﾉ　 ,ｨ"´ {:{　{:::::::::::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　ﾘ.i::ｲ::::::::::::::::,勹;;ﾟノ .リ　　　,,ｨ=F＝〒ｦ::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　.i::｛::::::::::::::::'､__　　　　　　　　 .'勹ﾟノﾘi::::::::/i.}:::::/　　　　　　　　　　　シャム双生児？
　　　　　　　　　　 l:ii::::::::::::::,'｀￣　　　　　　　　ヾ===ｲ´/:::./ .}.}::ﾉ
　　　　　　　　　　ﾘ i::::::::::::i　　　　 λ､　　　　　　　　./:::/l_　}.}"
　　　　　　　　　　　　i::::::::::i　　　　　　　　　　　　　　ノ∠-´　y'
　　　　　　　　　　 ',::::::::|ゝ　　　　ャｭ　　　　　-´＜､＞ ´
　　　　　　　　　　,ｨ-─',:::::l-.｀､　　　　　　　　　 , ＞::::::ﾉ
　　　　　　　 /　　　　' ;| /　 /＞､＿,〟＜ ´ ,　イ:::f｀ｬ─--- 、
　　　　　　　　,ｲ　　　　　　/　 /　　｀､ :: ::　, ＜＞´.'､ }　ヽ　　　　｀ヽ､
　　　　　　　 / .',　　　　　/, ﾍ i､　　　iゞ二´＞´　　　　｝　ヽ　　　　　｀ﾄ､
　　　　　　　.{　　　　i´　　　　 { {　　｀、　　　　 ,／　　/}´＼|　　　　､.,´　｀､
　　　　　　　{　　　　.',　　　　　{..｀、　　｀i　　　i　　＿ノ }　　　　　　　}　　　i
　　　　　　　l　　　　 .',　　　　 .l　　｀Zi＿＿＿＿λ´　 }　　　　　　　}　　　入

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麻宮少年が首を傾げた。

49 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:30:24 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::`丶､
　　　　　　　　　_／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　r'::::;_:::::::::::::::::::::_,- ､:::::::::::::::::ゝ､　　　　　　　最近は二重体児っていう名称の方が使われてるが、
　　　　　　　　',::/　｀`ー─'"　　　<:::::::::::::::::::ｌ
　　　　　　　　(::l　　　　　　　＿　ゝ:::::::ｌ:::::::j　　　　　　　昔は俗にそう呼んだ。
　　　　　　　　 Y<￣ヽ　､<￣＿__>　`::::::l;-v'
　　　　　　　　　', 匸・〉　く l__・ﾉ　　 l:::::l＾ l 　　　　　身体のどこかが癒着した状態で、
　　　　　　　　　j　　 '"　　　　　　　　/:::::) /
　　　　　　　　　ﾉ、　ゝ　-`　　　　 /:::::::)ｲ　　　　　　あるいは身体の一部分を共有した状態で生まれた双子のことだ。
　　　　　　　　　ゝｌ　r￣￣￣ヽ　　 (_ィ:::ノ
　　　　　　　　　　', Ｖ~￣￣`ｰ'　　　ﾉ~ﾄ､
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　／　 У l＿
　　　　　　　　　, -'" ヽ＿＿_　 ´ _ -‐　　 'v ヽ
　　　　　　, -'''/: : ;'　ヽ　　r─　´　　　　 /: : : :＼
　　　／/: : : : : : :l 　 /l_　_j　ヽ　　　／: : : : : : : : ゝ- ､
　 , -'ｌ: : : : : : : l: : l　/､__V　 _　-､　 , -'": : : : : : : : : : : : : : :l
　'　　ｌ: : : : : : : l: : l/　 r‐'￣　　　>': : : : : : : : : : : : : : : , -'"
/　　ハ: : : : : : :l: : l　　l　　　, -'": : : : : : : : : : : : : :, -'"　, -''

　　　　　　　　　　　　　　　, -=＝＝=‐- ､
　　　　　　　　　　　 _,,-''"´::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　_'':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀-､
　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　／::::::::::::::::::｀:::::::/::::::::::::::::::::::ヽ::::ヽ::::::::::∨
　　　　　　/:::::/::::::::／:::::::::::ｨ:::::::::/:::::::!:::::::::::＼:::::::::::::∨
　　　　　,:::::::::/:::::,:::::::::::::／/::::::::::::::::::´:::::::::}:::::::::::ヽ:::::::::,
　　　　　i:::::::/::::::::::::::::::::::::/::::／:／::::':::::::::::,::::::::::::::::::::,::::
　　　　　 :::::,':::::/:::::::::::/::::/／::ｲ::::/:::::::::::∧:::::i}::::,::::',::}::::}
　　　　　 !:::::::::':::::::::::/::::/::／// /:::::∠i/＿}::::/i:::::',/::'::/
　　　　　',:::::::':::::::::/::::/:::::/ ｨク:::::,'　〃,ﾆﾆ}/_}:::::::}/ /　　　　　　　　　　はい。
　　　　　 ∧::::i:::::::/::::/::::/ ｨ∨:::::/　´,ｨ::i;;;;i::i ｿ:::::::,::::/
　　　　　　　ゝi:::::'::::/ , '/::ﾘ/:::::/ 　　-ゝ='-' 　}i ｨ::::/　　　　　　　　　　　　　それが？
　　　　　　　{｀i:::::|/::::{::/￣/::/　　　　　　　　　ｿﾘ{ｲ
　　　　　　　ヾ|::::/i:::::i'　　/,/　　　 {､　　　　　{ /
　　　　　　　　iﾊ∧:::{.　 /'　　　_-/　　　　　/´
　　　　　　　　 !∧ヾヽ､　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　 {　!｀ヾz､､　　　-......-　　　 ,
　　　　　　　　　　　　／　ﾄ　　　　　　　／ i
　　　　　　　　　　　　}　　＼_＞。　　,:ｨ　　 {
　　　　　＿＿＿　ﾉ　　　　　　　￣　　　　　ヽ､
　　　／´　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　>　　＿＿＿
　　/ 　　　　　　∧　　　　　　　　　　　　　　,／　　　　　　　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　',
　　　　　　　 /　　　｀　　　　　　　 _ ／　　　　/　　　　　　　　　　　i
　　　　　　　/´　　　　　　　　　　　　　　　　　,　　　　　　　　　　　　i
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　　　　　　 /

50 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:31:09 ID:976fb80c

　　　　　　　_ 　 -─- 　 _
　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::ヽ--　_
　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
　　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::;-､::::::::::::::::::::::::＼
　　 /::::::,､:::::::::::::::::::::::::／　　"'''- ．:::::::::::::::i
　　.l:::／　"'''- __　- '"　　　　　　ノ:::::::::::::::::＼
　　〉l　　　　　　　　　　　　　　　丶:::::::::::::::::::::ヽ
　　l:::l　　　　　　　　　　_　--､　　 <:::::::::::::::::::::::l　　　　トッド・プラウニングの『フリークス』っていう映画、知ってるかな。
　　l:::lr─-､ ,　　　l, -'"::::::; -､ヽ　　丶::::::::::::::::::l
　　ヽl; - ､:::::ヽ　　l{, -'"示 ‐　　　　 l:::::::l,-､:/　　　　六十年も前の、これは大変な傑作なんだが、
　　　l　 ¨巨ゝ〉　　　､＿ノ　　　　 l:::::::lγヽ
　　　l　ゝ--' ｲ　　　　　　　　　　　 l　l:::::::lヽ l |　　　　その登場人物の一人──いや、二人に、シャム双生児の姉妹がいてね、
　　　l　　　 j　　　　　　　　　　　ﾉノ::::::::} ﾉ /
　　　入　　　丶　 ‐- 〉　　　　 'ζ:::::::::::） / 　　　彼女たちを巡るこんなエピソードがあった。
　　　ｌ:::ﾄ　　/￣￣￣￣￣＼　　　(＿ _／'"::ゝ
　　 /::::l　　l::::::r───-､::::::l　　　　　 l/:::::::::::ﾉ
　　￣l　　l::::/`ー── ´＼j　　　　　ﾉヽ-‐'"
　　　　丶　 ~ ､　　　　　　　　　　　イ　 l-､
　　　　　　ヽ､　ヽ　　　　　＜　　 , -'"　l
　　　　 .／l　｀　＿＿　＜　_,,..-‐''　　　　丶

　　　　　　　　　　　. :´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`
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　　　　　　　　 {::::::::::::::::::::::厂￣　　　￣ミ、::::::::::::::::::::､
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　　　　　{:::/＾¨¨¨¨´/／::／　　　　　　　`:,:::::::::::::::::::::::::.　　　　　　　　片方がある男に求婚されるんだな。
　　　　　　 /::}　　　　〈 {:／x===ミ　　　　　 ‘,:::::::{x=ミ:::::::|
　　　　　 {:::ﾑ-‐―{　　　 {　苡　ﾉ　　　　 }::::::V⌒ ＼:|　　　　　　　　彼女は喜んでそれを承諾する。
　　　　　　ﾏ{ , -‐￢、　　　_ー‐ ´ 　　　 } く::::::::::∨ 　 }:!
　　　　　　　∨Lx=ミ }　　　　｀　　　　　　　'　＞::::::::〉j　,八　　　　　　　　　すると、腰の部分でくっついたもう片方も、
　　　　　　　〉 ′　 {　　 _　’　　　 __　　　く＿＿彡'　/:::::ヽ
　　　　　　 {　　　　`　　 -―==ミ:.　}　　　　　　 _(__ ｲ::::::::〈　　　　　　　　　何とも云えず幸せそうな表情をしてね。
　　　　　　人　　　／:::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　 }　　ゝ:::::::::}
　　　　　　　 ∧　「{::::::::,.，　´￣￣￣　　　　　　ﾉ/　廴:::::ﾉ
　　　　　　　 _j:∧ 　V´　　　　　　　　　　／/　　　|¨´
　　　　　　＼:∧　　‘,　　　　　　　　　／ .:'　　　 |
　　　　　　　　　　　、　 ‘,　　　　　　　／　　　　　-‐￢ﾐ､_
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　 '"　,.，　´　　　　〉 ≧s.，
　　　　　　　　　　　　　_〕ト､___ .　　 '"r　'"　　　　　　／　　　|　≧s.，
　　　　　　　　　　　　 |　ト､　　　　「‘，　　　　　／　　　 :|　　　　≧s.，
　　　　　　　　　　　　__|　| ∧　　　　」　‘，　　　　／　　　　　 :|　　　　　　　　≧s.，
　　　　　　　　 .ィ／ }　|　廴　「￣　　　}　　.， ´〃　　　　　　　|　　　　　　　　　　　ヽ
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　　　 .， ´　／　　 / ∧!　　　| |　　　　／　　 / ∧　　　　　 :|　　　　　　　　　　　　　}

51 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:31:54 ID:976fb80c

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　　　 |: |: : |: : : :丁 {: : : :| ゝ斗ｧ-――|- }: : : /: :/: : : : : |
　　　 |: |: : |: : : :∧ハ : : {　＼{　＼ : l: ﾘ: : /: :/: : : : : : !
　　　 |: |: : |: : : -ィ圷ﾐV∧　ィ圷云ミ、_':/l/: ∧{: |: : : :/　　　　　　　その時二人は、身体だけじゃなくて、
　　　 {: !: : |: : : : | ゞ少 ∨ﾍ´ 辷少ノ/: : : :∠少l :∨ /
　　　 ∨ヽ: : : : : :ゝ　　 } ヽ＞　　　／: : :／rイ : | : ∨　　　　　　　　心も共有していた──というわけですかぁ。
. 　　　　ヽ: : : 八　　.ﾉ　　　　ﾌ: :／　{/ {: : {∧ﾊ
　　　　　　 }从ゞ: ヽ　　　　　　 /イ　＿└‐┐ !　ヽ{
　　　　　　 |:∧: : :l　ト　tっ＿_　 -＜　　　　　∨
　　　　　　 |:}　 i: :|　}.　＼_} 　／￣￣￣￣ヽヽ
　　　　　　ｿ..　|: :| ﾉ　へ | ／　　　　　　　　 ∨＼
　　　　　　　 |: :}´￣　　'ﾘ　　　　　　　　　 ∨〈
　　　　　　　 |: ﾘ　　　　 }　　　　　　　　　 | . ∨
　　　　　　　 |/ 　　　 ∧　　　　　　　　　　　 } 　 ∨
　　　　　　　　 / 　　　 /　 }　　　　　　　　 /＼　}

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.
　　　　　　　　　　　　　　　 j: : :／￣＼: : : : : ／￣＼: : :人
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : 〉　　、￣￣,: 　　　〈: : : : :}
　　　　　　　　　　　　　　　 {.: : : i　　ヘ、 :,　 / 　へ　 |: : : ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨: :.| 〈_:_:_:_＼}　{／_:_:_:_〉 |: ﾚﾍ　　　　　　　　　ああ。素直にそう納得できたな、あれは。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|│:|　,,}_‘__〉ﾉ　ヾ〈_‘__{,,　|: |　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ト{:〈　 ´ー　′ i 　ー｀　〉:ﾌ |　　　　　　　　　だから……。
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨: ﾄ　　　 L.　| __j 　　ｲ: :ﾌ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　〈:_:_|　　／￣｀¨´￣＼　　|:.厶
　　　　　　　　　　　　　　　　ｰ|　　レr―――‐ﾍl 　 |⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ　　 └======┘　ｲ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「＼　＼　　　　 / ／│.１
　　　　　　　　　　　　　　　ィニ|......＞‐┐ー―┌‐＜...... |ヽ
　　　　　　　＿＿　--==ﾆﾆ/ﾆﾆニ|......... . /|__　　　|...ヽ......... |二＼ﾆ==--　＿＿
　　　 -=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/=ﾆﾆニﾄ ........｢....∂}　／........｝...イ|=ﾆﾆ∧ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ==-
　　/ﾆﾆ∧ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆニ二| 　｀¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨´　 |ﾆﾆ二∧ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆニi
　　|二二∧ﾆ二二二二/=ﾆﾆニ二|ー‐t―--　　　 --┬― |=ﾆﾆニ∧ﾆﾆﾆﾆﾆニ/ﾆニ二|

52 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:32:39 ID:976fb80c

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃　　　　　　　　でもねえ、磯部先生。
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

洲藤がつっかかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',
　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､　　　　　　　シャム双生児の場合は、少なくとも肉体が
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,　　　　　何らかの形でつながってるわけでしょ。
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i　　　　　　　だったらまあ、分かるような気もするけど。
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

53 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:33:24 ID:976fb80c

　　　　／:::::::::::::::::::::::::::`丶､
　　　_／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　r'::::;_:::::::::::::::::::::_,- ､:::::::::::::::::ゝ､
　　',::/　｀`ー─'"　　　<:::::::::::::::::::ｌ　　　　　　　もともと一つの命として生まれてくるはずだったものが
　　(::l　　　　　　　＿　ゝ:::::::ｌ:::::::j
　　 Y<￣ヽ　､<￣＿__>　`::::::l;-v'　　　　　　　　　　二つに分かれたという点じゃ、
　　　', 匸・〉　く l__・ﾉ　　 l:::::l＾ l
　　　j　　 '"　　　　　　　　/:::::) /　　　　　　　　　　　普通の一卵性双生児と一緒さ。
　　　ﾉ、　ゝ　-`　　　　 /:::::::)ｲ
　　　ゝｌ　r￣￣￣ヽ　　 (_ィ:::ノ　　　　　　　　　　　それを更に敷衍して考えるとだな……。
　　　　', Ｖ~￣￣`ｰ'　　　ﾉ~ﾄ､
　　　　ヽ　　　　　　　／　 У l＿
　　　, -'" ヽ＿＿_　 ´ _ -‐　　 'v ヽ
, -'''/: : ;'　ヽ　　r─　´　　　　 /: : : :＼

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
　　.　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i　　　　　　　　　　　　ちょっと非科学的ですねえ。
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

54 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:34:09 ID:976fb80c

　　　　　　　_ 　 -─- 　 _
　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::ヽ--　_
　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
　　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::;-､::::::::::::::::::::::::＼
　　 /::::::,､:::::::::::::::::::::::::／　　"'''- ．:::::::::::::::i
　　.l:::／　"'''- __　- '"　　　　　　ノ:::::::::::::::::＼
　　〉l　　　　　　　　　　　　　　　丶:::::::::::::::::::::ヽ
　　l:::l　　　　　　　　　　_　--､　　 <:::::::::::::::::::::::l
　　l:::lr─-､ ,　　　l, -'"::::::; -､ヽ　　丶::::::::::::::::::l
　　ヽl; - ､:::::ヽ　　l{, -'"示 ‐　　　　 l:::::::l,-､:/　　　　　　　　どうかな。
　　　l　 ¨巨ゝ〉　　　､＿ノ　　　　 l:::::::lγヽ
　　　l　ゝ--' ｲ　　　　　　　　　　　 l　l:::::::lヽ l |
　　　l　　　 j　　　　　　　　　　　ﾉノ::::::::} ﾉ /
　　　入　　　丶　 ‐- 〉　　　　 'ζ:::::::::::） /
　　　ｌ:::ﾄ　　/￣￣￣￣￣＼　　　(＿ _／'"::ゝ
　　 /::::l　　l::::::r───-､::::::l　　　　　 l/:::::::::::ﾉ
　　￣l　　l::::/`ー── ´＼j　　　　　ﾉヽ-‐'"
　　　　丶　 ~ ､　　　　　　　　　　　イ　 l-､
　　　　　　ヽ､　ヽ　　　　　＜　　 , -'"　l
　　　　 .／l　｀　＿＿　＜　_,,..-‐''　　　　丶

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',
　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､　　　　　　　　　先生は、超能力肯定論者ですか。
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

55 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:34:54 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　. :´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`
　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::＿::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　 {::::::::::::::::::::::厂￣　　　￣ミ、::::::::::::::::::::､
　　　　　　　／:::::::::::::::::／　. ::⌒＞　　＜:::::::::::::::::::::::＼
　　　　　{:::/＾¨¨¨¨´/／::／　　　　　　　`:,:::::::::::::::::::::::::.
　　　　　　 /::}　　　　〈 {:／x===ミ　　　　　 ‘,:::::::{x=ミ:::::::|
　　　　　 {:::ﾑ-‐―{　　　 {　苡　ﾉ　　　　 }::::::V⌒ ＼:|　　　　　　　世の中には、俺たちの科学じゃあ割り切れんことが
　　　　　　ﾏ{ , -‐￢、　　　_ー‐ ´ 　　　 } く::::::::::∨ 　 }:!
　　　　　　　∨Lx=ミ }　　　　｀　　　　　　　'　＞::::::::〉j　,八　　　　　　　　わんさとあるもんだ。
　　　　　　　〉 ′　 {　　 _　’　　　 __　　　く＿＿彡'　/:::::ヽ
　　　　　　 {　　　　`　　 -―==ミ:.　}　　　　　　 _(__ ｲ::::::::〈
　　　　　　人　　　／:::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　 }　　ゝ:::::::::}
　　　　　　　 ∧　「{::::::::,.，　´￣￣￣　　　　　　ﾉ/　廴:::::ﾉ
　　　　　　　 _j:∧ 　V´　　　　　　　　　　／/　　　|¨´
　　　　　　＼:∧　　‘,　　　　　　　　　／ .:'　　　 |
　　　　　　　　　　　、　 ‘,　　　　　　　／　　　　　-‐￢ﾐ､_
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　 '"　,.，　´　　　　〉 ≧s.，
　　　　　　　　　　　　　_〕ト､___ .　　 '"r　'"　　　　　　／　　　|　≧s.，
　　　　　　　　　　　　 |　ト､　　　　「‘，　　　　　／　　　 :|　　　　≧s.，
　　　　　　　　　　　　__|　| ∧　　　　」　‘，　　　　／　　　　　 :|　　　　　　　　≧s.，
　　　　　　　　 .ィ／ }　|　廴　「￣　　　}　　.， ´〃　　　　　　　|　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 ´／　 ∧ |　 (） | | 　　　 } ／　　/{　　　　　　　 |
　　　 .， ´　／　　 / ∧!　　　| |　　　　／　　 / ∧　　　　　 :|　　　　　　　　　　　　　}

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃　　　　　　　　ふーん。
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{　　　　　　　　　　高校の理科の先生とは思えない発言ですねえ。
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

56 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:35:39 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　 _ _＿＿＿ _
　　　　　　　　　　　　, .: ´: : : :: : : : : : : ｀丶､
　　　　　　　　　 , .::´: : : : : : : : : : : :: : : : : : :.｀ヽ
　　　　　　／. .: : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : :.＼
　　　　　/　 . . :. :. :. : .: .: : : : : : : : : : : : : : : : : :. ヽ
　　　　　　/　. . : . : : : .: : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : : |
　　　　 / . . : . : : : : :/: : : : : l: :.:.l: : : : |: : : : : : : :.:.:.|
　　　　　′.:.:.l: : l.:.:.j.:/.:..ハ:.:.:.l.:.:.:.l.:.:.:.: :|: : : : :i: : : : :|
　　　　　|.:l.:.:.:|.:.:.|;.ｨ:十ｲ　 ',.:.:L.:_:ﾄ､.:.: :|: : : : :|: : :.:.:.|
　　　　　|.:l.:.:.:|.:.:.|Vl/ l/　　　V　ヽ|　＼:|: : : : :|: : :.:.:.|
　　　　　|.:l.:.:.:|.:.:.|.〈　　 _　　　　 __　　　1l: : : :.l: : :. : |　　　　　　　　洲藤君だって、さっき幽霊の話、
　　　　　|∧ Ⅵ.:.:.l.:ﾊ -=＝　　　＝=-　l: : : /.: : : :.:|
　　　　　　 L.:⊥ハ　　　　　　　　　　ﾘ: :_/i.:.:.:.:. . |　　　　　　　　真面目にしてたじゃないの。
　　　　　　　　　　 i: :ﾊ　　　　　　　　 ,.ｲ:.:.:.l:|:.:.:.:.:.: |
　　　　　　　　　　 |: i : :.＞'⌒ヽ､ _ , イ／＼.:ﾘ.:.:.:.:.:. |
　　　　　　　　　　 |: l.／　　　　＼／　　　＼.:.:.:. : |
　　　　　　　　　ノレ'　　　　　　　　｀丶､　 / ＼.:. :|
　　　　　　　　 /.:V　　　 /　　　　　　　　 /l/　／:.＼!
　　　　　　　/.:./　　. :/: .　　　　　　　//／.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　 /.:./　　. :/: : :　　　　　　　//.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
　　　　　　 /／　 . : :/: : : : : . 　　　 //.:::::::::::::::::::::::::::::::::l
　　　　　〃　　. : :/: : : :: : : : .　　　 l/.::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　〃　 . : :./: : : : : : : : : : .　　/.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

磯部夫人が夫の助っ人に出た。

すると洲藤は、おやおや、と云うように大きく両腕を広げて、

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　　　あれはあれですよ。
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　　　よくあるオハナシじゃないですか。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |　　　　　　　　　　僕はこれでも、根っからの現実主義者でね。
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

57 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:36:24 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　_,. -ｧ――‐-- ､_
　　　　　　　　　　　　　　　／　ノ*　, - '^⌒"´｀丶、
　　　　　　　　　　　　　　／　ノ　 r'´　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　/　　ﾉ * ﾉ　　／　　　,　　､　ヽ
　　　　　　　　　　 /　　 l　　l　　//　 ,　／,　　jl i 　',
　　　　　　　　　　　 /　､_ l　　 l l　l/＿/_,ｨ//　__ﾑ! l l　l
　　　　　　　　　　　￣|｀lヽj * 〈 l ,lｨ'_.ノ'´ﾉｨ'　,ｨﾘ　l,'　l　l
　　　　　　　　　　　　 ,l　l　l　　{ 'l下T::::T' /／ﾅ!;Tﾘ　lj　l　　　　　　　　何だ。
　　　　　　　　　　　　 l　l　 '､　 }､' ﾄ｡'ー'　´　,　'ｰｲ /ﾘリ
　　　　　　　　　　　 l　l　　ヽ* '､ヽ',""　　　　"ﾂﾉノ　　　　　　　　　　さっきの、作り話？
　　　　　　　　　　　　l　l　l　　{　ヾ>､　　　‐_,.ィ"l´
　　　　　　　　　　　 l　l　l　　入　 l^ヽミｴ二､ l *l
　　　　　　　　　　　 ,'　,' / ,イ rt, *'､, -‐ﾛ‐-ﾐt　 l
　　　　　　　　　　　,'　,' l ｲ　　 (l　ヽ／||ヽ. ﾊ　 l
　　　　　　　　　　 ,'　,'　K　　　　 l　　',　|l|　 (lﾍ) l
　　　　　　　　　　/ /　,ハ､、　　　l *　l, |ll|　 (l '､ l
　　　　　　　　　 / /l　/ ﾉ　　　　　l　　l |{l}|　 (lてy
　　　　　　　　 / / l / くｰ- ､　､__,j､＿V!l | 　{l (ﾍ
　　　　　　　　 / / / ／７､　/ ,rへ!ﾉ　　j} {l__,､j トl
　　　　　　　 / /　く__/| |`´{ト､　〉三ﾐ彡fri～l^l '、
　　　　　　　,/ /　 /　　,| ,|　{l）ヾ'､三三ミYﾊ,.」}､'､ヽ
　　　 ,. --イ /　 /　　 /　'､ {l)　　入_　ﾞｰ'^ｰ'｀丶ﾐヾ､
　　 ,'´､　 / /　 /　　　l　　ﾉ人　ﾉイム、　　丶、　ヽ`ﾍー- ､
　　 l　ヽ/ /　 /　　　 l　／　{l｀´ ^'く, , ,）　　　　ヽ　　', //7　ヽ
　　ﾉ!　 /＼　　　　　ﾉ!ｲ　　し=～'´ﾞ"´`丶、　　ヽ　 ,'/ノ｀ヽ. ヽ
　/　r,/､　　＼　 ,.ィ"　'´　　　　　　　　　　｀'ｰt､　　　 l lj　　　丶ヽ、
i´ 　ﾒ　｀二ﾆ＞'´　　　　　　　　　　　　　　　　　`丶ﾆ'ノ　　　　 }ヽj｀ヽ.
ﾘ⌒ヾ),'"´ーｘﾒ、　　,.　　　　　　　　　　　　　　　、　　　　　　　//ﾉ丶ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

千歳が赤い唇をつんと尖らせる。

　　　　　　　　 ,　-　 ――― ‐　-　､
　　　　　　　　　／　　　,　-　 ――― ‐ ｀- ､
　　　　　　／　　　／　※　　　※　　 ※　＼
.　　　　　〈.　　　/　　 ,. .-. ‐: :‐: :‐: :‐: :-. ､　ヽ
　　　　　　＼　 / ※／: : : : : : : : ｉ : : : ヽ: : : ヽ　!
.　　　　　　 ∧ｉ　／: : : :/ : : : : :/! : :ｉ : :ｉ :ｉ : : ∨
　　　　　　〈 /:∨: : : : :/: ｀メ､／/.:.:/: :∧:レ: : :ｉ
　　　　　　 /: : |.: : : :./:ﾚ',ｨｒそド"´/／ｨチxV : :!
　　　　　　　ｉ : : :|.: : :..:!: :,〈. ﾄzリ　　　ﾄzﾘ }.: : :|　　　　　　　　マジで怖がって損しちゃったな。
　　　　　　　 | : : :ﾄ､ : : ｀〈 xx｀¨´ 　　 ,　｀¨x{ : : :|
　　　　　 /: : : {ｉ　＼: : :｀ゝ　　　　　　　＜: :／
. 　　　　 /: : : , {ｉ ※ ｀‐'´ヽ、　　r つ　,.イⅥ´: :＼
.　　　　／: :／::::{ｉ　　ｉ}:::::＞ミ　､　＜{ｉ　ｉ}::::ヽ : ＼
　　　 /:／/ ::::::::{ｉヽ, ‐‐く＝==､.不´,.=={ｉＸｉ}<フ二ヽ:.〉
　　　／: / :::::::::::{i./　／⌒ヽ／ｫXｨ＼　{ｉ　ｉ.厶--､　}
.　　／.: :.:/:::::::::::::::（　　／,. ┤ .ｫXｨ　｀{ｉＸ. 厶--､　∧

58 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:37:09 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　 _,,..-――-..,,_
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　,'. 　　　 ――　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　l　／　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　 ',　　　　三三　　　　|
　　　　　　　　　　　　　 |. 三　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　まあまあ。
　　　　　　　　　　　　　 l　　　|_　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 '.,　､＿_＿ノ　　　| 　|
　　　　　　　　　　ヽ　｀ ⌒´　　　　.|　 |_
　　　　　 ,-、　　 __　　　 .',　￣　　　／l　 .',＼
　　　　 .',. ',　　l　l 　　　 l　　　　　.／　 | 　 .',　ヽ、
　　〈.ヽ　　', .',　 |　| 　　　 _｀''―‐''´　　 .l　　.l 　　',_
　　 ',　',　.',　',　|　|　　　,,-''／　　',＼　　　　　　|　　...',｀ﾞ''-..,,_
,-、　 ',　',　j　.｀´　|　／／　　　 /',　l　　　　　 |　　　 ',　　　.｀ﾞ''-,,_
ヽ＼　',　｀´　　　..|　,' 　.￣￣＼/ ',.ヽ　 /　　 ,.ｲ　　　　', 　　　　.｀ヽ
　.＼.｀´ 　　　　ヽl__,.--.、　　 |、ヽ __ ,,..-''´　|'"´￣￣
　　　ヽ　　　　　　 ,,..-''"　　 .| ｀''--　　.-‐''´|
　　　　'.,　　　　　__ ／　　　　　 |　　　　　　　 |
　　　　.ヽ-　-''"　　　　　　　　 |　　　　　　　　 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

よく響く太い声で、大八木が場を静めた。

　　　　　　　　　　　　,　　´　￣
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼

　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
.　　　　　 /
.　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　小難しい話はなしにしようぜ。
. 　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　/｀
　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　せっかくなんだから、ここは法螺話を大いに楽しもうということで。
　　　_./　　　　　　　　　　　　　　　（　●） /
　「:::::∧　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　　　な？　洲藤君。
ノ::::::::::::::.、　　　　　　　　　　　　　　　　 |
::::::::::::::::::::::.,　　 {　　　　　　　　　　　　　　|
::::::::::::::::::::::∧　　　　　　　　　、　　 , - ┘
:::::::::::::::::::::::::::::.,　　ヽ　　　　　　｀ｰ
:::::::::::::::::::::::::::::::::..､　　＼　　　　 /´
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　/ ヽ __ ./

59 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:37:54 ID:976fb80c

　　　　/:::／:::::::::::＼/／:::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |::::::::イ~~~`"~~~~~~~~ﾍ::::::::::::::::|::::::::|
　　　 |::::::/　　　　　　　　　　 |:::::::|::::::::::::::::|
　　　|:::::/　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::|
　　　|::::|　　　　　　　　　　　＿|:::::::::::::|:::::::::|
　　　|::::|~―-､　ヽ　　,,-―~ 　 |:::::|:::::::::::::::::|
　　　|::::::| ,-―-､`/､､_,ノ-―--､ |::::::::::|::::::::::|
　　　|::::::::| －ﾟ―` |　､　`－ﾟ―"|:::::::::::::::::::::|　　　　　　　　いやあ、別に僕は……。
　　　|:::::::ヽ　　　　|　　　　　　　　|::::::::::|:::::::::::|
　　　|::::::::|　　　　|　　　　　　 |:::::::::::::::::::::::|
　　　 |:::::::|　　　/ 、　　　　　　 |:::::::::::::|::::::::::|
　　　 |::::::::ヽ　　-`--― ､　　　 |::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |::::::::::l|il|i　ヽ_￣￣　/　　l|i|::::::::::|:::|:::::::::|
　　　 |:::::::::::::::l|i　二￣　　 l|i|-|::::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |:::::::::::::::::|＼州_＿l|i/　 |:::::::::::::::|::::::::::::|

　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　／ -┘　へ. ＼
　　　　　　　　　　　　　　|　（●）（●）　|　　　　　　　　　　まあまあまあ。
　　　　　　　　　　　　　　|. 　　｜　　｜
　　　　　　　　　　 |　　 ___´＿　 |
　　　　　　　　　　　　 |.　　｀ー ´ 　}
　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　,ｨ{
　　　　　　　　　　　　　　 |　｀ｰ-‐ '　　}｀iー -- ､
　　　　　　　　　　　　 ,!　i　　 /　ノ　 l　_,シム
　　　　　　　　　　　〃ﾄ､＿,,,. ;i'ﾒ　　｜/ ,／　＼
　　　　　　　　　　／/lliiiiiiiiiiiiiiiill/{r―‐^ i〃/　　　ヽ
　　　　　　　　／ ,ｲllliiiiiiiiiiiiillll/´　／r- ゝ　' 　　 l
.　　　　　　　　／／´ﾌliiiiiiiiiilllll/　, 　／　　 |/　　　　｜
.　　　　　　　 / ir'　　 |liiiiiiiilllllli'　　／　　　　|　　　ーイ、
　　　　　　　　ﾊ |, 　　 /iiiiillllllllll|　 /　　　　　 |　　　　　　i
.　　　　　　 /　ｌj　　 /llllllllllllllllll{／　　　　　　 l　　　　　　|.
.　　　　　ｌ　｜　 /llllliillllllllllllll|　　　　　　　 |　　　　　 |
　　　　　　　| ヽ|　 /lliiiiiiiiiillllllllllll}　　　　　　 |　　　　　　|
　　　　　〉　 l　|iiiiiiiiiiiiiiilllllllllll|　　　　　　　　|　、　　　　|
.　　　　 / 　｜|iiiiiiiiiiiiiiiiiillllllll!、　　　　　　　|　　二　　 |
　　　 .／　　　 | |iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiillllllヽ、　　　　　 |　　　　｀　|

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大八木は、日に焼けた精悍な顔の中に真っ白な歯を覗かせて、

60 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:38:39 ID:976fb80c

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ぬっと立ち上がり、橙色の長袖シャツを腕まくりしながら一同に目を配った。

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　　　　　　　　　　|:::::: 　　　（● ）　　　　　　　　これは相当に怖いんじゃないかな。まったくの作り話というわけでもない。
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61 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:39:24 ID:976fb80c

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八月二十日。夜。

山小屋の前でキャンプファイヤーを囲んでいる八名──

磯部秀二・真弓夫妻、大八木鉄男、洲藤敏彦、沖元優介、千歳エリ、茜由美子、麻宮守。

彼らは皆、「TCメンバーズ」という会のメンバーである。

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.　　　　ト‐--t‐-‐'ﾞ|￣|　|　|.　 |.　　　 |｜　|. __}__ .|.　　　 |.....|.....|　 |　|　|__|_|.　　 | || |　|　|. | . |.|_| . L」_」 | | |
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「TCメンバーズ」とは三年前に結成された一種の親睦団体の通称で、

性別や年齢、国籍、職業を問わず、ある一つの条件さえ満たしていれば入会できる。

一応は全国規模の組織なのだが、地方によって支部会に分かれ、

実質的な活動はこの各支部会ごとに行なわれている。

62 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:40:09 ID:976fb80c

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その「東京第二支部・夏季特別合宿」という企画が、今回の登山なのだった。

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朝早くに東京を発ち、麓の村からかなりの距離を登ってこの山小屋に到着したのが、もう夕方のことだった。

63 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:40:55 ID:976fb80c

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最年長の磯部が音頭を取り、中学生の麻宮と酒が苦手な茜の二人はジュースで、乾杯。

炎を囲んで宴会が始められた。

今日が初対面というメンバーも結構多く、はじめのうちはどこかぎくしゃくしていたのだが、

酒が入るにつれ、それなりに場は盛り上がってきていた。

そうしてやがて、磯部夫人の提案で始められた「百物語」……

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最後の大八木がその話を始めたのは、そろそろ時刻が午後十時になろうかという頃のことである。

64 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:41:40 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　 ( ●) 　}　　　　　　　　　双葉山の殺人鬼の話、知ってるかな。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　　」
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　　　　　　　　,.イヽ　　≧ｚr:'´: ヽ､　　　 /´ ー‐'
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　　　　　 .//７　　//////jﾉ: : : ＞'´::::::i　 {ヽ､
　　　　　 ///i| 　 ,'///////T V/i∧:',::::L_　ヽ::::::t
　　　　　 ,///ﾑ　 ,////////ﾑ ∨/ム:ヽ::::::|￣ヽ::i,
　　　　 i///ハ ,'//////////ヽ///∧::::::::{　　 j:::ヽ_
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　　　　 Ⅶ///////////////////////////!:::':i:イV/i!
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　　　　　 |/////////j Ⅵ///////////////|:::::〈:::::::::::i V∧

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と、ます彼は一同に訊いた。

しかし誰も答える者がいないと見ると、

　　　　　　　． ¨￣￣￣¨　、
　　　　　 , '　　　　　　　　　ヽ
. 　　　　/　　　　　　　　 ',
　　　　 i　　　　　　　　　、_　　!　　　　　　　　　　ふん。
　　　　 | 　 -‐　￣´　　　　｀ヽ !
　　　　　│ 　 -tテ`　　　 tテ-　!　　　　　　　　　　わりと有名な話なんだけどね。
　　　　　 !　　　　　　 |、　　 |
.　　　　　',　　　　　 i! 〉　　　!　　　　　　　 ──磯部先生も、知りませんか。
　　　　　　_.!　　　　　 ′ 　 ,'
. 　　　 r j　! '．　　と　つ　　/
. 　　　 _j　　 '. ＼　　==　　, ′
　　　 f'　　　 '.　　　、___ ／!
　　〈:　　　　　| ＼　　　　 / ＼_
　 -=∧:.　　　　|　/ヽ_　　　{ 　 /｀v
:.　　　∧　　　 |./、| 　|　 { |　/<　ト
. 　　　〈　　　　|:::::＼　|　　 /　/ .|　＼
　　　　/　　　 .l＼::: ∨'.　 ,/／l＼|　　　`　　、
　　　,/　　　　ﾑヽ.＼:∨'./´}:::: !
　｀＞- 、　_/　ヽ. 　ヽ∨__j::::/
　　　＼／∨ ┬l 　　 Ⅵ:::::: 〉
.　　　／. 　 |　∧ ',　　　|::::::_/　 _
　　 /. 　　￤ｲ_／　　', ﾊ::::〈　　|　￣　　=-
　ヽ′＼　　　|. 　　　∨:::::::'.　 |

65 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:42:25 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　r':::::::::::::::::::::::::::'､
　　　　　　　　　ノ::::::／~ゝ─‐'^ヽ',
　　　　　　　 !::::::::ｲ r─､ヽ , - l/
　　　　　　　 VY::i'　Ｔ・〉　ｌﾞ・ﾃl　　　　　　　　　　さあ
　　　　　　　　　lvj::ゝ,　　' ､_ j｀　ﾉ
　　　　　　　　　(:ゝ::::) r/￣￣ヽｲ〉
　　　　　　　　　/Y ゝ､ゝ'￣￣~ﾉ
　　　　　　_ -v〈　｀丶丶＿ィヽ
　　　, -'"¨ : : ＼＼　　 r 1 /j〈､ゝ─､
　　/ : : : : : : : : 丶＼_ノ､ゝ∨ﾉヽl: : : : ヽ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /(⌒ ヽ
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　ゝ、_　)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ﾍ _　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　-- 'ゞ､ヾ｀ﾆさ
　　　　　　　　　　　　　　　　へ￣　　　　　　 /　￣　＼
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　　　　　　　　　ヽ＿//.　　　　　　　 //　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　￣￣ヽ　　　　//￣￣￣￣￣￣￣7/
　　　　　　　　　　　　　　　丿　　 //┏ 　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　ノ￣￣￣　　　 // .┗┓　　　　　　　/
　　　　　　　￣７　　　　　　　　 .//　.━┛untry　　　./
　　　　　　　　/　　　　　　 //ヽ　　　 /　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　 // 　ヽ/ヽ/hisky 　　/

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空になった紙コップにウイスキーを注ぎながら、磯部は首を振った。

66 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:43:10 ID:976fb80c

　　　　／:::::::::::::::::::::::::::`丶､
　　　_／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　r'::::;_:::::::::::::::::::::_,- ､:::::::::::::::::ゝ､
　　',::/　｀`ー─'"　　　<:::::::::::::::::::ｌ
　　(::l　　　　　　　＿　ゝ:::::::ｌ:::::::j
　　 Y<￣ヽ　､<￣＿__>　`::::::l;-v'　　　　　　　　　知らんな。
　　　', 匸・〉　く l__・ﾉ　　 l:::::l＾ l
　　　j　　 '"　　　　　　　　/:::::) /　　　　　　　　　殺人鬼……そんなものがいるって云うのかね、この山に。
　　　ﾉ、　ゝ　-`　　　　 /:::::::)ｲ
　　　ゝｌ　r￣￣￣ヽ　　 (_ィ:::ノ
　　　　', Ｖ~￣￣`ｰ'　　　ﾉ~ﾄ､
　　　　ヽ　　　　　　　／　 У l＿
　　　, -'" ヽ＿＿_　 ´ _ -‐　　 'v ヽ
, -'''/: : ;'　ヽ　　r─　´　　　　 /: : : :＼

　　／￣￣＼
　／　　「　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　　　　　じゃあ
.　|　　　　　　｜ │
　 |　　　　　___´__ﾉ
.　 |　　　　　　　 }
.　ヽ　　　　　　 }
　　ヽ　　　　　ノ
　　 i⌒＼ ,__(‐- ､
　　 l ＼　巛ー─;＼
　　　|　｀ヽ-‐ーく＿）
.　　　 |　　　　　　l

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大八木は太い腕を組みながら、

67 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:43:55 ID:976fb80c

ー .._,;ゝ..,,、　｀'-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ｌ- i､、ﾞゝ､,､ヽ、　　 .i〉;;;;;;;;;;;;;;;;;;/゛　　'" 　.,..-/!彡'".りシ',ﾞ_　　　　　　_..-
　　　ﾞ'''-､｀'-､　｀'-_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ｀'ﾐ〟　｀'''.ｌｼ､　 .ｌ.;;;;;,i∴;;.″　,-　, ;;ｿ｣彡"　 .,ﾉ".｀--│　　_..-'";;;;;;;
　　　　　　｀'''''≒　 .｀'-､;;;;;;;i..､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　ﾞ〈ヽ、　　.ﾞ'､"x. l;;;;;|. ..!./ 　/ .,rｼ",il'"　　　　亠　　　 ._iir㍉;;;;;;;;;;;;;;;
...,,、　　　　　　　　　　　｀''-_ヽ｀'-､;;;;;;;;;.;_;;;;;ヽ,　ﾞ'ﾍ　　　. ｌ;;;丶;;;;｝｀　　.,;;ｿ゛　　　　　　　　　 ´　 /ﾞ;;;;;;;; ／
ー二ﾞﾞヽ ,,、　　　　　　　　　｀'!‐　｀'-,;;;{. ｀'-､;ﾞ!、　　　 .l-'､.ｌ.;;;;;;;;;.!　　.,il″　　　　　　　　　 _,,　-'";;;;;;;;;;;｀￢
..,,..........ﾌ;;;;;;;;｀''‐ ,,、　　　　　　　　 ,ﾞli/､　｀'､.ｌ,　　　 .｀'/'./ ;;;;;lﾞﾞ　./　　　　　　　　 , r二-''''"￣￣´ﾞ''y;;;;;
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..,......xi，　　　　　　　　　　　｀'''ﾐ;;ｘ、　　　　´　　 .｀ l､　　　　　l､;.ｌz'ｱ　　　.,i;;|lrl!!!!¨'″　　 ,,,
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.,ﾝ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,..一'''''''ｰ､,;;;;;;;;｀'ｰ- ..,,、　　　　　　　　　　　　゛　　　　　｀'.ｌﾐ,ﾞ゛　　　　　　＼;;ヽ＼ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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;;;;;;;;;;;;./　　　　　 ,..r/「″ 　　　　 ,,rj″　　　　 Y''フ'´　　.▽　　　　　　　,i";;;;;;;;;;;;;;.ｌ'!ﾐiv ､　　　,.ｌ|x,　　　ﾍ.ｌ.ヽ
;;;;;.／　　　　 .,r彡'" 　　　　　 '!レ'"　　　　　 .//　　 .,r､　　　　　　 f'"｀''./ ;;;;;;;;＼.ﾞ'-､''-..,,,｝;;;;;ヽ　　　ｌ"l,.
／　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　、　　　　　,ノ;/　　　 ¨゛　　　　　.,,〟　　　　.ヽ;;;;;;;;.ｌﾞ'!)i、｀＼;;;/'''''-＼,　　∨
　　　　　　　　　　　 ,,、　　　,,〃　　　.,..;;ﾆi /　　　　　　　　 ´　　　　　　ヽ;;;;;;;ﾞ;;､ `　　ﾞ'ﾐ､　　ﾞﾞ'ﾆ;;､
　　　　　　　　　　　　　,i彡　　　/│　　　 ″.,〃　　 .,i;;　　　 .,-、　　　.i;;;;;i　　　　　.ｌ.;;;;;|..ﾞ'|l、　　　ﾞ'li、　　　ﾞ'ﾐ
　　　　　　　　　 ,iｸ゛　　　　l";!I　., ―--ｸﾞ　　.n /゛　　　l/　　　　 .ﾞ‐'"　　　　　.ｌ;;;;;.ｌ　.ﾞ'ｆ、　　　ﾞ.ｌx　　　　ﾞ'
　　　　　.,l　　　　.,ﾝｸﾞ　 ,．　　/ ;;;;ﾞ‐',,､;;;;.;i′　　 :!┤　.lL　 .`　　　　　　　　　　　　ｌ;;;;;.ｌ　　ﾞ|''､　　 . ｌヽ
　　　　 .,l|　　　../ ;/　〃　 ./ ;;;;;;;;ｒ'" !" .lﾞl　　　 : |;;|　　｀　　　　　　　　　ﾞlｭ　　　!;;;;;.!　　ﾞ'ｉ;ヽ　 i､゛
　,　　　 !｝　　,i";;;;lﾞ　,iﾘ　,／;;_ﾝ-/　　　　|;l　　　 l´;;;.ｌ　　　　　　　　　　　　　　　ｌ;ヽ〟l;;;;;;.ｌ　　 .`┤ .ﾞ┘

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　この山中で起こった中学生の惨殺人事件、覚えてませんか.　　　　　　 |
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　もう何年か前のことになるけど、当時はずいぶん騒がれましたっけね　|
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　 .: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.
　　　　　　　　 j: : :／￣＼: : : : : ／￣＼: : :人
　　　　　　　　　　 /: : : 〉　　、￣￣,: 　　　〈: : : : :}
　　　　　　　　 {.: : : i　　ヘ、 :,　 / 　へ　 |: : : ﾉ
　　　　　　　　　 ∨: :.| 〈_:_:_:_＼}　{／_:_:_:_〉 |: ﾚﾍ
　　　　　　　　　　　|│:|　,,}_‘__〉ﾉ　ヾ〈_‘__{,,　|: |　|　　　　　　　　　　中学生の、惨殺？
　　　　　　　　　　　ト{:〈　 ´ー　′ i 　ー｀　〉:ﾌ |
　　　　　　　　　　 ∨: ﾄ　　　 L.　| __j 　　ｲ: :ﾌ′
　　　　　　　　　　〈:_:_|　　／￣｀¨´￣＼　　|:.厶
　　　　　　　　　ｰ|　　レr―――‐ﾍl 　 |⌒
　　　　　　　　　ﾄ　　 └======┘　ｲ_
　　　　　　　　　　　　「＼　＼　　　　 / ／│.１
　　　　　　　　ィニ|......＞‐┐ー―┌‐＜...... |ヽ

68 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:44:40 ID:976fb80c

　　／￣￣＼
　／　へ　　＼　　　　　　　　ええ。
（●）（● ）　　 |
│ │　　　　 .|　　　　　　　林間学校に来ていた中学生の一行が、双葉山に登ったんです。
│___｀___, . 　　 |
　| 　　　　　 |､　　　　　　　　　そこで四人の生徒がはぐれて、後に無残な死体となって発見された。
　 |　　　　　 /　＼
　ヽ　　　　　 / > 　冫
　　/ 　　　　 ´　／
　　|　　　　　／
　　|　　　　　 |

　　　　　　　_ 　 -─- 　 _
　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::ヽ--　_
　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
　　　ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::;-､::::::::::::::::::::::::＼
　　 /::::::,､:::::::::::::::::::::::::／　　"'''- ．:::::::::::::::i
　　.l:::／　"'''- __　- '"　　　　　　ノ:::::::::::::::::＼
　　〉l　　　　　　　　　　　　　　　丶:::::::::::::::::::::ヽ
　　l:::l　　　　　　　　　　_　--､　　 <:::::::::::::::::::::::l
　　l:::lr─-､ ,　　　l, -'"::::::; -､ヽ　　丶::::::::::::::::::l
　　ヽl; - ､:::::ヽ　　l{, -'"示 ‐　　　　 l:::::::l,-､:/　　　　　　　　──そういえば。
　　　l　 ¨巨ゝ〉　　　､＿ノ　　　　 l:::::::lγヽ
　　　l　ゝ--' ｲ　　　　　　　　　　　 l　l:::::::lヽ l |
　　　l　　　 j　　　　　　　　　　　ﾉノ::::::::} ﾉ /
　　　入　　　丶　 ‐- 〉　　　　 'ζ:::::::::::） /
　　　ｌ:::ﾄ　　/￣￣￣￣￣＼　　　(＿ _／'"::ゝ
　　 /::::l　　l::::::r───-､::::::l　　　　　 l/:::::::::::ﾉ
　　￣l　　l::::/`ー── ´＼j　　　　　ﾉヽ-‐'"
　　　　丶　 ~ ､　　　　　　　　　　　イ　 l-､
　　　　　　ヽ､　ヽ　　　　　＜　　 , -'"　l
　　　　 .／l　｀　＿＿　＜　_,,..-‐''　　　　丶

69 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:45:25 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　─　　　　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´　　　　　　　　　　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　 '
.　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 ,、　　　　　　　　'
.　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　/　｀　　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　　　（ ●　）　　　 - 、 ./
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀/　　　　　　　　思い出しましたか。
.　　　　　　　　　　　 /　　　　.　　　　　　　　　　　　　 i（● ）
　　　　　　　　　　 /　　　　　.　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　./
　　　　　　　　,--"－= 、　　　ヽ　　　　　、　　　　 -┘/
　　　　　 y-=: : : . . ､.　｀　､.　　ヽ　　　　｀　　　___
.　　　　 /: : : : : : : : : : : ｀: . .、｀　、　＼　　　　　　／
　　　ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : :｀: .､ヽ　　＼_　　　　／
　　くr: :´: : :｀: ｰ: =: _: : : : : : : : : : :＼＼　/　￣
, . ＜: : : : : : : : : : : : : :｀: :-: ､: : : : : : :.＼＼

　　　　／:::::::::::::::::::::::::::`丶､
　　　_／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　r'::::;_:::::::::::::::::::::_,- ､:::::::::::::::::ゝ､
　　',::/　｀`ー─'"　　　<:::::::::::::::::::ｌ
　　(::l　　　　　　　＿　ゝ:::::::ｌ:::::::j
　　 Y<￣ヽ　､<￣＿__>　`::::::l;-v'
　　　', 匸・〉　く l__・ﾉ　　 l:::::l＾ l　　　　　　　　　　ああ──うん。
　　　j　　 '"　　　　　　　　/:::::) /
　　　ﾉ、　ゝ　-`　　　　 /:::::::)ｲ
　　　ゝｌ　r￣￣￣ヽ　　 (_ィ:::ノ
　　　　', Ｖ~￣￣`ｰ'　　　ﾉ~ﾄ､
　　　　ヽ　　　　　　　／　 У l＿
　　　, -'" ヽ＿＿_　 ´ _ -‐　　 'v ヽ
, -'''/: : ;'　ヽ　　r─　´　　　　 /: : : :＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

磯部は、髪の毛がだいぶ後退した額にばちんと手を当てた。

70 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:46:10 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　r':::::::::::::::::::::::::::'､
　　　　　　　　　ノ::::::／~ゝ─‐'^ヽ',
　　　　　　　 !::::::::ｲ r─､ヽ , - l/　　　　　　　　　この山で起こった事件だったのか？
　　　　　　　 VY::i'　Ｔ・〉　ｌﾞ・ﾃl
　　　　　　　　　lvj::ゝ,　　' ､_ j｀　ﾉ　　　　　　　　　あれが。
　　　　　　　　　(:ゝ::::) r/￣￣ヽｲ〉
　　　　　　　　　/Y ゝ､ゝ'￣￣~ﾉ
　　　　　　_ -v〈　｀丶丶＿ィヽ
　　　, -'"¨ : : ＼＼　　 r 1 /j〈､ゝ─､
　　/ : : : : : : : : 丶＼_ノ､ゝ∨ﾉヽl: : : : ヽ

　　　　　　　　　（⊃￣￣＼
　　　　　　　　（⊃　　「　　＼
　　　　　　　（⊃　　（ ●）（●）　　　　　　　　そうなんですよ
　　　　　　　　|　　　　　｜　 |
　　　　　　 |　　　　　__´___ﾉ
　　　　　　 |　　　　 `ー'´ } ＼
　　　　　／ヽ　　　　　　 }.　　＼
　　　　　　／　ヽ､.,＿＿__ノ　　　）
　　　　／　　　　　　　　.　　|　＿／
　　　　|　　　　　　　　／￣￣（＿)
　　　　＼　　　＼　／|　ＪＪＪ　（
　　　　　　＼　　／　　／⊂＿）

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木は真顔で頷いた。

71 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:46:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　─
　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　 .｀. .
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　　: : : ::｀
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　 . : : : :::::::::: '
.　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 : : : : : :::::::::::: '
　　　　　/　　　　　 _　　　　　. : : : :　 :::::::::::::::::: i
.　　　　/ _ _....　／彡"二_ `　　　　　 :::::::::::::::::: l
.　　　 /´_;:-ﾐミ　ヾ彡i廴ｼ　｀,　　　 . ::::::::::::::::::: |　　　　　　　　　結局、あの事件の犯人は捕まらなかったんですよね。
.　　　　弋ｼ. '/　　　　　￣　　　　　: : :::::::::::::::::: l
　　　　 i　 ./　　　　　　　　　　　　. :: :::::::::::::::::::: !
.　　　　i　　ミ::　　　　　　　　　　: :::::::::::::::::::::::: i
　　　　 i　　｀ﾐ　　　　　　　　　 :::::::::::::::::::::::::::: !
.　　　　 i　　　　　　　　　　　　 ::::::::::::../:::::::::::::i
.　　　　 i 　´　__　　｀　　　 .:::::::::::: /:::::::::::::::!
　　　　　 l　　　　　　　　　 ::::::::::::. /::::::::::::::::|
.　　　　 |　　　　　　　　　..::::::::::::: /::::::::::::::::::|
.　　　　　 |　　　　　　　...:::::::::, ..＜:::::::::::::::::::::::|
.　　　　　ヽ　　　　..:::::;.....＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　＿＿二i::::::::::::: : : : :::::::::::::::::::.:.:.:.::::::::::|===　　 ─ ,
　　　　/　　　　　　　　　　 λ､:::::::::::.:.:.:.:.:.:::::::::l　　　　　∧.',
　　　 /　　　　　　　　　　./:.: i ｀､_::.:.:.:.:.:.:.:::ii:::::.,　　　 ./:::: .',
.　　人　　　　　　　　　./:.:.:.: .i::::...　｀ ,: : ::::i.i::::::/ 　 /::::::::.　,
_　"　　 λ　　　　／　　　 !　:::::　　 ',: : ::i i:::/　 /:::::::::::.:.　,
　　　　 / .l　　　　.／ l　　　　 ',　　　　　ヽ .i .i/　/::ヘ　 :::　　,_
　　　　/　 l　　／　　.l　　　/　ヽ　　　　　|/ / .ム ::::　｀　､　 ', `

　　　　　／￣￣＼
　　　　／　　　　　　＼
　　　　|　　　-‐' 　へ　l　　　　　　　山で見つかった生徒たちの死体は、実にひどい有様だった。
.　　　 |　（ ●）（ ●) |
　　　　 |　　　 | 　　 |　　　　　　　腕をもぎ取られていたり、腹を裂かれていたり、首を切断されていたり
　　　 ,|　　 __´___ 　 }
　　／ヽ　/＿＿_ヽ !
　　く　くヽ　　　　　ノ
　　＼　`' 　　　く
　　　　ヽ、　　　 |
　　　　 |　　　　 .|

72 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:47:40 ID:976fb80c

.　　　　　　　　＿＿
　　　　　　／::::::.　＼
　　　　　　　 /::::::ヽ;;:　　＼　　　　　警察の捜査にもかかわらず、犯人は捕まらなかった。
　　　　　（:::::（::::冫　　　|
　　　　　　　 |:|:::::: 　　　　| 　　　四人のうちの一人は、行方不明のまま
　　　　　　 r‐-;::::::. .　　　　|
　　　　　（三））::´:..　　　　|　　　　　死体の一部分すら見つからなかったっていいます。
　　　　　　 >::::ﾉ:::::::::.　　　 /
　　　　　 /::: / ヽ;::::::::: 　 /
　　　　 /::::/ ⌒ヾ:::::::::::.〈
　　　（;;;;__ゝ:;;:::::＼／:::::）
　　　　　　 |＼::::::::::::;;:1
　　　　　　 |:::::＼;;／:::|

　　　　　　　　／＼＿＿＿
　　　　　　　　ヽ／￣￣￣＼ﾉヽヘ
　　　　　　　　 /:::●　　　● ＼:::::∫
　　　　　　　　/:::::::( _●_): ::: : ﾐ／
　　　　　　　　ﾐ::::::::::|∪|::::::: : :/ミ
　　　　　　　ﾐ::::::::::::ヽノ :: :: ::/ ミﾐ
　　　　　　　ﾐ::::::::::::::::::::::::::／ﾐﾐﾐﾐ
　　　　　　　ﾐ::::::::::::::::ミミﾐﾐﾐﾐﾐミﾐ
　　　　　　ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾐ
　　　　　ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ミ
　　　　　ミ:::::::::|ゝ:::::::::::::/|:::: :: ::::ミ
　　　ﾐﾐ:::::: : : :＼二二／: : : : :: ::ﾐ
　　　ﾐ:::::::: : : : : :::::::::: :: :: : : : : : : :ﾐ
　　ﾐ:::::: : : : ::::::: : : :: :: : :: : : : : : : :ﾐ
　　ﾐ:::::::＼::: : : : : ::::::::::::::: : : : ::::::::::ﾐﾐ
　ﾐ:::: : : :::＼: : :: : :: :: : : : : : :: : : :::::::ﾐ
　　彡::　:　: ヽ: : : :::::::::::::::::: : :: :: :: : ::ﾐ
　　彡ＷＷ V|:::::::::::::: ::: ::: :: :: :/::::::: ::ﾐ
　　　彡彡丿::::::::: :: : ::::::::::::: :丿:::::::::::ﾐ
　　　　彡ﾉ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ＶWWﾐ
　　　　　ﾐ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾐﾐﾐﾐ
　　　　ﾐ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :: :: :ﾐﾐ
　　　　ﾐ::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :: :: :: ﾐ

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　熊か何かに襲われたんじゃないか、という説もあった　│
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　つまり、その一人は喰われちまったってわけです　　　 │
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

73 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:48:25 ID:976fb80c

　　　　　　　　〆─ 、
　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:丶
　　　　　　　|.:.:.:.:.:.:..;.;.;.;|＿__
　　　　　　 ∧.<ｿ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　＼
　　　　　　　　ゝ、.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:　＼
　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　ヽ
　　　　 .|;:＼　.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　　;＼;:＼|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. |
　　　　　　　＼ }.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. |
　　　　　　,　　｀|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ﾉ
　　　　　　　　 .ﾉ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　　　　／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　|
　　　　　／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.......:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
　　　　〆.:.:.:.:.:.:.:.:.:......:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i
￣￣￣.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣￣￣￣￣

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　で、たまたまこの山に来ていた異常者の犯行だろうというのが、最終的な警察の見解だった　│
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　何ともお粗末な結論だけれど、ま、他にしようがなかったんだろうな　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

　　　／￣￣＼
　　／　　｢　　＼　　　　　　　　それはそれとしてですね、あの事件が一つの契機となって、
　　|　　　（ ●）（●）
.　　|　　　　 | 　 |　　　　　　　いろいろな悪い噂がこの山に関して囁かれるようになった。
　　 |　　　　 __´___ﾉ
.　　ｌ^l^lｎ　 `ー'´}
.　　ヽ　 L　　　　}　　　　　　　　　実は俺、田舎がこの地方にあるもので、
　　　ゝ　ﾉ　　　ノ
　　／　/　　　＼　　　　　　　　だから、嫌でもそういった情報が耳に入ってくるんですよ。
　／　 /　　　　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ

74 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:49:10 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　／　「　　へ＼
　　　　　　　　　　|　（●）（●）　|　　　　　　　　　例えば……
.　　　　　　　　　　|　　　　|　　　 |
　　　　　　　　　　 |　　 __´___　　|
.　　 r─一'´￣`＜ヽ　 `ー'´ 　 }
　　 `ー‐ｧ　　 ,　　 )　　　　, -'~⌒ヽ、
　　　　ノ　　　{. 　 ,ﾍ　　　　,l.　ゝ、_ .'ヽ)
.　　　／, ､　_　　　/. |　　　.　',　　.　..　 .ヽ、
　　（／ / // / /　...|　　　 ...|＼..＼＼＼_)
　　　　 / // / /　　　　　　　 . .　＼_＼_)､_）
　　　　ｰ' {_/ノ　　　　　　　　　　　　."´

　　　　　　　　　　　　　　、　 ,バ
　　　　　　　　　　　 ,.ﾉ　　 }ｉ／　} }
　　　　　　　　／/　　.ノ'´　 _,ノ厶 ____ .ノ'　、
　　　　　　　　 /　.′ ／　 .　´_.彡'て⌒¨´　　 }ヽ
　　　　　　　 i　 {.∠..__／,__＿___⌒ヽ、　　ノ　 }　　　,
　　　　　 _　___j,／ r‐ ､{　{三三三≧z,,_.＞ ´ __,.ノ　 _,ノ}
　　　　　__彡‐ 　/　　ｉｌ三弐. ｀⌒¨¨¨¨ア´　　　　‘⌒¨´__,.ノ
　　　／　　　/　　,|ｉア´　　___.　　 ′　　　　　　　｀¨て.._ __＿__.,ノ
　　　 /　　　 /　　 i｣′　 __,／　　　　　　　　　　　　　　_　｀弋⌒¨´
.　　　　／　'　　　ｉｌi廴 _,／　　　　　　　 .　,　　　　、　　｀丶. ｀ヽ、
　　ｉ　/j/ 　　　 | |｢　 /　　　　　　 / / i、　　　ヽ　　、＼、＼
　　 |,/ .′ｉ　i　､八{｀¨7　　　　　 /_,/_∧_|_＼ヽ　　}　　､＼弋ト-`
　　ｌ{　{　 |　|　　l＼_ _j　i　　　　　,/　_}.厶.斗{__ ヽi　_,ﾊi　　ｌ、　ヽ.}｀
　　　　 ‘,　l　、　l＼7^1､|、　　　ノ{　_人_jぅ_j厂｀　|　瓜j　　|､＼　＼
　　　　　‘, { 　＼}〉, { r{　い.　　　 ∨ 　｀¨¨`　　 j.ノ迅}　 ,jハ　｀ト--`ｰ　　　　　　　　(……聞きたくない)
　　　　　 ,}人　 .　i'∧ヽ.＼l八ヽ、　 |　　　　　　　　　〉|.ノi{　_j　ノ
　　　　　　　ヽi　|//i＼＼__、ヽ、`ト| 　　　　　　 / 从弋て´
　　　　　　　　　l　|//|　,ｉ'>､_{,＼＼}　　し　　　 __，　 ′`　ミ_,
　　　　　　　 ,ノ　∨∧_}//,厶　　　　　　　<´　ﾉ　/
　　　　　／／}　＼{///{,//〉、　　｀　.._　　　　　,.′
　　　　　 /　./.　i'"￣￣￣￣｀ｰ-＜二￣￣￣￣￣￣二ﾆヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

何故かその時、茜はそう思った。

75 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:49:55 ID:976fb80c

　　　＞　　　　　　　　　彡彡彡彡彡∨≧　　从　　　≦ミミミミＸ
　/　　　　/　　　　} 　　　　　　　　　　l　　　　　l 　l　　　＼＼　　　＼
li　　　　　|　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜
li　　　　j　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　l　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　l　　　　　　ヽ　　　　　ヽ
　　　　 i　　 /　　　　/　　　　　　/　　/　　　　　　　ll　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　人Ⅵ　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　lll　　　　ﾍ　　　　　　　　　　ﾄ
　　　 /　　/　　　　　　　　　　/　　/　　　/　　　　/ll　　　　ll　　　　　　　　　　　ﾍ
　　　　　 /　　　　　　　　 l　l　　　　　　　　　　　/ l l　　　　/l　　　　　　　　　　　　ﾊ
　/　　/　l　　　/　　　　　　　　　--　　ーー－一、　　　/　　　　　l　　　　　　　　 l
/　　/　　ﾊ　　/　　　　　　 l　　　　/　　　　　　　/l　　 /　　　　/　;　　　　　　　　　ト
　 /　　　ｲ　 / ヽ　　　　　 l　　　 /　／l　　　／　l　　/　　　　/　　　　　　从　　　 }
l/　　　　l　l/　/　l　　　　　l　　 / ／___l_ __／　　/　ｽ　　　　/　　/-x/　　k　　　　ハ
　　　　 //l　l　　l　　　　　 l　　／　　　/／　 `　/／ｿ　　／　　ﾊ　/ ＼　ﾒ　　　/
　　　 //　ﾍ　ヽﾍl　　　　　ｲ彡イ斥圷ﾞﾃ气ﾐ　/　　ﾉ　／　　／/　/l　ﾊﾍ　　　ﾊ
　　　/　　　ﾍ　ヽl　　　／ l　弋辷:::::::::::乂　　　ノ／メ　／　 /／/／　　ハ　l
　　　　　　　　ヘ l　／　　ト　　　　　　``　　　　　／彡ｲ从斤示ﾐﾐ　　／／ヽl
　　　ﾊ　　　　／　ﾄ　　　　ﾊヽ　　　　　　　　　　气辷:::::乂ソ／／l
　　　　　　　/／ﾊ　　　　lトx　＼　　　　　　　　　　　　　　　``／イﾊ　k∧
ｲ　　　　从- ￣　=ヽ　　　l　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　　／　ﾄ从
∧ 从ﾊ／三三∧∨ヽ　　 l＼　　　　　　　　　　　　　　　 /　l　 l
　三三三三三三∧∨ﾍ　 lミﾐ　　　　　 ⊂⊃　　　　　　　　ｲ　 l　 i
　三三三三三三ﾆ∧∨ヽ l三ミﾐ＼　　　　　　＿ -‐＜　ﾊ　∧　}
　三三三三三三三∧∨ヽl三三ニニﾆニニニニニ三三三三X=-从

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炎の向こうに立った大八木の顔から目をそらし、思わずぶるりと頭を振る。

不意に心に湧き出した──それは、強い恐れ、そして何かの予感であった。
　　　　　　　　　　　　　 ¨¨¨¨

　　　　 l.　　　1　　　、　　　　 i＼＼
. 　　　　ﾄ　　儿_ 　　ト､　　　 i.　｀,)
､.　　　　 l ヽ〃⌒ヾx､　 i.:.:＼　　 i.
z＼　　　　 l.　ｿ{{ﾟ｀:. ” ﾏ　!.:.:.:.:＼　 i
zz　)从　　|　　ﾏ. ’.}} 　| .!:.:.:.:.:.:.:.:＼ j
､.　　　＼ .|. 　　ゞ="ﾉﾟ从:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.y
　ヽ　　　｀ﾘ　　　　 ´　 "' V、:.:.:.:.:.:.:.',
’　l　　　　　　　　　　 V人:.:.:.:.:.:.:',
__ノ　　　　　　｀　　　　.ﾘ._　＼:.:.:.:. ',
oz=　　　　　　　　　　　　　/、_＼　ヽ:.:.:.l
　　　　　　　 , イ　　 .//≧=-＼　＼!
=-　　　　　　ゝ '　　 /y三三≧ 《ｰ、 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

どうしてなのかは分からない。

ただ、大八木が話そうとしているのは良くない話だと感じた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ¨¨¨¨¨¨¨¨¨
ここでしてはならない話、聞いてはならない話だ、と。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨　¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

76 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:50:40 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　 -―━━―-
　　　　　　　　　　,ｨ:´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::へ
　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..、
.　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、:::::ヽ
　　　　　　 ,ｲ:::::::::::::::::::::::::; イ::::::i!:::::i!::::::::∧:::::::ﾍ
　　　　 /;i::::::::,:::::::::::::／　/:::::ハ::ハ:::::::::::}::::::::::}
　　　　 /ﾞ |::::::ｨ::::i:::::/‐-　|::::::}-┼‐-V:::::/::::::::::|
　　　　　 |:::ｉ:|:::::l:::::j:::ﾔ　.|::iﾘ.´ﾋ:::灯 .|:; <:::::::::::l　　　　　　　　どうしたんですか。
.　　　　　　　!::ｉ:::::::ｌ:::::|zﾉ　 .|ﾞ　 .クzj　 .|::|.i}:::::::::;'
.　　　　　 V:::::､ｌ:::::ｌ　　 ′　　　　 .|::|ﾘ::::::ノ
　　　　　　　　ヾ､:{ヾ:::lヽ　ヾ￣ヽ　　ノ.リ:::::Y
　　　　　　　　　　` .ヾ|　＞．`ー'　＜　 |从ﾊ{
　　　　　　　　　　　　＿_／　`i¨´＜￣￣￣Z＿_
　　　　　　　　　 , ＜　＜　　.Y　　ヽ　　　　　　＞、
　　　　　　　　　/　　　ヽ　 |｀　´　ヽ　　　　　　　 .ﾍ
　　　　　　　　　{　　 y　　ヽ |`==＝ｲ}　　　　v　　　　.}
　　　　　　　　 l 　　.l.　　　〉|　　　 .|、　　　 |　　　　 i
　　　　　　　　 l　　 .ｌ　　 / .|　　　　.|.ﾍ.　　　| 　　　 |
　　　　　　　　 l 　　.|　　〈　.|　　　　.|.　〉　　 | 　　　ｌ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そんな茜の様子に気づいて、隣の麻宮少年が心配そうに声をかけた。

　　　　　　　　　　　　　　　　,..::::::::::::::￣::::::::‐-..､
　　　　　　　　　　　　　＞''´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
　　　　　　　　 , ′:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::‘，
　　　　　　　　　　,':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::‘，
　　　　　　　　　 |:::::::::::../.::.::.::::::ト､: :::i＼::.::.::.::＼:::::::::::::::: :
　　　　　　　　　 |.:::: .//ﾍ . .ｉ.､.. .、＼|　＼ :.::.::::＼:::::::::::‘
　　　　　　　　　 | : ::'ｲ|-‐ 寸. ＼.＼￣￣　＼.::...i､ヽ:::::::‘
　　　　　　　　　 | : ::::|.|　　＼. .ｉ＼tｆ扞ト､ |. ＼ト＼ﾄ,:::::ｊ
　　　　　　　　　 |::::::::|i|ｆ扞ト､　ヽ　 jr'ﾉ｣　〉. . .ｉ.トr　}′,′　　　　　　　　　　　気分、悪いんですか。
　　　　　　　　 │ : ﾉ收]リ　　　　　＾ ´ 　 |. . |.|r‐ノ::::/
　　　　　　　　　|/ｉ : : }　　　　　　　　　　　 |. /|ﾊ｢::::../
　　　　　　　　　　　|. ..八　　　′　　　　　し |/　　|)ヽ
　　　　　　　　　　　|./ｉ. .{＼　　､___　　　　　／／　　〉、
　　　　　　　　　　″|. .{ 　丶　　 ´ 　　イ／　　 /　＼
　　　　　　　　　　　人｛　　　　　-r≦{___／　　　 ,/　　　　　‐--　ミ
　　　　　　　　　　　　＼ .　 -‐ｧ′／|　　　　 ∧　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　 /　　　/ ／Ｌ/|　　　／　〉､　　　　　　！
　　　　　　　　　　　　　 .′　 :'＾Y　/.::| | 　／　　八ｰ)′　　　　　 /

77 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:51:26 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |＼_ ￣ﾄ､ｰ―-､
　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_＞　＼| Ｌ＿＿_|
　　　　　　　　　　　　　＞＿＿＿__　　　　__＿　＜
　　　　　　　　　　　　　l／　　　　ヽ　／　　＼!ゝ
　　　　　　　　　　　／　　　　／ﾐヽ Vr勿＼　　＼ヾ
　　　　　　　／／　　　／＞-―┴┴-∠＼lV ＼＼
　　　　　　　　／　　　 r' _,ノ　　　　　　　　　　 :｀ヽ:　:＼
　　　　　　　 /イ　　　 .r'´厂／　　　　　　　　　　　　　ヽ:　:ヽ
　　　　　　 /　/ :/V|V } r'〃　　／　　　　　　　｀ヽ　　':　:丶
　　　　　　　 / :/::　 .::r'/ /　　〃　　 , 　　　　　 '.　　': :ﾘ
　　　　　　　 |:/l::::: .::::{″′　　 .′ 　 /　　 :ｉ i　　　　 : ::ｌ
　　　　　　　 |　|::::/:::爿 i　　　 l !　 _厶斗　｜LL　!　 | !: ::!
　　　　　　　　 |:::|:::::::::ｉ | ｜　斗i'´/从｣人__ﾉ_j_｣_｀ト　l ｉ:::::|
　　　　　　　　　|::|!::: |::Ⅵ　v　　 ,ィｆ仡＾　　ｨ仡ﾄxiﾄ､/ ｌ: :::|
　　　　　　　　 |ハ:::|､:∧从.　u　ﾋ_り　　　　ﾋ.り　{ﾚ′′｜
　　　　　　　　　　　Ⅵ V:::Vハ　 '.　　　　 ′ 　ﾉ　/,ｲ!ﾚ′
　　　　　　　　　　｀{　V:|ヾ: ﾊ　ﾄ､　（_｀ｱ　 .ィ　〃/ ﾘ
　　　　　　　　　　　　　 . '´￣ﾊ　 |}　＞‐ｧ≦千l　{ﾙ'

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茜は僅かに首を動かして、大丈夫よ、と小声で答えた。

　　　　　　／￣￣＼
　　　　　／　　　「　　＼　　　　　　　……この土地には邪悪な“気”が満ちている。不吉な“場”がある。
　　　　　|　　　（ ●）（●）
.　　　　　|　　　　　｜　）　　　　　それこそ、さっきのイメージ話じゃないけれども、悪い霊が集まっている、とかね。
　　　　　 |　　　　　__´___ﾉ
　　　　　　|　　　　　　　 }　　　　　　真面目にそんなオカルトじみた主張をする人も、地元の年寄りにはいるそうです。
　　　_.／:l ヽ　　　　　　 }
‐''"´:/::::::|_　ヽ＿　 _＿ノ::、
::::::::: !::::::::l′　　　　＼　,ｲ＼
::::::::::l::::::::::l 　　　　 /:｀:::ｌ:::::＼
::::::::::|:::::::::::＼　　　 /:::::::::::l:::::::::＼
::::::::::|::::::／＼ヽ　　 l::ヘ::::::::l::::::::::::ﾊ
::::::::::l／:::::::::::o:ト　.｣::-:::::＼::!::::::/::::l
:::::::::::::::::::::::::::::: l`ｰ'l:::::::::::::::::`::/::::::::l

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大八木は話を続ける。

78 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:52:11 ID:976fb80c

　　　　　／￣￣＼
　　　／ヽ　へ　　＼　　 , :┐　　　つまり、そういった迷信深い人々によれば、
.　　（ ●）（ ●)　　 |　／　｜
　　 |　　|　　　　　 | /　　 /　　　この双葉山には人を殺して喰う“悪魔”あるいは“魔物”が棲んでいる、というわけです。
　　　 i　__｀__r－､　　l/　／
　　　 {　｀ー'ヽ,　',. .,/　:/',　　　　　　そして、それが中学生たちを惨殺したものの正体なのだ、と。
.　　　ヽ.　　　|　 l_/_, -‐､',
.　　　　ヽ.　　| 　 / , -－'i|
　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ
　　　　　|　　　ヽ　Ｌ|　r=　|

　　　　／￣￣＼　　　　　　　　　　　双葉山には恐ろしい魔物がいる。
　　　／　　　「　　＼
　　　|　　　（ ●）（●　　　　　　　　　警察が云う『異常者』のように『たまたまこの山に来ていた』のではなくって、
　　　|　　　　　　|　 |
.　　　|　　　　___´__ﾉ　　　　　　　　　そいつはずっとこの山に棲んでいるのだ、といいます。
　　　 |　　　 ∩ ノ ⊃
　　／　　 .／　＿ノ　　　　　　　　　だから近寄らない方かいい。
　 (.　＼／　.／_ノ │
　　＼　 “　／_＿_|　 |　　　　　　　　　近寄る者には、きっと災いが降りかかる。
.　　　＼／＿＿＿ /

79 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:52:56 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　まさかね
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　『十三日の金曜日』のジェイソン君じゃあるまいし
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

気のない声で、洲藤が云った。

　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　「　　へ＼
　　　　　　　　 i　!　　|　（●）（●）　|　　　　　　　いやいや、まさにそうなんだな
　　　　　 r;r‐r/　| 　 |　　　｜　　　|
　　　〈_L (｀ヽ .}　　|.　　__´___　　ﾉ
　　　　　l｀（｀`/　.　 |　　 `ー'´　　}
　　　　　ヽ　　l　　.　ヽ　　　　　　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　　ー‐　ｨヽ

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大八木は別にむきになるふうでもなく、

81 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:53:41 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　‐…‐　ミ
　　　　　　　〃　　　　　ヾ
　　　　　　　ｉ ___　　　＿_　　|　　　　　　　　別の噂じゃあ、まさにそのジェイソンみたいな殺人鬼が
　　　　　　　l　 [l |　 [厂　　 |
　　　　　　　|　　j　　　　　 |　　　　　　　　この山には棲んでるんだ、というわけなのさ。
　　　　　　　|
　　　　　　　l　　 ---　　 _/　　　　　　　　 “悪魔”とか“魔物”とかいうんじゃなくて、それならまだしも現実的だろう。
　　　　　　　＿__　_／⌒〉
　　　　　　　〈V^　xく⌒L
　　　　　　　／l｣／__
　　　　　　｣　xく⌒^　　　＼
　　　　　　　 |　｝　　　ｉ　　　　　`、
　　　　　　　 |　｝　　　 l　　　　 `、
　　　　　　　 |　｝　　　 |　　　　　　 `、

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
　　.　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i　　　　　　　　　　馬鹿げてますね。
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

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洲藤は軽く肩をすくめた。

82 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:54:26 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',　　　　　　　　　この山に棲んでるって──、
　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､　　　　　　いったいそいつは何をして暮らしてるんです。
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,　　　　そもそも何者だっていうんですか。
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i　　　　　　どうせ、どこかの精神病院から脱走してきて……
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ　　　　　　なんてクサいお話もあるんだろうけど。
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

　　　　　　　　　　　　　__＿___
　　　　　　　　　　´　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
.　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　ｉ
　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　ｉ
　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　l　　　　＿｀　　　　 ´ ＿　　　　|
　　　　　　l 　　/ 　　ヾ　　　Ｙ　　　ヽ　　l
.　　　　　　 !　　|　{:::::::}　|　　　|　{:::::} ｜　｜　　　　　　　　　　うん。確かにそういう噂もある
.　　　　　　l.　　ヽ.　　ノ　　　ゝ　　ノ　　.i
　　　　　 | 　　　　　　　ｉ　　　　　　　　|
　　　　　　l　　　　　　　|　　　　　　　　./
　　　　　　　',　　　　　　｀　　　　　　　/
　　　　　　　　ヽ　　　、＿＿＿,　　　　∧__
　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　／ / 〉::｀丶、
　　　　　　　　　／＼　　　　　　／　/ /::::::::::::::丶、
　　　　　　　／:::::l　　ー――‐ ´　／ /:::::::::::::::::::::::｀丶 _
　　　　　-‐::::::::::::::l　　　　　　　　／　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::

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大八木は依然として真顔である。

83 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:55:11 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　／　「　　へ＼　　　　　殺人鬼氏の正体に関しては、他にもいろんな噂がある。
　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |
.　　　　　　　　　　　| 　　　 | 　　 |　　　　　その昔この山にいた樵の娘が、熊と交わって生んだ子供がいるんだ、とかね。
　　　　　　　　　　　 | 　　 __´___ 　 |
.　　　　　　　　　　　 |　　　｀ー'´ 　 }　　　　　山に棲んでいた鬼の一族の末裔だとか。
.　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }
　　　　　　　　　 ,､ヽ　　　　　ノ-､
　　　　　　　　／;;;i/　　　　　　'､!＼
　　　　　 _,､-／;;;;;;;;|　i　　　　i　 i;;;;;ﾞ､-､_
　　　 ,-‐'''";;;;;<;;;;;;;;;;;;;!､_｀ヽ　､-'_／!;;;;;;ヽ;;;;;｀'';;ｰ;;-,
.　　　!;;;|;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;|'ｰニ_ー_ニﾞ／.|;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;!
　　　|;;;;;i;;;;;;;;;;;;／´;;;;;;|　　　　　　 |;;;＼;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
.　　 |;;;;;;;ﾞi;;;;;;;;;'､;;;;;;;;;;;;!─┐　　┌─.|;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;/;;;;;;;;i
　　/;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;ﾞ､;;;;;;;;;!　　l　　　l　　l;;;;;;;;;;/;;;;;;ﾉ;;;;;;;;;;|

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　　はーん？
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

84 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:55:56 ID:976fb80c

　　　／￣￣＼　　　　　　　　　こんなのもあるな。
　　／　　「　　＼
　　|　　（ ●）（●）　　　　　　　第二次世界大戦中、この山中には軍の秘密研究所があったっていうんだ。
　　|　　　　　｜　|
　　|　　　　　__´___ﾉ　　　　　　　そこで開発された、ある恐ろしい薬品があった。
　　|　　　　　`ー'´}
　　ヽ　　　　　　 }　　　　　　　　微量で人間の精神を狂わせてしまうんだ。
　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　/　　　く
　　　　|　　　　 |

　　／￣￣＼
　／　　　「　　＼　　　　　　　　その薬が、実はこの山のどこかに残されていて、
　|　　　（ ●）（●）
　|　　　　　　 |　｜　　　　　　　殺人鬼というのは、その影響を受けて発狂した登山者の成れの果てだ、ってね。
　|　　　　　__´＿ﾉ
　|　　　　　`ーｎｌ^l^l
　ヽ　　　　　 |　　ﾉ
　　ヽ　　　　ヽ　く
　　　/　　　　　ヽ　＼

85 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:56:41 ID:976fb80c

　　　　　　／￣￣＼
　　　　「　　へ　　＼　　　　　　よく似たので、戦後の、それもわりと最近まで、
　　　（● ）（● ）　　 |
　　　 |　　|　　　　　 |　　　　　　この近辺には政府の極秘研究所があったという説もある。
　　　 | ___｀___　　　 |
　　　　 | `ー '´　　　 |　　　　　　　遺伝子操作をはじめとする生物化学的な実験、
　　 r'ﾆ二ヽ_ 　　　|
.　ﾉ´─‐､)' ,ﾊ　　 /　　　　　　　　しかも人体実験がそこでは行なわれていて……。
　|. ご,¨ｌﾉｰ' /　　　　＼
　| ‘ｰｧ′／　　　　　 |

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡　　　　　　その結果、フランケンシュタインの怪物みたいな奴が
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃　　　　　　　　　生まれたっていうんですか。
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､　　　　　いまどきそんなの、B級ホラーのネタにもなりませんよ
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

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洲藤が鼻で笑う。

86 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:57:26 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　￣￣　､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　＼
.　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　 l　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　 |　　　　　　　　ﾉ　_　ヽ　　　　　丶
　　　　ヽ＼　　　　ー"ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶　　　　　　　　　　　　　　　　　まあ、確かにな。
　　　　　ヽゞ.._,,_　ヽゝ_ゞ::ノ '　　　　　　 ',
　　　　　　　丶ｉｲ:::ヽ　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　ゝゞ '　　＼　　　　　　　　　　　　＼‐､-..､
　　　　　　　　ヽ　　　　＼_　　　　　　　　　　　ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　／　）　　　　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　ヽ＿ .　　　　　 /　　／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　/　／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　ヽ　_＿　ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木はちょっと苦笑いしつつも、すぐにロ許を引きしめ、

　　　　＿＿
　　　 /　　　ヽ　　　　　　　　とにかくそういった噂が、双葉山の殺人鬼の正体を巡ってわんさかあるわけさ。
　　　 |＼　　／ i
　　　 | ┓　 ┓ |　　　　　　　　確かにどれをとってみても眉唾ものばかりだが、
　　　 |　　 j　　 |
.　　 /、　―　ﾉ　　　　　　　　しかしね、実際問題、例の中学生惨殺事件と前後して、
　　 /　ヽz寸ﾚヘ
　　ヽ、　ヽ　{、ヽ　　　　　　この近辺で何件かの行方不明事件があったっていうことも事実なんだ。
　　　　 ≧ｚ{　.| ｉ　　|
　　　　　　　|　| |　　|　　　　　その解決は、いまだについていない。
　　　　　　　|　| |　　|
　　　　　　　|　| |　　|
　　　　　　　!　| ヒフ

87 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:58:11 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　 .: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.
　　　　　　　　 j: : :／￣＼: : : : : ／￣＼: : :人
　　　　　　　　　　 /: : : 〉　　、￣￣,: 　　　〈: : : : :}
　　　　　　　　 {.: : : i　　ヘ、 :,　 / 　へ　 |: : : ﾉ
　　　　　　　　　 ∨: :.| 〈_:_:_:_＼}　{／_:_:_:_〉 |: ﾚﾍ　　　　　　　他にも行方不明事件？
　　　　　　　　　　　|│:|　,,}_‘__〉ﾉ　ヾ〈_‘__{,,　|: |　|
　　　　　　　　　　　ト{:〈　 ´ー　′ i 　ー｀　〉:ﾌ |　　　　　　　そりゃあ本当なのか。
　　　　　　　　　　 ∨: ﾄ　　　 L.　| __j 　　ｲ: :ﾌ′
　　　　　　　　　　〈:_:_|　　／￣｀¨´￣＼　　|:.厶
　　　　　　　　　ｰ|　　レr―――‐ﾍl 　 |⌒
　　　　　　　　　ﾄ　　 └======┘　ｲ_
　　　　　　　　　　　　「＼　＼　　　　 / ／│.１
　　　　　　　　ィニ|......＞‐┐ー―┌‐＜...... |ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

磯部が訊いた。

　　　　　　＿_
.　　　　　／　へ＼　　　　　　　　　ええ。
.　　　／ノ　 (●)＼
　　　｜　（／)　＼　＼　　　　　　　　ご存じありませんでしたか、先生。
　　　｜　　　　　 , _　　ヽ
　　　＼　　　 /　　　　|
　　　　　　＼　　　　　　 /
.　　　　　　　＼　　⊂ヽ∩
　　　　　　　　/´　　 (,＿＼
　　　　　　 /　　　　　　＼. ＼
.　　　　　 / 　 / 　　　 |. ＼ソ
　　　　　　（　y'　　　　　 .|

88 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:58:56 ID:976fb80c

　　　　／:::::::::::::::::::::::::::`丶､
　　　_／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　r'::::;_:::::::::::::::::::::_,- ､:::::::::::::::::ゝ､
　　',::/　｀`ー─'"　　　<:::::::::::::::::::ｌ
　　(::l　　　　　　　＿　ゝ:::::::ｌ:::::::j
　　 Y<￣ヽ　､<￣＿__>　`::::::l;-v'
　　　', 匸・〉　く l__・ﾉ　　 l:::::l＾ l　　　　　　　　　　　　　ああ。
　　　j　　 '"　　　　　　　　/:::::) /
　　　ﾉ、　ゝ　-`　　　　 /:::::::)ｲ
　　　ゝｌ　r￣￣￣ヽ　　 (_ィ:::ノ
　　　　', Ｖ~￣￣`ｰ'　　　ﾉ~ﾄ､
　　　　ヽ　　　　　　　／　 У l＿
　　　, -'" ヽ＿＿_　 ´ _ -‐　　 'v ヽ
, -'''/: : ;'　ヽ　　r─　´　　　　 /: : : :＼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..,,;;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿__　　　　　　''ﾞﾞ""ヾ.,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣/i:i:i＼　　　　　　　''';;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　ノi:i:i:i:i:i:i＼　　　　..__..,;ﾞﾞ　　　,,.;;;::､__,,....
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　ﾉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:｀,,､＿__　..,.,::;;;,,,,
　　　　　　 .......,,,,　　　　　　　　...::::;;;;;''""""''::;;;,,,,,..:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:;.;;..;;　　　ﾞﾞヾ,,,,..,
　　　　　,,;;;"""　"""::;,,,,　　　__／,,,;:::"""''ﾞﾞ／i:i:i:i:i:i:i:i:i::i:i:...;;""
,,..;;'';;''"";;;;,　　　　　　　　'''';;,,,,,,:::"""／　ノi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｿ,,
　／＼__,,..;;　　　　,,,....,..,,,,:"　 ___ .／　/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i...;;'''""　　　　　　:::::::::''　 ..,,,..;;;'''ヾ
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__，ィ´￣　:::::::::::::::::::::＼__ノ:i:i:i:i:i:i:ノi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:''ﾞﾞﾞ""" ノ　　/:i:i:i:i:i:i:ﾉ　　／:i:i:i:i:ノkkk;
＾､ノ　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i／,.,,... /i:i:i:i:i:i:i∧ ／i:i:i:i:／kkkkk;
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爻ヾ∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..;;;;'''""..:::;;;:;...,,;;''' ～'""::::::::::::::::::／￣kkkkkk ∧kkkk
ﾊﾊ从'从∧::::∧::::::::::::::::::::::::::::,,;.;.''　;;;;;''":::::::::::::::::::::::::::::::::::＿＿／kkkkkkkkkﾉﾉヾ从ﾉﾉ;
ﾉﾉゞゞ"ヾハ∧从∧:::::::::::::::::::::::''''""::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／kkkkkkkkkk∧kk,',,彡ミ彡爻',
〃ﾞゞ∧ﾉﾉ',ゞ从ﾞゞソ∧,,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ノ¨kkkkkkkk,,∧从从ﾞゞ;:;"ゞ,,ｿゞ从
∧ﾞミ爻彡从爻"ﾊﾊ彡ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,．ノkkkkk∧kk∧ミ从ミゞ',从ﾘ冫';',彡ﾝゞ,
爻Y;'ハﾘ从ｿゞミハ∧ゞﾞヽ￣￣)　冫￣￣￣￣￣￣从;爻ﾞヾ,,∧ﾞヾ彡,,"彡ゞ,,∧ゞ;,ﾞヾ"
iiiiｿヾii彡Y;;ミソハ人爻,;'ゞ',,..／　 (＿　　　　　　　　从ゞ从,,У,ヾ::爻::;人ﾝ;爻ﾊﾊﾉ爻ゞ;
||||||||||ゞ八;;";;}iiiiiゞ从ﾊゞミ';,　＿＿　￣￣¨三二ﾆ=┤ﾉﾉｿハ,;;"爻ﾝiiiiiiソiiiii',ハヾソiiiiii
,,．゜｡:：:　,"・｡;, ,…,¨;;ﾞヾ：・ゞ三￣　￣=三＿　　＿ｰ｀ヽﾆ"''__ﾉiiiiiii;|||||||||,,｡･：,;;‥ ,:;．
：　;・'　,¨：,,:;､;;ﾟ；・:''=="¨ニ　　─　　＝＿　 ─-　　　　＿＿ﾆ三三　=‥"ヾ,,。ヾ､ ,,::':
¨¨二￣¨ニニ''"　　＿__ 　──　ニ＿＿　　　── ─　　＿＿─　ﾆﾞ"¨ﾟ｀ゞ，,,．:･。
ニ＿三一ﾆ　　三￣　　　　　＿＿__　　　─＿＿__　　二─　　　─＿＿￣￣二¨¨"
＿_　─　　　　　　＿＿_　　‐──　　-─‐──　　　＿　　　＿─　　　￣￣＿＿___

　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　その証拠に、この山、以前はキャンプ場もあって結構賑わっていたらしいんだけれど、 .|
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　 |　今じゃあすっかり寂れてしまった。噂が広まって、訪れる人がめっきり減ったんですよ　 |
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

89 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 21:59:41 ID:976fb80c

"　　　"　　;　　　,　　:　　　" ''－- ､ _　　　　　;　;;　　:
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: .ﾞ;'　,ィ,,: : :. .. .　 ;,--― ,'''''""￣　'';'; .;: :.　;, 　 .,;:: : .. ...;,　'''　　　"
. ; ';/ /;': :: .. . ..,　. :,　　,;':.'、"　､ ".;': :. . . 　 ;:　,; ::. :.. .　:;;　　　;;　　　" 　　　　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
:; 　;: 　''''';:',,:,.''il''''''　 .;: . . .;,　　　,;':: : .. .: . 　 ; 　''''''ll!;!l''''　　"　　　"　, 　　　　　　　 |　この山小屋にしても、そうです　＞
; ; 　;:､:.　..;'.. ﾞ;.,'＿　 .;.:::..　＿ . ;:' :: . .　:.　　 ;;, 　 l!ｌ;,ｌ　　""　''　　、　　　　　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／
;; : .　;.　 :;': ;.　';'l｣ |＿＿＿| lｪ|＿＿＿＿＿　　;、;;. :;　"''　"　　"　　,
: . .　 ':､;:' : ; ,.　';､/ / / / / / / / / / / / /ヽ'''ﾞ..　　 "　 ::'':;,,　　"
;: :. : 　'､ :: : ;.　　;, / / / / / / / / / / / /三ヽ;::,、"; 　 ;; 　:;,　　　　"
: ; ; . . .:;, : :... ... 　 ;,/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/l三.ヨヽ .;;、:: ; : ;;　.:;,'''::: ..;;';､
"ﾞ''::;'':;,,'　 ;; :: : . .　;ﾆ∠ニニム三三三三|; l　l;|:: .. .;;、: .. . ::　:;., .　;. . ;,
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; ;; ;:..　,, 　"　　''　　;　　　:　　::::;;　　:　　;;　　"　　;;　::: :　.. .　 ;;　::::　. 　　;,

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木は、いくらか勢いが弱まってきた赤い炎越しに、山小屋の黒い影に向かって顎をしゃくった。

　　　／￣￣＼
　　／　　 -‐'　　＼　　　　　　かつてはなかなか管理も行き届いていて、宿泊料も取っていた。
　　|　　　（一）（●）
　　|　　　　　｜　|　　　　　　それがそのとおり、荒れ果ててひどい有様でしよう？
　　 |　　　　　__´___ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃　　　　好き好んでこの“魔の山”に来る者など、今やほとんどいないってわけで……。
　　ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　　　ヽ､ｌ　　　　´ヽ〉
　／　　/　　　 __人〉＼

90 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:00:26 ID:976fb80c

　　　　　／￣￣＼
　　　／　「　　へ＼　　　　　そんなところへですね、何も知らない我ら一行がのこのことやって来た。
　　　 |　（ ●）（●）|
　　　 |　　　　｜　　.|　　　　　　俺としては、あんまりここへ来るのは賛成じゃなかったんですけどね。
　　　　|　　　 __´___　 |
　　　　 |　　　`ー'´　|
　　　　ヽ　　　　/
　　　　（⌒`::::　　⌒ヽ
　　　　　ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
　　　　　　ヽー―'^ー-'

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木は言葉を切り、そこで一瞬、妙に不自然な沈黙が場に流れた。

ﾞ'-,;;;;;~ﾞ''''ｰ､,　　　　　 `'∴;;,..-'''"　　　　　　　　　　　　　　　　i-V;;;;;;;;;|,　　　　　　ｌ;;;;;;|　　/ﾞＹ'";;;;;;
　＼;;;;;;;;;;;;;;;＼　　　　　｀゛　　　　　　　　　　i--.... ..、　　　　ﾞｌ､;;;;;;;;;;; !　　　　　　ｌ;;;;;.! ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;:
: t 、＼;;;;;;;;ﾘｉ,;;; ! .ﾄ、　　　　　　　 _..-''ﾞ￣ﾞﾞ'''-､L;;;;;;;;;;｀''-..、　　｀''､;;;;;;ヽ,　　　　　l;;;;;;;.ｌ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　.ヽ＼.ヽ;;;;;;ﾞV;;;｝ ,!.ｌ　　　　　　 ./ ;;;;;;;;;.,..-‐'''''''''''ｰ､;;;;;;;;;;;;;｀'x　 .v､`ぃ;;;;ヽ,　　　 . ｌ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｎ．
　　.ヽ;;ﾞ'' l'､;;;;;;;;.l /;;;.!　　　　　./;;;;;;; ／　,..-‐''ｯ　 ,,､｀'./ ;;;;;;;;;;ヽ,　ﾞ'.ｌ' li.;;;;;;;＼,,　　 .ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ｌ,
!、　 .ヽ;;;;;ﾞ!ｺ;;;,iジ;;;;│　　　　 ,!;;;;;;/_,　　.! 　ｰ゛　　.ｌヽ　ｌ;;;;;;;;;;;;;;;;.!　　ｌ;;";;;;;;;;;;;;;＼　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"
;;.ｌ.　　.li.ｌ;;;;;;″;;;;;;;;;;;;;l.　　　　 !;;;;;;;;;;/, ┐　　、 .i､.iii ﾞ' !　|;;;;;;;;;;;;;;; l　　.!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼、　ヽ,;;;;;;;;;;;;;;;;;:
;;;;.ｌ　　 l;;;;;;;;;;;;...-､､;;;; ｌ　　　 .|;;;;;;;;;;'!ﾞ;./ 　. |ﾊ､,_.x、　　 .|;;;;;;;;;;;;;;;;│　 .!;;;;;__;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀'-､,,｀''-_;;;;;;;
;;;;; !　　.ｌ;;;;;;;;;'~ﾞﾞﾞ＞⊥;.!　　　.し;;;;;;;;;./ 　,i";;;;;;;;;;｀ !　　　l;;;;;;;;;;;;;;;;;;｝　　!;;;; ! .!;;;;__,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞゝ､,ﾞ''-．
;;;;;; !　　.!;;;;;,./ '´　｀''i;;;｝　　　 .!;;;;;;;;.!　 /;ヾﾍ;i､;;; l　　./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!　　!;;;; l　!;;;;｀'''√''''ｰ､､;;;;;;;;;;;;;~″
;;;;;;; !　 .,!;/゛　　,、 i､.!;;lﾞ　　_,,!;;;;;;;;;;;|　.lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;.│　 ,!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;│　 !;;;;/.,/;;;;;;;;;;;;＼_　　｀''-､;;;;;;;;
;;;;;;;;;!　 .!;;;|、　〃　|｝.!;;ﾞ''i　.!;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;;;;;;;; |　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　 /;;;/ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;￣ヽ　　ﾞ'､;;;:
;;;;;;;;;!　 .|;;; !　　 ‐ｒ　.!;;;;;.!　 !;;;;;;;;;;;;;;;;!.!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.!　_.!､;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　/;;;.ゞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　　｀‐
;;;;;;;;|　　l;;;; !　 !'~''"| .!;;;;;;;! .|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ｌ, ﾘ､'│;;;;;; / 　./丶;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,.........､;;;;;;;;;;;;;;`'､
;;;;;;;lﾞ　 lﾞ;;;;;;.!　|";'　l　!;;;;;;;!､ヽ,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;xv､ _;ヽ.ｌ}、ヽ;;./ 　,,/;;;;;;;;;;;;;;,,./ ゛　,／ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
;;;;;/　 .!;;;;;;;;;ヽ,|、;;;;| lﾞ;;;;;;_,,..ゝﾞ''i;;;;;;;;;;;;;;;;;;_;_.;;;;;;;;｀'' |>,ﾞl|/;; ｀゛ ./ﾞ;;;;;;;;;;; ／　　 ┴￢'ｰ-､;;;;;;;;;;o ｨ″
;;;/　 /;;;;;__;;;;;;;ﾞ!ﾐ;;;;,ﾞ,.ｌ;;,ﾞ,,　-'''ﾞﾞﾞ";;;;;;;;;;;ﾞﾞｰ　,_｀ﾞ''ー､.;;ﾞ '.ｌ'''''ﾞ　　./;,､;;;;;;;;'ﾘ′ 　　　　 __,,,,ゝ;;;;;;;.＼.
;/　 / ;;;;;`l.フr;;;;;;;;;;;;;_,,..―'''''''''''''ｰ ..,,;;;;;;;;;;;;;;;｀''-､　ﾞく;;ヽ　　 .!'",/;;;; /　　　 _,, -‐'''ﾞ´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
".,./ ;;;;;;;;;;;!ﾞ;;;;;;;;,,./ ´　　　,i'､　　 .,,､　｀'''､.;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ'､ .ｌ;;; l　　　/ ;;;;;;.ｌ　　,／ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,r"　　　　./ﾞン′　　ヽヽ　　`ぃ;;;ﾞﾐi.;;;; ｌ .!;;;.!　　ｌ;;;;;;;;;;;.! .／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,..-''''ﾞﾞﾞ￣￣ﾞﾞ''-
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i"_，　　　　!ヾ　　〟 _．｀ﾏ　　ヽ; l. };;;/│;;;,!　 .l;;;;;;;;ノ / ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　iｰ ,,.
;;;;;;;,iﾘ;;;;;;;;,l/ﾞ;i|八〟　　　.,..,ii''７ﾆ'>i､　　 _,r､/;;;l/ / . !;./ 　　l;;;;;/ ./;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　., ┐　　　｀'､;;ﾞ'､
'.!;/./;;;;;;;;;";;;;;;;;;;;;l　　　.,i'ﾞ‐';~丶;｀;;;/　 /丶;;;;;;;;;;;lr‐'シﾞ　　　 .ｌ; !　.!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　./;;;/　　　　　.ヽ;/
. ﾞ",!;;;;;;;;;/'l,;;;;;;;;;;,!　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　!;;;;;;;;;;;;;;;;;,／　　　　　 .‘゛　!;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　'､_./ 　　　 .．
　 .!;;;;;;;;;;;! . ｌ;;;;;;;;;l　　 ,!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　./ ;;;;;;;;;. ／　　　　　　　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!'ﾞ!　　　　　,ﾞ､,, r‐''''～

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

もちろん、今の話をまるっきり鵜呑みにする者などいなかっただろう。

が、その一方でこの時、皆の脳裏に、各々多少の不安めいた感情がよぎったことも否定できまい。

91 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:01:11 ID:976fb80c

　　　　　／￣￣＼
　　　　／　　　「　＼　　　　　といったところで、俺の話はおしまいです。
　　　　|　　　（へ）（へ）
.　　　 |　　　　　　│ │　　　　　この山のどこかに眠る殺人鬼を起こしてしまわないよう、
　　　　 |　　　　 ___´___ﾉ
　　　 ,|　　　　　　　}　　　　　　　せいぜい注意しましよう、ということで
　　／ヽ　　　　　　 }
　　く　くヽ　　　　ノ
　　＼　`' 　　　く
　　　　ヽ、　　　 |
　　　　 |　　　　 .|

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
　　.　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、　　　　　　　　　　　ふん。
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i　　　　　　　　　　　ま、どうでもいいですけどね。
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

洲藤が云った。

92 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:01:57 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　　本当にそんな殺人鬼がいるんだったら、
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　ここは一つ、ご登場願いたいもんだな。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |　　　　　　　　みんなで記念撮影しましよう。
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l　　　　　　　　　　僕が腕をふるいますよ。
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そのおどけた声を聞きながら、

　　　　　　/　　　　　　　　　　 /
　　　　　 .′　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾑ弋
　　　　 .′:/　　　　　　　　 /　./ 　　　　　　　　　　　　　　　　　､　/.ﾑ　＼
　　　　 l .,ｲ　　　　　　　　.ｲ　./ .|　　　　　　 .､.　　＼　　　　　　.V　.ﾑ　、__ニ-
　　　　 |/｜　　　　　　./ | ./　 |　　　　　　　＼.　　＼　　　　　.∀.ﾉ|　.|
　　　　 l 　|　　　 r ､　./ヽ}./　　|　　 i　　　　　　.ﾄ､　　＼　　　　 V ,| 　|
　　　　　 l　　　 j　'　.{　 }'　　 |　　 | 　　　　　.ィf´＼.　　}　　　　V.,　 .|
　　　　　　.l 　　.i　 .i　i　〈､　　l 　 .|　　ー´ i x===x､. 　}　　　　.|´　ﾙ
　　　　　　　ﾄ　　l 　 {　|l　.i　`ー从　|　　　　　if弋__ﾉV}　 !　　　ﾊ/　ﾉ
　　　　　　　| i 　.l 　　ﾘ　辷ミx/　 )'　ノ｀　 |.ﾞ弋三ノ | /i　　/| .'　ｲ　　　　　　　　　　(ああ──、だめ)
　　　　　　　ﾚﾍ : |'， .} / 　ヽ__,/　.i!　/　ﾉ　,'　　　　.ﾘ.从　ﾘ　　　|
　　　　　　　　ヽ| ヽ /｀ヽ　　　　 .L/　 ,´ﾙ'　　　　　　　/　)ノ　从　.l
　　　　　　　　 /从＼　　　　　　　　　　/　　　　　　u 　, f´＼从i　｀ﾉ
　　　　　 _／三三L　ヽ　　　　　　　　　|　　　　　　　／::l　.=;|ー'、
　　　　　》三三三三=ヽ　　　　　　　　 j　‐　‐　　 ´ 　,ﾉ .=/三三'__
　　　　 ./＼三三三三三＼　　　　　　　 |ー-- ´ _＿／　=/三三《三＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

茜はまた、何かしら強い恐れと予感に捉われた。

93 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:02:42 ID:976fb80c

　　　　　　/　　　　　　　　　　 /
　　　　　 .′　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾑ弋
　　　　 .′:/　　　　　　　　 /　./ 　　　　　　　　　　　　　　　　　､　/.ﾑ　＼
　　　　 l .,ｲ　　　　　　　　.ｲ　./ .|　　　　　　 .､.　　＼　　　　　　.V　.ﾑ　、__ニ-
　　　　 |/｜　　　　　　./ | ./　 |　　　　　　　＼.　　＼　　　　　.∀.ﾉ|　.|
　　　　 l 　|　　　 r ､　./ヽ}./　　|　　 i　　　　　　.ﾄ､　　＼　　　　 V ,| 　|
　　　　　 l　　　 j　'　.{　 }'　　 |　　 | 　　　　　.ィf´＼.　　}　　　　V.,　 .|
　　　　　　.l 　　.i　 .i　i　〈､　　l 　 .|　　ー´ i x===x､. 　}　　　　.|´　ﾙ
　　　　　　　ﾄ　　l 　 {　|l　.i　`ー从　|　　　　　if:ﾆﾆﾆ:V}　 !　　　ﾊ/　ﾉ　　　　　　(いけない)
　　　　　　　| i 　.l 　　ﾘ　辷ミx/　 )'　ノ｀　 |.ﾞ弋三ノ | /i　　/| .'　ｲ
　　　　　　　ﾚﾍ : |'， .} / 　ヽ__,/　.i!　/　ﾉ　,'　　　　.ﾘ.从　ﾘ　　　|
　　　　　　　　ヽ| ヽ /｀ヽ　　　　 .L/　 ,´ﾙ'　　　　　　　/　)ノ　从　.l
　　　　　　　　 /从＼　　　　　　　　　　/ 　　　　　　, f´＼从i　｀ﾉ
　　　　　 _／三三L　ヽ　　　　　　　　　|　　　　　　　／::l　.=;|ー'、
　　　　　》三三三三=ヽ　　　　　　　　 j　t　っ　　 ´ 　,ﾉ .=/三三'__
　　　　 ./＼三三三三三＼　　　　　　　 |ー-- ´ _＿／　=/三三《三＼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌━─━─━─┓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃　いけない　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─━─┛

　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヘ　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼,　　　　　ヽ
　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　V∧　　　　Vヽ,
　 /　　　│　　　　　!　　　　　　　　 V|ヾ　　　　　ゝ
　.　　! 　│　　 │　　|　　ヽ:　　　ヽハ　　　　　　＼
　　| ∧ ハ　　　.│　　 |　　　　ﾊ　　　　ヾゝ::.:.:.:.:.:. 　ヽ
　 ::, -┴ ､　　　::/l　　:::ﾄ､　　　 ::l　　　　..:::Nl :.:.:.:.:.ヽ:.:. |
∠´　　　ヽ ::__:ｉ l　　:::l　｀､　　 :l　　　　.:::::ｊ:::.:.:.:.:.:.ハ:. ,
　　￣｀~ヽ｀y　l　l :∧:l＿_ ｀､ .::l　::::::::::::___:ｊ:::.:.:.:.:.:!　j/
　　ヽ､　　 l/　/| -V￣ヽ　　　W|　::::「二ヽ|.:.:.:.ﾘ V　　　　　　　　　　　　 (そんなふうに云っちゃあ……)
､　　　l 　 /イ´:::!　　　　　　　 .|　:::|┌j　l.:.:.:/
_ ＼.　L／ /!::::::|"､＿＿＿＿＿ .|　:::|/／/ .:（
ｉ　ノ｀'´　 ∧ ヽ::|　　　￣￣￣　´l　::::|　／　:.:ゝ＼
二__ __ ,イ /　　｀　　　　　　　　 }　::::|く´　 :.|　`ー
　||　|「　|l |.　　　　　　　　　 ,ィ　:::::|　ヽ　jﾉ

94 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:03:27 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',　　　　　　　　　　もしもそいつが現われたとしてですね、
　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､　　　　　　　この中で最初に狙われるのは誰か？
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ　　　　　いっちょう賭けでもしてみましょうか。
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

　　　　　　　　　　　　　　 /l
　　　　　　　　　　　　　ﾉi　＿/.f_、
　　　　　　　＿Y´￣ﾒ´　i　　　　｀ヽ
　　　　　　　　7　 f　 .　　　　丶i　　ゝ/
　　　　　　　 ,.f-‐ ア丁￣｀丶　　　　V
　　　　　　／　　　　　　　　　＼　　　∧
　　　　／　　./　　　　　　　 V　　　l
　　　 ./　　　 /　　　　　　　　i::V　　N!
　　　 j　　　 {　　　　　　　　 i:::|　　<
　　 ./　　　　　　　　　　　　　　 |::l/i　ル　　　　　　　　　(だめよ)
　　 | .!　　　 i　　　　　 ! 　　　 .|::i i /
　　 |;ハ　　ﾊ　　 {　ハ　!　　.iｲ:| ﾘ
　　 |!　 ' 　 | ヽ　 /／　ヽ|　 ./ |:.|
　　 |　　ハヽ　ヽ{　　　　ｲ:.:/ 人:ーへ
　　　　 {:ヽ!:.:丶.　r_っ　／/|:.///::::｀¨¨´|
　　　　 l::::ヽﾙ|　「二二イ　|'.//:::::::::::::::::|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

茜はきつく目をつぶり、心の中で繰り返した。

と、耳の奥で、その言葉を反復する木霊のような声が

95 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:04:12 ID:976fb80c

.　　　　　 /　 i| 　　　　　ﾄ､/　V|　/　ヾ　丶＼
　　　　　 /　　ｌ { 　l＼ﾄ､|＼､l　＼川 r 　、||　　￣
.　　　　 i | 　 / 乂 l 　 r＝彡′ ﾉ ∨/⌒ v　　　ﾄ､
.　　　　 l | 　i |r彡｀　　　　　　　 ) 　ﾊ　　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌━─━─┓
　　　　 ',ﾄ､从　ヽ　　　　 u　　　　　_ ｲ::|　/　′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃　だめよ. │
.　　　　　ヽ＼ヽ　　　　　　　　　爪|::l:::| /人|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 └━─━─┛
　　　　　　　　丶　　⌒　　　　　　 ′ ! l:::l//
　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　ｲ |::lノ/
　　　　　　　　　　ー- 　　　 ∧i ﾑ:! ′

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

聞こえる。

　　　　　　　　　 !/ /　　　 .ヘヽＶ｣∠ヽ. 　＼＼＼
　　　　　　 _＿ノ／　..　- ､￣　≠‐　- :.:｀ヽへ　　＼＼}
　　　　　　ﾌ　／　　　　　　　　　　｀ヽ:.:Ｖ| !　　Ｖ {
　　　　　　//／　　　　　　　　　　　　　　 Ⅵリ　　　 :、
.　　　　　 i//　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨ﾊ　　ｉ　､＼
　　　　　　 /　　./　　 / 　　 !　　 !　､　　　　 ∨｝　 } 　厂｀
　　　　　. |　　./　　 / 　　 !　　 !　　ﾄ､　　　　∨｝ｊ!　ﾄ､
　　　　　　|　　:i　　ハi　　.|　　! :|　　 V　　　　ｊ/　ｊ! 　ﾚ
　　　　　 |　　:l:　:/＿ V|∧　_|:_|__| 　　ｌ　　　　:ﾊ　/Ｖ⌒ヽ　　　　　(だめ)
　　　　 | : : | : : ｆ _,}Ｎ_　ⅤN∨__}N__}N.　　 |-、! ! ! |
　　　　 |: : ∧: l:|z=＝ミ　 Ⅵ　z≠=ﾐ､ |　　 |rj j!ﾉ｜{
　　　　 Ⅴ:lヽⅥ|.　　　 '　　　　　　　 | 　　|ﾉ .!ﾊ∧ゝ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌━─━─┓
　　　　　　　ヾ、　＼　　　_ ＿　　　 u ,i　　/: :/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃　だめ　 │
　　　　　　　　＼/|: ＞　｀⌒´＿_　イ:/: : 厶i/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─┛
　　　　　　　　　　 _ﾚ＞ '　 /}　　　　 }f: : /　 ||＼

96 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:04:57 ID:976fb80c

　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　 /　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
.　　　　　 ′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　 | | │ﾊ／　　　、　 │　　　　ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　 |ﾊ　Vｨ＿＿, 　＼|､＿＿＿　 /／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
.　　　　 l　ゝ＼￣　　　　　￣　　　イ／/ ) |:::::::::::::::::::＼ |　　　　　　　(だめ……！)
　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
.　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　 u　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　ゝ.　　-　-　　　　　 ..イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　｀　．.　　　　　＿＿　--――-､
　　　　　　　　　／￣￣￣｀￢ｰ-￣＿　　　　＿＿＿_ヽ

　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ　　　　　/　l　l　　彡　　　　　　　　　ﾄ
　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ　　　　　　　　　彡∧　　　　　　　　ハ
　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　/　　/　/　　　l l/l　　　　　　　　　　　l
　l　　　/　　　　　　　　　　ﾍ　　　　　　　　　　　　 l／　ヽ　　　　　 l　ll　　　　　　　　　　ﾘ
　l　　 /　　　　l　　　　　　　ﾍ　　　　　　　　　　　　l　　　ヽ　　　　　　ll　　　　　　　　　　l
　l　　/　　　　{　　　　　　　　ﾍ　＼ ,,.x　　　　　　　 l　　　ヽ　　　　l　 ll　　　　　　　　　　 {
　l　 /　　　　ヽ＼　　ﾍ＼　　ﾍx '´＼　　　　　　　 l　　　 l　　　　　　ト
　!　l　　　　　　ゝ　＼　ﾊ ,,＼'´ l　　　＼　　　　　　l　　　/　　　ﾉ　 /　　　　　　　　　　　ト
ハ　l　　＼　　　　ﾍ __ Ｘ　ﾄ--__ﾘ_=--≦リ＼　　　　l　　 /　　　j　　∧　　　ﾍ　　　　　　ハ
　!ヽﾍ ∧　{ヽ　　　　k　彡ｲ三込;;タ:: 乂 l　　　　　ll ／　/　　　　　　从　　　　ミ　　　ハ　ト　　　　　　　　　　だめ。
　　ヽヽkヽ从ﾃx　ﾄ　ヽ　　ﾍ辷 -x=='　/　　　　　　j　　/　　从／／三ﾍ
　　　ハヽヽl 弋ﾘヽl ＼ﾏ　　　　　　　 /　　　　　　/　ﾍi　　／　／彡三三 l
　　　　∨　　　ﾄ　　　　ヽ　　　　　　 /　　　/l　　/　　　ハ　／彡彡三三三k
　　　　ハ　 / 　ﾉ　　　　　　　　　　 /l /　／/　 /　／　／彡彡三三三三三ﾍ
　　　　　ｲ /　ソ　ヽ　　　　　　　　　　//／/／/／／彡彡彡三三三三三三
　　　　　　　　　　　ヘ　 _　-　　　　　　　／　／彡彡彡三三三三三三三三ゝ
　　　　　　　　　　　　　　ヘ　　　　　　イ／　／彡彡彡彡三三三三三三 ----
　　　　　　　　　　　　　　　　` -　'　／　／彡彡彡彡三三三三三三　／::::::::::

97 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:05:42 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　___.....
　　　　　　　　　　　 /7(())　　コ匸
　　　　　　　　　　　　　//　ヾ〉　￣|｢´　ｒ>r>,ｸ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒシ
　　　　　　　　　　　　　　　　，　　／
　　　　　　　　　　ゆ`　∴　　　.:;　　　”
　　　　　　　　｀　　　　｀　　・　从　　，　'　　；
　　　　　　　　　＼　，　,；`　,. .:⌒｀)ゝ　う　　　　／
　　　　　　　　　　　＼人え,;.｀）,;人 .:ソ⌒）　・　／
　　　　　　　　　（´.::人.: ,,;从.: ,;ん .: ,;・ .: ,ち／　"
　　　　　　　　て:.（´:;∴，（´.:,;´⌒）从"てソ.:.,・,,）
　　　　　　　　￣￣Y＾Y￣　W￣￣￣￣YY⌒￣

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思わず声を出した時、炎の中でパチッと大きく木が爆ぜた。

　　　　　　　　,.イ
　　　　　　　（＿二二￣７,イ人　　　　　　　　 ,ィ　ﾄ､
　　　　　　　　　　　 /／（_ノし' ,ィ　ﾄ､　　　　（ :し'　しイ
　　　　　　,.イ　　　／/　　　　（ :し'　しイ　　　￣7 |￣　　:ト､j7__,ｨ
　　　　　 |　'ー―'´ / 　　　　　￣7 |￣　　　　／,ｲ :!　　　＞ｨr―'　　 l7l7rｧ
　　　　∠,. -―― '　　　　　／,ｲ |　　　＜／ﾉノ　　　＜_ノ:|」　　　　　/'´
　　　　　　　　　　　　　 ∠／ﾉノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉしイ　　ﾘ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（:::::し'::::::ノ　　　　　（'´
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　　　＾＾"'''" 　　　人ィ　 |　　　 : : ::ノ::::|ィ: ::⌒)ノ: :　　:ﾚ'　　　　　　　ﾉ
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　　　　　　　　　　　　　　ﾊ八人　　　　　　　　人从　　　　　　　　＾''' '' ´
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真っ赤な火の粉が散り、彼女に向かって飛んでくる。

98 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:06:27 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　ヽ　V/　/ /
　　　　　　　　　　　＿＿ , ．イ　　　　　　　V }　　イﾆミー- ﾉ
　　　　　　　　　　　￣¨ー .,　　　　　／ヽ　　　／　ヽ　r-イ
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　./:::...:.＞＝<_＿:.:ハ＼
　　　　　　　　　　　 .／　　　　　 i / ＜´　　　　　　＞::>　＞..._
　　　　　､＿＿ , ィ　　　／　　ﾊ !　　,, -　　　　　　　ハ从＜
　　　　　　　￣￣＝ ≠　 { i　　 /八! ／　　　　　　　　　　 }/　ヾﾐ;､
　　　　　　　　　　 /　　　!i!　 //　 ,'　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　 ,'　　　ﾊ　川　/　　,　　　　/　　　　　　　ﾍ
　　　　　　　 /　　　　 ∧ |　 ,　　,'　　　　 ,ｨ　　　　 ,'　　 i　　ハ
　　　　　　　／　_,　　　　 }!　i　　,'　　　,／ ,'　　　/ /i 　 ./|　　　 |
　　　　　　　／　イ7　　　　　 |　 |　 ,'　´¨,ﾃﾅ=i‐- 　ｨ／十-.|,,_i　　　 .i 　　　　　　　　　　　、
　　　　　　　￣　　i　　　i!　从　 | .i l　／　しﾍ､／/｜　,孑气く　　　　 .|　　　　ヽ　　ヽ　　　ヽ
　　　　　　　　　　 |　 / .|　　 ∧ .| .| lK｜｛::::}　|　　l／ｌｆ:::ｉｌヾﾉ/　　　| 　　　 l　　 l　　　 l
　　　　　　　　　人八 {､　 ,' ∧ >　l, 弋_辷'ン_　　　､辷ﾝ　/　 / ﾉ.,　　　　ﾉ　　ﾉ　　　　ﾉ'
　　　　　　　／　| {_ ノ!　　　|::|{　＼! 　￣"´　　　｀"￣　ｲ.//／./　　　　　　　　　 ´
　　　　　　　　　　　Vーイ{ 　　|::|　ト.､ > u 　　　　　　'　　　イ／
　　　　　　　　　　　 /　　　.|::|　|::|::|　　　　　　　　　　　　　,ｨ'
　　　　　　　　　　　　 /　／Yﾟ|::|　|::|::|､　　　⊂ニ＝⊃　／
　　　　　　　　　　　 /..／＿ﾄ.|::|　川ﾟ|　　　　　　　　　／

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驚いて身をよけた。

バランスを崩して地面に両手をつき、途端、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -─-- ミ＿＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　 _-‐ ￣　　　　二￣ . ミ
　　　　　　　　　　　　　　 _,. .-──＜￣￣＼Уx＿＿｀ヽ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　 , .＜　　　　　　　　｀　＜y　　　　　　＼
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　ヾヽ、
　　　　　　　　イ｀　、　　　　　　　　　　　　　　V　　　　　　　ヽヽ、
　　　　　　 .／　／　　　ヽ　　　　　　　　　　　　V　　　　　　　ムヽ
　　　　　　./ 　　/　　　　／i 　　　　　　　へ　　　ﾊ　　　　　　　ﾊ　Y
　　　　　 /　　 /　　　／　　V /　　 /　　　　　　　 !　　　　　　　　!.ﾉ
　　　　　,　　　!　乂_/　　　 !i　　　,ｲ　　　　　　　　} 　　　　　　　 !
　　　　　!　　,.ｲ　.／ i `"　　!,!: :七丁　　　　/　　　.!　　　　　　　.!
　　　　　|　/　! ,ｲ　　.i　　 / レ'　　|　　　 ,ｲ／　/　　　　　　∧/
　　　　　 V　 .人!　＼i　　/ 　＿＿.|　 .∠,ｲ　／　　　　　　/　 '　　　　　　　　……つっ。
　　　　　　　　　人　　レ'　　　　　 !／　　)イ　　　　　　／
　　　　　　　　　　　＞　_　　-っ　＿_＿_イ　/　λ 从　/ .:
　　　　　　　　　　　　｀>｀二二二´-― ,´《.　i　/　ｿ　ソ　’　　 ,
　　　　　　　　　　　　｀ t二二二二二／:::＼V　　　　　/　　　′
　　　　　　　　　　　　　　ヽ　.r `"!　.ﾉ .ﾑ.、::. ＼　　　ノし／
　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾏ.！！ /　　.! y .::.　)　　｝　て＿＿，
　　　　　　　　　　　　　 /　!　!　.! /　　 ,!　ﾍ::／　 _ノ　√￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.。-一…´¨　(⌒ヾ

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右手の指に生じた痛みに、茜は声を洩らした。

99 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:07:12 ID:976fb80c

.　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V:::::::::.
　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞7:::::::::::::/ヽ:::::::::::::::::::::V:::::::::.
.　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　/:::::::::::::/ ／､:::::::::::::::::::}::::::::::!
　　　/:::::::::::::::＿＿:::::::::::/ 　　l:::::::::::::/ｨ　＿､:::::::::::::/::::::::::!
　　 !::::::::::::::::::::::::::::￣:::/= 　　l::::::::.::/r' イ卅仆:::::::;r｀ヽ:::::′
　　　|:::λ::::::::::::::::::／!幵ハ　 l:::::ﾉjﾉ　　.又夕! ヽ/:!　l }::ﾉ
　　　レﾞ .V::::.:::::::::ヽ　卅ﾘメ　レﾞ　　　　勹_イ　|::::|　/::/　　　　　　　　　　あっ、大丈夫ですか。
　　　　　V　::::::::::::丶勹_ノ　　　　　　　　　　　　|::::| /:/
　　　　　　V:::::::::::::::::::::| 　　　　　! 　　　 u.　　|::::|':/
　　　　　　ヽ::::|ヽ::::::::::|　　　　　　　　　　 ,ｨ'|::::|ｲ
　　　　　　　ヽ|　＼:::::|　　　　　　ｒ‐-.、　　 , '|:::|ノ
　　　　　　　　　　　＼| ＞、　　／｀＼／　.|::/
　　　　　　　　　　　ヽ:::.`／　ｲﾍ　ｨ　　イ-－ '￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　　｝,'　￣￣￣ヽ　　|　　　 /　　ゝ
　　　　　　　　　　 , '　　　　ﾘ　　￣￣｀ヽ　　λ　　/ ＿＿＿＼―、
　　　 -―、＿　　／　＼　　/　　￣￣｀ヽ　　　冫　!／　　　　　　　　＼
　／　　　　　￣　　　　人　!　　￣冫 , '　　　,'　　＼　　　　　　　＼
／　　　　　　　　 /　／!　　　 λ,'　　　/　　　　冫　　　　　　　　　　｀、
　　　　　　　　　　　　　ヽ/ 　 !　　　/　　　／/　　　／　　　　　　　　　　　　　ヽ

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真っ先に声をかけたのは、麻宮少年だった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヾ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ヾ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｽﾞｷｯ　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 -´丶　 /ヾ／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _　　　　／　丶ノ
　　　　　　　　　　　　　　　／- ´}　／　　 : :／　　 _ _ ,
　　　　　　　　　　　　　　／　 : ／　　 : :／　　／　 : :/丶
　　　　　　　　　　　　　　 / 　 : ／　　: :／　／　　 : : /ﾍノ
　　　　　　　　　　　　　　 /　 :／　　　 :/　／　　　: :／ : :/
　　　　　　　　　　　　　　／／　　　　　　`´ 　　: : :／　　:/
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　:／　　　　/ﾉ
　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　:j　　 . - '´ :/
　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　　　　　　　　 /´ 　: : :/
　　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　　　　　　　　　＿ﾉ
　　　　　　　　　　　 j　　　　　　　　　　　　　ノ￣

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炎の光で、手を見た。人差指の先だった。

手をついた拍子に、石の角か何かで切ってしまったのである。

100 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:07:57 ID:976fb80c

　　　　　　　　（ (￣｀　＝=‐--　　.._ .__
　　　　　　｀ヽ､,'　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　|｀　-=ﾆ　...__
　　　　　　　　　　　i　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　;
　　　　　　　　 u

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指先の皮膚が細長く破れ、血が流れ出していた。

赤く揺れる炎に照らされ、その色は赤ではなくて濃い灰色に見えた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿__
　　　　　　　　　　　　　 .r..:::´:::::::::::::::::::::::::::::::....､
　　　　　　　　　　 ,ィ..´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　 ,.　´　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　 /　　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'.,
　　　　　　 /　ｨ　　　　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　',
　　　　　　,' /　　　　　　　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 　　 ,
　　　　　 , .ｨ　　　　　　　....:::::::::::::::::::::::ｨ::ハ::::::::::. 　　　 l
　　　　　, ∥,　　　　 ...::::::::::::::::::〃::::::∥∥ ､::､::::::..　　　　|
　　　　 |' l ,'　　　 .:::::::::::::::::::／ ,'::::::/,:〃-‐ヾ､::::::::...　　 |
.　　　 |',| .l　 ....:::::::::::::::::::::ｨ"　ｌ:::::;'〃′ 　ヾ､::::::::::::.....l|
　　　　 |ﾊ..:::::::::::::::::::::::::::ﾄミヽ、 l::::;'ﾅ　　,rzzzzzﾐ,〉:::::::::::::;ﾘ
　　　　ﾒ l::λ::::::::::::::::::::;'::::::!lヾｌ::l　　　'ﾞ!l:::::::!ｌ ∥:::::::::::::;'　　　　　　　　大丈夫ですか。
.　　　ﾄ l::i ､:::::::::::::::::::lﾌzzｸ　ヾ|　　　勹z:ｸ ,'l,::::::::ｨ:/
　　　　　 l::l ',::::::::::::::::::ﾄ=＝"　　　　　　ﾞ＝=="〃::::〃'
.　　　　　ﾍ:l .ﾍ:::::::::::::::|　　　　　　、　　　　　　ﾉ;;:ノ "
　　　　　　　ヽ　ヽ:::::::::ﾘ　　　　　　　　　　　　 "ｨ
　　　　　　　　　　＼:::::l＞．　　　　_ _　　 , くﾚ
　　　　　　　　　　　　ヾ|　|ﾄ＞　､　　　ィ´ﾊ:/
　　　　　　　　　　　　　　＞"　／｀´　ﾊ　ﾘ

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麻宮が重ねて声をかける。

101 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:08:42 ID:976fb80c

　　　＞　　　　　　　　　彡彡彡彡彡∨≧　　从　　　≦ミミミミＸ
　/　　　　/　　　　} 　　　　　　　　　　l　　　　　l 　l　　　＼＼　　　＼
li　　　　　|　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜
li　　　　j　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　l　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　l　　　　　　ヽ　　　　　ヽ
　　　　 i　　 /　　　　/　　　　　　/　　/　　　　　　　ll　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　人Ⅵ　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　lll　　　　ﾍ　　　　　　　　　　ﾄ
　　　 /　　/　　　　　　　　　　/　　/　　　/　　　　/ll　　　　ll　　　　　　　　　　　ﾍ
　　　　　 /　　　　　　　　 l　l　　　　　　　　　　　/ l l　　　　/l　　　　　　　　　　　　ﾊ
　/　　/　l　　　/　　　　　　　　　--　　ーー－一、　　　/　　　　　l　　　　　　　　 l
/　　/　　ﾊ　　/　　　　　　 l　　　　/　　　　　　　/l　　 /　　　　/　;　　　　　　　　　ト
　 /　　　ｲ　 / ヽ　　　　　 l　　　 /　／l　　　／　l　　/　　　　/　　　　　　从　　　 }
l/　　　　l　l/　/　l　　　　　l　　 / ／___l_ __／　　/　ｽ　　　　/　　/-x/　　k　　　　ハ
　　　　 //l　l　　l　　　　　 l　　／　　　/／　 `　/／ｿ　　／　　ﾊ　/ ＼　ﾒ　　　/　　　　　　　 ──ええ。
　　　 //　ﾍ　ヽﾍl　　　　　ｲ彡イ斥圷ﾞﾃ气ﾐ　/　　ﾉ　／　　／/　/l　ﾊﾍ　　　ﾊ
　　　/　　　ﾍ　ヽl　　　／ l　弋辷:::::::::::乂　　　ノ／メ　／　 /／/／　　ハ　l　　　　　　　　　　ごめんなさい。
　　　　　　　　ヘ l　／　　ト　　　　　　``　　　　　／彡ｲ从斤示ﾐﾐ　　／／ヽl
　　　ﾊ　　　　／　ﾄ　　　　ﾊヽ　　　　　　　　　　　　气辷:::::乂ソ／／l　　　　　　　　　　　　　　大丈夫。
　　　　　　　/／ﾊ　　　　lトx　＼　　　　　　　　　　　　　　　``／イﾊ　k∧
ｲ　　　　从- ￣　=ヽ　　　l　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　／　ﾄ从
∧ 从ﾊ／三三∧∨ヽ　　 l＼　　　　　　　　　__ .r、　　　　　　 /　l　 l
　三三三三三三∧∨ﾍ　 lミﾐ　　　　　　　　/／ / .y　　　　　ｲ　 l　 i
　三三三三三三ﾆ∧∨ヽ l三ミﾐ＼　　　 /　 /　! .l　　＜　ﾊ　∧　}
　三三三三三三三∧∨ヽl三三ニニニ //　/　 j　l≦ニニﾆX=-从
　三三三三三三三三＼＼三三三三ﾆ//　/　 /　f`i／l三三三X=-
　三三三三三三三三三＼＼三三三//　/ 　 /　l /　 j三三三三三Ｘ=-
　三三三三三三三三三三＼＼三ﾆ//　/ 　 /　ﾚ　 /三三三三三三三

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茜は小さく頷き、傷ついた指先を口に含んだ。

血の味は昼間に流した汗よりも薄く、僅かに鉄臭かった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　,.-:::::´::::::::｀::￣`ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::/:::::::::､::::::::::､:::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::'::::::::::::::h:::::::::|::::::::::|:::::::|
　　　　　　　　　　　　　/:::::i::::|:::::::::::::::::||::::::::|:::::::::::|::::::|
　　　　　　　　　　 i:i::::::|::i|::::::::::::_::::l__:_:_:|:::::::::::|-.::|
　　　　　　　　　　　　 |::|::::::|:|.ﾚ__ヽ´　/'rヾjﾒ:::::::::::|"!::|!
　　　　　　　　　　　　 |::|:::::::lfi'frｭﾞ　　ゞ彳|_:::-‐ｲ/::::|!　　　　　　　　怪我したの？
　　　　　　　　　　　　 '´|｀::｀ﾔﾞ≡'　　　　　 |:::::::|´:::::|:!
　　　　　　　　　　　　　ﾞi:::j::::゛.　　`　　　　 |:::::::|:::::::|ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ´ |::::::|ﾄ､　 `　　／|:::::::|::::::::|　ﾞ､
　　　　　　　　　　　　　|::::::|i:::::`　 - ´ 　 |:::::::|::::::::ﾞi　|:
　　　　　　　　　　　　　 |::::::||::::::/f!　　　/j|:::::::{､::::-ゝ､|:､
　　　　　　　　　　　　　 |:::::|-イ　i!j　 ,〃´|:::::::|　　 ,　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　／!::::|　| 　 !i／/ 　 ,!::::::|　　/　　 |ﾞヽ
　　　　　　　　　　　　／　 |::::|　|　　l' /　　/ ﾞi::::::|　　| 　　/　｀､
　　　　　　　　　　　 ,ｲ　　 |:::::|　| 　／　 /　　i:::::::| 　| 　 /　　　ヽ

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磯部夫人が立ち上がり、茜のそばへやって来た。

102 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:09:28 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,...-‐:＝‐-‐=-....､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.:::´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::,::::::i:::::::::::::､:::::::::::::::､::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 /:j::/:::::::|!:::::::::::::i::::::::::::::::ヽ::::::::::ﾞ!
　　　　　　　　　　　　　　　　/::!::j::::::::::il:::::::::::::::|::::::::::::::::|::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　 /:j:::|!:::::::::::|ﾞ!::::::ヽ:::|:::::::::::::::::|:::::::::::|!
　　　　　　　　　　　　　　　 |:::|::||::::::::::::| 〉,ｪ≦､|::::::::::::::::::|:::::::::::|!　　　　　　　　ちゃんと消毒した方がいいわ。
　　　　　　　　　　　　　　 |::::|:|_!_≦"´'/.i!ﾟ●ji:|:::::::::::::::::|:::::::::::|!
　　　　　　　　　　　　　　　 |::ﾊ:ﾊiﾟ（j}　　 `=‐" |::::::::::::_::,｣::::::::::|ヽ　　　　　　　　──あら。あなた、顔色良くないんじゃない？
　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::,ﾉﾞﾄ'"　　　　　　j_-ィ‐´::::|::::::::::::| i|
　　　　　　　　　　　　　　　ﾑ/　く! ヽ　　　　　　　|:::::::::::|:::::::::::|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　! ヽ　 ‐-　　　　ｲl:::::::::::|:::::::::::| |:|
　　　　　　　　　　　　　　 |　　 Y´ﾞ＼　　_.イ　 ,ｲ:::::::::::|!::::::::::| |:|
　　　　　　　　　　　　　　　　〉-､ノ　/::!:｀ｱ'fj　／／:::::::::::|ﾒ="￣ﾞヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ. /ヽ"_,j/´/ i／／　|::::::::::::|　　 i　　ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　 /　ヽヽ/"　/ 　| ﾒ'"　　　|::::::::::::|　　,'　　　ﾞ!ﾞ.
　　　　　　　　　　　　　 /　　　ヽ|!/ /　.／　　　　./|::::::::::::|　 j　　　　,､ﾞ!
　　　　　　　　　　　　 /　　　　 |!'　! ／　　　　 /　|:::::::::::::|　,'　　／　ヾ!

-＝=- 、, -= ￣フ
::.　　　 f　孑三≠‐　．
::.　, ≧´=-"　　　ィ_,_r≧＜⌒
x　　::.　_　　 ≠´: . .　　　　｀
::. 　::.　ｲ　　　　　　　　　､　　　ヽ
::.　.:／.　　　　　　　　　　＼　＼　.:.
＼/: :/: :　 :　　　　ヾ:　　　　　　ヽ .:.
:./　〃: :./.:　　.|: :.　ﾊ:ヽ＼　　ヽ　.:. i:.ｉ
:i 　'/ : : |: 　　:i|:.:.ｉ　　l: :ﾄ､ヽ　ｉ: :.ｉハ!
!　 .: : : i |: 　　小:.ｌ　ﾊ l厶斗:. :.|: :.|　 }
!　 .: :ｉ:.:|ﾊ:　_/ﾘ　!|:　.' ﾉ′ }:ハ: :|:.:.:!
!　 .: :|斗七/　　　|: /　,ｨf笊ﾐｙ|: ﾊ: ;.　　　　　　　　　　そ、そうですか。
!: . .: :|'..ﾚf示ミ､　 | '　八rｆ:j:} 从ﾊﾉ
:i: . : :|《ﾊr':ｆ:j::}　 /'　　　ゞﾟ '　ｲ乂
:ﾊ. .:小　う::ソ　　　　　,　　　　| i ﾄ､
: :}: .:从　　　　　　　　　　　　　小:ト:.＼
: :r´}:.::.}＼　　　　 ' ‘　　ｲ:.:|ﾊ!::.. 　〉
＿_: : i:小. ．　　　　　　　个ﾍ: |、::..　/
　　￣二=-_　｀　　ｧ―.´:.:.!:.:.:｀}:.:.:}　{
=-_＿　￣二=-＿_ハ:. :.:＼:.:.:.:._ ノ　 t
三三二=-_　￣￣二=----=二　=/ |　ヽ
二二二三二=-＿＿　　　　　-=三/　| 　　Ｙ
..---=二＿　二三三三三三三=-/.　 |　　:ﾊ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:-=二＿　-=三三=-￣　＿ﾉ　 | |
:.:.:.:.:.:.　.:.:.:.＼:.:.:.:-=二＿＿＿ﾆ"￣.人　ｉ ! ﾄ.
:.:.:.:.:.:.　ﾍ:.:.　＼: :. :. :. :. :. :.ﾊ :. :.:..　　ヽ:.lｉ　 :.
:.:.:.:.:.:.. 　ヽ　:.:.: ＼:. :. :. :./~~ヾ:. .:.:. .　　}ヾ　　:.

103 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:10:15 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　 , . .-―――: :＝＝ ‐-: .、
　　　　　　　　　　　　　 , . :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
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　　　　　　　　 i: ;' : : | : : : {: : :.|: : :| : : : :|ヽ: : ' : :.l | : : :|: : ﾄ: : : |: : ,
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　　　　　　　　 |: |: : :.| : : : |―ヾ; : : l : :/ィ´アヾ、| | : : :|: : |: |: : l: : }
　　　　　　　　 |: !: : : ヽ: : :{ィマミ、 |: / '　 {　f//〉:': : : :l: : |: |: : |: : |
　　　　　　　　 |: ﾄﾐ、: : :ヽ: 〈r//j}ヽ|/　　　乂;;;ソ ': : : ;}: : ;: :|: : |: : |　　　　　　　　気分は？
　　　　　　　　 |:ハ: :ヽ: ﾄ: :ゝ乂ソ　　　　　｀―''/イT´: : :|: :.|: : |: : |
　　　　　　　　 |'　ヽ: トゝ{ ∧　　ヽ　　　　　　　´,　,': : : : l: :.|: : |: : |
　　　　　　　　 '　　　｀} : :|: : ﾑ、　　　 -‐　　 ∠ /: : : : /-―‐z}: :.|
　　　　　　　　　　　　　l : :ヽ: : : : : : ＞. .、_ イ}　 ,': : : :イ　　 /:| : :l

　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヘ　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼,　　　　　ヽ
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　 /　　　│　　　　　 !　　　　　　　　 V|ヾ　　　　　ゝ
　.　　! 　│ 　　 │　　|　　ヽ:　　　ヽハ　　　　　　＼
　　| ∧ ハ　　　.│　　 |　　　　ﾊ　　　　ヾゝ::.:.:.:.:.:. 　ヽヘ
　 ::, -┴ ､　　　::/l　　:::ﾄ､　　　 ::l　　　　..:::Nl :.:.:.:.:.ヽ:.:. |
∠´　　　ヽ ::__:ｉ l　　:::l　｀､　　 :l　　　　.:::::ｊ:::.:.:.:.:.:.ハ:. ,
　　￣｀~ヽ｀y　l　l :∧:l＿_ ｀､ .::l　::::::::::::___:ｊ:::.:.:.:.:.:!　j/　　　　　　　いえ──ああ、でも、何だか疲れちゃったみたいで。
　　ヽ､　　 l/　/| -V￣ヽ　　　W|　::::「二ヽ|.:.:.:.ﾘ V
､　　　l 　 /イ´:::! __＿＿＿＿＿ |　:::|┌j　l.:.:.:/
_ ＼.　L／ /!::::::| '￣|「::::::::::|「　〉 |　:::|/／/ .:（
ｉ　ノ｀'´　 ∧ ヽ::|　　￣￣￣　´　l　::::|　／　:.:ゝ＼
二__ __ ,イ /　　｀　　　　　　　　 }　::::|く´　 :.|　`ー
　||　|「　|l |　　r､　　　　　　　,ィ　:::::|　ヽ　jﾉ

104 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:11:02 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　 .: ::-‐-､,.----､
　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ.
　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::､:::::::::::＼
　　　　　　　　　　/::::::::::::::,::::::::::::::::､::::::::ヽ::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　 /:::::::::::::::l::::::::::::::::::ヽ::::::ﾞi:|:::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　,:::::::::::::::::i|:::::::::::::::::::::|!:::::::i:|::::::::::i::::::|
　　　　　　　　　|::::::::::::::::||::::::::::::::::::::::|ﾞi:_:_||:|:::::::::|::::::|
　　　　　　　　　|:||::::::::::::||:::::::::::::_::-‐,;≦=ｬ:|:::::::::|::::::!
　　　　　　　　　|:||::::::::::|:|｣≧ﾆヽ　　i'ji｢ｺjﾒ|::::::_｣::::::|　　　　　　　　　そうね。
　　　　　　　　　|::||:::::::::|:i7｢fｺj`　　｀¨¨" |:ｲ:::::|:::::||
　　　　　　　　　ヽ|ﾄ､::::::i｀ゞ・¨´ 　　　　　|::::::|:::::||
　　　　　　　　　ﾞ!|!::｀`iﾄ.　　　丶　　　　|::::::|:::::|:|
　　　　　　　　　 ||:::::::| /7　　　　_ _　　　.ｲ::::::|:::::|:|
　　　　　　　　　　 !|:::::::i//‐i_- ._　　　,.ｲ ||::::::|::::||:!
　　　　　　　　　　 j:|::::::/! l-'､ !.i|　ﾞ .‐ ´ 　 jｲ:::::|:::::||:!
　　　　　　　／´|:::::|/　　 `ﾒ| i　　　　／/|::::::ﾄ､_:!､ﾞ､
　　　　　　　　/　　 |:::::|　　　　〉!ヽ　　／ /　!:::::|/　 , ｀ヽ
　　　　　　　ﾒ　　 |::::::!　　　/　| ヽ／　/　 |::::::|　／　　ヽ
　　　　　 /iヽ　　|:::,､ﾞ!　　 i　　| ／　/　　|::::::| /　　　　 |
　　　　　　 ||　ﾞi　 |:/　＼_　|　　〈　./´　　 |::::::|'　　　　 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

夫人は、茜の細い肩に手をかけた。

　　　　　　　　　　　　　　 -─……─―--　..、
　　　　　　　　　　 ´.:::::-―.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　／.:::::／.:::::::::::::::::::::::::.＼::::::::::::::::::::::::::.
　　　　　　　　 .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::.
.　　　　　　 /.::::::::::::/.::::/.:::::::::::::::::::i::::::::::::::::. ::::::::::::::::::::::
　　　　　　 /.::::::::::::/.::::::| ::::::::::::::::::: |::::l::::::::::::i::::::::::::::::::::::
　　　　 ,′:::::::::::|:::::::::|::::::::::::::::::::: |:: | ::: |::::|::::::::::i:::::::::::
.　　　　　 :::::::::::::::: | :|:::::|:::::::::::::::::::::::l:: | ::: |::::|::::::::::|:::::::::::
　　　　 |:::::::::::::::: | :|:::::| :::::::::::::::::::-|:::|─:|ﾊ::::::::::::|:::::::::::
　　　　 |::::::::: ｉ:::: |-l─|!‐ :::::::::::::::: |::｣Ｌ:⊥:|:::::::::::|:::::::::::　　　もう休む？
　　　　 |:::::/:::|:::: |八__jＬ.::: -─‐‐ 孑云气|:::::::::::|:::::::::::
　　　　 |::::::::: |:::: |r孑う庁ﾄ　　　　弋●ﾉ |:::::::::::|:::::::::::　　　そうしなさいな。ね。
　　　　 |::::::::: l::::小弋●ﾉ　　　　　　　　　|:::::::::::|:::::::::::
　　　　 |::: !:::::|::::::ﾄ､　　　　　､　　　　　　|:::::::::::|:::::::::::　　　あたしもそろそろくたびれてきたから、一緒に小屋へ戻りましょ。
　　　　　 ∨|／|::::::iヽ:.　　　　　　　　　　　 |:::::::::::|:::::::::::
　　　　　　 |::::::::::人　　　 __ _　　　 ′::::::::|:::::::::::
　　　　　　 |::::::::::V介::....　　　　　　／ i:::::::::::|:::::::::::
　　　　　　 |::::::::::::::i:::::::::::＞‐r-＜ヘ. 　 l:::::::::::ﾄ､:::::::
　　　　　　 |:: |:::::::::|::::::::〈＼_,|／　 ,、＼.l:::::::::::|　ヽ
　　　　　　 |:八::::::::ヽ;;＿_>r"´ ￣￣￣｝ :::::::: |
.　　　　　　／￣＼:::::::＼＼|.　　` ー─〈|:::::::::::|
.　　　　　　 ∧　　　＼::::::::ヽ|　　､＿__,ﾉ|:::::::::::|
.　　　　　　 {　　　　　　＼::::: |　　　　　 .｝|:::::::::::|
　　　　　　丶　　　　＼:|　　　　/し′:::::::::::|
.　　　　　　 |　　＼　　　　 |　　　　｝　 .|:::::::::::|
.　　　　　　 |　　　　＼　　　リ　　 /　　 |:::::::::::|

105 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:11:49 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-─‐-.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　＿　　_,　　　　　　　　　　　　　 |:::: ::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､　　　　　　　　　　 |::: ::::::::::::::::::::::::!
　　　　　＿>　　　　　　　≧＿_　　　　　　　　　 |:::::::::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　　＞　　　　　　　　　＜　　　　　　　　 !:::::::::::::::::::::::::lｉ:|
　　　／>　　　　　　　　　　　＞　　　　　　　　　 !:::::::::::::::::::::::::l|::|
.　　 /　<　　　　　　　　　　　 <　　　　　　　 /|::::::::::::::::::::::::lｌ.,7:!　 ,、
　　ｌ ,ｨ　ヽ　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　　 |:| !::::::::::::::::::::::l|.l|　! /　l
　　 |ハ |　<　ノ　ﾉ　ﾉﾉ ,/ﾚ′　　　　　　　　　　! !|:::::::::::::::::::::::| |　 l,' 　.|
　　　　 `| ノ　　　　　　/|/　　　　　　　　　　　　 l 　|:l|::::::::|!:::::::ll|::l|　 | 　 !
　　　　　ヽ＼　　　　 /|/　　　　　　　　　　　　 l_　|:|.!:::::::|l!::::::|l:.:||　 l　,'
　　　　　　　 l ﾉﾙﾘﾊレ　　　　　　　　　　ヽ |ll_|__:_!|:∟:!:.::l‐!　lﾘ

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茜はしおしおと腰を上げ、磯部夫人についてその場を離れた。

106 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:12:36 ID:976fb80c

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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
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圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭

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どこかで誰かが自分を呼んだ──そんな気がした。

……どくっ。

己の心臟の鼓動が、不意に大きく耳を打ちはじめる。

三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三

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どくっ。

どくっ、どくん……

107 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:13:23 ID:976fb80c

三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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ﾆ二三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二ﾆ
三三三二ニ＝-―　　 ¨￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣¨ 　　―-＝ニ二三三三
￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣

＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
三三三二ニ＝―-　　　＿＿＿＿＿＿　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿　　　-―＝ニ二三三三
ﾆ二三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二ﾆ
ﾆ二三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二ﾆ
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三

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深い深い闇の中で、そして彼は目を覚ました。
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彼が何者なのか、知る者はもはやこの世にはいない。

彼自身ですら、それを知らないのである。

108 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:14:10 ID:976fb80c

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自分がいつ、どこで生まれたのか、彼自身も知らない。

自分がいったい何者なのか、考えてみたこともない。

必要を感じることさえない。

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ただ、彼がもしも人間並みの常識を持つ生き物だったとしたら、

そうして“善”や“悪”、“神”や“悪魔”といった概念を理解していたとしたら、紛れもなくこう思ったことだろう。

自分は“悪魔”の申し子だと。

109 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:14:57 ID:976fb80c

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彼が何者なのか、誰も知らない。

いつ、どのようにしてこの世に現われたのか、誰も知らない。

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　　　　 .ﾞ'i;;.!　ｌ;;/　　 .l;;;;l　　｀'''″　　　　　　　　　 !;|　　　　　　　　　　　 |;;;;|　 lﾞ;;;;;;;!　　 .l;;;;,!
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殺人鬼
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とりあえず我々は、彼のことをそう呼んでおくしかない。

そして、おそらくはその言葉こそが、彼の属性を語る全てなのだ。

110 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:15:44 ID:976fb80c

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夜も更け、午前零時を過ぎた頃には、焚火のまわりに残ったのは三人の男女だけとなった。

大八木鉄男と洲藤敏彦、千歳エリの三人である。

　　　　　　　　　 ,
　　　　　　　　　　　ﾊ
　　　　　　　　　 ,{ /　', ;
　　　　　　　　i ﾄ Y　　} ﾊ
　　　　　　　　l!{　 '　　　）ｲ
.　　　　　ト{ `　　　　　 ,ﾚ;
.　　　　　､ゝ ,.,;;,. ,;;.;;,;..,.　ﾉ-､
　　　　　　ｒ‐ヽ､,;:-,;;;;:;;;:;,,:,.ィ､ｰ┐
　　　　　　｀"ｰ<_／-ヾ_ﾄ､>ｰ'￣

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そろそろ薪も尽きてきて、火勢はずいぶんと弱まっている。

赤い炎の動きからふと目をそらし、千歳は夜空を見上げた。

111 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:16:31 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　 }XXXXx/_:斗/: :爪_＞ミ: : :ィ彡XXXXXXXヽ｀ ¨ ｰミ: :＼
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　　　　　　　　 ,イ:∧XXXXXヽヾ: :`＜Xﾊ: : :_:_:￣三ｧ=ミXXXXXxﾊ　　　ヾ: }
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　　　　　　 {: : :{　　ヾr'廴_　〉XXｲ彡＞=≡-一ィ彡': : : ｲ:!XXXX/{　　　〈: : : `ー=:彡 '
　　　　　　　ヾ:八　／ /　`　 {K´7i !イｨ弍三ｧ=彡ｲ: : : ,ｨ:.!:}XXXX}八　　　丶-=彡
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　　　　　　　　　/:ィ７ヽヽヽ(⌒ /ｿ: :.ヾ:!.::::.　ー‐=≦;ァ卅//:/xXx/: :ﾄ､: : :.＼　　　　　 .ィ:／/:
　　　　　　_rv'ミ´/: : :弋yてミ三7: : : ;圦　　,.-'､　　（r_ｿ)〉ｲ:/xXx/:.ﾊ:{　` ､: : : `ー:=＝彡 '　 / :　　　　　あ、月が出てるのね。
　　　　 _{:{: : : :/: : : : : ヾ辷彡:': : :_:r'/ｨﾐ、廴ノ　.:::::.._.ィ:彡'xXx/: :小:ヽ　　` ー-= ''"　　／: :
　　　　r':/: : : :ハ: : : : : : :_:_:_:_:rvx彡fﾁ廴.>､__∠ﾕ.彡圭イXXx/: : { |: : : ＼　　　　　／: : :∠
　　　ﾑｺ: : : : : : : : : ｨﾆ￣_rv彡ｔｿ｀　　／fzY~｀¨ﾁ: : : :>:XXX/: : : | ヾ: : : : `ー―一 =彡:チ彡: :
　　　｀Y{: : : : : : : :/7: :rvﾑｒ’　　　　 / rｿ}Kヽｧ彡: : : :{XXXx{: : : :.! 　＼: : : : : : : ;:イ: : : : : : : : :
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　　　,ｨ:´: 廴: : : : :ヾ!: r=x: :ｲ: :辷 _rﾑfz=彡: : : : : : : : : : 〉XXXx廴_: :ヽｬZXX≧XXXXXXXXXXX
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　　　ヾ: : : : : /7: : : : : : : : : : : : : :廴::::r' ｀二7ﾐ:ー:―:‐ｧ: :ヽ.ヾ : : : :`ｰ彡:￣辷彡ﾐｚ厂辷XXXｿ
　　　　＼:_:./7: :、: : : : : : : : : : : : : У!　　 /ヾ: :￣ミ: : : : :_:.＼＼: : : : : : : : : : : :ﾊ　　　 `ｰ'’
　　　　　　　廴: : :ヽ: : : : :￣三＝ｒ７　　　７ヾ:.廴rvxrv彡ﾁ:´: : 气ﾐｘ､: : : : : : : : : :}
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それまでずっと雲に隠れていたらしい。

天の中央に浮かんだ丸い月に、彼女はその時初めて気づいた。

112 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:17:18 ID:976fb80c

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　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
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ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
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　　　　（⊃　　（ ●）（●）　　　　　　　　　　　満月をちょっと過ぎたぐらいかな。
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両側の二人の男たちは、すかさず相槌を打った。

113 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:18:05 ID:976fb80c

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　　　　〃' ｉ i : .′//　 |≫=ミ : : : : {　　トУ　　ｒ‐廴／⌒`　　　　　　　　　　　　星もあんなにいっぱい。
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　　　　　　　　| |: :|人ﾊ　　乂:刈 : // (　　__厂___,ノ＼＞〈: : ＼
　　　　　　　人i: :|　ノ　 ::::::::: ﾘ //　人　`７´ 乂癶､_ﾉ　＼: : ＼
.　　　　　　 .'＼人　　　 /:ｲ/　　ヽ　⌒ﾞく　＼　　　　＼: : ＼
　　　　　　　　 i(　　　ト ‐ 　　　　　 _ﾉ＞‐'⌒Ｌ_　￣`　　　　＼-､:＼＿
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　　　　　　八:.Уｘ‐ァ　,ｲ'/ 厂厂八::::::::::::::::::::::::| 八|＼　　　　　 /:::::::::::::::::::::∨ 〉
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.　　　　ｒへ(⌒彡ー／ｲ'//////∧:::::＼__、:::::::| |: )|::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::: ∨
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.　　 _斤 _彡ィ⌒7´へ ┴|//////////// ｲΥ　 ' 抖イ}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　(_ノし'⌒´　 //)( ／イ//////////／｜{(　　 |/ (_{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.　　　　　　　　/iト≠＜//////////ィ　　 |人)　　　　ﾄ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　 { {,イ⌒ｱ'//////////〉　　 ,Y 人　　　(＿＞ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　ﾉ∧(／'///////////∧ﾆ辷人辷辷辷辷辷,人_＞ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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　　　　　　 /ム/|'//＞''¨´／／人`＜'∧: : : :i　＼: : : : : : : : : : : : : : : :(__＞‐┬‐┬
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空を仰いだまま、千歳は両手でゆっくりと長い後ろ髪を束ね上げた。

男たちの目が、あらわになった桜色のうなじに引き寄せられる。

酔いがまわってぼうっとした頭の中で、それでもはっきりと二人の熱っぽい視線を意識していた。

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降り注ぐ蒼い月光に目を細める。

光は緩やかに心の中へ忍び込んできて、妖しく彼女を揺り動かした。

114 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:18:52 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　_,.．-'ヽ、
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　　　　　　 |: : : : :‐|'´__ｭ/　　.l/　　　r'´i´;;;;;l　〉: : /イ: : : : .l
　　　　　　 .i : : i: :./~rl;;;;i`　 /　　　 .'　.ﾔﾆｿ ': :／※i: : : : : l　　　　　　　　　散歩に、行きたい、な。
　　　　　　　ヾlヽ: :ヽ .!.kri　　　　　　　　｀´/ .イ　　 i: : : : : ::l
　　　　　　　　ﾄ: :ヽ: : `ｰ′　　　　　　""　/イ　!　※.i: : : : : : l
　　　　　　　　|::ヾ、ヽﾄゝ　　　`　　　　　／　ィ'i　　　i: : : : : : .ｌ
　　　　　　　　!: :i　　ヽ、　　　＿　　　 , -'"トi※ 　i: : : : : : : l
　　　　　　　 .l: : i　※ .i: :｀:ｰ-　,,`_´,, - '　／　i　　 i、: : : : : : l
　　　　　　　 l: : .i　　　i r‐- ．..,r'´ /　　／　.／i　.※i〉7´￣`､_.l
　　　　　　　l : : i ※　iノ:.:.::.r'/　　.!__／　 ∠＿i　　 .i　＞.:.:.:.:.:.｀i
　　　　　　 l : : i　　　i:.:.:.:.:「/　 __.|.|'　　　　　　.i※　i　７:.:.:.:.:.:.i´
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　　ノ: : : : :__ノi　　※.iく　　 / / lく|　　　　　 /　　　 i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`
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そっと呟いた。

その言葉は、男たちにとってはかなり挑発的な響きをもって聞こえたに違いない。

　　　　　　　　　　　　　　 _＞　　￣　｀丶　＿__
　　　　　　　　　　　／　｢　　　　　　　／　　　/
　　　　　　　　／　　　v　　　　 /　／::＼　　/
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　　　　　 /::::::::＼　　　 ',　　/::::::::::::::::::::::::::::ヽ ⌒ー
　　　　　　 ′::::::::::::ヽ　　 .　/::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ＿_
　　　　　　 |::::::::_,ｘ┼::{ 　　 Y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
.　　　　ﾊ::::::ﾊ::ゝイ:ヽ　　　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.　　　　　＼:小ヽⅥ::i　　　 {::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　ﾉ''ﾉ:::} 　　 }::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::
　　　　　　　　　＼￣!　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::
　　　　　　　　　　　　｀ゝ　 .ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::
　　　　　　　　　　　ノ　,　'-‐ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　／　／　　　＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　／　／:＼＼　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　／　　Y.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ　　　＼::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　{ 　　 ,{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.} }　　　　＼::::::::::::::::::::::

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流し目で二人の反応を窺った。

115 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:19:39 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,　-‐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　-‐　￣ ‐=ﾆ=-
　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣＼　　　　　　　　　　　_,　-‐　￣‐=ﾆ二ﾆ=-　_,　-‐　￣
　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　　ヽ　　　　　　　,～'_,　-‐　￣`ｰ-----― '
　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　丶　　　　_,～'_ｯ'-
　　　　　　　　　　　　|　　　　　_ノ　（ ●）　　.厂
　　　　　　　　　　　　i　　　　　（ ●）　　!　　.⊃
　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　ヽi　/〉
　　　　　　　　　　／∧ 　　　 ,.<))／´二//⊃
　　　　　　　　　／ : |　ヽ　　/ ／　 '‐､二ﾆ⊃`
　　　　　, -‐'´: : : : :l　　丶ｌ　　　　´ヽ〉: : : : ＼
　　　／: : : : : : : : :|　　／_/　　　 __人〉｜: : : : :|
　　｢ヾ: : : : : : : : : :l_／:_/ヽ. 　 /´　　　 | : : : : :|
　　〈＼ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ｰ'〉　|＿|　｜: : : : :|
　　　!: : :ミヽ: : :／ `ｙ′.: ',ゝ､_/　　　　　l: : : : : :|
　　　! ⌒ヽ: : : :.ヾ／: :／/: : : :|　　　　　 l: : : : : :|

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煙草をくわえてマッチを擦る大八木。

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

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頭の後ろに手を組んで、辺りに目を配る洲藤。

116 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:20:26 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　,.．-‐―;;ー．
　　　　　　　　　　　　　　.／_,.．――- _｀ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　./／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ .ヽ
　　　　　　　　　　./:´:.:.:/:.:.:.:.ﾉ:.:.:..:.x:.:.:ヽ丶ヽ
　　　　　　　　　/:.:.:.::/:.:ﾉ:./:.:.:.:.i/ .ﾘ:.:.:.:） │ 丶
　　　　　　　　　　 │:.:.:./ /:.:ﾉ:.:/ /　　.∥:.│ .ｿ　　丶
　　　　　　　　　　 │:.∥ﾇﾅ':.从./ .ナ_';戈::││.＿＿>
　　　　　　　　　 .ﾄ:.:.:!.弋iｱ　　 ~てiｿ:.:.:/　ﾉ'´│_
　　　　　　　　　 V ', 〃　丶　　〃 .ﾚ　 │:.:.彡）
　　　　　　　　　〈　i丶　弋'''.ﾌ　_ｲ　 ./:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　._-‐　　　）｀ｙ. ｀ゝ‐- ‐ ' 大(　(ノヽ:.:.:.ヽ
　　　　　 .L 　-‐'''　i"":)　式来ヽ_ 　)　　) /:_:.:.:.:ヽ
　　　　　　　し_ 　　ﾉ）　/く　人人　ヽ(　 .ﾉす:│:.:.:.ヽ
　　　　　　　　　／::::ﾉ　ヽ　V　∬ ﾄ／ﾉ　 iS:::::九-．_ヽ
　　　　　　　　　　ゝヽ　　ﾉﾉ　 ∬　　「　　.（:::::::::::::::::::│ヽ
　　　　　　　　　　　.)::::）　!´ 　　.∬　 │　　 .）:::::::::::::::::│:.:.ヽ
　　　　　　　　　.／::: /　ﾑ　　　.∬　.ﾉ　　　ム::::::::::_／人._:.:.:ヽ
　　　　　　　／:::::::ム～ﾑニﾆー人ﾆ～～J:.:.:￣:.│ │　ヽ:.:.:ヽ

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二人とも、今の一言で途端にそわそわしだしたように見え、千歳は軽い満足感に浸った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　__,,､---‐‐‐‐---､,,__
　　　　　　　　　　　　　 _,､-‐"´　_ヾ!!ﾉ_　　　__ヾ!!ﾉ_``､ｰ-､,
　　　　　　　　　　　 ,､ｨ"-‐"´｀゛ー----､､,__　ﾉ liヽ　　｀ヽ　`ヽ､
　　　　　　　　　,､ｨ"::.::.::.::.::.::.::.::＼::.::.::.::.::.::.＼｀`､_　　.ヾ!!ﾉ_`､　　 `､
　　　　　　　 ,ｨ"::.:/::.::.::.::.::.::.::i::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼::.:｀`､_ﾉ liヽ　`､　　ヽ,
　　　　　　／::.::.:/::.::.::.::.::.::|::.:.|::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.::.: ﾍ::.::.::.::.:｀`ヽ,　　`､　　＼
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　　　　 /::.::.::.::7::.::.::.::.::.::.:l::.::.:.|::.:|::.|`､:::V､::.::.::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:`, 　　l　　　　＼
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.　　　7::.::.::.::.:l:::.::.::.::.::.:./::.::/　|:/|:/￣　￣＼｀`ｰ-|::.::.::.::.::.::.::.::.:|.　 |　 |! ________､ゝ,
　　　l::.::/::.::.:l::.::.::.::.::.:/::.::/　 /　l/　ｨｮｴ又ﾊ'ｱ　　7::./::.::.::.::.::.::.::|　　| /::.::.::|　　／
.　　 |::./::.::.::.:|::.::.::.::／／　／　 /　　ﾔ::ひ:::::ﾘ　　/:/::.::.::.::.::.::.::.:.|　　|/::.::.::.::|／
　　　|:| |::.::.::.::l::.／／ｨｪ､,　　／　　　弋Z:ﾂﾉ　　///::.::.::.::./::.::./　　 |::.::.::.::.::|
.　　　|! |::l.::.::.:ﾍ"´〃::ひ||　　　　　　　￣　　／ /::.::.::.::/.::.::./.ヾ!!ﾉ_|::.::.::.::.::|
　　　 |　l::|::.::.::.:.ヽヾ弋Zﾘ　　　　　　　　　　／　./::.:.::.:./:::.:／　ﾉ liヽ|:::.::.::.::.::.|
　　　　 ∧:V::.::.:.::.ヽ.　｀´　ヽ,　　　　　　　　　 /:::.:.／/／|　　　　 |::.::.:::.:.::.::|
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大八木と洲藤、どちらも嫌いなタイプではない。

その種の期待を抱いてこの「合宿」に参加したつもりではなかったけれど、ちょっと遊んでみるのも悪くないか。

117 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:21:13 ID:976fb80c

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　　　　　　　　 /*/:.i:.:.//:.:/　　　j川　 Ⅵ:.:.:.l:.:.{ ＊
　　　　　　　　　　 {　':.:.:|:/彡ｲ　　 ,z=＝ミ　ｌ:.:.:.j:.:.{
　　　　　　　　 Y:.:.:.:l」　　　　　　: : : : : _　}:.:./:.: { ＊　　　　　　　　　　　(……そうよね)
　　　　　　　　　〈:.l:.:.:{ z＝、　　 : : : : : | |ヽ:/}:.:.:.{
　　　　　　　　　　　 {从:.:ﾍ : : :　　　　　ｉ「 | |} }ヾ:.:./{ ＊
　　　　　　　　　　　 {　Ⅳ`ﾄ　　､__.. ---ﾍﾉ '　' '　}:.ｲ:.{
　　　　　　　　　　　 { ＊ヽ:.:.、　　　　　 /　　　　/）:l:.:{ ＊
　　　　　　　　　　　 {　　 }:.:.:.:ヽ.　　　　.′　　　ｨ:.:.l:.:{
　　　　　　　　　　　 { ＊ Ⅳ:l:.i:.:.`:..ーｫ{厂{_厂{/廴:.l:.:{ ＊
　　　　　　　　　　　 {　　 } l:.リ:.:.:l:.:.:./Y　　}　　}　/:.l:.:{

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唇に浮かぶ笑み。

再び頭上の満月に目を上げながら、

　　　　　　　　　　 /　　　／: : : : : : : : : : : : : : : ＼　　　　ヽ　　＼
　　　　　　　　　　　 )／／.: :/: : : : : : : : : : : : : : : : : ￣｀Y　　｀Y　　ヽ
　　　　　　　　　　　　{　 ′: :/ : : : : :／: ／: : : :／:／: : : 人　　 }
　　　　　　　　　　　　У: : : / : ＿／: ／: : : :／:／|: : : : : : : ヽ　ヽ　　　ｉ
　　　　　　　　 //: :.:./: : :／: ＼: :／／:／　 :| : : : : :|: : : Y　｝　　 |
　　　　　　　　　　 /ｲ: : :/: : :/卞メ／／:／‐-ミ　|: :| : : :|: : :.:.|　〈　　　 |
　　　　　　　　　　　 |: |: |: : /l　|しi|:／￣　　　｀'ト l: : :/ : : : | 　| |　　∧
　　　　　　　　　　　 |/|: |: /: | 弋ﾂ　　　　 ≠=ミ,_ ﾚ｜:/: : :.:.:.八/ :|
　　　　　　　　　　　　　|: |/: 八:::: ，　　　ん::::ﾉ/≫|/: :/: //　} 　l/Т＼|　　　　　　(こんな月の夜なんだから)
.　　　　　　　　　／| : : :| :ﾄ＼､_ 　　　乂zン　／: :/: //　/￣ : : |＿/
　　　　　　　　 {　 l∧:八∧ 　}⌒>　　:::::: ___／／ /: //　/ : : : : : |
.　　　　　　　　／　　 ∧|: : 心、｀´　　　　￣¨フ/／: //　｝: : : : : : |
　　　　　　　＿/　　／ ___,--ミ,_＼＿＿_____,.. イく/／/　,ノ: : : : : : : |
⌒^´￣｀⌒´　　 __／／::/,xく‐ ､､_/＼　,　-‐―┴/　　　/ : : : : : : : :｜
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千歳は、傾斜しはじめた自分の心に云い聞かせ、そして納得した。

118 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:22:00 ID:976fb80c

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　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
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　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　　　　　　　エリちゃんは、どっちをご指名？
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

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やや唐突な感じで洲藤が尋ねてきた。

今回初めて会ったばかりなのに、宴会が始まった頃からもう、

彼はちゃっかり「エリちゃん」と彼女をファーストネームで呼んでいた。

　　　　　　　　　　／　　　ｒ　　　 , --: : : : : : : : : : : : : : .＼
　　　　　　　／　　　　ノ　　 ≠ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　／　　　　／　　／ : : : : : : : : : : : : : : : : : i : : : : : : .ヽ
　　　　　,. 　　　　　r'ヽ// : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : | : : : : : : : :.',
　　　　く　　　　　 / フ / : : : : : /: : : : : : : : : ,ｲ: :/: : |: : : ｌ: : : : : :.ｌ
　　　　　＼　　　{　　 : : : : : : /.: : : : :／: :／ | /|: :./､: : ::|: : : : : :|
　　　　　　＼　　 } 　 .| : : : : : ｌ : : : ／: ／ヽ ///: :/　＼: :|: : : : : |
　　　　　　　ヽ　 ) ､ｌ| : : : : : l 〃ｱ丈ぅ、　///.: / 代卞Ｘ|: : : : :/
　　　　　　　 |: :ヽ{ / |.|: : : : : |{　仏(ﾟﾉ}　／ /／　ﾄr'ﾉ} .八: : :/
　　　　　　　 |: :|: )　　＼: : : :lヽ弋._ソ　　／　　弋ソノ/: :／　　　　　　　　　えっ
　　　　　　 /: :.!:∧　　　＼ :ヽ　￣　　　　　　　　￣ /／
.　　　　　 /: : : : :. (　､ | / .(＼ヽ :::::::::::::　　　'　　::::::: ｲ}
　　　　　 /.: : : : : : :.) / l ヽ .}､　　　　　　　　　　　　人 }
.　　　　 /: : : : : : : ∧　　　　)＞　. 　　　 '´'　　　イ　 )
　　　　 , ' : : :/: : : /: : ( 　　　 (　　　＞､ _　.r＜{´　　　(
　　　／: : : :/: : : /: : : : ) ､ |/　)ー‐- ､　　 [入. : : { ､ |/　∧
　／: : : : :/: : : /: : : : : }　/ l ヽ } 　　　`ｰｧ彡　`ト､{ / l ヽ { :＼
／: : : : : :/: : : /: :_.＞'´ ﾍ　　　　) 　　 _..ﾑr介ト､　{　　　 { : : :.＼
: : : : : : :/／´[￣[　　　　 {　　　 } 　／ /／l lヽ　＼{　　　 {￣｀ヽ:.＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

わざととぼけた声で、千歳は訊き返した。

119 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:22:47 ID:976fb80c

　　　　　　　 /＼　　　　　 /: : : : : : : : : : : : ／.: : : :./: : : : | : : | : : : : : : :|: : : : : : : : ヽ
.　　　　　　 /: : : 〉　　　　/: : : : : : : : : : : ／.: : : : :./: : :/: /: : /: : : : :/: ∧: : : : : : : : : :.
　　　　　　 ′／|　　　 /: :/: : : : : : : :／: : : : : : :/: : :/ :/: : /: : : : :/: /　| : |: : : : : : : : :.
　　　　　　: ( (.: :{　　　 .′:′ : : : : ／: :――／/―:/―: : /: : : : :/: /　 :| : |:: : : : : : : : :i
　　　　　 : :.ヽ＼〉＿__.Ｌ:⊥=-‐ : ´: : :／: ／／／/／/: /: : : : :/: /､____|: /: : : : : :.:.|: : |
. 　　　　　: : : :｀7¨¨¨¨Т:Т: :ア￣:ィ,ｘ=≠≠ミく／　/／: : : :／: /　　 :|/:.:./: : : : : |: : |
.　　　　 : : : : :{　　　 l: : |／／: : 小( ｒ' 万心ヾ〉　/'/ : : ／/:／＿　　ﾉ|: / : : : : : :|: : |
　　　　 : : : :.:人　　　:|／／: | : : : | 　トｲ::::ﾉ } 　　 /: :／　／ .示示㍉. |/: : :/ : : : |: : |
　　　　　,: : : : : : :〉　／ｨ : |: :.:.|: :.:..l:|　乂辷ン　　 /／　　　ん:::::) | )ﾉ/: : :/ : /: /| : :
　　　 /: : : : : :.:′　八: :l : 八: : :l:|　　＾^^^^　　　　　　乂辷ソ　/: : :/ : /: / :|: /　　　　　　　　　ご指名って？
. 　　 /.: : : : : :八　　　 )八: : : ＼八　 :::::::::::　　　　　　　 ^冖　／.: :,:.′/ : ′:|/
　　 /.: : : : : : : : :＼　　　　　、: : :＼＼　　　　　　　，　:::::::∠: : ／／/／　丿
. 　 / : : : : : : : : : : : ヽ　　　＼: :∧　　　　　　　　-― 　　　　　厶イ／／/
　 / : : : : : : : : : : : : : {　　　　　　＼∧＼　　　　　(　　ｿ　　　　／／　　〈
. / : : : : : ／ヽ: : :ノ⌒ヽ.　　　　　　＼_ 　: .　　　　ー　　 . イ/／　　　　　 ',
/: : : : : ノ ⌒) ⌒ヽ　　人　　　　　　＼　＞　　 __,. 　イ: : 人　　　　　 }
: : : _ : : )　く＿＿　　 `ーヽ　　　　　　　　　ト　_ 　 ∧: : : :.| : : : :{　　　　　　　〈、
: : / ￣／::::::::::::::::ノヽ　　 {　　　　　　　＼　｀Y).ﾉ⌒＼ : : : : )　　　　　 }:＼

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　散歩に行きたいって、いま云っただろ。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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だいぶ酔っているらしく、少々呂律が怪しい。

赤く染まった色白の頬をさすりながら、洲藤は云った。

120 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:23:34 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',
　　　　　　　　　　　 |: : : :r-‐' 　　ヽ: : : : : : : : r-､: : :.'.,: :.'､
　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､　　　　　　　　大八木さんか僕か、
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,　　　　　　どっちをパートナーに指名しますか？ってこと。
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　 ,､ -‐ '´ｨ' ´ .｀`ｰ､
　　　　　　　,.ｨ'´　, ｨ ' ´＊ _,､-‐--､｀_ヽ_
　　　　　／　／　＊ ,､ｨ'´: : : : : : : : : ｀ヽ`ー-､
.　　　／　／＊　／: : :/ : :/: : : :i:.l: :l: : : ｀ヽｨ'´
.　　／　／/　　／: : : :/: : :/: : : :.:l: l:.:l: ヽ: : : :ヽ､
. ／　´　 i .＊ /: : : : :/ : :./: : : : /:/|:.ﾄ､: :ヽ: : : :i!＼
´　_ﾄ､__　 l　　 l: :l: : : i!:.:／: : :.／:./ l:.lｰ-､: ヽ: : :.l.　｀ヽ
-‐' 　 i:￣l ＊ l: :.l:.:l: :i!: : : _／ .／ .// ,ｬｮｭ`.!: : i:l　＊　｀ヽ　　　　　　　あたし、別にそんなつもりで云ったんじゃ……
　　　l: :l:.:l 　 .l: : : ヽ:.l .ｨｪﾃ:ﾊ　／　ﾄ:::ﾘ /: :／ヽｰ､_　＊. 丶
　　　l!: :l: :l ＊ヽ: : :.:ヽ! 弋z .ﾘ　　　　ゞ゛/／: ､: : :ヽ　ヽ　　　ヽ
.　　 l!: :.l: :.l　　　ヽ: : :ヽ　￣　　　' 　 ´/.: : : :ヽ: : :＼　｀ｰ､.＊`
　　 l!: :/: :∧　＊　l`ｰ-`-.　　　 r‐y　／: :ヽ: : : :ヽ: : : ＼　　｀ｰ､
　　l!: : : :./: :.i　　　l:._: ,､`ｰ-- ,ｨヽ`´／-―‐,ｨﾅ≠ﾍ:ヽ: : : :.＼
.　 l!: : : :/: : : i .＊ l´.~　￣｀,ｨ`ｰ｀!　　　ｨﾌ".ヽ,_,､ｨ´: ＼: : : :.＼
　 l!: : :./: : : :∧　　li!　　　,ﾍ.`ｰ .ﾘ　　,ｨﾗ゛.........｀!: : : : : :`ｰ-､: : ＼
.　l: : :./: : : :/: :ﾄ､　 l　 ,ｨﾅﾚ'!　　/=ｭ､ `!..............l...l!: : `ｰ-､: : : `ｰ: :
　l: : : : : : :/: : : /.i　l!,ｨｸ　　 i,､,.ｲ`!　》.i´..............i....i!: : : : : : : : : : : : :
. l: : : : :.／: : : :i.....ゝl! ヾ;､ ,ｨﾄ=＝ｷ｀ヽｲ...../..............l!: : : : : :＼: : : : : :
..l: : :.／: : : : : :l.......ｲ! 　￣　!　　　　ヽ.../..................l.､: : : : : : :＼: : : :
.l:.:／: : : : : : :/........ゝﾄ､.　　　＼　　　　ヽ.....／...........ﾄ､＼: : : : : : ＼: :

121 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:24:21 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
.　　　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i　　　　　　　　　　　だってさ、三人連れ立ってぞろぞろっていうのも、
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼　　　　　　　　ムードのない話だしね
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　,,.-''"´　　　　｀ .､
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　〈｀ヽ、　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　|ミ=-　　　￣￣｀ヽ　　　 /
　　　　　　　　　　ｌ　　　　　ミ＝-‐　　　　 .′　　　　　　　　　　　　そりゃそうだ。
　　　　　　　　　　　　ｌ　｜　　　　　　　　　　 ,'
　　　　　　　　　　　　　 l __ ヽ　　　　　　　　 {
　　　　　　　　　　　　／ /／）ﾆ=''´　　　　　 ./ .|
　　　　　　　　ﾂ二二二／ .／＿_ 　　　　.／　 |
　　　　　　　　 / ／　／''"__,ノ　　　　　 ′　.|
　　　　　　　　　 / /　／　／,.-''"）_ _,,-''´　/　　ヽ＿_
　　　　　　 ,' 　　　 /'´,,..-''´|　　　　 /　　　＿＼/｀ヽ、
　　　　　 _　 ´l　　　　　　/　./ 　|　　　　　　´　　　　/　 /　＼
　　 ,,..-''"　　 |　　　　　 .l　./　 /　　　イ　　　　 /　 /　　　＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

受けて立とう、とでもいった調子で大八木が云った。

彼もずいぶん沢山飲んでいるはずだが、洲藤と違って顔色はまったく変わっていない。

122 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:25:08 ID:976fb80c

　　　　／￣￣＼
　　　　／　「　　ヽ（ ;;;;(
　　　　|　（●）（●） ) ;;;;)　　　　　　　　この際、野郎一名は退場ということにしようか。
　　　　|　　　　 | 　 /;;／
　　　　|　　 ___´__　ｌ;;´|　　　　　　　　　　　　な、洲藤君。
　　　　| 　/´ニﾄ━・　!
　　　ヽ l　_ニｿ　　 /
　　 __　/ヽ､_ノ　　ノ__
　　/ 　/　　/　　　　　｀ヽ.
　 /´　　　./　　　　　　,.　ヽ.
　ﾄ､＿__./　　　　　｜､　ヽ
　　｜　　　　　　　　｜/　 /

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　　　　まだ僕が退場と決まったわけじゃありませんよ。
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　　　ねえ、エリちゃん。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
　　　　　　　　　　　　 ', |　　＼ヽヾ'‐t-､

123 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:25:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,.　　------ミ
　　　　　　　　　　　　　　 ,　　´ 　＿, 　―=ミ　｀ヽ、
　　　　　　　　　　　 ,　 ´　／￣　　 __,　―-ミ＼　＼
　　　　　　　　　　　　 /　　／　＿/￣: : : : : :ヽ: : ＼　 {ヽ
.　　　　　　　　　／　　 / 　 /: : : : : :／: : : : : ',: : : ＼　｛　　　っ
　　　　　　　　　／　　　 / 　 /.: :/: : :/: : : : : :/:.:|: : : : : ＼{　　　っ
　　　　　　　　く　　　　　{ 　 :|: : :|: : /: : : : :／| :∧: : : :l : ﾄ＼
　　　　　　　　　｀=-ミ_　 } 　 | : _抖‐冖¨／　/`トミ__: :.| |:|
　　　　　　　　　　　　l:∧ {　　| : : ｨｆ忙卞　　　斥㍉:.:.:.| lﾉ　　　　　　　　　　　　　ええと、あたし、でも……
　　　　　　　　　　 |: :∧}　八: 八Vン　　　 Vﾂ/ : /|/
　　　　　　　　　　 ,′: : {　　ﾄ＼: ＼_　　__ '　　厶イ |
　　　　　　　　 /: : : :八　ヽ∧｀⌒^ └ ' 　ｨﾞ　　}: |
　　　　　　　　　　/: : : : : : :}　　 }　＼　≧ｒ＜ヽ{　　｛: |
　　　　　　　 /: : : : : :__人　 { ／￣￣[]￣＞ミ, 　}ﾄﾐ
.　　　　　　 /: : : : ／＼　{　八＼＿__/ ｒく//　　＼}::::＼
　　　　　　 /: : : : /::::::::::｢八　ヽ　 /,｝_}{¨＼〈_ﾍ　 Yﾍ::::＼
.　　　　　 /: : : : :.|::::::::::人　{　　！ /:}_｝_}{_｛　{`ｒｰくノ￣トミ￣＼
　　　　　 /: : : : : :.|:::::::::::: [,　〉　　 , | :}_｝_}{_｛　人￣{＿ン　　　＼::}
.　　　　 /: : : : : :./|::::::::::::: [　{　　｝　}_｝_}{_｛　　 {　　＼　　　＼　|二)
　　　　 /: : : : : :./::::::::::::::::::厂〉　　辷ン_八弋辷人　　 |ヽ　　　 ,人::::＼
.　　　 /: : : : : :./::::::::::::::::::: ゝ-{　　 }ｰ┬<　ゝ┬ｰ‐{　　 ∨｀l¨¨´::: |::ヽ:::::＼
　　　 /: : : : :.／:::::::::::::::::::::::::: 八　　Ｖﾆ|／＼ |ﾆ=∧ 　 /:::: |::::::::::::|:::::::::::::::::ヽ

　　　　　　　　　　　─　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ) (
　　　　　　　　/ 　　　┌ ＼　　　　　　　　（⊂ﾆﾆ⊃)
　　　　　　　ｌ　　　　（●　　　　　　　　　｀二⊃ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　簡単な話さ。
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ　　　　　　　（(
.　　　　　　　　＼　　　　　　 - 　　　　　　　 _., '　　　　　　　　　　　　　　　　　　　俺か洲藤君か、どっちが好みかだ。
　　　　　　　　　　＼　　　　　 !　　　　　　 _　// |
.　　　　　　　　　　 /､｀ーﾃ ´　　　　　 l i/./ ﾘ7
　　　　　　　　　　/＿￣｀ヽ　　　　　　　ﾉ.ﾉ　　'./7
　　　　　　　　 /　　ｒ　￣｀＼　　　　　　 '　　　　/
.　　　　　　　　 /　　　　　　　　ヽ　　　　　〉　　.ノ
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　 i　　　 /"'　､/
　　　　　　　ヽ　　　ヽ　　　　　　i　　 /｀ヽ _　/
　　　　　　　　 ’,　　　 X　　　　　ヽ ./　　　　/
　　　　　　　　　，　　　ヽ、　　　　　ヽ　　　 l　　　　　　　　　　　　　　, 、
　　　　　　　　　 i　　　　　ヘ　　　　　｀　　　i!　　　　　　　　　　 ,. : : : : : ヽ
.　　　　　　　　　〉　　　　　　＼　　　　　 ./　　　　　　　 ,. : : : : : : : : ; : : :ﾊ
　　　　　　　　　 / i　　　　　　　　＼　　　 ./､　　　　 ,､. : : : : : : : : : :i:/: : : : : l
.　　　　　　　　 / 　ヽ　　　　　　　　ヽ __ ｨ　〉- -:､:´: : : : : : : : : : : / : : : : : : i
.　　　　　　　　,'　　　　>､　　　　リ　　　　　/: : : : : ヽ: : : : : : : : : : i!: : : : : : : :|
　　　　　　　　ﾊ _　／　＼　　/ =--y-- ": : :/: : : : ヽ＿: : : : : :i: : : : : : : : :ｌ
　　　　　　　 i　　 ./　　　　　＼/三／: : : : : : :ﾐ: : : : : : : : : : :￣: ￣ :￣: ￣: ￣: ￣: `:､
　 _　-＝　''"ヽ _/ 　　　　　ー"、: : :ﾐ: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
　　　 - ─ - 　 ´　　　　　　　　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ : _: : : : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　　　　─　　　　　　￣　　　　￣

124 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:26:42 ID:976fb80c

.　　　　　　 /: : : :{　＼＿___/: : : : : : : : : : : : : : : :_彡: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ　 }
　　　　　　 / : : : /　　＼: :￣二二二二二二￣: : : : : : : : ／: : : : : :/: : : : : : : : : /: : : : : :.:.:.ｉ: /
.　　　　　 /: : : : :{　　　　　i冖=‐-　__: : : : : : : : : : : : : : : ／ : : : : : : / : : : : : : : : ィ: : : : : : : : :|/
　　　　　 /.: : : : : :〉　　　 |: : : : : : : : ￣二ニﾆ　――／: :／: : : :／／: : : : : :／ | : : : : : : : : |
.　　　　 /: : : : : : :{　　　　　|: : : : : : : : : :/)＼　―=ﾆ二__／: : : :／／: : : : : :／　 | : : : : : : : : |
　　　　 / : : : : : : : 〉　　　　 |: l : : : : : : :/　＼＼　　　／-‐　／／: : : ／:／　　　 , : : : : : : : : :
　　　／: : : : : : : : :{　　　　　| :l : : : : : : ′　　ヾﾆ≠== 　／／: : : ／:／＼　　 /: : : : : : : : /
　／: : : : : : : : : : : 〉　　　　:| :l : : : : :i :|　　　　　　　　　／／: :＿,. 　 ´　　　＼ /: : : : : : : : /
／: : : : : : : : : : : :.八　　　　 | :|: : : : :.|: |　　　　　　　　￣￣￣　　 _＼　　　　　/: : : : : : : : /
: : : : : : : : : : : : : : : :.) 　　八:|: : : : :.|八　　　　　　　　　　　　　ヾ＼＿_　　,/: : : : : : : : /　　　　　　そんな、急に訊かれても。
: : : : : : : : : : : : ｒ､人　　　　八: : :.:.:.|、　　　　　　　　　　　　　　　｀^⌒´／:′ : : : : : : ｲ
: : : : : : :ｒ―ｖ'⌒ 　＼_{　　　　＼:.:.:.| ＼　　　　　　ノ　 ..　_　__　／ /: : : : : : :／ /
: : : : : : ﾊ_　　　　　〈八　　　　　　＼|　　＼　　　　-､　　 :::/　|′|Y　 /: : : : : ／　　)
: : : : : ｛／〉　＼　　 ⌒{　　　　　　　ト､　＼　　　　　　　／　ﾉ　ﾉ |／: : : ;　'´　　〈
: : : : :./:::::(＿　　〉　ｒ‐へ　　　　　　} 　＼　＼_,／￣￣　／／.ノ}: : :ｨ'´　　　　 }:.
: : : :./::::::::::::::::)　　　 :{ 　 :{　　　　　　',-―‐ヽ／У 　　　　　／ィ／ ){　　　　　　〈: :.
: : :./::::::::::::::::/ 　＾ヽ　 ⌒i 〉　　　　　　Y´〈/八⌒⌒>　ｒ‐┐　_∠　Ｌ, / {　　　　　　　} : :.
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　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
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　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　　深く考えることないよ。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
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　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
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..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
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洲藤が笑う。

125 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:27:29 ID:976fb80c

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　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
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　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!　　　　　　　　　　満月の夜の、まあ、ちょっとしたお遊びということで。
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
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./ / ,.ｲ　　 /／　i:　il|il|i　州　 /|　　 !l
l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
! / 　|　|　/　　/｀`'‐､,ィ!´il| ,　/　　/|
ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
　　｀＼| |‐＜_　　 / 7l l,/　/　 / l /
　　　　 >!'゛　｀_ 〈∠ill| l--'ｲ| / !/
　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
　　　　　　　　　　　ヾ,ﾘ|　＼`t.､_
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　　　　　　　　　 ′: : !　　 |: : :{;／_ : : イ／: : ; ｲー─.∨ : }:.ｌ
　　　　　　　　　　 /: : : : |　　　|;／ : : : : ,イ-‐ :／ y 　-‐_,,.ﾄ X:/
　　　　　　　　　　 , : ﾄ: : :.|　ムイ: :_:ムｨ七ちﾔ　　〆示ﾔ _ 乂　 ,
　　　　　　　　 /: : :ヽニ＜　 .|: : : ､ヽ弋ツ　　　　　弋ﾂ　ﾄ j{ 〉二ｭ,　　　　　　　　　　──困るなあ。
　　　　　　　　 ,.: : : : : : |　※ .ﾄ: _: :≧　　　　　　　､　　　ﾑ　Y　　}ｿ
　　　　　　　　 .: : : : :. :.ｲ　　　ﾉ:.:.:.:.ﾄ　　　　　 ,　　イ　　　ﾚ
　　　　　　　　　/: : : : :.イノしﾍ√ﾍ＿┌＞｡。. ＿ .　＜　人　　　 '
　　　　　　　　./: : ,:イ乂 x≦........... フ､.........＼　ｌ　 r‐ﾄｭ.ノしﾍ√ノﾍ/
　　　　　　　孑匕　 .(　/......................廴.........../ ヘ只ニﾆﾉ　　　　　〈
　　　　　／　 ※ ／て{............................ ト.....〈;;〈 /∧ﾏノしヘ√ノし. 〉
　　　　　 .　　　／: :.:ノﾄ................................. ＞ ─‐┼ ~/　l　　　 (У
　　　 ./　　　./: : : :.7　! ∨.............................................|／　 |　　　　}ｧ
　　　　/　　　./: : : : :.)　i!.. ∨................................. . . . ｌ　　　 }　　人
　　　./　※　/: : : : :.て　|.. . ∨......................................., 三≧ ､　 /........〉
　　　＼　 ./: : : : : 厂　|.........∨　.......................... . /............. . 〉/_.....ィ
　　　　　＼/: : : : : :.:ゝ　.!...........∨................. . . . . /..................y.............|

126 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:28:16 ID:976fb80c

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　　　|:::::::ヽ　　　　|　　　　　　　　|::::::::::|:::::::::::|　　　　　　　　　　　二人ともふられちまった？
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　　　 |::::::::::l|il|i　ヽ_￣￣　/　　l|i|::::::::::|:::|:::::::::|
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　　　　　　　 |　 __l｀¨Ｔﾆ／ィｘf圷　　乂ｿ |: : :ﾊ|　　　　　　　　　　　　　　　そういうわけじゃないけど。
　　　　　　　　￣八　 ∨: :八Vｒﾘ　　、　厶 ∧
　　　　　　　　　　　 /: : 〉　 ∨: : :＼＿　　 ,　,.ィ: / 　',:、
　　　　　　　　 /: : 人_ 　 }_＼＼＞‐┬ /_ヽY:{　　}: ＼
　　　　　　　／: : : : :八　　 } /￣ｰ‐ｖ|l {ニ｀∧＼　＼__＼
.　　　　　　／ : : : : : /: : ＼　ヽ,　　／介/　∧:∨: ￣＼￣￣＼＿
　　　　　　／ : : : : : : : : : : :_八　　ヽ　l| :||(人ｒ'∧ヽ∨: : : : ＼＿__　　　＼
　　　　／: : : : : : : : : : : : : :Y＾ヾ、　Ⅵl_ﾉ|〉}⌒　 ', }::＼: : : : : : : : :＼＿__/
. 　　 /: : : : : : : : : : : : : : : :.l:::::〈∧　＼:||八　　　＼::::}: : : : : : : : : :＼ :ヽ
　　 / : : : : : : : : : : : : : : : :/::::::::::)ﾊ　　 V 〉＼　　ヽV: : : : : : : : : : : ＼}
.　　 |: : : : : : : : : : : : : : : :./:::::::::::::)八　　 } ヽ八　　　　}:V: : : : : : : : : : : : :ヽ
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　　八: : : : : : : : : : : : : :∧::::::::::::::::::::〉_圦　　　Vﾊ|::::::::::::::::|: : : : : : : : : : ＼ : |
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. 　　八: : : :.＼: : : : : ／:::::::／ ∧〉::::::＼＿__/:::::::::::::＼:/＼＼: : : : : : : : : : : :,
　　　　} : : : : : ＼ :_/／￣　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: Vﾊ: : : : : : : : : : :|
　　／人 : : : : : ／//::{　　　 ,′::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}ﾆ}＼: : : : : : : :｜
.　/: : : : .＼: ∠:___/:ｒﾉノ彡ｲ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}ﾆ〉::::＼_: : : : : :|
. 人: : : : :.:_/ﾆ/::::::: /＼__l/={:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}={:::::::::::ﾏヽ : : /
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/ﾆア:::::::::{ニ{:::::::::::::::::::::::::::｝人:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /⌒}::::::::::: }八::::::::::￣＼
／::::::::::::::{ニ{::::::::::::::::::::::::::::＼=＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/二〈:::::::::::: }二}::::::::::::::::::

127 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:29:03 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　 ,､‐:': : : : : : : :｀:': ､
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : :＼: : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ,.:': : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : : : :',
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : ､: : : : : : : `:,: : : : : '､: : :',
　　　　　　　　　　　 i; ; ; ; ; ; ; ,､-‐､: : : : : : : :.':､: : : : :'､: : ',
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　　　　　　　　 i: : : :',　　　　　,､ィ: : : : : : : :'､ヽ: : : ':､: '.､
　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､　　　　　　　　　選びかねる？
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　　´　 ,. . : : : : : ＼＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／〉　　　/ : : : : : : : : : : : : : : : ＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　〉　　 :ｉ : : : :/.: : : :| : : :_|__ヽ: : : : i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　{　　　 :| : : ://:/://|ﾉ| : ﾘx=ﾐ| : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ′　八　　_|_:彡/:/x==　ﾉ／ Vリ| |: : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 ,ィ⌒i　￣|￣/:人Vリ　　　，ノｲ: :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／ :|: :八　＿|／へ: :＼　　　　　　从∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ : : /＼￣ヽ＼: ＼＞　　´　.ｲ　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / : : /: : : :＼　＼(`＜_≧=‐-ｲ: |＼　　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / : ／: :/(￣　ヽ　　ヽ　//⌒ヽヽ |　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.／ : _ノア⌒(　ﾊ　　 ∨/i|＼_ﾉﾉ|:|　　　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : ｒ'／/::::::::::::)｛ |　　 l〈| |) 〈〈ヽ}:.、　　　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_／: : ｒ'⌒∠,ｲ::::::::::::{　( l　　 ∨ﾉ} ハ∨} : : 、　　　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　厂二ﾆ=‐: : └―／/:::::::::::::::］〉}　　　 }| (｛　.|i|〈: : : :＼　　　　＼　＼
　　　　　　　 _,.　　 -―: : : : ￣￣￣: : : : : : : : : : : ／:::::::::::::::{::::八］i}　　　 }| ( У|i|V: : : : : :＼　　　 |　　|
　　　　 ,. : : :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／::::::::::::::::::::::∨/［〉{　　　 Ⅵ_ノ:|i|::〉: : : : : : : ヽ　　 :|　　|
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千歳は曖味に首を動かした。

128 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:29:50 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　_.．-―-
　　　　　　　　　　　　_.．-‐　 ´　 _.．　´￣￣`丶、
　　　　　　　　　〈　　　　　／　　　　　＿＿＿＼
　　　　　　　　　　　'　　　　 /　　　／´: : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　',　　　/　　　/: :/: : : : : : :/ヽ: : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 /: : i: : : : : : /　　＼: : :|
　　　　　　　　　　　　　＼　l 　　.′: :|: : : : : /_,　 `ー}: :.}
　　　　　　　　　　 / ヽ|　　:|: : : :|:-‐＜´　　　ィ7/:/
　　　　　　　　　　　　 /: : : {　　ヽ: : :ヽィ炒　　　`"ィ´
　　　　　　　　　 /: : : : {　　 i:＼: : ＼´ 　　 '　ﾉ　 Y⌒ヽ
　　　　　　　　　　　/: : : : : :ヽ　　ヽ,イ￣‐ｒく_> イヽ＜＿ノ
.　　　　　　　　　　/: : : : : : : : ヽ　　＼＼_/　ヽ:::＼　　ヽ
.　　　　　　　 /: : : : : : : : :/ヽ`、　 ` 〃{{￣ヽ:::::＼　＼
　　　　　　　 /: : : : : : : : :/⌒ヽヽ　　＼_{{＼／:::::::::ヽ　＼
.　　　　　　 /: : : : : : : : :/:::::::::::::｀＼　　ヽ＼＼::::::::::::ヽ　　＼
　　　　　　 /: : : : : : : : :/::::::::::::::::::::} ヽ　　`、＼{:＼:::::::::}ヽ_　　＼
.　　　　　 /: : : : : : : :／:::::::::::::::/／{　ヽ　　ヽ＿lヽ／⌒|==ｭ＼　　ヽ
　　　　　 /: : : : : : : :/::::::::::::::::::/ヽ=i{＿_'.　　 ',=|: : :/　/|{:::|ヾ　＼　　ヽ
.　　　　 /: : : : : : : :〈::::::::へ:::::/: : :ヽﾆ三|　　 |=ヽ/　/:::|{:::|　}　　ヽ＿_}
　　　／: : : : : : : : : ,ゝz====￣ヽ__}ﾆ三|　　 |i三}ノ＼::|{:::|__}
　　／: : : : : : : : : : く//::::/､　　　　　 }} }|　　　|ｉ三|ヾヽヽ}:/ヽ
　　＼: : : : : : : : : :_/∧::::{{:::￣丁￣ヽﾞ__ノ三三「:l=|:::ヽ::＼: : :＼
　　　__ヽ_.．-‐　´　{ {: :ヽ::{{:/:::::}}:::::::::::::{{:::::｀|三|::|/:::::::}}::::::＼:＿ヽ
　　 |: : : : : : : : : : : : ／∧{{::::::::}}:::::::::::::{{:::::: |三|:::::::::::::}}::::::::::::＼: :}
　　　|: : : : : :_.．´: ／::::::::∧{:::::::}}:::::::::::::{{:::::::::￣::::::::::::::}}::::::::::::::::::＼
　　 ├‐=≦: : : ／::::::::::::::::::ヾ:::::}}:::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::}}::::::::::::::::::::::::ト､
.　／ : : : : : : ／:::::::::::::::::::::::::::ヽ:}}:::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::〃::::::::::::::::::::::::}}::::＼
　{: : : : : : : :/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＿〃::::::::::::::::::::::::／:::::::::::＼

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どっちでもいいわよ、と答えるわけにもいかない。

テレビのデート番組じゃあるまいし、こうあけすけに二者択一を迫られても困ってしまう。

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡　　　　　　　　ふん。
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃　　　　　　　　　　　――じゃあね、こういうのはどうかな。
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

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洲藤が云った。

129 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:30:37 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |　　　　　　　　　　ここはね、一つ勝負を。
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　　　ね、大八木さん。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|　　　　　　　　　　どうです？
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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決闘でも始める気だろうか。

千歳は一瞬そう思ったが、すくに打ち消した。

どう見ても、洲藤はそんな種類の男ではない。

地上全ての人間たちが殴り合いを始めようと、自分だけは高みの見物を決め込むタイプだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　´￣ヽ　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉 fﾇア　　　　　　　　　　|　　　　　　　勝負とは？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 *=≠斤Y. ヽ￣`　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　 __／￣＼ﾉ　 l　　 _／　　＿_　 -￢
　　　　　　　　　　 ┌‐'￣￣}┐ } 　　　￣]　-─　＿,.　　-─ﾍ
　　　　　　　　　　　　　__￣}　}（_/}　　　　_/;}-‐　　　. 　´　　　　＼
　　　　　　　　 {　　}　}　} 　 }　　　/:i:}′　　　´
　　　　　　　　 {　　し'¨´,　 /　　 {:i:i:} 　／　　／
　　　　　　　　 __{　　　 ,}／　　／〉:i:}.／　　／　　　　　　　　 '，
　　　　　　　　　　/∨　　厂{ 　 ┌く　/:i:ｉ:'　　／／￣￣￣＼　　　；
　　　　　　　 / /　｀ー==〉┌┘　/:i:i:/　 ,　／　　　／　　　ヽ　.........|
　　　　　　 , 〈_/　　　　 /厂｀ヽ{ .:i:i:ｉ/　../／　　　／　　　　　　 |

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大八木が訊くと、洲藤は赤いブルゾンのポケットを探りながら、

130 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:31:24 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　　　コインで決めましょう。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
　　　　/　 /　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　　　　　　　 .／　i　i　.|　　 .|
　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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と答えた

　　　　　　　　　i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　ﾄ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　 {ヽヾﾐ=ヾ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　弋辷ヽ､　　　ｨ=＝＝===ｰ- 　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　 |　　　 ¨¨　　　　Z赱辷ーｧ　　　　　　　　　 |　　　　　　ああ？
　　　　　　　　　 l 　　　 /　　　　　　 ¨¨　　　　　　　　　　　　 |
.　　　　　　　 |　　　　/
　　　　　　　 ',　　　/
　　　　　　　 ', 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　 ',　ゝ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　|
　　　　　　　r'ﾆﾆﾆﾆ)ﾆﾆゝ､_　　　　　　　　　　　 /　　　＞'´￣
　　　 ::::::::彡'　　　 ',　、　｀ヽ､　　　　　　　　　／　　彡'
　　　　　　　　　 ',　　　＿＿　-─=＝ﾆ二￣￣
　　　　　　　　　　　　　lー=ﾆ､　　　　　　　　　　　　　　　　　--ー'⌒＞ﾆ三
　　　　　　　　　　　　人　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 __zﾆ三三
　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ ---＼　／￣￣｀　　　　　　 ∠三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨　彡～´￣　　＿z=ﾆ三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　´ 　＿z=＝ﾆ三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　＜¨´,ｨﾆ三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　〉三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　／三三三三三三三三三三三三三三三三三三

131 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:32:11 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　_,､-‐ '' ~￣　　_｀ヽ、_
　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
　　　/　　　　/　　　　|　　　　　　　 `lヾ|l
　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
　　 l |　|　　/　　　　f　　　　　 ,ｨ‐‐〈/ l|　　　　　　　　　　　コインを投げて、その表裏で……ね。
　　 |l　/ 　 /　　　　,| '´￣｀　　〈ﾏヽ/|! ||!
　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　　　　どっちが勝っても恨みっこなしってことで。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
　/ /　/　　 /　/ il|　　　 '' ‐　　 / 　 | !
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二人は勝手に盛り上がり、とんとんと話が進む。

その大人げのない様子に、

132 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:32:58 ID:976fb80c

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　　　　　　　　 7::.::|::.:{ヽ|＼::.::.＼　ゝー゛´　 .／　　　　　　ゞー"´　/::.／／　|::.::.::.|
　　　　　　　　7::.::.|::.::.|　＼｀`ヽ､`､　　　　　　　　i 　　　　　　 /／_ヾ!!ﾉ_/::.::.::.::|
　　　　　　 |::.::.:|::.:::.:|　_ヾ!!ﾉ_ |￣､　　　　　　　　　　　　　　　／　　ﾉ liヽ|:::.::.::.:::.|
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　　　　　　　7::.::.::.{　ゞ.|　　　　　|　　　　＞　､　　　　_. ｨ＜´　　.|　_ヾ!!ﾉ_　|､ij　__ ]∧
　　　　　　/::.::.::/,ゝ-ij | _ヾ!!ﾉ_. |. 　　　ｨｪ=ﾆ三又三ﾆ=ｭ､,　　　|　ﾉ liヽ　|`ij　f､,...|∧
　　　　　　/::.::.:7.....[,　ij |　ﾉ liヽ |　　　〃　　〃|!y|k|!ヾ　　ゞ､,.　|　　　　　|r.ij　_/.....|::∧
　　　　　/::.::.::.:|..........] .ij |　　　　|.　　《　　〃　||y|k||　ゞ,　　》　| ._ヾ!!ﾉ_ |.ｨij　`j........|::.:∧
　　　　/::.::.::.::.|..........f,　.ij |_ヾ!!ﾉ_|　　　ゞ="´　.||y||k.||　.ヾ="´　|　ﾉ liヽ.|f.ij　_ﾌ........|::.:::.∧
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千歳はちょっと杲れた顔で、それでも内心しごく愉快な気分で、細身のメンソール・シガーレットをくわえた。

芳恵姉さんだったらどっちを選ぶだろう、と、そんなことを考える。

人のことを云える柄でもないけれど、あの人もなかなかのご発展家だから。
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今頃は彼女も、誰かとよろしくやっているのかもしれない。

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火を点け、何気なしに山小屋の方へ目を向けた。

先に引っ込んだ連中は、すでにみんな眠ってしまったようだ。

窓に明りはない。

133 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:33:45 ID:976fb80c

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──と。

月光に蒼く浮かび上がった小屋の陰で、何かがすっと動いたような気がした。

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　　　　 /::.::.::.::7::.::.::.::.::.::.:l::.::.:.|::.:|::.|`､:::V､::.::.::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:`, 　　l　　　　＼
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　　　l::.::/::.::.:l::.::.::.::.::.:/::.::/　 /　l/　ｨｮｴ又ﾊ'ｱ　　7::./::.::.::.::.::.::.::|　　| /::.::.::|　　／
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　　　.∧::.::.::.::.::.|..........................ﾄ-､､　ヽ　￣　　 ||.X.||　　　　 | .ﾉ liヽ |..ﾍ::|:::.::.::.::.:::.|

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何だろう。

千歳ははっとして、暗闇に目を凝らした。

そこにはしかし、もう何も動くものは見当たらなかった。

134 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:34:32 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　ゝ､: : : /式　　ゞ==ﾞ|: : : |　　 |: : : : ',
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　　　　　　　　　　　　　／※ ,ｲ: ヽ:.ゝ__ _､　　.〃/: :/※ /: : : : : :.∧
　　　　　　　　　 ''"　_.／ /: : : ／、､Yフﾞ|　_/／' 　 /＼;､: : : : :∧
.　　　　　　　　／ ※／　　ノ: : : Y ､ヽ,}_},ｨ示´ヽ　/ .／ﾊ_,へヽ､.: : :∧
　　　　　　　／　　／_.．: ': : : : : : ｉ　ゝ'ノ〃ll , -'´_/´/´:::::::::::ヽ､ヽ: : ∧
　　　　　　 / ※.／:': : : : : : : : __Y {__ノ､_〃／／´／〈:::::::::::::::∧ヽヽ: :.∧
　　　　 /　　/: : ／: : :/:_:／:::ﾊ､__＿j´／／　ノ/ r‐':::::::::::::::::∧ ヽヽ: : :
　　　／: {　　 {:／: : :.／ {:::::::::/　　ノ'´　/　　 }/ f´::::::::::::::::::::::::∧　ヽヽ:
.　／.:.: :八 ※ ヽ: :／／:|:::／　　 ./　※人　ﾉ{ﾆﾉ.､:::::::::::::::::::::::::∧　}　}
／: : :／　 .ゝ　　　＼/: : :j/　　／　／　 r‐'//:::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::}-'　j
: : ／　／: : : :＼　※ ＼:ﾊ_　／　 , ｲ二ﾆ=´- '::::::::::::::::〉:::::::::::::::::::::::|￣: :
　　　/: : : : ／　｀＞､　＼｀/　　 / 　ｒ:::::::::::::::::::::::::::::::::{::::::::::::::::::::::::::|:/:__
:＼..⊥: :.／∠二二ﾆハＴｰ-.l　※ | =ミｭ､,三三ヽ:::::::::ΥV_::::::::::::::::::ノ／
､_: : : :￣￣: : : : : ＿／ |:::::::::＼　 {､_,ィダ三三三f==ノ　ヽ:ヽへ:／:∠_＞:
　￣厂|＞―‐ '´: ::∠　|::::::::::::::「´三三`三三三三ﾐj　　 }　　.}: : : : : : : :

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今の影は何だろう。誰かが小屋から出てきているんだろうか。

それとも、何か動物がいるんだろうか。

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高校時代、友人たちと山へキャンプに行った時、夜中に狸が森から出てきたのを目撃したことがある。

それを思い出した。

135 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:35:19 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..'　|｜干｀ヽ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|'´千　!l |｀､',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|キ|±王|!l主 !　　　ｸﾙｸﾙ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!| l! 　!l i|!l彡l !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　!i|ヽlil　土|i!才'
　　　　　　　　　　　　　　　 | ｜il　|　!　!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　,. '　￣｀ヽl|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　　　　　　 ',
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ . ＿ ..　'

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,i,-----､|!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ-ｪｪｪｪｪシ

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　ii　　l 　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 lニニニニニｌ

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',　　　　　ｊ
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､　＿　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .

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ピーン、とコインをはじく音がして、千歳は山小屋から目を戻した。

コインをはじいたのは洲藤だった。左手の甲で受けると同時に、その上に右の掌をかぶせる。

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
　　　　　　　　　　　　 |＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 |　　|
　　　　　　　　　　　　|　　　｀丶、　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|
　　　　　　　　　　　 .lー=＝―-、、_　　／　　　　　　　ﾉ　　|　　 |
　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　　　　どっちです？
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　／　/　　　　　}　||　　　|　　　|
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　／／//　　　　　 .ﾘﾉ　　　.|　　 |
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　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
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　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
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..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
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{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

136 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:36:06 ID:976fb80c

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　　　　　　／　　　　　　＼.........:::::::::::.... .......　ヽ　　,
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.　　　　　　ヽ＿＿__　　 }　　..... ......: :::: （( ￣
　　　　　　　 r'ﾆﾆヽ._＼. ﾉ..　..... ......: ::::::　 ;;.
　　　　　 r':ﾆニ:_`ｰ三`:く._　　　　　　 [l、.
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と、大八木が答えた。

　　　　　　　　　　　　　＿
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　　　　　／´　　／　　r'ﾆ三ヽ＼} ＾ヽ､
　　　／　　　 /　　　 |￣￣¨`ヾﾑ;_=ﾆヽ
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　　 //　!　　/　　　‐7￣`''‐､,_　　　 | ﾚ|
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　　 |! / 　 /　　 /　,ｌ　　　　　　ヽ｀ | ! |′　　　　　　じゃ、僕は表。
　　/ l　　/　　 /　,/　　,.._　　 =ィ''’/ ! |
　 /　!　/　　 /　,/　　　ヽ､二,ｧ　 /　| |
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l　 / '|　l　 l/､.,,_　!　　 il|l|ili|l|,i/ 　　 |
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ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
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　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
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自信ありげに云って、洲藤は掌を上げた。

137 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:36:53 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　|ミ=-　　　￣￣｀ヽ　　　 /
　　　　　　　　　　ｌ　　　　　ミ＝-‐　　　　 .′　　　　　　　　　　悪いな
　　　　　　　　　　　　ｌ　｜　　　　　　　　　　 ,'
　　　　　　　　　　　　　 l __ ヽ　　　　　　　　 {
　　　　　　　　　　　　／ /／）ﾆ=''´　　　　　 ./ .|
　　　　　　　　ﾂ二二二／ .／＿_ 　　　　.／　 |
　　　　　　　　 / ／　／''"__,ノ　　　　　 ′　.|
　　　　　　　　　 / /　／　／,.-''"）_ _,,-''´　/　　ヽ＿_
　　　　　　 ,' 　　　 /'´,,..-''´|　　　　 /　　　＿＼/｀ヽ、
　　　　　 _　 ´l　　　　　　/　./ 　|　　　　　　´　　　　/　 /　＼
　　 ,,..-''"　　 |　　　　　 .l　./　 /　　　イ　　　　 /　 /　　　＼

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大八木が笑い、

　　　　/:::／:::::::::::＼/／:::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　 |::::::::イ~~~`"~~~~~~~~ﾍ::::::::::::::::|::::::::|
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　　　|::::|~―-､　ヽ　　,,-―~ 　 |:::::|:::::::::::::::::|
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　　　|:::::::ヽ　　　　|　　　　　　　　|::::::::::|:::::::::::|
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　　　 |:::::::|　　　/ 、　　　　　　 |:::::::::::::|::::::::::|
　　　 |::::::::ヽ　　-`--― ､　　　 |::::::::::::::::::::::::::|
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洲藤は小さく舌を打って肩をすくめた。

138 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:37:40 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　,,,,,,-ｰｰ-　､
　　　　　　　 ,,,-'´　　　　　　 .｀ヽ､
.　　　　　　／　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 .ヽ
　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
.　　　　 i　　　　　　　　　　　　　　 i
.　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　 /
.　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　ヽ　　　　　-　､　　　ノｰ‐--- ､
.　　　　　 `ヽ､　Y　　　 Y,,,‐'´　　　　　　',
　　　　　　　 >‐|i...::::: 　_ｌ:::｀ヽ　　彡　 ',
.　　　　　　　／　｜￣　　 :|　　｀　､ノ　　　 ,
.　　　　　　Y´ 　　 { ,,,,...　　　　　／　|　　　　 ,
　　　　　　 { 　　　ィ､　　　　 |ｰく　　　　　　　　',
. 　　　　｀,ｰ ´　ﾊ　　　　　　　　　ヽノ　　　ヽ
. 　　　　 /　　　ﾉ　} 　　　 ∨ ヽ　／　　　　　　 ',
　　　　〈　　, '　　　　　　　　ヽノ´　　　　　　 }
　　　　　　ｰ‐' ヽ　　 l　　　　　　｀ヽ　　　　　　　 /
　　　　　　　　　＼,ノ　　　　　　　　　　　　　　 /
.　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　 {　　　　　　　　　　　　 /

　　　　　　　　　　／￣￣＼
.　　　　　　　／　　　　　.＼
.　　　　　　　 |｀ー　　　　::::|
.　　　　　　　 |（ ●）　　.:::::::|　　　　　　　　　　　　俺の勝ちだ
　　　　　　　ｌ　　　　:::::::::::::|
.　　　　　　　　｀i__　 ::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　 ',.:'´:::::::::::::::::::::::::7
　　　　　　＿ヽ＿＿＿::::::::::::〈..
.　　　　　 /::｀ヽ:::::::::::::::::::::::￣`:::::::`:..、
　　　　　 l:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::`:.､
　　　　　 |::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::!:::::::::::::::;ｲ
　　　　　 `、::::::::::::∨::::::::::::::::::/:::::::::::::/::l
.　　　　　　 `、:::::::::::`、::::::::::／:::::::::::::/:::::〉
　　　　　　 `;:::::::::::::`,::::::::/::::::::::::／::::::::|
　　　　　　 `;:::::::::::::`,:::/:::::::::／ l::::::::::::!
　　　　　　　〉::::::::::::::Y:::::::::/.　　l:::::::::::ｌ}

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二分の一の偶然だった。

──が。

139 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:38:27 ID:976fb80c

　　　　　　　　 | 　　　　,
　　　　　　　　　 | 　　　 ,,＼
　　　　　　　　　　|　　　　　| 　｀ヽ､...,,,_　　　　　　　　　　l
.　　　　　　　　 |　　　　　l 　　|:::::::::::: ｀ ''ヽ、,,_＿ノ ,.ノ
　　　　　　　 |.　　　　　',　　ヽ:::::::::::: ノ　　|
　　　　　　　　 | 　　　　＼　　　￣　　 ,.ノ
　　　　　　　　　　 | 　　　　　　　　　　　　　´
.　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　 |　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　 |　　　　　　 ij　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この時のささやかな偶然の審判が、ある意味でどれほど大きく彼らの未来を分けることとなったか、

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
.　　　　　 //:;:;:;:;:__／　　　　＿　＼:::::::＼::::::::ヽ、
　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

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二人の男たちには（もちろん千歳にも）知るすべはなかった。

140 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:39:14 ID:976fb80c

　　　┌──────────────────────────────── ──　─
　　　└────────────────────────── ──　─
　　　┌──────────────────── ──　─
　　　└──────────── ──　─
　　　┌──────── ──　─
　　　└── ──　─

　　　　　　 ,　-‐‐- 、
　　　　　　 / 、__　　　ヽ
　　　　　 ./　＿　　　　 Y
　　　　　 l７　　　　　　 l　　　　　　　　　　　(妙な夜だな……)
　　　　 lヽ＿　　　u.　,'
　　　　　ﾊ´= 　｀　　　/
　　　　 |　　　　 _|　 l、
　　　　　 .ヽ-ィ''"´./　 .〉ヽ.._
　　　　　　 _,,-|　 /　 ./:::::::ヽ｀ヽ、
　　　　_,,-''／/ヽ　 ./::::::::::::::ヽ、ヽ
　　　 /:::::>::/、_,,..-'/<´｀"''‐-,,_ヽ::::＼
　 ,、/::::::|::/　　　 ./／:::::::::::::::::::::::::::::::|
　.ヽヽ、::|/_,,..-／￣:r''"ヽy::::::::::::::::::::::|
　|三_,,-''":::／::::::::::/　　／:::::::::::::::::::::/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

酔いで霞んだ頭の中で、大八木は思った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　ヽｰ- --―‐ '¨ ´　　｀ ' ー--､_
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　＿, -――‐｀ヽ
　　　　　　　　ヽ　／　　 , ｨ'´　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　〉´　　／　　 _, -‐ ' ´￣￣｀:ｰ-､＼
　　　　　　　　　　　　/ﾉ /　/　　／:´: : : : : : : : : : : : : : : :｀ヽ､
　　　　　　　　　 /: ヽ／　／: : : :_: ;ィ: : : ; : : : : : : : : : : : :.',
　　　　　　　　 ,': : : :l　　/: :､;_:/_＞､´: : :_: : : :.;ィ: : : : : : : :l
　　　　　　　　　　/: : : :/　　l:/: : /ﾄ､,￣ゝヽー';.イ: ／: : : : : : :l
　　　　　　　　 /: : :.:/　　 'ﾄ､: :lゝ弋ッ　´フ:／､,:イ:/: :l: : : :.:ﾄ､
　　　　　　 /: : : / 　　 ∧ ヾ!　｀¨　￣､_￣/://:l: :l:/: : : !
　　　　　　／: : ／　　／　ヽ　　　　　,　ゞｨ' /: /: :.l: /: :/:./
　　　　／: :.／　 , ィ／　　　〉､　ｰ　 _,.ｨ'´:／:／/:／／
. 　　　／: ;ィ'´ ,.ィ´:／　　　　 ∧: ゝ ‐≦ー:‐'´イ_,ｲ／／
.　　／:.／r‐':´: : :/　　　ー-､　 ',　　ヽ:∧: : :l ￣l　　l
.　／:／／: : : : :.:l!ﾉヽ._　　　　　l　　 }::::∧: : ',　 ',　 l
イ: :/　/: : /: : : /ゝｰ-､_ゝ､_,､　　　l　　 }:::::::∧: :ﾍ　 !　l
: : /　/: : :/: : :./l::::; -<_, -＼ゝ-､', ゝ､　 !:::::::::/: : :ヽ l　 !
: / ／:/: /: : :/: :ゝｰｨ　　　　r'ゝ＼ヽ　!　}:::;r/: : : : : `l!　!
:.ゝ': :/: /: : :/: : :〈::ゝｲ　　 _,ｨ'_ノ　ヽ!ﾉ__l／ゝー､_:./l　ﾄ､
: l: :./: /: : :/: : : :./::｀/ノ￣:::::ゝ,　　　/　ﾍﾍ, ヽ.　 i^/　l/: :.＼
:..l:./: /: : : : : : : : :〉:::´:::::::::::::::::〈__, ィ´　　 lﾉ_`l　　l/　 /: : : : :.＼
:.:l/: : : : : : : : : : : ヽ;:::::::::::::::::::/: .　　　／､`::´!ゝ-'　 /: : : :＼: : :＼
: :l: : : : : :/: : : : : : :l ｀ー､_;:ィ´:l.　　／　　l:／: :/　／: : : : : : :＼: :..:＼
: : : : : : :/: : : : : : :/:::::::::::::::::::::::l　／!ヽ､　ﾉ: : :.〈／: : : : : : : :ヽ: :.＼: : :＼
: : : : :..:/: : : : : :／ヽ:ゝ-:l:::/:::::::!´三l　ゝ' ヽ: : :´: : : : : : : : : : : ヽ: : ＼: : :＼
: : : : :./: : : : ／::::::::ヽ::::::l:/::::::::::l三/ﾊ　　　ヽ: : : : :＼: : : : : : : : :ヽ: : :.＼: : ヽ
: : :..∨: : :／::::::::::::::∧::::/::::::::::::::!i/:::l::ゝ,　　　ヽ: : : : : :＼: : : : : : : :ヽ: : : :ヽ: : ﾍ
:､: : : :`イ_:r:､::::::::::/r､:＼::::::/::::::lﾉ:::::ヽ:::ﾄ､　　　ヽ: : : : : :.:＼: : : : : : :.',: : : : : : : :',
: :ﾍ: :´つ:::｀∨｀￣　ゝ:::_＼ー‐'::::::::::::ヽl::ﾍ　　　ヽ: : : : : : :.ヽ: : : : : : ',: : : : : : : :!
: : : '／_:::::::::∧　　　｀´ヾｯ＞､:::::::::::::::::ヽ:∧　　　 '; : : : : : : : ヽ: : : : : !: : : : : : : :
: : :´￣:.ﾉ:::::::::::ヽ　　／　｀　　ヾ､:::::＿;;__l::::::',｀ヽ､ノ: : : : : : /: : :i: : : : :.l: : :l: : /:./
: : : : : /´):r‐､::r､ヽ./　　　　　ヽ＼:::￣:::::::::!:ー:ヽ:ノ: : : :./: : : : : : : : :l: :ノ／／
: : : : : : /:/　ゝ' l:::ヽ　　　　　　　ヽ　＼::::::::::::＼: ￣: : : ｀ヽ､: : : : : : : :/: : :／
/: :: : ノ〉ﾉ　　 _ _∨_,＼　　　　　ヽ　ヽ､_:::::::::＼_: : : : : : : : : : : : : /ノ／
ノ:/:, -､´, ィ;'´　｀´　｀';.＼　　　　　 ',.　　　＼::__:::::｀ヽ｀ヽ､_: : : : ／
-‐'´.　ヽゝ､＿､_　　　ゝ-.＼　　　　 ',　　　 !::´::::｀ヽ_::ヽ__　￣
　　　　　｀ｰ-､__ ,＞-‐ ' ´￣｀!　　　　　',　　　',､:::::::::::::::｀ヽ_:ゝ-､
＿_, ､__　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　　　 i ￣｀ー-､:::ヽ::::ゝ‐-､
　　　　｀ '　‐-　､, ＿　　　　　＿ , ィゝ､　 _,ノ　　　　　　￣￣ヾ､::::::＼
　　　　　　　　　　　￣￣￣　　　　￣　　　　　　　　　　　　　￣￣

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昨日、待ち合わせの場所で初めて会った時から、千歳のことは気になっていたのだ。

多少水っぽい感じがしないでもないが、いい女であることに違いはなかった。
　　　¨¨¨¨¨¨¨

141 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:40:01 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　 ,　-―',二二ﾆ､‐-､
　　　　　　　 , -‐'´　,ｨ'´ , -――-､｀'ｰ､ヽ､
　　　　　　／　　／／: :: : : : : : : : ｀ヽ､＼＼
　　　　　/　　.／／: : :.／: : /: : : : : : : :＼ヽ｀ヽ
　　　　　＼　 /　/: : : :./: : : /: : : : /: /: : : :ヽ',　ヽ
　　　　　 /`l　 l: : : :./`ｰ／､: :.／: /l: l: : l: :l l　／
.　　　　　 /: :.l　 l: : : :l,ｨｾｮｭ､／/:／‐ﾚ'l: : l: :.! l/
　　　　　 /: :..:l 　.ﾄ､: : ',辷ﾘ　' ／´,ｨ示､l: /:l:/* ',
.　　　　 /: : :./ */: : ヽ;ヽ_ ,,,, 　 ,　ゞｲ /:/／､　ﾍ
　　　 /: : :./　 /:/: :/:..:ヽ,　　c　 '''' /´／: :ヽヽ　 l
.　　／: : ／ .／:/: _/: :.r十｀ｰ_‐_'_´＿: : : : : :ヽヽ　ヽ＿_
. ／: : ／／: ,ｨ'￣ゝヽ｀r=＝示＝ｭゝヽ｀ヽ: : : : ヽー-､* ｀ー-､
´: : ／／: :./::::::::::::〈 `i《.　〃[![!ゞ､》　ゝ`ｰ`ｰ-'ｰ-､_: : ＼　　　ヽ
: : / */: : : /:::::::::::::::ﾉﾉゞ彳 [! ゝjヾ､　￣｀¨´`'ｰ､　ヽ: : :＼　　ヽ
: /　 /: : :./:::::::::::::::::ゝゝ　　 ij　〉ゝヾｯ　　　_,ｨ'´,ｨ'´: : : : : ＼　　〉
/　 /: : :./::::::::::::::::::::::ﾉ　〉　　 ij　ゝ, j､ゝ　　 _ノ _ノ´::::＼: : : : : : _￣＼
l 　 l: : :/:::::::::::::::::::::::::〉（　　　　＿ﾉ l ゝ､ゝ'´ノ´:::::::::::::::/: : : :,ｨ`/.〉､:__:.＼
:￣: : :/:::::::::::::::::::::::::〈　ﾉ__,､,-'´_r‐'´ヽ. /￣l!:::::::::::::::／: : :／/':l / /`/〉:
: : : : : ＼:::::::::::::::::::::::ゝ‐､,-ｨ＝´三三三三ﾐ∧:::::::::::ゝ-‐'´ /:::::`Yゝ'`´!: :
: : : : : : : :`ｰ､::::＿::::::r'´: :./＝=三三三ﾊ三ﾐ《::ヽ::::::/　／:::::/彡:::::::巛:
: : : : :_r‐､_￣｀ーヽ:::ヽ:../:::::::::::::::l三ﾐ!’:::ヾ三》::::ヽ〈　/:::::::::::l圭:::::::::lﾐ: :
: :r-rﾍヽ`ｰ'ｰ-､　ヽ:::∨::::::::::::::::l圭/:::::::::::ヾﾘ:::::::::::`/:l!::::::::::l 圭!:::::::lミ: :
: :.ヽヽゝ'´ﾐ:::::::::::｀ヾｭ--､ __:::::::::::::￣:::::::::::::::::::::::::::::::/::::l'::::::::::l 圭!::::::::l彡
: : : ﾐ!:´::::::ミ;::::::::::ヽ:::ヾｯ::::::::｀ヽ､:ー―---､_;:::::::::::/::::: /:::::::/::l彡_::::::::lﾐ: :
: : : ﾐ!::::::::::: ミ!:::ヽ:::::ヽ:::::ヾｯ､:ヽ::::::＼:::::::::::／::::::／:::::/::::::::/::::l 圭!:::::::::'lﾐ
: : :ミ!:::::::::::::ミ!;:::::＼:::＼::::::ヾﾐｭ_:::::::::`'ｰ '´:::::::::::::::::／::::::::/::::::l圭::::::::::::l彡
: : :ﾉﾘ:::::::::::::::ﾘﾐ!:::::::::::::::::::::::::::::`ゞ=ｭ､＿＿_;;=＝彳:::::::::::::::::::;圭!:::::::::::::lﾐ
:／ゞ!::::::::::::::::::l彡 _:::::＼::::｀ヽ､:::::::::::::::¨¨¨¨¨:／:::::::::::;:ｨ::::::::::/ 彡:::::::::::::::lﾐ
: : :巛::::::::::::::::::::ゞ彡_:::::`ｰ､__:::`ｰ―――:':´:::::::__,ｨ '´::::::::::::/ﾐ"::::::::＼::::l彡
／:《ﾉ:::::::::::::::::::::::::ゞ圭ｮ､:＿_:｀::――――:::￣:::::::::::::::::::／彡::::::::::::::::::/彡
: :.ヾｯ:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ゞ圭ﾐ､￣:｀:::ー:::::＿::::::::::::::::::／圭〃:::::::::::::::::/ﾘ"
: : :ゞｯ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::¨l`ゞﾐｮｮｭ､＿＿＿,::ｨ彡圭彡"::::::::::::::::::::/ﾐ/:
: : : : ゞﾐｭ､_:::::::::::::::::::::::::::::::::∧　¨ゞ'ゞ＝圭彡ゞ〃¨￣　!::::::/:::::/:／彡: :
: : : : : :ゞ＝ミｭ､:::::::::::l:::::::::::::::∧　　　　　　　|"　　　　 l:::::/:::::://彡": : :
: : : : : : : :ゞ圭ミｮｭ､_::l:::::::::::::::::∧　　　　　 |　　　　　 l:::/::::::／彡": : : :

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一緒に参加した茜由美子が可哀想に思えるほどに、彼女はその身体全体から、若く美しい女の魅力を発散していた。

その千歳と、こうして今夜、早くも二人きりになるチャンスが訪れたわけだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　-―‐　―-　、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／_, - '´￣￣└-､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ /　 _, --――- ､_ ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ノ／::/:: ::/:: :l:: ::|:: ::ヽヽ　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/「 /:: ::/:: ::/:: :/:: /ﾄ:: :|::ヽ_｣ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ!,:i:: :|/:__/!/::/!:/_｣__';:l:: ::| |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/|ｲ:!:: ﾔーzﾐ/ /'ｫーｒｬ|!:: ﾊ.}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l::l ﾄl:: :lゞﾆﾂ　/　ゝﾆﾂ/::/l　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l: |　ﾄゝ :::: 　 '　　:::: /イ:/　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /!::}　 !_;:_ ト　二　イ;: ::｜ /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:;' ::| /ー､辷」‐､厶寸¨ヽｉ / |
　　　　　　　　　　　　　　　　 /:;' ::/l !　　ﾇ〈_ ,ｲ¨ﾄ､｣ｌ｝　|ｲ: l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:; :: /:l/ l　　 l}　 /!ｘl　ｌ｝　l!ﾊ::|
　　　　　　　　　　　　　　　 /:/:: :: /l|　!　　ﾄ､ | ｌｘl|　ｉ｝　l|　l:l
　　　　　　　　　　　　　　　/::／:: ://:ﾄ、　　　｜ jｘ|　 l｝八　!l
　　　　　　　　　　　　　_, -::'´:: ::／/::_l、　　　/__｣ｘ|_／　／|　i:、
　　　　　　　　　　　_,　‐:;' -:: ::, ::'/　 l'´__,ヽ , -‐〈::l＿/少ｬ_イ:: １ｌ::ヽ
　　　　　　　　　　, -::_'::-,::'´::, :: '´／|　 /く_ 　 |l　　 V:::/´l:|!l|┘!:: ::|　}､::ヽ
　　　　　　　　/ィ´_, .:'´-::'´:: :: /　/　 |, -┴ /　　　|:;ム::l/' !　ｉｰ::l　|::ヽ::ﾍ
　　　　　　　　　　_,＞'´:: :: :: :: ::, :／　 !＿/　_,=､｣　　　l|　/|｣　ﾄ､ |!:: :}_ﾉ::､::ゝﾘ
　　　　　 r::'::´:: :: ::_;: -:: '::´::/_,　´／　 _/:i‐￢!、　　/!ｲ::::}-､_|　ヾＬ.:: :: ､::ヽ::ヽ
　　　　_,ｒ::ゝ-::‐::'::´::ーｧ::_:／´_.／_, r::', -┘　　＼∠仁!:;「　　` ｰ､| ¨i::ｰ-::ゝ､:ヽ,_＿__
　rー;:ォ:'::ｯ‐､::_::ｨー--',二,＿_,´-‐ツｰL｢　　　　　ヾ'´￣＞､--- .、　ヾ二ヽー――z-::､三ヽ
　{:::::l 〈::/　　￣´¨¨二三ｒ_-_‐_´_,. -‐┴ …― - ､. 　ト､ヽ　ﾄ'　　　　ｉ＿＿＿_／::-‐テ'´
　｣:::::'ー-ｒ '´￣￣´　　　　　　　　　　　　　　　　　 i└!__j｣　　　　　_.厶＿, -､＿,r‐'¨
　└￢､:/_　　　　　　　__,.＿＿＿＿　　　　　　　 ,ノ￣￣´¨　――'´
　　　　└ー-－ '´ ￣　　　　　　　　￣´ ﾞ¨　ー－'´

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彼女の方がどういうつもりなのかは知らない。

自分で「勝負」を云いだしておいてハズレを引いてしまった洲藤には申し訳ないが、

大八木にしてみれば実に幸運な成りゆきである。

142 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:40:48 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.. --――― - 、
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　::|
　　　　　　　　　　 |　へ　　　　　　　　　　　 ::|
　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　 ::|
　　　　　　　　　　　　　　 | ┬―‐　　　　　　　　 :|
　　　　　　　　　　　　 | '＿_ /　　　　　　　　 :|
　　　　　　　　　　　　 | ￣　　　　　　　　　 :|
　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　 .:|
　　　　　　　　　　　　　　　!.　　　　　J　　　　　　 ::/
　　　　　　　　　　　　　　 l　ｒ　、　　　　　　　　　 ::/
　　　　　　　　　　　 |　￣　　　　　　　 ;;/
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ. ＿　　　　　　　　　く
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　＼

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もっと胸がときめいてもいいはずだった。

なのにどうしたわけか、それよりも何やら「妙な」気分の方が先に立った。

妙な夜、妙な気分。

ｨ彡三ﾐヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/｀　ｨ彡三ﾐヽ
彡'⌒ヾﾐヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ー彡'⌒ヾﾐヽ
　　　　　ヾ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　＿　　　｀ー―'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ー―'
彡三ミﾐヽ　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彡三ミﾐヽ
彡'　　　ヾ､　　　＿ノ　　　　　　／　　　　　＼　　　　　　　　　　　　＼＿　　　ヾ´　　　　´ミ
　　　　　　｀ー '　　　　　　　　　　 |:::::: 　　　　　｜　　　　　　　　　　　　｀ー ´
　,ｨ彡三ﾆﾐヽ　　＿_ノ　　　　　　 |:::::::::::　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｨ彡三ﾆﾐヽ
彡'　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ミ'
　　　　　　＿　　＿＿ノ　　　　　 |:::::::::::::: 　　　　}　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　,ｨ彡'　　　　　　　　　　　　　　　ヽ:::::::::::::: 　　 }　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｨミ'
ﾐ三彡'　　　　　　　／⌒　　　　　　　ヽ::::::::::　　ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ三ミ'
　　　　　　ｨﾆﾆ=- '　　　　　　　　　　　　/:::::::::::: く　　　　　　　　　　　　　　　ｨﾆﾆ=- '
　　　 ,ｨ彡'　　　　　　　　　　　　 |:::::::::::::::: ＼　　　　　　　　　　　　　　　　｀ミｨ,

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

何だか──そうだ、自分たちの意思とか自然の成りゆきとかいうよりも、

何か、目に見えないものに操られているような。
　　　　　　　　　　　　　 ¨¨¨¨¨¨¨

143 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:41:35 ID:976fb80c

　　　　　／￣￣Y￣￣＼
　　　／U　へ.　　へ　　＼
　　（○）（○ ）　（ ○）（○）
　　 |　　/　　　　 ij　　｜　|
　　　{___´__　　彡　　__´___ﾉ
　　　 {`ー'´　　　　　 `ー'´}
　　　 { 　　u　彡　　　u　}
　　　　ヽ、　　　　/　　ノ
　　　　　　 .ﾝ　　　ヽ
　　　　　／／　　　 |
　 (⌒二_／ |　　.　　|

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洲藤を残してその場を離れ、千歳と並んで歩きはじめても、しばらくの間はそんな感覚がまとわりついて消えなかった。

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.. .. . ...　.::::..　.　.　.::　:　:..　.　...　　　　　　... .. .::. .. .　　　　　　　　　　　 ::　:　:..　.　...
　　..　.　..　.:::::　　　　　　::　:..　ﾟ　　　ﾉ　 ...　:...　.　.::::　...::::..　.　.　.::　:　:..
... .. .. 　　. ...　...　　　　..::　　　. ...`　-　´... 　　　　　..::　　　. .. .　:::::　　　　　　:　　　::::　::
　. .. .　.. ... .. ...　　*...　...　　　　..:.::::.... ... ... .::.. :　:..　 . .*　　　　　　　　　　　::::..　.　.　.::　:
.　.::　:　:..　.　...　:::　:::..　　　　　　..::.　.:::::..　　　　　 :　　　　　　　　 .*...　...　　..:::::
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月と星の光が山を照らし、辺りは意外なほどに明るかった。

懐中電灯を用意する必要もなく、大八木と千歳は山道の一つに分け入った。

144 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:42:22 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.;:...:,:.:.､､;:...:,:.
　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:..　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.　　　　　　　　　　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.
　;:...:,:.:.､､;:...:,:.　　　　　　;:...:,:.:.､､;:...:,:.

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

二人がやっと並んで歩けるほどの道幅である。

やがて、道はやや険しい登り坂になった。

両手に生い茂った木立の陰に入り、徐々に闇が深まってくる。

　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿__
　　　　　　　　　 ,, -‐' ＿r─v─v‐ｭ_｀ｰ-､
　　　　　　　　／　 __/,-‐'´￣￣￣￣｀ﾞｰ-､＼
　　　　　　／　　 /／　　　　‐米‐　　　　　＼＼
　　　　　／　　　〆　※＿ｪ=＝=＝=ｪ､_　※　＼＼
　　　　く　　　〆　ｒ‐'7.::／.::::::.:ﾉﾉ:::::::::!::ヾｰ-､＿_Ｖ
　　　　　＼〆※／:::/.:/::::/::／;ｲ::!:::::/|::::ヾ:::::::::::::::|
　　　　　　 |　／.:::::/::ム斗-!;:/::j/.::_j__j::::::!）:|:::::::::::|
　　　　　　 |/|:::::::|:::|:::|/／ｰメ|／|:::/:/_｀寸:/|::::::;ｲ:|
　　　　　　 |::｛:::::::i:::ｋ{了￣「｀　ﾚｉ,ｲ￣}ﾞｉ|〉/.:::/.:|::|
　　　　　　 |::{|＼:::ヾ: ﾍ辷ジ　　　廴.ﾉｿ|/.::;:'.:::/j}|　　　　　　　　　　　どこまで行くの。
　　　　　　,':::{|　＼_二ﾆ=-　　　 ,　　-=ﾆイﾚ'|/ j}::|
　　　　　 /::::{i ※ i}__＞､ u　　 o　　／.::::{i ※ j}::::|
　　　　 /::::{i　　 i}ん'￣｀＞＿（＼イ￣丁{i　　ｉ}＼|
.　　　　/:::::{i ※ i}fｦ ,r===､｀ーｆ⌒ヾ!　　fｦ{i ※ ｉ}　＼
　　　／:::ｲ{j 　 j}fｦ　||＿⊂二二-‐'　＼ﾉ￣{i　　i} 　　＼
　／.:::::ﾊ{ｊ ※ j}廷　￣7/,-‐'´,-‐‐　_ノ　　 {i ※ ｉ}　　　〉
／.:::::::/ ｛i　　 i}廷〉　// ￣乙イ~7'´　　　/{ｉ　　 i} 　　 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

千歳が、ちょっと不安そうな声になって大八木を窺った。

145 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:43:09 ID:976fb80c

　　　　　／￣￣＼
　　　／ヽ　へ　　＼　　 , :┐
.　　（ ●）（＜)　　 |　／　｜　　　　　　　　　　　　この先に見晴らしのいい場所があるんだ。
　　 |　　|　　　　　 | /　　 /
　　　 i　__｀__r－､　　l/　／　　　　　　　　　　　　　　星がよく見える。
　　　 {　｀ー'ヽ,　',. .,/　:/',
.　　　ヽ.　　　|　 l_/_, -‐､',
.　　　　ヽ.　　| 　 / , -－'i|
　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ
　　　　　|　　　ヽ　Ｌ|　r=　|

　　　　　　　　ヽ　　　　 ,　　　　　　　　　　　＿　　　　ヽ　　ヽ
　　　　　　　　　　＼／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　　＼　＼
　　　　　　　　　　／: : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　ヽ　　,
　　　　　　　　／: : : : //: : : : :／.: : : : : : : : :ｌ: : : : : : : ＼　　ヽ　＼
　　　　　／: : : : : ://: : : ／.: : : : : : : : : : :ﾊ: : : : : : : : :.ヽ　　}　　　＼
　　　　　　/.: : : : : : ://＿_/: : : : :／/: : : :／　!: : : : i: : : : : |.　 }　　　／/
.　　　　　〃: :/: : : : i/.:／/￣`:／　/.: :／_　　ﾊ: : : :|: : : : : |　 }　 ,ｨ´／
.　　　 / !: : |: : :_;.イ〃云示ヽ　　/:／　￣`ト､: :./: : : : : |　/／: ﾚ'
　　　　 |　|: :ﾊ: : : : :|《. トイ　|　　／　　_=＝ｭ_　|ヽ': : : : : : ﾚ': : : : :.|　　　　　ふーん。
.　　　　,l　|:/　!: : : : ! ’乂:__ﾂ　　　　'’´￣ヽヾＶ: : : : : : :.|: : : : : : |
　　　　　 |! 　ヽ: : : |　　　　　　　　トイ:　|　》: : : : :./: ,': : : : : : :!　　　　　どうして知ってるの、そんなこと。
　　　　　　　　 |: :＼:ヽ　　　　，　　　ゞ- シ　": : : ;ィ:| /: : : : : : : |
　　　　　　　　 |: :{ ﾊ＼　　　　　　　　　　／: : : ／///: : : : : : : : |
　　　　　　　　 |: :{　＼　　　 '`　　　　　／: :_　イ /:〃: : : : : : : : : |
　　　　　　　　 |: :{　　}:_＼.　　　　　　￣￣ｨ　　 /.: : : : : : : : : : : :.|
　　　　　　　　/ :_{　 /〃　＞　=＝- ―　´　{　　/￣￣〃＝､: : : :.!
　　　　　　　ﾚ'::::{　ﾊ/　　 -‐´ ヽ　　　　 .{　　}　／／:::::::::::::ヽ: : :!
　　　　　　 |:::::::{ﾊ:〉|.　　　　　＼　　_　ｨ′ .} / 7::::::::::::::::::::::ヽ: :'.
.　　　　　　　 |:::::::{　}l ヽ　　_zｪ==ｭ､Yzｪ、{　　.} | ゝ::::::::::::::::::::::::::V: |
.　　　　　　　|:::::::{　}　　　　《　／/Xヾ　》＼ﾊヽゝ::::::::::::::::::::::::::V:|

146 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:43:56 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , r ''"￣｀　`丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　 ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　ー-' 　l　　　　　明るいうちに少し歩きまわってみたんだ。
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　 ( ●) 　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　 ,　　　　　　──暗くて、怖くなってきたかな。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　　」
　　　　　　　　　　　　　　　 /´　　　　　　　　､＿ /
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　　,.イヽ　　≧ｚr:'´: ヽ､　　　 /´ ー‐'
　　　　　　 //i　　 Ⅹ ／//j: : : : :.＞ｘ､　 i
　　　　　 .//７　　//////jﾉ: : : ＞'´::::::i　 {ヽ､
　　　　　 ///i| 　 ,'///////T V/i∧:',::::L_　ヽ::::::t
　　　　　 ,///ﾑ　 ,////////ﾑ ∨/ム:ヽ::::::|￣ヽ::i,
　　　　 i///ハ ,'//////////ヽ///∧::::::::{　　 j:::ヽ_
　　　　　j/////Ⅵ///////////////∧::::::∧　 !:ﾉ∧i
　　　　 i//////i/////////////////∧::::::∧/::i//iY
　　　　 .i/////////////////////////ﾑ:::::::∧:::i//!|
　　　　 |///////////////////////////ﾑ::::::/:::V/i{
　　　　 Ⅶ///////////////////////////!:::':i:イV/i!
　　　　 i////////////j///////////////i|＜::i:::::V∧
　　　　　i/////////Y//|///////////////i!:::::::::7::∨ﾑ
　　　　 i/////////i//i!///////////////|::::::::/:::::::Vj{
　　　　　 |////////j∧/|///////////////i!::::::j::::::::::|Vﾑ
　　　　　 |/////////j Ⅵ///////////////|:::::〈:::::::::::i V∧

　　　　/ノ´: /: : : : : : : : : : : : : :ｉ: : : ::ｉ: ::ヽ: : : : : :＼　　　＼
　　　/": : :/: : : : : : : : : : : : : : ::|: : :|: |: : : ヽ: : : : : : :ヽ　／
　　/: : : ::/: : : : : : : : : : : : :／:/}: : ｉ: :|: : : : :ヽ: : : : : : :Ｖ
　 /: : : : :|: : : : : : : ／: ::／:: / /: :/: / ヽ: : : : }: : : : : : :ｌ
｀.{: : : : : :|: : : : : : : : ::／./／ /:／/:/-―--:､; |: : : : : : :|
　|: : : :{: : |: : : :,斗ｧ''フ"　／"　 //　　　　＼ヽ|: : ｉ : : ::|
　|:ｉ: : :ｉ: : :ｌｒ彡"´　　　　"　　　/　　　　　　　　}: :ﾉ : : ::|　　　　　　　別に。
　ｌ: ｉ: : { : : ｌ |　　　　 __,..　　　 /　　''ェ;_＿_,ｪ; /: : : : /∧
.　 ',ヽ: : : : ヽｌ ,ｒ＝=＝"　　　　　　　　￣￣ ./: : : :ノ/　ｌ　　　　　　　　　でも、道に迷ったりしない？
　　＼＼: : : ＼　　　　　　　　!　　　　　　 /, ｒ '´　}: : :ヽｌ
　　 |: : : {　`ー　＞　　　　　　　　　　　　　　/{ ＊ }: :　ヽｌ
　　 |:/: : {　__ ｉ/ ヽ　　　　　　　　　　　　.／: {　　 }:_:: : : : ｌ
.　 //: : : :{　 "ｉヽ { :ヽ､　　　　⌒　　　／:__ : {　／　ﾉ: : : : :.'.,
　ｌ/: : : : : :}　ｒ－┘､: ::ｒ`ｖｒ‐　-　 ´|: : : | _｣_{./　 ./: : : : : : : '.,
　/: : : : : : : {　｀ヽ、　ヽ.Ｌ._ヽ.　　　　レ'Ｖ＿＿ヽ/: : : : : : : : : :'.,
/: : : : : : : : ｒト＊|ヽ／ノヽ.'､　／　{ （＿__　　〕ｒ､＿: : : : : : : '.,
: : : : : : : : :∧.ｌ.｝　 }〔　´　／ヽG＝ニ:|（　　　　./ｒ'/ｒく: : : : : : : : :',
: : : : : : : ::/　)|.ﾄ}　 }ヽ　　　へ）|ノ＼.{ |/ｰｉ　　/`./ (　ヽ: : : : : : : : ',
: : : : : : : /　 .)|.｢.） .} ∧　　　　）７ .ヽ |　　　 { フ　 |　ヽ: : : : : : : : ',

147 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:44:43 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿__
　　　　　　　　　　　　　／　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ′
　　　　　　　　　　　　　　　 i　ノ　⌒
　　　　　　　　　　　　　　,.....|(●) (●)　iﾍ､　　　　　　　　　　　　　ご心配なく。
　　　　　　　　　　　　／:::::::!　　|_　　　|:::ﾘ｀ヽ､_
　　　　　　　　　　　 /::::::::::::∧ ー―　/::::::::/.:::.. ヽ､　　　　　　　俺、山には慣れてるから。
　　　　　　　　　　　j:::::::::::::::::::ヽ＿..／:::::::::/.::::::/.:::: ﾍ
　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::/／:::::::｀
　　　　　　　　　　j:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::!
　　　　　　　　　　j:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾚ::::::::::::::::::j
　　　　　　　＿__f:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::/:!
　　　　　 /二ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::_＿＿__./::::::::::::::::::f/
　　　,--<≧<:.ヽ:::::::::::::::≧=-ナ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::／/
､ー≦､__jヽ､j:::::j::::::::::／i:::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::／.:.:f
　￣ﾉ　　　 i:::::/'´:／　 j≧￣≧=-ヽ､_.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:i
　／,ｲ r､　f､二ｖ' _＞ｲ,;i!　　　,;　　　　ヽ､＿/.:.:.:.:.:.:i
/ /´.j ;! ﾍ Y　ﾉ./.::::,ｲ/i!i!i;i:.ii!;ヾ　　　　　　ヽ.:.:.:.::.;
｀´　 i_ｊ　 !,j　j /f.::f:iﾉ　!i!ヾ;i!i!i;i: |i　　　ヽ､ヽj＼.:.:/
　　　　　　／T_/i_j/　/ i!i! ;i　i!; ij/|/jii!i!､､i!|N　ﾘ
　　　　　／　　　　 i　/　i　 i!　 Y_.ノ川i!i!ｊ i!i!i　V
　　　　 /　　　　　　ﾚ　 i!　 ! 　:|'ヽ､　　　_.ノ-ｲ
　　　／　　　　　　 f　　i!!　 i! 　:|　　￣￣
　　/　　　　 ,;ilili/　　/　　! 　 i
　　|ililili　､ｲililililili/　　/　　 |　 /
　　｀ilililililiililililili/　　/　　　 | ./
　　 iililili;/⌒ヽ/ 　 /　　　 .V
　　 jilili/　　　ヽ､_(　　　　　i
／￣￣￣ヽ､　　 Vヽ　　　 j
:::::::::::::::::::::::::::::＼　i ∧　　　/
:::::::::::::::::::::::::::::::::::i　V ヽ　Y´
:::::::::::::::::::::::::::::::::::i 　i　 i／

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大八木は、黒い登山用のニッカーボッカーをはいた膝を振り上げ、ぽんと叩いてみせた。

　　　　　　　　　　　　／　　　 ;;;;;;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　/　　　　　;;;;;;;;;;;;;、
　　　　　　　　　　　| ノ　　　ヘ　;;;;;;;;;;|　　　　　　　　　　　　　　高校時代にはワングルをやってたんだ。
　　　　　　　　　　　|（ ●）　（●） ;;;;;;;;;l
　　　　　　　　　　　|　　 |　　　　 ;;;;;;;il　　　　　　　　　　　　　　　　磯部先生はその時の顧問でね。
　　　　　　　　　　　 |　 __｀___ , ;;;;;;;.;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　!　　　　　;;;;;;/i;;;;;;;;ヽ、
　　　　　　　　　　　　＼　　　　;;//;;;;;;;;;i;;;;;;ヽ､_
　　　　　　　　　／)　　　￣￣;l;　;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`‐-､
　　　　＿　　　/ :/　　　　　　|;;;;　/;;;;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　ヽ、
　　　ノヾ　`‐-"　ｌ　　　 , -‐"i　 /;;;ノ;;;;;;;／;;;;;;,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞヽ,
　　ﾉヽ　　　　　　|　／　　.ヽ!;;:／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;li
　　 l　　　　　 ,　 :l　/ ,　　　　;/　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
　　 (　　　　　ヽノ .i i;　　　　;l　　　　　,,　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
　　ヽ､　　　　　　＼l/_,-‐ ､:;|　　　　　:;＼,,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
　　　　ヽ､i　　　　　＼i;;;;;:)）;|　　　　;;;;;;;;;/　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐､;;;;;;;;;;/
　　　　　　＼　　　　　＼´）;;|　　　　;;;;;;;/　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;

149 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:45:31 ID:976fb80c

　 /※／: : : : : : : : : : :.l: :.l: : : : ヽ、　＼
　,'　/: : : : /: : : : : : /:./:..:l: : :.､: : :ﾍ　／
ｰ{／: : : :./: : : :/:／: /,':./: : : :.'; : : ﾊ´
. !:l: : : : :.l: :_:_:.／ ;／/:/_ヾ:_:_: :.l: : :lﾍ
..l:.l:l: : : : lィ-ｨｮｭ､　 /; '´,.xｭtヾ: l: : :l }
.l: ﾄ'ヾ: : :ﾍ`弋ﾉ　／　弋:ﾘ' /,':..:/　　　　　　　　　　　そうなの。
.!: l 　｀ﾄ､:ゝ　　　　 '　　　 ,.ｲ:／
l: :l　※ l: :ヽ、　　　 -　　 ,ｨ- '　l:!
l: :ﾍ　　 V: : :.i＞　　 , . ＜: l .※ l:l
!: : ﾍ　　　'ｨ'´ヽ、_　 ly-､: :ﾍ　　 l.:.
rt_, ｨﾍ ※ l　　　___Y´ 　｀ヽ{ 　/∧
'::::(_ﾍヽ　ヽｨ彡'"７ﾐヾ=ｭ､__ヽ lﾊ_:.:.
::::::::ゝゝヽ　 }´　,〃}〈ﾊﾐ､　,ﾘﾄ､! ﾉ: :.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　:::::::＿＿,,」　　　　　　　,-‐─‐-、　　　|
　::::::: ￣￣　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　実を云うと、この合宿、あんまり乗り気じゃなかったんだよなあ。
　::::x三ニﾄ､　　　　　　 ,xr≦=ｭ=x､　　 │
　:::〃　ｆr=㍉ヾ::::: 　　ﾊ!　 fr‐㍉Y　　│　　　　　　　　　　　それを、先生に無理に誘われてね、
　::::::､＿ゞｪ1:::::::::::ｉ　　　:::ヾ=`ｰ"
　:::::::: ￣´::::::::::::::::|　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　　義理がたい性格だもんで断わりきれなくて……。
　:::::::::..　::.::::::::::::::::|　　　　　　　　　 }
　:::::::::::. ::::::::::::::::::::|　　　　　 U　　　 /
　::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ　　　　　　　　　 /
　､::::::::::::::::::::::::::::::　　　　　　　　　　 /
　　ﾄ､::::::::::::,-‐― 　 ――-､　　　,.ｲ
　　fﾆヽ::::::::::::::　 -‐-　　　　／　|
　／!⌒ヽ::::::::::::::::　　　　　　／　　│
　::::::ﾄ:::::::::ヽ::::::::::　　　　／　　　　,ﾄ―- ､
　::::::!::!:::::::::ヾヽ-----イ:::::　　　　.:/1　　　!￣ヽ＿＿ ,.--.､
　:::::::!:::::::::::::::::｀￣￣´:::　　　　　.:// ..:　 /　／／　／::::::::::::ヽ、
　::::::::!:::::::::::::::::::::::::::::　　　　　　:://..:::　/／　　　／:::::／::::::::::::::ヽ

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山の夜は涼しかった。

長袖のシャツを着ていても肌寒いくらいである。

150 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:46:22 ID:976fb80c

　　　　　　　 , -―- ､
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　　　　　 (●) （●）　　 |
.　　　　　　|　 |　　　　 ./
. 　　　　 l __｀＿　　 ./
　　　　　　　|　　　　　　ヽ
　　　　　　 __!､＿___／　　＼
　　　　　／､ヽ　　　　　r ､　ヽ
　　　　ﾊヽ Y｀l　　　　 |　 >　 Y
　　　　{　ヽ_ゾﾉ　　　　　|　ﾚi i i}
　　　　｀¨´　　ヽ　　　　ハ　 `'''
　　　　　　　　 >　　 /　ﾍ
　　　　　　 /　　/ヽ　ﾍ
.　　　　　　 _,/　　/　ご_ノ　　ﾀｯﾀｯ
　　　　　　　（　ヽ　/
　　　　　　　＼__ノ

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坂道を登るうちに、それがだんだんと暖まってくる。

........................................,､;"'´ヾ､〃"｀ゝ､'..............................゛ヾ'"`,....................................................
.............................................｀.`.-"....´..´.,,､__.....................................´´.....................................................
..........................................................,,r''`",､-､,"`-､_..................................................................................
__...............,,,......................,,､'"`""-''"´..: .::...::｀-､:.｀`丶-''"`-ヾ､-､､_.................................,､,､､
､､｀:-""'´:ヽ从,,,､､""__,,-"´=´´´ﾐﾐ:::::::::::::::::｀ヽ_,,-"``ﾐ:.:.:.:.ヾ__,､｀`丶､___,,､-〃":.:.:."
:::.:.:｀:`:ヾ-"":.:.:.i;:;:;:;:;:;:;゛ﾐ";:;:.;:.;:.;:.゛゛.:.:.:.゛゛:.:.:;.／＼:;.:;.:..:;.:;.:;.ﾐﾐヾﾘヾ｀｀丶-､_,,､-""从:
:;.:;...::;;..:.....:::;;.:;;.､､ﾐﾐゞ-､;;;;--ⅷﾐﾐヾ､､:.:.:.:.:.:.:""``ヾ从从ﾐﾐ〃f＼゛:.;:.;:;:从从.:.:从:;.:;.:;.:
;.;.;.;.;.;.;.ヾ"､､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:;:;:;:;:;:;:ゞゞ;;:;:;;ﾐ,,:;...;;;..:ﾐ≧"繁从从Ｙゞ､､ヾ,,､彡ﾐﾐヾヾゞ":.:.:
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ゞゞヾﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐゞ､,=;;=;;=;;=;;=;;,,,,!!,:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:'､''､':;:;:;:;:;:;:ﾐゞゞﾐﾐﾘゝﾐ:;.:;.____
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐゞゞヾ"""´´´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,,､"イイ,;;;.:.:.:.:.:.:``ヽl麟欝":;.:;.:;.
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;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:从〃ゞヾ;:;:;:;:;:`,,;;;:゛　　;;;.:;:;:;"　ヽ:;.:;.:;.:.;.;ミ从〃;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;.:从ゞ;:;:;:;:;:;:;:;:;〃""";゛　　;;.:;.;.:;.;ﾐ　　ヽ;.:;.:;.;.;.;;.:ミ从ﾐ〃;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
;;;;;;;;;;;〃巛从;:;:;:;:;:;:;:;:;..................゛　　;;:;:.;:.;:.;:.ﾐ　　 ;;:.;:.;;;......;;.;:.;:ﾐ从ゞ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;.;
ゞゞ〃从〃;.:;.:;.;:.;:.;:.ヾ..;:.;:.;:.;:.゛.　　;:;.:;.:;.:;.:;.:;ﾐ　　　;;.:;.:;.:;ゝ...;:.;:.;:.ﾐ从ミ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
ゝﾐソＹﾐ;.:;.;:;.;:;:.;:.;:;.:;.:;.:;.:;.:;.:;゛　　 ;:;.:;.:;.:;,,､､,,〃　　 ';.:;.:;.:;....;:.;...;;;;;.....ﾐＹﾐヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
ﾊﾘゝ|!ﾐミ;.;;;;.;:.;:.;:.;;:.;:.;:.;:.;:.;゛　.　 ;;;.:;.;ゝゞﾊｿr〃_　　 ';.:;.:;.:;.;:.;;;;;;;;;;;:.;:.:;.:;ミＹヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
fﾊﾉＹ从ゞﾂﾂ;;;;;;.;:.;:.;:.;:.;:.゛　　　.;:.:.:.:.;;:.;:.;;:.;;;;;:.;ヽ　　ヽ;.:;.;:;.:r;;;;;;;;:;.:;.:;.:;.:;ミＹﾂヾ;:;:;:;:;:;:;:
ﾊ从ﾊﾂﾘﾘｿＹ∥/／〃゛　　　 ;;.;.:;.:;.:;.......;:.;:;.:;.丶　　　ヽ;.:;.:;.:;........;;;..;.;:;.;:;.:;.ﾐ从ミゞ;:;:;:;:;
从ゝ丿／∥Ｙ彡ﾂ〃゛　　　 ;;.:;.;:;.;:;........;:;.:;.:;.:;.:;ヽ　　　　ヽ;.:;.:;.:;.:;.:;.:;r.:;.:;.:;.:;.:ミＹＹミ;.;:;:;

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そうして、シャツの下がいくらか汗ばんできた頃、両側の木立がふっと途切れた。

傾斜がなくなり、道幅がぐっと広くなる。同時に視界も開けた。

151 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:47:14 ID:976fb80c

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ちょっとした自然のテラスとでもいった場所であった。

天球を埋めた星の輝きを見上げ、千歳が歓声を上げる。

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　　./: : :i: : : l　 ※ 　l!　　　　　ヽ　　　　　 |　　　　　　　　　 /
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　　ゞ! 　 /:::::::::::::::::::::::::l: : :l: : : l: : l　　　　 .（ヽ､__,/＿＿__ 　_＿,У
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道の脇に手頃な岩があり、二人は並んでそこに腰掛けた。

152 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:48:01 ID:976fb80c

　　　　　　／　　　 ,,ｘ―ｘ――xx―ｘ　　　　　＼
　　　　／　　／￣　　　ﾐ米ｲ　　　　ヽ _,　　　＼
　　,イ　　x‐”米ｲ　 .　　水ミ　　　　 ,ﾉr ヽ_　　　　＼
　　＼ノ　　７ﾌ x‐―イ＞─ へ _＿　水　　ヽ　　／
　　　 /　　 r”´ /::.::.::.／::..::.　..::i::.ヾ::.::.:＼　　　ヾ /
.　　 /7 r”´::.::./::.　 /　.::　　.:::.:.|::.::.:ヽ::.::.: ヽ 7/k　|
　　レｲ:.　..:.:.i::.:...:,ｲ:.:..:/　 ..::..:: ﾄ::.::.:.::',::.　　ヾ ”　 .｝
　　//::.　 ..::..:l::.::/乂: /..::.ｲ..::.:i: | .ヾ::.::.ヽ::..　　V　 k'
.　/ i::.　 ..::. : |: /::/ﾒ/:／/..:::/|/―― ､::.:｝ｰ.:.　i　　ヽ
　　 |:.　 ..:::....:|/_/ム-　/:..／/　，_＿_, ＼!::.i ..::|7米ト､
　　 {:. ﾄ:..:::.. :.V/／zミ,,／　　　衍ﾊ;:::l;:ｱ.|::.l::.. |　　 .ヽ::｀:....._　　　　　　　　　　　あのね、あたし、ほんとはこの夏休み、
　　 i::.:ﾊ::. .:. .:.K《ｲ.l:..:ﾊ　　　　　乂:=:ソ从:!::./　　　　｝ヾ::...:｀:..ｰ
　　ヽ:{ ヽ:..:..ヾゞ弋=ン　　　　　　 ”￣ｲ7:/!/ﾍ　　　　ヽ::.｀::.ー:-　　　　　　　　サイパンへ行く予定だったの。
　　　{.＼＼::＼ゞ ”"　　　 ,　　　　　　　／ﾉハヽ　7K= ＼::.｀ヾ::.
.　　　｝,il ヽ{:ヽ _::≧､　　　-ー.ｧ　　／i::.l::.',::.:ヾ:＼”　　　｀ｰ､::.
　　　｛7米ﾉ/::.ｲ::/＞...._　　｀ ´　　イﾄ､_|::.|::.:ヽ::.:',::.::｀ｰ.､　　　　ヽ
.　　 /　　ｲ::／::/:r＝vノ＞　 _　イ.　 |,,; .ヽﾄ,::. ..::. :..ヽ::.::.:＼ーｰ､
..　 /　　ノ://::/:rZ/ r==､　V　　　　У　　＼ヾ::.::.:＼::.:::.::.:ヽ
..／7{ﾉr″.ｲ::.／Zﾉ .||＞ﾐﾒ､V　,,／＿＿　　　 ` ー､_::.::.::.::.::.:.
　　／:／/:／rZ/　 .||＿_ ヾに}=ｲ￣￣｝｝　　　rZz⌒入::.::.::.::.:..＼
　/:.〃 ./ｲ rZソ　　＞=＝{に}ﾐ､　　 //　 rZzソ/////ヽ::.:ヽ::.::.::..
ｲ::.{{ ／//rZソ　　/ ／　　i{{ } ＼辷ﾆ_/　rZzｿ////////ﾊ::..::',::.::.:::
_..ィ//// rZｿ　　/,ｲ　　　/}} }　　＼＼＿{/ｿ//////////ハ::..::.::.:.::
//////rZz/　　 }ﾐ、　　/{ii} }　　　　ー tハ\八/////////K::.＼::.::.

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

千歳が云った。

　　　／￣￣￣＼
　　／　　　　　　＼
　 /ﾉ　ヽ､_　　　　　ヽ　　　　　ほう。
　（ ●）（ ●）　　　　|
　 |　　|　　　　　　 |　　　　　　　　彼氏と？
　 |. ___｀____　　　　　 l
.　 |　　　　　　　　　 /
　　|　　　　　　　 /
　　＼__　　　　（
　　　　 _）_ =＝＝＼
　　　／　　　　　＼
　　/　　　　　　　　　ヽ
　　 |　　　　,　　　　　　　 i
　　 |　　　 |　　　　　　 l.|
　　|　　　 l　　　　　 | |
　　|　　　 |.　　　　　 |. l
　　 l　　　　|　　　　　　 |.│
　　/　　　ﾉ　　　　　 |　|
　 / 　　 /　　　　　　 l /
　（ヽ､__,/＿＿__ 　_＿,У
　ヽ_ｨ　 __ __￣￣_￣_,|
　￤　￤　￤　j l　　|

153 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:48:48 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　, - - - ､ _ _
　　　　　　　　　　／´_ -―-―- ､｀ヽ
　　　　　　　　／／´　　　　　※ ｀''-､＼
　　　　　　／／　　※　＿, - - ､ _ ※',　＼
　　　　　／ / ※　r‐' '´:: :: :: :: i:: :: ::ゝ､ ',　　>
　　　　 / .i/　　/´:: :: :: :: :: :: :: :l:: :: :: :: ヽV''´
　　　 ./　 l　　/:: :: :: :: :: :: :: :ｨ:::ﾄ:: :: :i:: :: ::i
　　　 ´-､|　 /:: :: ::i:: :: :: /:::ﾊ::::A-―:l:: :: ::l
　　　　　 | .ｲ::l:: :: ::l,::-::ナ´ // ,ｨ=-ｧ.|:: :: ::|､　　　　　　　　　　　違うわ。
　　　　　 |∧::l:: :: :: Vｫ=-､ノ´　迅.ｿ/:: :: :i|::',
　　　　　 |※',i:: :: :: :ﾄ弋及　､　　 /ｨ::,ｲ/ |:: :',　　　　　　　　　　姉さんとよ。
　　　　　 }　ﾄ､＼:: ::ミ　　　 - '　ノイﾉ/ 人r-､,
　　　　　./ 　 i r､, Xｰ-ﾆ＞　_　／/※ /　{ i }､ヽ
　　　　　i ※ /i i }､　｀　　　｀i　ｲ l　　 i　 { i }: |:::',
　　　　/　　ﾉ|:{ il }　　　　r''ﾆﾌ不ｦ　　/　.{ i }: : |:: ヽ
　　　./　　ｲ::|: } ili }　　 // /, |}{/.※人　 { i }: : :|:: ::',
　　 / ※ ｲ:: ::l: : ヾ i }　 // //| | ||　 ∧ヽ/∨: : : |:: :: :',
　 ./　ｲ/:: :: ::|: : : :>V y/　.| | | | .|　ｲi　> >: : : : ::|:: :: :: ＼
　/ ／ /:: :: :: :|: : : : :< <　 ///∧/|　 |､//i: : : : : ::ﾄ:: :: :: :: ヽ

　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　／　「　　へ＼
　　　　　　　　　　　|　（ ●）　（●） |　　　　　　　　　　　　それがどうして、この合宿へ？
.　　　　　　　　　　　| 　　　 | 　　 |
　　　　　　　　　　　 | 　　 __´___ 　 |
.　　　　　　　　　　　 |　　　｀ー'´ 　 }
.　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　 }
　　　　　　　　　 ,､ヽ　　　　　ノ-､
　　　　　　　　／;;;i/　　　　　　'､!＼
　　　　　 _,､-／;;;;;;;;|　i　　　　i　 i;;;;;ﾞ､-､_
　　　 ,-‐'''";;;;;<;;;;;;;;;;;;;!､_｀ヽ　､-'_／!;;;;;;ヽ;;;;;｀'';;ｰ;;-,
.　　　!;;;|;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;|'ｰニ_ー_ニﾞ／.|;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;!
　　　|;;;;;i;;;;;;;;;;;;／´;;;;;;|　　　　　　 |;;;＼;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;|
.　　 |;;;;;;;ﾞi;;;;;;;;;'､;;;;;;;;;;;;!─┐　　┌─.|;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;/;;;;;;;;i
　　/;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;ﾞ､;;;;;;;;;!　　l　　　l　　l;;;;;;;;;;/;;;;;;ﾉ;;;;;;;;;;|

154 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:49:34 ID:976fb80c

　　　／／': : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　ヽ＼
. 　 /　/ /: : : : : : : : : : l: : ト､: : : : : : :ヽ　　∧. ＼
　 /　 { /: : : /: : : : : : :,'! : | 　＼: : : : : : ∨　 ∧　＼
.　　　〃 : : / : : : : : : /:|: /　'⌒ ＼: : : : :.∨　　|――
　ｉ　〈|: : : :′: : : : : /　|/　　　　　｀ヽ、 : ∨　ヽ
　|　〈|: : : |: : : : : ,: ' 　ﾉ　　　ｰ==彡　 l:|: |:.i 　〈　　　　　　　　先月、飛行機の墜落事故があったでしよ。
　|　ﾉ|: : : |: : : ／　 /　　　　　　　从ﾉ:ﾉ　　〉
　|　八 : 八: :.i| ｰ='″　　　　　　　　イ: : |　　 {　　　　　　　　二件も続けて。
　|／ヽ＼: :ヽ⊥___,　　　　　　　　　　人: : !　　｛
　　　＼ `ー┬＜　　　　 '⌒　　　／: : : : |　　 {!
　　　　　|ヽ　　＼　＼__　__　　ィ: : : : : : : :|　　 {!
　　　　 |:八　　 }ヽ　∨　ﾉ　　 |、__: : : : :.:〉　　{|
　　　 /: : 冫　　∨＿|_　|≧=[／＼ ): : : /　　ﾉ|
. 　　 /: : : {　　 /＿＿寸　/|iⅥ￣ `ー〈　　〈: |
　　 /: :／:}〉　　ｉ　＿__　Уｲ｜{ヽヽ　　／　　｛: |
　 ,.: :／::::::圦　 |　＿_/ノ} ｛｜}　i}｛　 {　　　 /＼
／ : |::::::::::｛人　|　　 }　/　｝　 { 　｝　〉　　 }:::::::ヽ

　　　　　　　　　 i
　　　　　　　　 | 　, -―-
　　　　　　　 │/
　　　　　　　　　 |　　　,,ｨ￢i
　　　　　　　　　　{ 　ｲ､ﾘ　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ああ。
　　　　　　　　　　ヽ　　ｰ'′　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　 l|　　　　／
　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　 }　　　／　　　　.:＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　|　　_　　　　　　　　　　/　　／　　　,． ≦//////////
　　　　　　　　　　　｀ｰ┐　,ｨ'⌒)　　　　 /　　/　　　／￣＼//////////
　　　　　　　　　 └='{__ ´　　　　　/　　/　　／　　.／///////////
　　　　　　　　　　　　　　　 '.　　　　　/　__/　／　　／/////////////
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　/ ／/／　　　／///////////////
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＿__／.／　　　／/////////////////

155 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:50:24 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ 　-‐, -――――――　、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 -‐／,　-／ : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　 .　　´ 　／／／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　_／　　　 / ./／/ : : : :／ : : : : : : : : : : : :/ : : : : : :､
　　　　　　　　　　　　　＼　　　 Y　/: : /.: : : :/ : : : : : : ／ : : : : /: : : : : : : ‘,、
　　　　　　　　　　　　　　　＼. 　 |　|: :./.: : : :/: : : : : :／ : : : :/ :/: : : : : :/: : :‘ ＼
　　　　　　　　　　　　　　＼ |　|:./ : : : : | : : : ／: : : : : :/: /: : : : :／ : : : : ｉ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|;′: : : : |: :／: : : : ; . ィ: :/: : : :／′ : : : :｜　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　': ｉ : : : : :|´: :_彡＜　 /: /: : :／　　ｉ : : : : :ｉ｢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|/ ｲｉ: : : : : |斧==ミ　 /／:.:／￣￣｀|/: : : : ﾘ　　　　　　　あの飛行機にね、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 l:ｉ: : : : :｜辷_シ　　 /:／ィ亢卞ﾐ/: : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /l　圦 : : : 八　　　　　´ 　　ゞｰ┘/: : : : : /　　　　　　　　うちの会社の、
　　　　　　　　　　　　　　 //|　 |: :＼: : : :ヽ　　　　，　　　　/: : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　 //: |　 | : : ∧ : : : ｉ　　　ｏ　　　 . ｲ: : : : ／|　　　　　　　おんなじ課の上司が乗ってたの。
　　　　　　　　　　　　　　／厶斗-┴くＬ:∧ : : |＞　 ____. 　イ／: : : ／: ﾉ|
　　　　　　　　　　　　 __／／￣　/⌒)、ヽＬ∧: :ト、　　 {ﾉ　 |／: ／、:./　|
　　　　　　　　　　　　　_|ﾚ＾ｨ　fア＾⊥‐ 、‘,::::＼ ∨　 ≧｢」―＜/／ﾏｰ∨　 ‘,
　　　　　　　　　 /:::::::: | .ﾉ{ 〈＿_)　i　 ′:::::＼　//| ﾄヽヽ＼＼、 V.ﾉ　　ﾟ
.　　　　　　　　／|:::::::::: |〈八_l　　 ┴‐┴┐:::::|｜i | |.| |ｘ.＼＼＼､|i　　　ト...._
　　　　　　　　／.:.:人:::::::八ヽ八　　＿＿_／ヽ:: |. ＼＼| |ｰｉｘﾊ　∨/′　　〈:::::::::::`丶、
　　　　　／ : ／: : :ヽ:::::::＼人{ 、＿＿＿_／ /　　ト.､_|ｰｉ　 i,＼/｛　　　 |:::::::::::::::::::::＼
.　　　　／ : ／: : : : : :∧:::::::::＼＼＿＿＿ﾉ:::/i　　 | l　辷i　 i∧ ', 〉　　　〈::::::::::::::::::::::::/
　　　　／ : ／ : : : : : ／: : ＼::::::::::￣:::::::::::::::::::ｲ‐i　　　|_l　辷i／辷ｉ､｣|　　　　 |､＿＿＿_:∧、
　　／ : ／ : : : : : ／: : : : : : :＞ミ:＿＿___／} 辷i　　　　　辷ｉ＼辷i　〉　　　〈／　　　 |::: |i|
. ／ : ／ : : : : : ／ : : : : : : ／: : : /　　　　　〈/辷i　　　　　辷ｉ　辷i　｛　　　　｝　　　 |:::ﾉｉ|
´: :／ : : : : : ／ : : : : : : ／: : : : : {　　　　　 |/辷i　　　　　辷ｉ　辷i　〉　　　〈_　　　　 |:::|ｉﾘ
／ : : : : : ／ : : : : : : ／: : : : : : : /　　　　　ﾉ/辷i　　　　　辷ｉ／辷i　｛　　　　 }__＼　　ノ::∧
: : : : : :／ : : : : : : ／: : : : : : : : : {　　　　　 },'/辷i　　　　辷ｉ＼辷i　ﾉ　　　〈＼ヽ厂:::／: :.＼

　　　　　　　　 ‐…‐　ミ
　　　　　Σ 〃　　　　　　ヾ
　　　　　　　l　__,、､__,ノ　 |　　　　　　　　　　　　　二件とも？
　　　　　　　l　Ｏ |　　◯ 　 |
　　　　　　　|　　j　　　　　 |
　　　　　　　|　　＿__　　 u
　　　　　　　l 　 |＿__|　　_/
　　　　　　　＿__　_／⌒〉
　　　　　　　〈V^　xく⌒L
　　　　　　　／l｣／__　　　
　　　　　　｣　xく⌒^　　　＼
　　　　　　　 |　｝　　　ｉ　　　　　`、
　　　　　　　 |　｝　　　 l　　　　 `、
　　　　　　　 |　｝　　　 |　　　　　　 `、

156 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:51:09 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼｀ヽ、
.　　　　　　　 _／　　＿　 --‐┬‐-ミ　_　＼　＼
　　　　　　　／/_,.．: :/: : : : : : : :.:.|: : : : : : : ＼＼　＼
.　　　　　　 /　/ : : : / : : : : : : : : : |: : : : : : : i : ＼ ‘,　ヽ
　　　　　　｛　/ : : : /: : : : : : : : :/: :|: : : : : : : |: : : :＼'　 /
　　　　　 У: : : : :|: : : : : : /: /: :八 : : : : : : |: : : : : :i∨
　　　　　 .: : : : : :| ／／メ: ｲ: /　‐＼|＼: : |: : : : : :| |
　　　　　　 |: : : :-=彡　／´　 |/　　　　　　＼|: : : : : :| |　　　　　　　　　　　そう。
　　　　　　 |: : : : : 八灯ТТ　　　下Т灯/: : : : :/ ｛!
　　　　　　人: :＼: : :ヽ乂ｚｿ　　　乂ｚｿ /: : : ／　八　　　　　　　　　　凄い偶然でしょ。
　　　　 /　　Ｔ|| |`トゝ　　　　　　　　　_彡: イ|　　ﾉ: :′
.　　　 /　　／｢|| |　＼　　　　 ’　　　　　/　　V　　 |: : :′
　　　 /　　/: 八|　　　　￣＼￣　＿　イ　　ｒ{　　 ∧: : ′
.　　 /　　 ,|:::::::: {＞-　 ,_　　　ﾏ´　　　　　　ﾉ′　 |:::|: : :′
　　 /　　 l:|:::::::::::＼ .ｒ―‐|　　 |ﾌトミ､　／::|　　 |:::| : : ′
.　　{　　　｛:|:::::::::::::::::｝＼⌒Y⌒　ｲ､＼＼:::::::{　　　{:::|: : : ′
　　ﾉ　　 }:|:::::::::::::::::|//￣￣￣｢＼＼ﾉ /::::::::}　　 ∨: : : :′
.　/　　　ﾉ:.|:::::::::::::::::|/　　　　　|　ノ＼_/:::::::::{　　　｛: : : : :′
　{　　　　}: :|::::::::::::::::/　　　　 :|／:::::::::::::::::::::::〉　　　｝: : : : ′

　　ヽ i ノ　　　､_, ゝi ノ　　i ソ＼
　　ノ l ヾ_=-イー､＿＿　∧　　　＼
＜''｀´￣´/::::/:::::::ﾊ:::::i:::::::::::::}　　ゝ　>
/::::/:::::::::/::::/::::::::∧:::::l::::::::::::レ'´てヾ＼
::::/:::::::::/::::/::::::::/　.}:::∧::::::::::l::::::::∧＊　ヽ
::/::::::::/ｲ:/::::::::/i　 .|::ム V:::::::|::::::::::::}　＼＿ゝ
':::::::::/Ai::::ｲ:::/.　￣|/￣　V:::::|::::::::::::i　水テ/　　　　　　　　　でも──だから、やっぱり今年はやめにしようって、
:::::::/匕/／::/　　__/_=＝ァi::::::|::::::::::::|　　　 {
::::/ __/ /／　　　ィて::::jフ }::::ﾉ::::::::::::i　　　 y　　　　　　　キャンセルしちゃったのよ。
:ｲ､＿,_,ｫ′　　　弋歹/:::イ::::::::::V　ヽ i ノヽ
::ﾞﾐ三彡'　　､　　　　　/::::ｲ:::/:::::::人　ノ l ヽ }　　　　　　　　　ちょうどそこへ、この合宿の案内が来たから。
＼＼　　　　　　　　　　／/:::/::::／:::::::Y　　　ヽ
:::::トゝ-　　　ゝ　　　イ::/:／:::＼::::::廴　　　∧
;;＼　｀ヽ　　　｀　　　＜┤K::::::::::i::::ヾ::::ヽ　　V -ヽ
レ'｀ヽ　＼≧-　＜￣／─'｀'｀ヾ:::::::::＼:::}　 iK　 }　　 , -―
..:..:..:..:ヽ＊ .＼-フ/同Kゝ=--､　　ヾ､＿::::::|　　/　 V''´::::::::::::
..:..:..:..:..:.}　　　 V/ | |i ∧ヽ￣ヾ､　　 V..:ヾ::i　　　　　K:::::::::::::
..:..:..:..:..:..{　ヽレ＼| |ﾚ　ヽi　　　il　　∧..:.|::::V　　　　廴::::::::
..:..:..:..:..:..:} フヘ　　ゝ| |＼＼　 .||　　　 V､:::::V　　　　　＼::::
..:..:..:..:..:..:.}　　　　　　.V　 Kヽニ/　　　　　V/∧　＼ | ノ　ヾ
..:..:..:..:..:..:..廴　　　　　 V　 | |　　　　　　　　＼:::ヽ　ノi ヽ

157 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:51:54 ID:976fb80c

　　　　　　　 / 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 /
　　　　　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　 |、　　　　　　, ヘ　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|
　　　　　　 |. ヽ　　　　 / 　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　iﾐ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　意外だな。
　　　　　 vﾊ　　　　 ,x≠＝=ﾐ､　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　ﾋｿ　　　　　　　ん心ヽ　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　案外、縁起を担いだりするわけだ。
　　　　　　　 i/ 　　　　　　　弋:少〃　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∥
　　　　　〈　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　ヽ｀　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　　　 i　＿＿＿＿
　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　ヾi.´::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　ヽ､＿＿＿_,ノ　　　　　　　　　　　ﾉ　　 . ≠´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　〈ゝ―― '´　　　　　　　　　　　,　　 , .＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　丶￣　　　　　　　　　　　 _≠,...:::´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.＼
　　　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ,イ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ー―――――――――‐ヽ
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　, .＜ ≠:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::..
　　　　　　　　　　　　￣￣￣　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::i
　　　　　　　　　　＿＿＿＿_／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::|
　　　　　　　　,≠´::::::::::::::::::::::::＞..､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::|
　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::|

　　　　　　　　　　　　　　　　_ ＿　_
　　　　　　　　　　　　,　‐'"´　　　　　￣＼
　　　　　　　　　　／　　,．-─-‐-─- ､　＼
　　　　　　　／　 ,イ^ヽ＿米ｿ＿ _　＼　＼
　　　　　　〈　／´.:,.:. :.:..:::::::/!:!:::::.:.:.＼jkヽ　＼
　　　　　　　　 `y' .:.::::/::,.:::::::::::/::lﾉ::::::､::ヽ::ヽ. t､＿_j
　　　　　　　　 / .:.:::::/::/.:::::::::/::/:ﾄ､:::::｀,:::!::::|　!:ﾄ､ /
　　　　　　　 |.:/.:.:/､/.:.::::,イ:://ﾊ::ヽ:;;:ヽ|:::::!/::::.:ｲ
　　　　　　　 l/ﾄﾄ,!::::仁ﾆヽ'´　, -‐＜:::::::!::::|{::::::.:.|
　　　　　　　　　　〉V::i:|ヾﾄｯｿ　　´ﾄｯﾂ7::/::::/ !:::.:.::|　　　　　　　　　　そんなんじゃないわ。
　　　　　　　　 /,.ィ´ ﾄ､' ' '　､　 ' ' ' /::,::イ /:::::::.:.|
　　　　　　 ,ｲ: :|　 |/ >､ _ ０_, .イ´7　 /: : ￣｀ヽ
　　　　　　 _ノ: : :j　 j!　　＼フ／　!　 |: : : : : : : :.＼
　　　　 ,r‐'´／: : :{ 米|　　　,ｨ介　　　| 米|: : : : : : : : : : ゝ､_
　　　./ :.／: : : : :.i 　 |　　 //小　　　! 　 |: : : : : : : : : : : ＼:｀ヽ
　　　〈: .: :ー‐-: ､:i 　 | 　 // }｡j 〉　　! 　 |.: ､: : : : : : : : : : : ヽ: |
　　　＼: : : :｀`ヽ| 米|　//　f｡,ﾘ」　 /,米|:.:〈ﾄ､: : : : : : : : : : : i:.|
　　　　　 ,ゝｭ_: : : j　　ﾄ､　　 }｡j　　/　　 |こ〈::.＼: : : : : : : : ,ｲ/
　.　　　 /　厂`ヾji|　　|7こf乙f｡|乙j{　　 |乃 !:::.:.:〉-r‐rｭ_ ノ:/＼
　　　　/　/ 　　 `! 米|二乃Y7;;;;;;乃〉米厂:.｀i.::::厂｀`爪ﾄ､:/: : :.|
　　　　|／　　　 | 　 |: :/i;;;;/.:.:::.|;;;;{　　 |: : : :,イﾄ､＿ノ.:::::.＼ : |
　.　　　　　　　 /|_＿!/.::|/.:.:::::.:.!/:.|_＿,j: : : : : !/_/ _ﾉ､.:::.::::.::＼|
　　　　　　　　 /: .: : :〈 .:.:.::::::::::::::::::::::::::.:.:ヽ: : : : ヽ＿ソ::::::.:::::.:::.:i
　.　　　　　　/: : : : : : ヽ.:.:.::::::::::::::::::::.:.:.:.:/ : : : : : : : : : ＼:::::.:::.::|
　　　　　　　　/. : : : : : : : : ＼.:::::::::::::::.:.:.:./. : : : : : : : : : : : : ＼:::.::|
　　　　　　 /. : : : : : : : : : : : .＼.::::::::.:.::/. : : : : : : : : : : : : : : : :ヾ:|
　.　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : :.＼:::.:/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

千歳は少々むきになったように、声を強くした。

158 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:52:54 ID:976fb80c

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::fゝ＼
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾrtﾌ　ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::/!| ::::::::::::::|rY7　 1
::::::::::/::::::::::::::::::::/::::::::::/:::!| ::::::::::::::|ﾌﾒ7　 |
:::::::/::::::::::::::::::::/:::::::::::/:::::!| ::::::::::::::|ﾌﾒ|}　 |
::::/:::::::::::::::::::::::::::/::::/::::::, ::::::::::::::::ﾘﾌﾒ7　│
イ::::::::/::/::::::::::.ｲ::::/i::::;ｲ:::::/:::::::: {!ﾒﾌ7.　│
/::::::;/::/:::/:::://::/ﾅ:::/-|::/:::/::::::{!ﾙﾇ　　 |
:::::::/::/:::/::::/__j/_-j:/__ j/::/::::::ｲjﾒﾘ}　i　│
::::/,.ｲ//::::/´ｲ弋:_j/´ﾌｲ::/:::::/::lイﾊ／`ヽ!　　　　　　　　だって、あんな死に方、したくないもの。
／／ｲ／　ゝ -　 '　/:/:::::/::/fﾌ: |
　　　　　　　　　　　　ｲ/::;.ｲ::/ﾔﾇ::::|
　　　　　　　l l i j／ﾄ/:/7ｲl ::: |
　　　′ 　　　　　/rf'ﾚ::/ア ::|::::::|
　― ─　　　u　ｲftく/イ7 :::: |::::::|
　　　　　　　　イ!jrノtメｲ::::::::::::|::::::|
　　　　　　イ ::::::{!ｲtノr/7::::::::::::|::::::|
` 　-　´　 /｀ヽ:::{7ﾒハri}::::::::::::::|::::::|
　　　　　_.L　　V7ﾒハrt}::::::::::::::|::::::|
-_r==､¨ 　　　 f/ﾒハrtj} :::::::::::::|::::::|
ｲﾊ＼　＼　　 flﾒハrtrt:ﾄ､ :::::::::|::::::|
/{ |＼＼ |!　　fiﾒハrtrtl|ﾌ＼r-v : |
. f ||__j＼ﾉ　　fiﾒハrttf:i|7 　 { r'-､:|
| } || ﾉ､　　　 f7tハrttf:i|7 　 { } : : ＼
|__ﾌ!　ﾉ　　　 fiﾒハfrttfi|7 　 } {ｒ : : V:ヽ.
| f ||　〉　　 f7rﾒハftrtl｝　 { } : : : :ヽ : ＼

　　　　　　　　　　　　　 ,...--───-
　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 |　　「　　　　　へ　.　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 l　 ( ● )冫　（ ● )　　　|　　　　　　　　そりゃまあ、誰だってそうだ。
　　　　　　　　　　　 l　　　　 l　　　　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　 l　　　 ! ,　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　 | 「､　　　　　　　　ﾒ,
　　　　　　　　　 rｰﾍ　`＝=　＿__,｀ﾌﾉ∧
　　　　　　　 -‐＜ﾄ　ヾヽ　ー　￣　／ /　 ',
　　　　　　　　　 ,(　　＼ヽ　　　　／　 i 　ﾉli
　　　　　　　　　　　　ﾉ /, 　　　｀ー､" ／ / {　/　l|
　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　 i　　　　!/ ヘ!
　　　　　　　　　〉 '　　ヽ　　　 i　　　　//　　＼
　　　　　　　　　　＼　　　　　　 i　　　/
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　｀、

159 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:53:39 ID:976fb80c

:/: : : :/-―＿´ 　＼/／　　 / /|: : :/　＿!＿! : : : : :
ﾊ: : : :! 〃´￣__ ｀ヽ／ヽノ　 // /ヽ/／| | ヽ: :l : : : : :
! ヽ: : ! l|　/｀ _つヽ　　| !| ／　/: :/-┴__- ､ヽ!: : : : :
ヽ　＼! 　 K´{Ξj　!　　　　　 /／ /´＞　ヽ ∨ ヽ: : /　　　　　　　　　バラバラになっちゃうのよ。
: :ヽ　| | |┴┬　‐く　　...::::::..／　　K´{Ξj　 ! !ト /! /:
: : : :＼| |　|l !　...:::::::::::::::::::::::::::::...　∨ ￣　/〃 / ｌ/: :　　　　　　　　ほとんど人間の形してないんだから。
ヽ＿: :＼　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::.「「 ` く　／:／: : :
　　ﾉ　￣　　　　　　　　　　　 | |　＜´＿＿　／
　 {　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　 j ＼　　　　　　　　＿＿　　　　　／|
　{: : : :|＼　　　　 /´　＿　｀ヽ　　／l　 !　　　　「
　!: : : :!　　　　、　￣　　￣　　＜ : : l　l　　　ノ
　 } : : |　　　　　　ー‐┬-　＜´: : : : ヽ: :! ｌ　　 /

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　ノヽ　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉 fﾇア　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　 *=≠斤Y. ヽ￣`　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　 __／￣＼ﾉ　 l　　 _／　　＿_　 -￢
　　　　　　　　　　 ┌‐'￣￣}┐ } 　　　￣]　-─　＿,.　　-─ﾍ
　　　　　　　　　　　　　__￣}　}（_/}　　　　_/;}-‐　　　. 　´　　　　＼
　　　　　　　　 {　　}　}　} 　 }　　　/:i:}′　　　´
　　　　　　　　 {　　し'¨´,　 /　　 {:i:i:} 　／　　／
　　　　　　　　 __{　　　 ,}／　　／〉:i:}.／　　／　　　　　　　　 '，
　　　　　　　　　　/∨　　厂{ 　 ┌く　/:i:ｉ:'　　／／￣￣￣＼　　　；
　　　　　　　 / /　｀ー==〉┌┘　/:i:i:/　 ,　／　　　／　　　ヽ　.........|
　　　　　　 , 〈_/　　　　 /厂｀ヽ{ .:i:i:ｉ/　../／　　　／　　　　　　 |

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大八木はシャツの胸ポケットからラークを取り出してくわえ、マッチを擦った。

160 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:54:24 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　 ---､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　＿＿　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _(＿,ノ__{_　＼　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 (_,ｲ￣＼　＼／　　　i
.　　　　　　 _／￣￣￣)―‐ｧi _／　＼　￣￣　　　 |
. 　　　　／　　／|￣￣￣|/(ノ　　　＼　　　　　 |
　　　　／　　　　}‐ |　　　 |/|　　　　　＼　　　　　　＼
.　　　／　　　　 / |_｣　　　 |/|　　　　　　￣＼　　　＼
.　　　　　＿／{　i_｣＿＿＿|/　　　　　　　　　　　　＼
　　　　 i　　　 | ﾉ＿(＿)ｰ‐'’　　　　　　　　　　ヽ
　　　　 |　　　 |(＿__)
　　_____人＿＿／

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

が、風があってなかなかうまく点かない。

　　　　　 .､.ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
　ﾁｬｯ　ノi '
　　　（ .::ｉ
　　　 ) .:::::.
　　　（ .:.::ｊ(O)
　　＼∠二二{
　　 /|　　　　｜
　　￣￣｀ヽ　 |
　　 .￣｀ヽ {　├-
　　￣｀ヽ. }'― ' /

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千歳がすっとライターを差し出し、火を点けた。

161 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:55:09 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,　-‐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　-‐　￣ ‐=ﾆ=-
　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣＼　　　　　　　　　　　_,　-‐　￣‐=ﾆ二ﾆ=-　_,　-‐　￣
　　　　　　　　　　　　 / 　　　　　　ヽ　　　　　　　,～'_,　-‐　￣`ｰ-----― '
　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　丶　　　　_,～'_ｯ'-
　　　　　　　　　　　　|　　　　　_ノ　（ ●）　　.厂
　　　　　　　　　　　　i　　　　　（ ●）　　!　　.⊃　　　　　　　　　　　　　あ、悪い。
　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　ヽi　/〉
　　　　　　　　　　／∧ 　　　 ,.<))／´二//⊃
　　　　　　　　　／ : |　ヽ　　/ ／　 '‐､二ﾆ⊃`
　　　　　, -‐'´: : : : :l　　丶ｌ　　　　´ヽ〉: : : : ＼
　　　／: : : : : : : : :|　　／_/　　　 __人〉｜: : : : :|
　　｢ヾ: : : : : : : : : :l_／:_/ヽ. 　 /´　　　 | : : : : :|
　　〈＼ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ｰ'〉　|＿|　｜: : : : :|
　　　!: : :ミヽ: : :／ `ｙ′.: ',ゝ､_/　　　　　l: : : : : :|
　　　! ⌒ヽ: : : :.ヾ／: :／/: : : :|　　　　　 l: : : : : :|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木は軽く頭を掻いた。

　　　　　　（⊃￣￣＼
　　　　　（⊃　　 -‐' 　＼
　　　　（⊃　　（ ●）（●）　　　　　　　　　ライター、今日来る途中、どこかで落っことしちまって。
　　　　　|　U.　　　｜　 |
　　　　　 |　　　　　__´___ﾉ
　　　　　 |　　　　 `ー'´ } ＼
　　　　／ヽ　　　　　　 }.　　＼
　　　／　ヽ､.,＿＿__ノ　　　）
　／　　　　　　　　.　　|　＿／

162 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:55:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　´￣￣￣￣　　　、、
　　　　　　　／　　　-――　ミ　　　　＼＼
.　　　／/　／: : : : : : : : : : : ＼　　　ヽ＼
. 　　　/　/／: : : ／: : : : : : : : : : :ヽ　　　　　＼
　　　/　〃.: : : :/: : : : : : : : : : : : : : ',　　　　i　　＼
　　　＼/: : : :.:/: : / : : : : : : /|: : : : :i　　　　|　　／
. 　　　/.: : : : :′:/ : : : ／//_」___: : :|　　　 |イ
　　　ｉ: : : : : : : /⌒:／　//　ヽ: : :.:|　　　 l: |
　　　 |: : : : : : /: :／　／　　＿_＼ |　　　 |｜　　　　　　さっきね、大八木さん、ほら、キャンプファイヤーの時に
　　　 l: |: : : :|:{灯心　　　ｲｒﾄJ 刈:|　　　 .′
. 　　八:|＼: ハ Vツ　　　　ゞ‐く/:/ 　　　′i　　　　　　　　　殺人鬼がどうとかっていう話、してたでしょ。
.　　　　＼　ト-＼　　‘ 　　　 /:/　　　 /: : |
.　　　　　　 l　个､　　/〉　　　ム:′　　ハ : :
.　　　　　　 |　　 |＞//__,.．＜/　　　 /: : ヽ: : .
.　　　　　　|　　 | ://,-＜У__′　　 |＞‐-ミ: :＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

しなやかな手つきで自分も煙草を取り出しながら、千歳が云った。

　　　　　　　　　　　　　　／　　　rｸ　　　 , --＝===＝ﾐ＼
　　　　　　　　　　　　／　　ｨ7 　　　≠″ 　　　　　　`￢＼
　　　　　　　　　　　 ,.　' 　　　〃　　／　　／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　 ,.　　　　　　　rｸ　　／　　　 / 　　　　　　　ハ　　ヽ
　　　　　　　＼　　＼　　 jｊ　　/ 　　　/／　　／　/　/　 |　　　゛
　　　　　　　　　＼｀　､ヽ　{{ 　 .′　　　/　　　　／　／／　 ′ 　　ﾊ
　　　　　　　　　　　＼/　 V{{　 | 　　－/―--＜. 　／イ　/　/ 　　　｜
　　　　　　　　　 /　　∧{　 | 　　　|子＝ﾐ＜￣　／　/　ｲ　|　　　　｜
　　　　　　　　　　　/　／　}}　ｉ| 　　　|├びﾊ｀　／　／／ﾄ　｜　 | |.//
　　　　　　　　　, ′　　　　}}.　＼　　|｀ー ′　　／ｧえﾒ､｀｜　 | |'/
　　　　　　　　／　　　　　 {{ 　 rｆ＼ヽ　　　　　　　　lじﾝ〃ﾍ/　　| |′　　　　　　あの話、ほんとのことなの？
　　　　　　　／　　　　　　　/バ　 {{＼　　　　　　　'　　.､_'､,､,_ ,..._
　　　　　／　　　　　　　／／ {{　 }} | ＼　　　　_-r‐､‐''"／ _／　＞-‐ 、
　　　　／　　　　　　／／　　什ｊト′　｀　　＿(ﾞ＼ｒマ -‐ﾄ-.r '`';ーく__＼
　　／　　　　 r―‐､i⌒ヽー　　∨|　＿,ﾆヽ丨__　ヽ　＼＼ ,,）/　ノ　／　ﾉ
　／　　　　　|＿し-.＼〔_r┐　∧∨＿／介ｰ､＼. rヽ　＼＼　　、　　／
'　　　　　　　／ /　＿仁＼〔__　|　　ヽ　/ 乃ヘ＼＼　`、｀々　　　:i　ﾉ
　　　　　／|　　　ヽーミ｀ヽ〔_ ヾ　　∨　| | )ハ　ヽ／　l　　　./　　　｜
　　　／　｜　　　 /￣＞　、　`ｰ-　⊥　| |（　／　／ﾊ　　 ;　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　ヽ,　　　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼

163 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:56:40 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　,,.-''"´　　　　｀ .､
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　〈｀ヽ、　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　|ミ=-　　　￣￣｀ヽ　　　 /
　　　　　　　　　　ｌ　　　　　ミ＝-‐　　　　 .′　　　　　　　　　　　ああ、あれね。
　　　　　　　　　　　　ｌ　｜　　　　　　　　　　 ,'
　　　　　　　　　　　　　 l __ ヽ　　　　　　　　 {
　　　　　　　　　　　　／ /／）ﾆ=''´　　　　　 ./ .|
　　　　　　　　ﾂ二二二／ .／＿_ 　　　　.／　 |
　　　　　　　　 / ／　／''"__,ノ　　　　　 ′　.|
　　　　　　　　　 / /　／　／,.-''"）_ _,,-''´　/　　ヽ＿_
　　　　　　 ,' 　　　 /'´,,..-''´|　　　　 /　　　＿＼/｀ヽ、
　　　　　 _　 ´l　　　　　　/　./ 　|　　　　　　´　　　　/　 /　＼
　　 ,,..-''"　　 |　　　　　 .l　./　 /　　　イ　　　　 /　 /　　　＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

大八木は苦笑した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,- 、_
　　　　　 ,...--─- 、　　　　　　　　　 ( ,´ヽヽ_　ヽ、　,-┐
　　　　／　　 :::::::::::::::ヽ、　　　　　　　 <ヽヽ .ヽヽ　ヽ.（ .ヽ
　　　/　　 ,─　:::::::::::::ヽ　　　　　　ヽヽヽ　ヽゝ　ヽ、 l
　　　l　　　/／;;）） ::::::::::::丶　　　　　,-ゝ、ヽゝ、　　　　 l
　　 l〈　　　ヽ｀´　　 ::::::::::丶　　　　ヽヽゝ、　ヽ　　　 l　 ,-、
　　　ﾋヾ)　　　　　 ::::::::::::丶　　　　ヽ、_　　　　 , -─´ 　丶　　　　　　　なかなか面白い話だろ。
　　　ヾ , 　＼.,　／i　::::::::::::::::｀　　　　　　　　ヽ、　.／　　　　　　 l
　　　　｀ｌ　　　∠　ノ ::::::::::::::;;::::l .,、__　　　　　　 >´　　　　, -‐ ´:;:;l
　　　　　ヾ　　　　 :::::::::::::::;;;;:::::l〈.ｌl　｀ヽ　　　　　<　 , -‐ ´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　　　　　　ヽ .／l ., ﾍ :::::;;;;;;;;::::丶ll l 　ｌ　　　　　 >´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｌ
　　　　　　／　 l´ ヾ.、;;;;;;;;:::::::::〉,!ゝ‐‐ゝ─ ´￣　ヽ、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　　　　　　〈　　 l, -,.l.〉.、;;;;:::::::::l∧:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　　　　　　丶 ‐´O lゞヽヽ::::::::::l　ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:ヽ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　　　　　 ,_´-:;:;:;:;:;:;:;lヽ　｀ヽ、 l / .丶;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　,、_ - ´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l　ヽ、 ─- l/ / .丶:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:丶;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;l

164 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:57:25 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　＿,,,,､,_
　　　　　　　　　　　　_,､-ﾆx´XxXxXx｀`ｰ-､_
　　　　　　　　　　_／,ｨXxXx ＿xXxXxXxXxヽ｀ヽ､
　　　　　　　　／´ ／￣: : : : : : : : :￣:｀ヽ､xXxXヽ＼
.　　　　　　／　／: : : : : : :.／: : : : : : : : : :ヽxXxXヽ＼
　　　　　／　,ｨ´: : : : : : ／: : : : : : : : : : : : : ヽxXxXl!　ﾍ
　　　　　 `ヽ: : : : :/: ／: : : :／: : : ／: :/:/!: : :i!xXxX!　ﾍ
　　　　　　 /:./: : :/: /: : : ／: ／:／: : :/:/:l: : : :.lXxXxl　　ﾍ
.　　　　 i!:i!: : :./: /: :／: ／:.／: :／/:/: :l: : l: : lxXxXl　　ﾍ
　　　　　　i: i: : :/: /／／／／:／／/:/.l: :.|: :.|: : lXxXi! ,ｨi´￣
.　　　　〉!: : :l!／／`/／／／／／-‐l: :|: : l: : lxXxlｲ.: :i!
.　　　　　 /:ﾄ､: :i: /ｬﾃ示､. ／／／　＿_,l:.:l: : :l: :.lXxi!: : : :.l
.　　　　/: :l ヽ: :l. 弋: :.ﾉ　　　　´ん:::ﾊヽ､:l: l: /X./: :l: : :.l　　　　　　　　　　　作り話だったの。
　　　　 /: : :.lX.`ｰ`-.￣　　 ,　　　弋::::ｼ ´ /:／Xxi!: : :|: : : l
　　　　/: : : :.lxXxﾍ　　　　 r-､　　　￣　／XxXｘi!: : : :l: : : :l!
　　　/: : : : :.lx/`'´ヽ. 　　　l 　 i　　　／lXxXxXx!: : : :.l: : : :ﾍ
　　 /: : : : :.://.ゝi.ﾌ.　＞､ `ｰ.' 　, .ｨ´　.|xXxXx./: :|: : :.l: : : :.ﾍ
.　 /: : : : ／......ﾄ j`j　 ,ｨ=＝≧≦＝=､　 /xXxXxl.ヽ:.l: : : : : : : :.ﾍ
.／: :.,ｨ'´...........i´ i.ﾄ,　.《　〃ijijヾ、　》 lXxXxXxl.....ヽ: : :＼: : : : ﾍ
: :／...................ゝ.j i´　　ゞｨ" .ij!.ij!　ゞｲ" |xXxXxX|........ﾍ: : : :＼: : : ﾍ
/........................ﾄ､.i `j　　　　　ij!　ij!. 　　 |XxXxXx|...........ﾍ: :ヽ: :＼: : ﾍ

　　　　　　　　　　　　　　　 _,,..-――-..,,_
　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　,'. 　　　 ――　　　　 ',　　　　　　　　いや。まったくでたらめってわけじゃないさ。
　　　　　　　　　　　　　l　／　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　 ',　　　　三三　　　　|　　　　　　　　　　双葉山で何年か前に中学生が殺されたっていうのは、
　　　　　　　　　　　　　 |. 三　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　 l　　　|_　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　俺も当時新聞で読んだのを覚えてるし、
　　　　　　　　　　　　　 '.,　､＿_＿ノ　　　| 　|
　　　　　　　　　　ヽ　｀ ⌒´　　　　.|　 |_　　　　　　　　　行方不明うんぬんっていうのも実話のはずだ。
　　　　　 ,-、　　 __　　　 .',　￣　　　／l　 .',＼
　　　　 .',. ',　　l　l 　　　 l　　　　　.／　 | 　 .',　ヽ、
　　〈.ヽ　　', .',　 |　| 　　　 _｀''―‐''´　　 .l　　.l 　　',_
　　 ',　',　.',　',　|　|　　　,,-''／　　',＼　　　　　　|　　...',｀ﾞ''-..,,_
,-、　 ',　',　j　.｀´　|　／／　　　 /',　l　　　　　 |　　　 ',　　　.｀ﾞ''-,,_
ヽ＼　',　｀´　　　..|　,' 　.￣￣＼/ ',.ヽ　 /　　 ,.ｲ　　　　', 　　　　.｀ヽ
　.＼.｀´ 　　　　ヽl__,.--.、　　 |、ヽ __ ,,..-''´　|'"´￣￣
　　　ヽ　　　　　　 ,,..-''"　　 .| ｀''--　　.-‐''´|
　　　　'.,　　　　　__ ／　　　　　 |　　　　　　　 |
　　　　.ヽ-　-''"　　　　　　　　 |　　　　　　　　 |

165 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:58:10 ID:976fb80c

　　　／: : /: : : : : : : : : : :l: : : |: : ＼: : :: : : :ヽ､. ※ .ヽ　　　　　　ヽ
.　　/.: : : /: : : : : : : : : : : :.|: :: :|!: : : :＼: : : : : :.:ヽ　　　l　　　　　　　ゝ
.　 /:/: : :/: :.:l: : : : : : : : : :.i!: : :.i!: : : : : :ヽ: : : : : : l　※ |　　　　　／
　7:/: : :.7: : :|!: : :: : : |: : :.:/:/:./!: : : : : : : l!: : : : : :.|.　　 |　　　,ｨ''´
. l:./: : : l!: : :|!: : :: : :.:|!: :./:./:./.:||: : : : : : :.:|!: : :: : : | ※ .| 　 /´
. |:l: : : : |: : |!: : : : : /: ://:/:./ l:.|ヽ: : : :: : : |: : :: : : :|　　 |　/:.|
. |!.|: : : :.|: :|: ___/:/!:／//.//＿i!＿ヽ: : : : :.|: : : : : :| ※ |.ノ: :.l
. |　|: : : :l!:.|:／/／　／ //　　 i 　｀ヽ: : : :|: : : : :./　　 |: : : :.l
　　ﾍ: : :.:ﾄ､!ｬ'´ﾓ示,　／　　　ｲほ示ヽ`: l: : : : / ※ /: : : : :l　　　　　　　　ふーん。
　　　ﾍ: :.:l! `､ゝ辷ﾉ　　　　　､弋::::::ﾉ ´ /: : :.:/　　 /: : : : :..:l
　　　　＼i!　 , ￣　 ,　　　　　　￣　 //: ::／ ※　/: : : : : : :l
　　　　　 |`※ ',. 　　 `　　　　　　u　／/／　　　　/: : : : : : :. :!
　　　　　 |　　　ヽ　　　ー　　　　／／!　※　 /.: : :: : : : : : :l
　　　　　 |　※　　l:.ヽ､　　　　　　,／´|:.l 　　　l: : : : : : : : : : :l
　　　　 |　　　　|: |: : :＞ .-‐ ＜´　 ,ｨ´|　 ※　/: : :|: : : : : : : : :l
　　　　　 |　※　.|: :|: :: : :.ﾊ,__,,､ｨ'''"´　 .|　　　 /: : : :|: : : : : : : : :.l
　　　　 |　　　 |!:_: :._,ｨ'´ｨｹゞ､　　　　 |　※　|ゝ‐--r､: : : : : : : :.l

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

メンソールの香りがする煙を静かにくゆらせながら、千歳は不気味そうに辺りを見まわした。

　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　／　　　　　　＼.........:::::::::::.... .......　ヽ　　,
　　　　　　|:::::::　:　　　　　 |　.... .........::::::::::.....r‐' _ノ
.　　　　　　|:::::::::::::　　　　　|　.... .........::::::::＿ ) (_　　　　　　ま、それにまつわる殺人鬼の噂っていうのは、
　　　　　　 |::::::::::::: 　　　　|..　..... ......:::（⊂ﾆﾆ⊃)
.　　　　　　 |:::::::::::::::　　　 }　　..... ......: ::::｀二⊃ﾉ　　　　聞いてのとおり相当いい加減なものばかりだけどね。
.　　　　　　ヽ＿＿__　　 }　　..... ......: :::: （( ￣
　　　　　　　 r'ﾆﾆヽ._＼. ﾉ..　..... ......: ::::::　 ;;.
　　　　　 r':ﾆニ:_`ｰ三`:く._　　　　　　 [l、.
　　　　／: : : : : : :｀,ニ､: :_:_;＞　　　　／,ｨつ
.　　 /: : : : : : : : / : : : ヽ＼　　　　 ,∠∠Z'_つ
　　　| : :.:.:.:.:.: . :/: : : : : : l : ヽ.　　 / .r─-'-っ
.　　 |:.:.:.:.:.:.:.:.:.,' ''"￣: : :l: : : :l 　 /　）:::厂 ´
　　　 |:.:.:.:.::.:.:.:ｌ -─-: : /:_:_:_:_l　/￣｀Y´
.　　　 |:.:.::.:.::.::l._＿: : : :/::: : : : :l/⌒ヽ: :
　　　　|::.:::.::.::l: : : : : : /:::: : : : : |: : : : ﾞ/

166 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:58:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　,　ィ ´　＿_,.､_＿　｀＞､
　　　　　　　　　　　　　／　__.r‐┘　　　＼ └‐ｔ _　＼
　　　　　　　　　／/ ／　　／／　　　l　',　､　　＼ﾊ＼
　　　　　　　　　／　/イ　　 /／　　/　　l　 |　＼　　ヽ!　＼
　　　　　／　　/ 　 /　/.: :　　:/　　/　l |:.:.　　',　　 V　　＼
　　　　　 / 　　 j/　/　/.:. : : ／　／　/ l |＼:.: 　',　　 ',　　,.:　〉
　　　　　 /　　　　/　　　l:.-－―／　／/ ｲﾅ ― --l　　 !イ::／
　　　　　￣ヾー-|l　＿斗匕三ｘ' ´ ／　/　ｘ三:心j:.:　　j　l/
　　　　　　　　＼|:!:.　:.:.ｌｉヽﾊノ:!　　　　/　　ﾊノ:i ﾉｲ.:.　/!　l
　　　　　　　　　 l|小、:.:.:.ヽ. ゞ='　　／　　ゞ='　/.:.: ｲ　}　l　　　　　　　　　　犯人が捕まっていないのはほんとなの？
　　　　　　　　 l|　{　ヽ､:.:.:.＼.　u　　 ' 　　　／ィ´_ {!_ ｌ:　l
　　　　　　　 l|　｝ _{!_ 下Ｔ、　　　 cっ　　　／i:.ﾊ.　{!　}:.　',
　　　　　　 ∥　 {　{!　 }:::i::::＞:..､　　　, ィ:::::::.:l:::.:}　　{:.:.　 ,
　　　　　　　　 /'　　 }　　　{::l.:.::::::l::::|　　 : :|::::l::::::::.:i:::.{'_{!_/:.:.:　 ',
　　　　　　　 /　/ 　ﾄ､　}!,jV.:.__／￣¨ Y ¨￣＼＿:ｒ､} }!/ .:.:.:..　 ',
　　　　　　　 ,'　/　　{こ入 { ｲ　,.‐',二¨Ｔ¨二.'‐､　　{ j／¨ヽ:.:.:.:..　ヽ
　　　　　　　,' .:'　　/ _ｒ'_{! ﾉ { /／　/ ,小.ヽ　＼ヽ r' |!｣ i　 l :.:.:.:..　ヽ
　　　　　 /.:.: ｒ ‥'.ノ　ノi　{ ヽ.二ｨ | {｜ト二.ノ { 〈| ! ヽ　V :.:.:..　　ヽ
　　　　 /.:,:-'　／ヽ _/, = , ‐ ､二二二二二 _－- ､{. ＼ !　ヽ :.:.:.:..　　＼
　　　　 /￣､〃　　／ / r＝/¨＼「￣}‐､:::）＿ｒ＝i!　 ',　└ｔ._　ヽ :.:.:..　　　＼
　　　「´　　〃丶 /　l: ヽ._､_:':､::::::/j⌒i_ ﾉｲこノー'' ., ｲ∟,　､ハ_l ＼:.:.:..　　　＼
　　 /´　　　　　_,｢　　}　ヽ二＞-,＿´＿＿,ｒ_― '´ﾉ}:.:　Ｌﾊ　＼ヽ :.:..　　　ヽ
　／　､　／　　/　＼/　 /ｰｔ.￣´ー┘'ｰヽﾆゝ‐'￣　:.|:.:　　｛　　､　'┴､:.:.:...　　　ヽ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　＿　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　/｀　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　(● ) 　ﾉ　　　　　　　　　本当だよ。
ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　|
:::::｀ヽ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　　　　　　　､/
_,　‐､::::::￣ )　　　　　　　　　　 |￣￣ ‐ '─ !_　　　　　　　　 `ｰ-､_
:::::::::::ﾚ' ￣　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::::｀‐　_　　　　　　`ｰ-
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::::::´::::::::ヽ:::::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ ‐-､
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167 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 22:59:40 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　_, -‐' ￣￣｀ー､
　　　　　　　　　　　_ :-'´: : : ＊: : : : ＊: : : : :.ヽ
　　　　　　　　／: : ＊: ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; : :＊ : ＼
　　　　　　　　ｲ: : : :r-'´｀´｀´｀｀｀｀｀｀｀/´´ー､: : : : ＼
　　　　　　.／/: : :／/::/:::／:::::／／::::/:::::::il::::::::ﾍ: : : : :ﾄ､
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　　　　｀ヽi.l::/:::/::/::/:／::／::::／::::／:／:::ハ:: il:::il:::::｝: :}‐┬ '´￣
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　　　ノ　 .|::l:::i::/::/::／::::／::::／::::::ノ:::／￣i代::il:::V: : : {:::::|
　　 il.:　　|:::i:::ﾚ::::∠:＿::::;;／-彡'´／　-=≧､＼:/＊:: :{:::::|
　　ヽ_　廴＞≦て/r゛゛ヾ､　　　　　ィ:::;;;:::｝ゝ /: : : : ::{:::::|
　　　｀ ┬イ:ヽ:::（ i ﾄ-j　）　　　　　　.ﾄ=j::::）.i./: : : : : /::::::|　　　　　　　それ以来、この山に近づく人が減ったっていうのも？
　　　　　 |::}: ＊:≧ﾄゞ-"　　　　　　　ゞ=゛゛ /｝: :＊ :}:::::i:::|
.　　　　　|:::}: : : : : :{>､　　　　　　_　　　　u　ｲ::｝: : : : :}::::il:::|
.　　　　 |::::}: : : : : {:li:＞､　　　　　　　　イ::il::}: : : : : {::::il:::|
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　　　　ﾚ:..:../|: /｛i　　　　 | |i.｝i｛i..}|.|　　　　　　入: : : {:..ヽ:::|

　　　　／￣￣＼
　　　／　　｢　　＼
　　　|　　（ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　らしいね。
　　　|　　　　　｜　|
　　　|　　　　　__´___ﾉ　　　　（ ;;;;(
　　　|　　　　　`ー'´}　　　　　　) ;;;;)
　　　ヽ　　　　　　 }　　　　　 /;;／
　　　　ヽ　　　　　ノ　　　　　 l;;,´
　　　／⌒　　　ヽ
　　 ./　　　＼　　　 Y´￣了━・
　　/ 　　　　＼|＼＿／
　　| 　　　ヽ、__)|
　　|　　　　ヽ￣⌒Ｙ￣￣⌒ヽ
　　＼＿＿＿y　　ﾞ|＿__ｨ　　|＿
￣￣￣￣￣￣|　　 |　　|　　|
　　　　　　 |　　 |　　 |　　|
　　　　　　 {＿__ﾞ) 　 {＿__ﾞ)

168 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:00:25 ID:976fb80c

　　　　／￣￣＼
　　　　／　「　　ヽ（ ;;;;(
　　　　|　（●）（●） ) ;;;;)　　　　　俺も、実はあの話、一昨日だったかな、英男──うちの兄貴から聞いたんだ。
　　　　|　　　　 | 　 /;;／
　　　　|　　 ___´__　ｌ;;´|　　　　　　　　　兄貴は、この地方に住んでる伯父さんから聞いたらしい。
　　　　| 　/´ニﾄ━・　!
　　　ヽ l　_ニｿ　　 /
　　 __　/ヽ､_ノ　　ノ__
　　/ 　/　　/　　　　　｀ヽ.
　 /´　　　./　　　　　　,.　ヽ.
　ﾄ､＿__./　　　　　｜､　ヽ
　　｜　　　　　　　　｜/　 /

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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　　　:.:. .;　　　　:|　　　　＿＿＿　　　　　　＿＿＿
:.: : 　　　　　:..:ﾒ::|#　　　:||＿||＿||　　　　　 ||＿||＿||　　　　　　　　　　　　　:..:ﾒ::
　　　　　　　 ::|　　　　||＿||＿||　　　　　 ||＿||＿||　　　　　　:.:..:;;
　　／|　　　 :|　　　　￣￣￣　　　　　　￣￣￣＼＿/
: . ／　 |　　　 :|　　　::メ　　　　　　　　　　　　　:.:..::#:|　　　　　　　:..;..　　　　　:.;...
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　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　で、来てみたら、なるほどあの山小屋とかね、ひどく荒れ果てた様子だろう？　│
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

169 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:01:10 ID:976fb80c

　　　　／￣￣＼　ヘ
　　　／　「　　へ　））　　　　　　　　　さっきも話したけど、かつてはずいぶん賑わってたらしいんだ。
　　　|　（ ●）（●）((
　　　|　　　｜　　.,,））　　　　　　　　　山の名前にちなんだ通り名もあったりして。
　　　|　　､/))／´┃⊃
　　　|　　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　　　ヽ　ｌ　　　　´,,┃
''"::l:::::::/　　　 __人〉
:::::::::|_/ヽ. 　 /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i:::|

　　　　　　　　　　　　　　　　,　-―‐-- ､_
　　　　　　　　　　　　　,.ｨ'´,ｨ'´￣￣￣｀ｰ､｀ヽ､
　　　　　　　　　　　／／　__, -――- ､　＼｀ヽ
.　　　　　　　　　/ ／ .／: : : : : : l:: : : :.｀ヽ､ '､　｀ｰ､__
　　　　　　　　　 /　! ./: : :/: : : l:l: :ﾄ､: : : :ヽ: ﾍ ',　　／
　　　　　　　　／　 l //: :/: :_:.:/l!l:.;' -ヽ‐: : :ヽ＼. ／
　　　　　　　　ヽ　　.l,'/!: :l: '´／/ l/ 　 _,__`l: l:.ﾄ､!`
　　　　　　　　　｀'ｰl/ l: :.l／ｨｭ､ / 　ｲ::::ｶl: l: l. `:l　　　　　　　　　　　　　ああ、その名前のことは磯部先生から聞いたわ。
　　　　　　　　　　 l　l!: :',弋__ﾉ　　　ゞ‐'//:/ 　l:',
　　　　　　　　　　　　l　ﾄ､:､ヽ''''' 　 '_ 　""/'´ゝ､ |:ﾍ
　　　　　　　　　　/: l　 l:.〉`ヽ＞‐-　.ィ´／´:::::::l ヽ:ﾍ
　　　　　 _,.ィ':´｀7´:./　 l/::::::::ゝ　/ l!l ll〈::::::::::::::::ﾍヽ:ﾍ　, ---､__
　　　 ,ィ´: :/: __/_l;/　　 l::::::::::::`!〈 .ﾉli l l.';/::::::::::::::',　ﾉ:.ﾍ´: : :―､-｀＝ﾐ.､
　　／:/: :./: 〈＿　　　　ﾉ::::::::::::::〉ヽ/ llV/::::::::::::::::::l　l: : : ＼_: : : :.｀:ヽ､ヾ､
　/: : :l: :/l: ヽ: : : `ー:'´ヽ:::::::::::〈　ヾ l! 〈::::::::::::::::::::!　l: `ー‐----―'´:｀ヽ､
.〈: : : :.l/: :ヽ: :`ー―:':´: :.〉ｰ､:::::j　　　　ﾘﾍ::::::::_,.ィ´　ヽ: : : : :_ : : : : : : : : ﾊ
　｀¨¨´l: : : : `ー‐: : : : ／:::/ij:`ﾄ､rﾍ_ﾉ､/:::/ヾ´:::::::ヽ-､　＼: : : ｀:ー―:--:ﾉ
　　　　ヽ: : : : : : : : ／:::::::/:::ij:::l　ヽ:::::/／ .l:::::::::::::::::ヽ `ｰ'´: : : : : : : :_, -'′
　　　　〉＿, -‐'´::::::::::::l::::::`:::l　　∨/　　l:/::::::::::::::::l:::｀ヽー―‐'´ヾ彡__
　　　　 {{{:::::::::::ヾｯ::::::::::::l::::::::::::!　　`!′　 i!::::::::::::::::::l::::::::::ﾐｯ:::::::::::::::::::》/
　　　　 }}}}:::::::::::::::ゞｮ､:::::::ﾄ､::::::::lrﾍｰﾉｰ､r､j!:::::;;:ｨ-‐'´::::::::ｨﾅ::::::::::::::::::::{彡
　　　　巛!::::::::::::::::::::ヾｭ:::::::::`ーゝ-'ゝ-'ヽノ》￣::::::::::;ｨ､ｯﾐ彳:::::::::::::::::::::ゞミ!
　　　 ,ｨﾘ-::::::::::::::::::::::ミ､_:::::::::::::::ゝ-'ﾑノ:::::::::::;_;ｨ= 彳"::"::::::::::::::::::::::::::::::::》》
　　　彡ﾘ::::::::::::::::::::::::::::::ゞﾐｮｭ､:::::::::::::::::::::::::::,ｨﾅ"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡’
　　　`}}}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::“:ゞﾐ､ｪｭ:::::::;ｨｫ彳 “::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡"
　　　ミミｭ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::¨ゞミｮｭ彡ﾘ¨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡}}
　　　ヾ圭ミｭ:::::::::::::::::;:ｨｭ::＿_::::::::::::¨¨¨::::::::::::::::::::_:::::__:::::::::::::::::::::::: 彡圭}
　　　　　`圭ミｭ__:::::彡ヾ圭圭ﾐ!:::::::::::::::::::::::::::::::::/圭圭ﾐｨｮｵｮｮｮｮｮﾉ圭ﾘ
　　　　　 "ヾﾉ､圭彡"l-‐‐ゞ=_ﾐ_:::::::::::::::::::;ｨﾖﾖ彡--､!`|圭圭圭圭彡"
　　　　　　　　 """ 　l:::X,ｨ'´::::::::＼;ｨｪｭｮｮ彡/::::::::::::::ﾍj! ゞ"￣￣
　　　　　　　　　　　　l／::::::;:--､::::ﾘ￣ゞ〃　i::::;:-‐:'ヽ::ヽ
　　　　　　　　　　　 l:::::／:::::::::::ヽ′　　　　＼::::::::::::::ヽ:',
　　　　　　　　　　　　l:/:::::r､,:ｨ.' ´　　　　　　　　｀ヽ､::／:::）
　　　　　　　　　　　　ゞ- '´　　　　　　　　　　　　　　｀'''´

170 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:01:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　）　　　／　､___　　＼
.　　　（　（. 　　（ー）（ー）　　　|　　　　　　　　　　それが今は……ね。
　　　　）::）　　 |　|　　　　　 |
　　　（::（　　　l __｀___ 　　　 |　　　　　　　　　　他の登山客にも全然会わないし。
.　　　　　ヾ.　／　　　　　　ｌ
　　　　　　ﾞ　 .{　　　　　 ./
　　　　　　　　ヽ　　　　ノ
　　　　　　　　　ﾉ　　　ヽ
　　　　　　　 /　　　　　 |

　　　　　　　　　　　／　　／￣￣￣￣＼　　　＼
.　　　　　　　　　 / ／￣　　　　　　　　　＼　　　＼
　　　　　　　　　 / /　＿___／￣￣￣＼　　　＼　　　＼
.　　　　　　　　 / /　/: : : : : : : : : : : : : : ＼　　　＼　　　ヽ
　　　　　　　　 / /　/: : /: : : : : : / : /: : : : :＼　　　＼　　 `
.　　　　　　　 / /　/: : /: : : : : : /.: :∧: ＿＿: :Y　　　＼　､|
　　　　　　　/　： /: : Т¨: : : : /: : /￣＼: :.:.｜|　　　　　|　＼
　　　　／　　|｜ : : |x=ミ／/: /　 x===ミ: |人　　　　 |　　　〉
　　　　＼　　|！: : :《 |ｒ心 /／　　 |ｒ'::ｉ | 》:|: /　　　　〈　／
　　　　　　＼ |八 : : | 乂ソ　　　乂_ソ　/八　　　　厂‘,
　　　　　　　 |　＼ :ヽ""　　、　　　 ""/: : /　　　〈 : : ‘,　　　　──そうね。
　　　　　　 /　　 |: ＼ゝ　　_　_　　 u.∠:イ:{　　　　　}: : : :‘,
.　　　　　 /　　　{斗ﾍ＞　　　　　　イﾉ｝_:/　　　　ヽ: : : :‘,
　　　　　 /　　　ﾉ::::::人　　＼ー＜　／ノ　{　　　　　 ∧ : : : ヽ
.　　　　 /　　　　|::::::::＼　　＼ Υ￣　彡＿｝　　　　 .ﾉ::‘, : : : :
.　　　　＼______/::::::::_ノ-―― ｒｖ'⌒＞-、i|＼＿＿ノ::::::::|: : : :
　　　　　　　/: /::::::::::〈　／￣￣ノ /　/　 /ﾉノ　　)::::::::::::::::::！: : :
.　　　　　　/:／:::::::::::::::＼＼ｒｰく／　　　　￣)　/(::::::::::::::::::::::: ､: : :
　　　　　／::::::::::::::::::::::::∧／／　　　　　　￣i　　}:::::::::::::::::::＼|: : :
.　　　　　|:::::::::::::::::::::::::::ｒ‐'⌒Y＾､　　　／￣[ノ　ノ:::::::::::::::::::::::::::＼:
.　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::)＿＿　「 L／　＼ｒﾍ__人:::::::::::::::::::::::::::::::/:
.　　　/二＼::::::::::::::::::／￣￣＼、〈　 <⌒j　〈　ﾉ/二＼＿／二ヽ:

171 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:02:40 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　─　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ) (
　　　　　　　　/ 　　　┌ ＼　　　　　　　　（⊂ﾆﾆ⊃)
　　　　　　　ｌ　　　　（●　　　　　　　　　｀二⊃ﾉ　　　　　　　気味が悪くなってきた？
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ　　　　　　　（(
.　　　　　　　　＼　　　　　　 - 　　　　　　　 _., '
　　　　　　　　　　＼　　　　　 !　　　　　　 _　// |
.　　　　　　　　　　 /､｀ーﾃ ´　　　　　 l i/./ ﾘ7
　　　　　　　　　　/＿￣｀ヽ　　　　　　　ﾉ.ﾉ　　'./7
　　　　　　　　 /　　ｒ　￣｀＼　　　　　　 '　　　　/
.　　　　　　　　 /　　　　　　　　ヽ　　　　　〉　　.ノ
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　 i　　　 /"'　､/
　　　　　　　ヽ　　　ヽ　　　　　　i　　 /｀ヽ _　/
　　　　　　　　 ’,　　　 X　　　　　ヽ ./　　　　/
　　　　　　　　　，　　　ヽ、　　　　　ヽ　　　 l　　　　　　　　　　　　　　, 、
　　　　　　　　　 i　　　　　ヘ　　　　　｀　　　i!　　　　　　　　　　 ,. : : : : : ヽ
.　　　　　　　　　〉　　　　　　＼　　　　　 ./　　　　　　　 ,. : : : : : : : : ; : : :ﾊ
　　　　　　　　　 / i　　　　　　　　＼　　　 ./､　　　　 ,､. : : : : : : : : : :i:/: : : : : l
.　　　　　　　　 / 　ヽ　　　　　　　　ヽ __ ｨ　〉- -:､:´: : : : : : : : : : : / : : : : : : i
.　　　　　　　　,'　　　　>､　　　　リ　　　　　/: : : : : ヽ: : : : : : : : : : i!: : : : : : : :|
　　　　　　　　ﾊ _　／　＼　　/ =--y-- ": : :/: : : : ヽ＿: : : : : :i: : : : : : : : :ｌ
　　　　　　　 i　　 ./　　　　　＼/三／: : : : : : :ﾐ: : : : : : : : : : :￣: ￣ :￣: ￣: ￣: ￣: `:､
　 _　-＝　''"ヽ _/ 　　　　　ー"、: : :ﾐ: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
　　　 - ─ - 　 ´　　　　　　　　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ : _: : : : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　　　　─　　　　　　￣　　　　￣

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　　　　　　　　　,､-―‐'ヽ´　ヽ｀ヽ､
　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : ヽ　ヽ　　｀ヽ､＿
　　　　　　　　　　/,: : /: /:.i!: /!:l: :ヽ　ヽ　　　／
　　　　　　　　　 / l: /:／:/:／ l:ll: : :',　　',　　／l
　　　＿　　　　／,ｨ: ／/rj-､|!l: : :.l　　 l／: :.:ﾍ
-‐‐'´　ﾉ.　　　／　＼:l 　 lﾘ ´.ﾘl: :./!　　.l: : : : :.∧　　　　　　　　　　少し。
.　　　/ 　　　　　ｨ´　　´　　/／/ 　 /: : : : : :.∧
　　　i　　　　　　　　　ヽ _ 　　／　/　　/: : : : : : : : :＼
　　　l　　　　　　　　　　 `､＿,､-.'/　　/: :ヽ: : : : : : : : :＼
､　　 `i　　　／　　　　　l　/ ヽ/　　/ ＼: :＼: : : : : : : : :＼
ﾉ　　　ゝ‐､／/ 　 __ 　　 .l /ｲ／　.／ｨ":::::`､: :＼: : : : : : : : :＼
`ー‐-､＿　 /　　//　　 l/ ./　　/ ﾉ::::::::::::::::ヽ: : ＼: : : : : : : : :＼
　　　　　￣_ｨヽ//　　　/　/　　/　ij::::::::::::::::::∧: : : ＼: : : : : : : : :＼
　　　　　　ﾄ=ﾐﾉヽｨヽ＿l　/　　/　 ij:::::::::::::::::::::∧: : : : ＼: : : : : : : : :＼
　　　　　　　ゝ`_ｨﾅ"　　ij.l　　 l　　.ij:::::::::::::::::::::／: : : : : : ＼: : : : : : : : :
　　　　　 //　ゞ―‐-.ij:l　　 l　＝"､:::::::::::::::/､: : : : : : : : : :＼: : : : : : :
　　　　　　〔ノ

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そう云って、まだ長い煙草を岩の端で揉み消すと、千歳はうふふっと低く含み笑いを洩らした。

172 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:03:25 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　_　=-――――-
　　　　　　　　　　　 -――‐---= ､　　　　　　　　｀ヽ、
　　　　　　／　 _,､_ ＿,､__　　　　｀ー‐ ､　　　　　　　ヽ
.　　　　　／／￣: : : : : : : : :￣: ｀ヽ__　　｀ー､　　　　　　ﾊ
　　　　　/ノ: : : /.: : : : : : : :ト､: : : : : : :ヽ　　　ヽ　　　　〃 ',
　　　　 /.: : : : :′: : : : : : /' 　＼: : : : : : :＼　　　ヽ.　　 ∧＼',
.　　　 /: : : : : :!: : : : : : : /　　　＼／: : : : ｀,　　　 ',　 /:.∧　ﾘ
　　　 ′: : :.|: :|: : : : : : :/　　　／´＼: : : : : ヽ　　　',　l: : : ∨
　　　: : : : : :.!: |: : : : : :/　　　／ｘ≠＝ミ: : : : : ',　　 Y: : : :.∧
　　 ,': : : : : :.Ｌ｣＿＿:/　　　　〃 ⌒j::::ハ: : |: : } 　　 }: : : : :.∧
.　　: : :!: : : :.:Ⅵ: :,ｘ≠　　　　　　ｒﾍ:::ﾉ .ﾊ: :!: : }　　　ヽ: : : : : : :.
.　　|:i: |　: : : :.V〃'⌒ヽ　　　　　乂＿ﾝﾞ ∨: : {　　　 }: : : :＼ :i　　　　　　　　　　　　でも、ちょっとスリルがあっていい。
.　　|ﾊ:.V: : : : :.:《　ｒ':::::ﾊ　　　　　　　 }:i : :ヽ　　 {: : : : : :.:ｿ
　　 !　',:V: : : : :.ﾍ乂_ン　ﾉ　　　　　"""　从: 〃　　　ヽ: : : : : :＼
　　　　 ',ヽ:ヽ: : :.:.ﾍ　　　｀／￣ヽ　　／ }: :八　　　ﾉ: : ＼: : : ヽ
　　　　　ﾄ､＼＼: :从 """ 　､ノ　 }　　　 ,.ｲ:∧: :ゝ　　ヽ: : : : :＼: : ＼
　　　　　ヽ　　ヾ＼: :ゝ、　　　ヽ　.'　　／/∧: Yﾞ　　　　}: : : : : : : ＼: :＼
　　　　 /　　　　 Ⅵ＼: :＞‐-　 ._ 　＜,-≠‐┐}　　　　ﾉ:　__: : : : : : :＼:.｀､
.　　　　 {　　　　　 }:|: : : : : : : : ｘ‐ﾍ　/__,　　 ┴}　　　　／⌒Yノゝ: : : : :.＼:＼
　　　　　', 　　　 j:.|: : : : : : :≠=zｭYｭｘ==≡z / 　　 / 　　 !::::::ヽ: : : : : :.:＼:＼
　　　　　/ 　　　 Y: :＿＞'´ヾｘz=I小≪zzz7' ヽ/　　′　　 ′::::::::V: : : : : : : ＼:＼
　　　　 {　　　　　ﾉ:_ﾊ/　　　　´,ｲ'/| Ⅵ、　　 /　　 |　　　 |::::::::::::::ヽ: : ､: : : : : : ＼:＼
.　　　　ﾊ　　　 _ハﾉ./ 　　　 /Ⅳ |　Ⅵ､　　 {　　　|　　　 |::::::::::::::::::＼: ＼: : : : : : :＼:＼
.　　　 //　　　( ｀ヽ/　　　　 /Ⅳ　|　 Ⅵ､　 / ＿_.｜　　　{::::::::::::::::::::::::ヽ: :＼: : : : : : : : : ＼
　　　 /:.{　　┌'＞/　　　　　/Ⅳ　｜　 Ⅵ、/〈　　｀ヽ　　ゝ'⌒ヽ:::::::::::::}: : : :＼: : : : : : : : : }

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飛行機事故を怖がって旅行をキャンセルした心理とは、いささか矛盾があるようだ。

　　　　　　　　　　　　　 _ ＿＿＿_
　　　　　　　　　　　／　　　　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　／　　　　　 __　　　　　＼
　　　　　　　　　　 /／ヽ　　 -‐'''"　 `　　　　　＼
　　　　　　　　　　　/　　　ヾ"　　 ___　　　　　　　　＼
　　　　　　　　 /　 rｔｧ　ｒ´　 r´心》　　　　　　　　　ﾍ
.　　　　　　　 /　　｀´ 　　　｀¨¨´ 　　　　　　　 }　　　　　　　本当にそいつが出てきたらどうする？
　　　　　　　 /　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;
.　　　　　　 /　　{:. 、　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　 /　 ,__　＿ _　　　　　　　　　　　　　　 /
. 　　　　　　 `　-= ＿￣　‐- ｧ　　　　　　　 /
.　　　　　 │　　　　　　　￣　¨´　　　　　　　　　　/
　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
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　　　　　　　ト､　　　　　　　　　　　　 , ′
　　　　　　　　　,′　`　　　　　　　　 , '
　　　　　　　　 ,′　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{

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芝居がかった調子で大八木が訊くと、千歳はまた低く笑って、

173 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:04:10 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , -──-＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _, 　 '´, -‐'´zZ´｀ゝﾆ、、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　r'／xXxXxXxXx女くxヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞r'(ゝ_x／::￣￣￣:::::::::::ﾄ.Xﾄ,ﾍ
　　　＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　／::人:::ゝ'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ f　',
- :￣:::::::::::￣:::::≧､ _　　　　　　　　＿, -='￣::::f x_ノ:::::::::::::::::／:::/:::ｲ:::ﾊ:::::::::', {　i
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ー-一　 :::::￣::::::::::::::::::::ノ-=ﾝ::::＜＿／:::／::/::::/::::::::::::::} ,'　!
:::::::::::::::::::::::::＿二二＿::::::::::::::::::::::: :::::::::::::::::r'´xXr'::::f r>=､ﾌ／ィ／::イ:::ｨ::::::::::ﾘ }　ﾄ
:::::::::／￣￣　　　　　　￣￣ーｪﾐ､__:::_;-='´xX_f´:::::::| 'ゞzﾇ_ノ／イﾆメくﾉ::/::::/∠_　{
::::::/　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ㌃￣￣: :._rt: ::t　ﾞ　　　 ''r升ﾘ)ﾉ:ヌ:::/ ヌ、ヽ　　　　　大八木さんを盾にして逃げちゃう。
::::f　　　　　　　　　_　　　　 _,=-'´: : : : : : : :rtj ￣人　､　_　　ゞ='"::::::;イ/⌒;
:::{　　　　　　＿／/　　_,-‐ｱ: : : : : : : : : :rtf-'　　 r==＼　　　｀テ'r‐'" 7　 /、
::::ゝ...＿,-＝"::::::／　r'´:::: / : : : : : : : ,､rｧﾁ　　　　ゞ=ﾃﾍへ￣／rー､ム_j　々}
::::::::::::::::::::::::::::／　／:::::::: 〈 : : : : : r=yﾁ^ ,～､＿__ァ彳j/ﾍﾞﾝr'´xX>‐-､　　　　ヾ,
::::::::::::::::　／　 r'´:: , -─ヌｪ､ : : : :でｯrt_ヽ'´￣ヌ〃メﾉ '_, ｲxXx/ : : f^乂／　 )ｯ
　　一'´ 　ノ ::::::／: : : : : : : :ゝ : : : 〉:ゝf+､　 rfﾇrfy'´　　 ,'xXxx{ : :Y"t　ゝ-'=彳＿
:::::フ　／::::::::::/ : : : : : : : :{ : : : :／ } : : i乍ｯ'=" 从　　 jxXxXj : : :ﾍ_　 ⌒／￣::::::ﾅ
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／::::::::::::::::::::::／ : : : : : : : : : :ゝ─-イへ:/ﾐミﾍf7＞- 彡jxXxXxi::::ヾ、: : : : : : : : : : : : : : : :.z
ｧ-───ｧ'´ : : : : : : : : : : :〃 : : : : : : : ﾄﾞヾミ彡彡彡ﾘfxXxXxf:::::::::::ー-､: : : : : : : : : : : : : .z
: : : : : : ／: : : : : : : : : : : ／ : : : : : : : : : :ヾﾐミ_彡'／￣jxXxXxxト-,::::::::::::::::ヽ＿ : : : : : : : : : ﾁ
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: : : / : : : : : : : : : :ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀' : : : : : : : : : : ￣ヽ:::::::::::::::::::ヽ

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と答えた。

　　　┌──────────────────────────────── ──　─
　　　└────────────────────────── ──　─
　　　┌──────────────────── ──　─
　　　└──────────── ──　─
　　　┌──────── ──　─
　　　└── ──　─

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,～｡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rﾍ＞-､./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛ /＿　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　＼　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (__ 　、　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈　　　ヽ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ⌒ヽ　 /Λ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::i' _ノニΛ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::l.ﾆﾆニニj
　　　　　　　　　　　　　　　　 , :::::::::::::::::::::::仁ﾆニ彡∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::}h　　　 ∨
　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::ｱ.ﾊ　　　 ∨
　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::7 　 }　　　 ∨
　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::7　　 }　　　　＼
　　　　　　　　　　　　 ./:::::::::::::::::::::::::::::::7　　.{　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::7　　　 |　　　　　　/
　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::7 　　八　　　 /
　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::7.　　　　＼＿／
　　　　　　　　　　人::::::::::::::::::::::::::::::7
　　　　　　　　　　ゝ::::::::::::::::::::::Z'
　　　　　　　　　　　　　　 .¨≧=xz=彡

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まだ消えきらずにくすぶり続けている炎のそばに一人きりで坐り、洲藤はのろのろと紙コッップにウイスキーを注いだ。

174 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:04:55 ID:976fb80c

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
　　　　　　　　 /　/　＼＼￣￣／　／　　　 ,'
.　　　　　　　　 /／⌒ヽ.　ヽ￣´　／＼　　　,'

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相当に酔っている。これ以上飲むとヤバいかな、とも思った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　　　　 .l　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈.　｀ヽ　　 r'′,/｀''‐‐――-.、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,...--‐ ┘-.、|. 　ヽ.r'´::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::、::::::::::::::::::| }　　＼::::::::_,,-'⌒::::::::::::::〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:::::::::::::::::::｀ヽ.::::: ／´ 　　　／::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',:::::::::::::::-‐''"::::::￣"'''::‐‐-v' ::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ_,,.. -‐''"´::~｀ﾞ"''‐- ._.:::::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ、::::::::::::::::::／
　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::r;;;;;;;;;;-、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::::::::／
　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::｀""""´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',::／
　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::ゝヽ‐''"｀ヽ-.、::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　 /　　　ζ　　　　　　　ヽ::::::::::::＞-..,,:::_,,-''
　　　　　　　　　 ,,-''´　　　 /　　　　　　　　　 l::::::／:::::::::::::｀ヽ
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　　　　　　　　　　／:::::::::::::::l::::::::::ヽ　　　　　　　ﾄl::::::::::::::::::r.<ヽ、::::ヽ、
　　　　　　／::::::::::＿:::::::｀ヽ_,,..-|　　　　　　　　/　｀ﾞ".＞''"::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　l::::::::::::::::::┴┐／　　｀"''''''v_,,..-''"´　_,,-''":::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　ヽ、:::::::::::::::::::＼　　　　　　　　　　_,,-''::::::::::::::::::::::::::::::::／
　　　　　　　＼:::::::::::::::::::::＼　　　/――‐‐'ヽヽ:::::::::::::::::_,,-''"´
　　　　　　　　　　　　＼:::::::::::::::::::::＼　ヽ　　　　／ゝ>_,,..-''"
　　　　　　　　　　　　　＼:::::::::／／‐-.._＼_フ‐'
　　　　　　　　　　　　　　＼〈／Y´ 、ヽ_〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヽ Y__/
　　　　　　　　　　　　　　　　　｀~´

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夫人と茜が引っ込んでしまったあと、呆気なく酔い潰れてしまった磯部の姿を思い出す。

それまでわりとまともに話していたのが、急に呂律が回らなくなったかと思うと、ばたんとその場に突っ伏してしまった。

175 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:05:40 ID:976fb80c

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あんなざまにはなりたくない。

こんなところまで来て、宿酔いになどなったら最悪だ。

.　　　　　　　　　　　　　　　／＼　　　　　　　　　　　 ,,
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.　　　　　　　　　　　／　　　　＼　　　弋
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　　　　　　〈　　ノ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__〉　　　　　　　　　　　　　　　　　(この一杯でやめて、もう寝るとすっか)
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.人＿.ノ: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :.／　　ｲ
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　　＞くX､: :: :: :: :: :: :.／ﾞ = "　}!　　　　　　　　　　　　　''　　.._
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　　　　　＞､＼／　 {(　　　　ﾉ}　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　乂:::...　　　　　　ヽ.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }
　　　　　　　　ヾ:::::.....　　　　　　ﾍ
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ストレートのまま、ウイスキーを呷る。

酒の味ではなく、喉許をゆっくりと通りすぎていく灼熱感の方を味わいながら、

洲藤は右手に握ったままでいた五百円玉を、いまいましそうに睨みつけた。

176 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:06:25 ID:976fb80c

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心の中で吐き出す。

結局、みすみすあの女を大八木にくれてやったようなものじゃないか。

今頃あの二人、どこで何をしていることやら。

　　　　　　　　　　,,,,,,-ｰｰ-　､
　　　　　　　 ,,,-'´　　　　　　 .｀ヽ､
.　　　　　　／　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 .ヽ
　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
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　　　　　ヽ　　　　　-　､　　　ノｰ‐--- ､
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　　　　　　　 >‐|i...::::: 　_ｌ:::｀ヽ　　彡　 ',
.　　　　　　　／　｜￣　　 :|　　｀　､ノ　　　 ,
.　　　　　　Y´ 　　 { ,,,,...　　　　　／　|　　　　 ,
　　　　　　 { 　　　ィ､　　　　 |ｰく　　　　　　　　',
. 　　　　｀,ｰ ´　ﾊ　　　　　　　　　ヽノ　　　ヽ
. 　　　　 /　　　ﾉ　} 　　　 ∨ ヽ　／　　　　　　 ',
　　　　〈　　, '　　　　　　　　ヽノ´　　　　　　 }
　　　　　　ｰ‐' ヽ　　 l　　　　　　｀ヽ　　　　　　　 /
　　　　　　　　　＼,ノ　　　　　　　　　　　　　　 /
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　　　　　　　　　 {　　　　　　　　　　　　 /

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千歳と二人で月夜のデートと洒落込むのは、自分のはずだったのだ。

それを、気まぐれな偶然の審判が、大八木に白旗を挙げてしまった。

177 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:07:10 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　 i: : : : i.　　,イ∠少ヽ: : : : : :.'､ﾉ: : : : : : : :ゝ､
　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
　　　　　　　　　　　　 i,､ ,'､'".,ノ __　　　　　i: : : : : : :', : : : : : : : :i.ヽ
　　　　　　　　／／　／-'"ノ__　　　　 i: : : : : : i: : : : :':､: : :.i
　　　　　　　 /'"´ -‐'´ ,､イ:ヽ､　-‐ ''´ i: : : : : ﾙヽ: : : : :':､:ﾚ
　　　　　　　　　 /　　　 -‐￣￣フ＼　　　 iﾙ: : :/　　ヽ: ﾙヽヽ
　　　　　　　 /　　　　　 /￣￣: i 　 iﾙﾚﾙﾚﾙi: :.i　　　i: /| : :iヽ
　　　　　　 ./　　　　　 /i: '､: : :'､:', 　`ﾙﾚ才 i: :/　　　i// : :: :ゝ--､
　　　　　 /　　　　./　.'､＼: :'､ゝ／: :／　ﾘ/　　　 /: :: :: :/. : :: :`‐ .､

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「現実主義者」を自認する洲藤である。

先程のような「百物語」の席では、遊びだと割り切って、結構それらしき怪奇譚を話したりもするが、

その実、その手の怪談や超自然現象などに対しては、まったくと云ってもいいほど醒めた目を向けている。

超能力やなどはもちろん、占いだの運命だのといったものにもまるで興味がない。

ハナから馬鹿にしてかかっているのである。

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ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
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　　　／　　　　＾｀ヽ＼ll「lヽ､_'´ノ′
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しかしながら、こと自分の“ツキ”に関してだけは、

とても「現実主義的」とは云いがたいような自信を持っているのが彼でもあった。

178 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:07:55 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　'"　"　　　¨"'''了　　|　 |
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　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
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　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
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..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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事実、彼は非常に運の強い男だった。

彼だけではなく、洲藤家の人間は、父も母も、康彦という名の彼の兄も、みんな人並み以上の強運の持ち主なのである。

強運は洲藤家の血筋なのだ、というのが父の弁である。

その洲藤家の息子として生まれてきたのが、そもそも一つのツキだったと云える。

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
　　　　　　　　　　/　/` ､iiiiiiiiiiiiiiiiii　/ 　 /　　　,'
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裕福な環境で何不自由なく育ち、暮らしてきた。

二枚目で、女にももてる。

努力なんていう言葉は大嫌いだ。

大学受験の時など、ろくすっぽ勉強もせずに第一志望の有名私大に合格し、

高校の教師連中からは「奇跡だ」とまで云われた。

179 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:08:40 ID:976fb80c

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ゞ‐､i| ! | l|　　/　　　/Y }　,/ /　　ｲ｜
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身のまわりで何かの事故が起こっても、常に彼だけは無事だった。

今後のことにしても、カメラマンをめざして適当にやっていればいずれうまくいくはずだと楽観している。

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　　　　　　　　　 i: : : : 下ァ,､､-'"　　ヽ: : : : : :',: : : : : : : : ヽ,
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ギャンプルとなると、これは何でも強い。

技術やかけひきといった側面においてではなく、純粋に確率的な部分で、彼は常に圧倒的な強さを誇っていた。

勝負事で自分と互角にやり合える人間を、今のところ彼は二人しか知らない。

父親と兄である。

180 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:09:25 ID:976fb80c

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だから、さっき──。

大八木にコインの「勝負」を持ちかけた時にしても、ほんのはずみで云いだしたことではあったが、

洲藤は当然自分が勝つものだと思っていた。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |___!l_i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..'　|｜干｀ヽ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|'´千　!l |｀､',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|キ|±王|!l主 !
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　!i|ヽlil　土|i!才'
　　　　　　　　　　　　　　　 | ｜il　|　!　!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜|
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|

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コインを宙にはじいて受ける──そこで別に下手な小細工などしなくても、

負けることはまずあるまいと高をくくっていたのだ。

なのに……。

181 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:10:12 ID:976fb80c

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　　　　　　　　 . . : : : : : : : : :＼　　　＼　 `丶、
　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : ＼　　 ) ,ｲ¨７⌒／ヽ
　　　　　　／/: : : : : ://| ∧ : : : : : ﾟ｡　　У {　{∠ レ'　〉､
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　　　　〃' ｉ i : .′//　 |≫=ミ : : : : {　　トУ　　ｒ‐廴／⌒`
.　　　　　/　　| |: :|: /ィ　 / _)::ﾊi| : : 从!　　 ∨ _ｒ‐ｭノ〈｀ヽ＼
　　　　　　　　| |: :|人ﾊ　　乂:刈 : // (　　__厂___,ノ＼＞〈: : ＼
　　　　　　　人i: :|　ノ　 ::::::::: ﾘ //　人　`７´ 乂癶､_ﾉ　＼: : ＼
.　　　　　　 .'＼人　　　 /:ｲ/　　ヽ　⌒ﾞく　＼　　　　＼: : ＼
　　　　　　　　 i(　　　ト ‐ 　　　　　 _ﾉ＞‐'⌒Ｌ_　￣`　　　　＼-､:＼＿
　　　　　　　　 |( 　　人＼_　.. -┐ イく:::::::::::::::::::::::ヽ　　　　　　　　Y⌒┴‐廴__
　　　　　　　　 |:',　　　　＼: ＿_厂 _,ノ厂:::::::::::::::::::::::∧　　　　　　ト::::::::::::::∨ 〉
　　　　　　　　 |八　∠二二ィ７　厂し'::::::::::::::::::::::::::/ ∧＼　　　　 |::::::::::::::::::∨ 〉
　　　　　　八:.Уｘ‐ァ　,ｲ'/ 厂厂八::::::::::::::::::::::::| 八|＼　　　　　 /:::::::::::::::::::::∨ 〉
　　　　　　　　 { {_／ ∠ﾉ/ 厂7 /|:::::ヽ:::::::::::::::::: | |:::)!::::＞――＜＿::::::::::::::::::∨ 〉
.　二ニﾆ====ミｘ乂彡くx‐ﾍノ⌒′∧::＼＼::::::::::::::| |:( |:::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨ 〉
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　　　　　_ﾉし'⌒´ __／,イ ///////// 〉‐＜／＼:: | |:( |::::::::::::::::::::ミト::::::::::::::::::::::::::::::∨
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.　　　　　　　　/iト≠＜//////////ィ　　 |人)　　　　ﾄ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　 { {,イ⌒ｱ'//////////〉　　 ,Y 人　　　(＿＞ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　ﾉ∧(／'///////////∧ﾆ辷人辷辷辷辷辷,人_＞ミ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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満月を見上げ、誘いをかけるように髪を掻き上げた千歳の、うなじの白さが目にちらつく。

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思わずチッと舌打ちをし、洲藤はまたウイスキーを呷った。

182 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:10:59 ID:976fb80c

　　i　　　　　i　 i　　i　 i i　i "'' ヾ ,,_彡彡彡彡彡彡
　　i　　i　　 i　i i　i ii　 i |　i　　　　　ヽ,,彡,"‐､彡彡
　　i!　 i　　 i　i i　i　!i　!ii＿i__,.. -‐''"　　∨/´ヽヽ彡
　　 i　 i　　 i　i i/iノ ii ii l,.二ﾆ=-‐'´　　　ゝ'//〃　　　　　　　　(──ま、仕方ないな)
　　　i　i　　 i　i k‐､､ iﾊパ))_,,. '　　　　　　r'_,'〃
　　　ヽiヽ　iヽ.i i Y^Y 」_　　　　　　 __　　/´ヽ{
　　　　　　ヽi　　　.y'´.ﾉ　　　　　　｀ /　　　〉､
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今夜はちょっと、いつものツキがなかっただけだ。

それに、そうだ、あの千歳という女、確かにオンナとしては魅力的だが、いかにも遊びなれたOLって感じじゃないか。

だからまあ、今夜は今夜、とりあえず大八木に相手をさせてやって、ということで……。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|'´千　!l |｀､',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!|キ|±王|!l主 !　　　ｸﾙｸﾙ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　!i|ヽlil　土|i!才'
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洲藤は独り肩をすくめると、右手のコインをピンと宙にはじき上げた。

同じ手でそれを受け止め、拳に握り込む。

183 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:11:46 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　 iz=＿(:)＿,. ヽ　/／ '　　 i　　　　　　 i|　　 |　　 |
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 /ナ-＝=z.._ ｛.|　　.|　　 |
　　　　　　　　　../　　　　　　　　　　　　　 { ヽγ, 、　　 .〉　　　|　　 |　　　　　──裏。
　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 `、　`'..__ヽ／|　　　|　　　|
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　　　/　ノ　　　　　　　 ,丶ー-＿　　　　;;;;;; 　　.／　　　l　|　 |　　 |
　　 t ／l|lil|i 　　　　　　　　＼──　　　￣ `／　　／　|　./　　i|
　　i/　　　|l|||　　　　　　　　　￣￣　　　／　　　　/　 .|　　|　　 i
　 / `丶、　 ili|l|　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 /　　|　　 |　　/
　|　　　　丶、|l|ili|l　　　　　　　　　　　,ilil　　　　 ./　　 |　　 |　 |
..{　　　　／~＼Yillili|l|　　　　州il､　ilil　　　　　./　　 .|　　　.}　 i
.l　　　／　　　　＼ li| li|l|ili|l||||l|lil|i ililillil　　　　　　　　 /　　　/　/
{　／　　　　　　　ヽ,ilililli|l||||l|liilililil"　　　　　　　　 ./　　　/　/

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呟いて、拳を開いた。

コインは表を向いていた。

　　　　　　　　　　　／￣ヽ―-- ､＿
　　　　　　　　　＿　//￣｀ -―-､:::::::::::｀ﾞ - ､
　　　　　　　 //:;:;:;:Y;:;:;:;:;:ｰ---､__ヽ、:::::::::::::::::＼
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　　　　　　/::|;:;:;:;r'　　　　　 __∠＿　　ヾ、:::::＼::::::::＼
　　　　 |::::|;:;:;:l　　 l＿∠)_＿,- '｀　　　ゞ-ヽ、::::丶､i　　　　　　　　　　　　　はん。
　　　　　　|:::|;:;:ﾉ_,-┤　''' 　　　　　　　　　く .个i、:::::::｀＼
　　　　　　!:::ヾヽ f) /　　　　　　　　　　　　　ﾉノ/;＼::::::::::::＼　　　　　　　　　やれやれ。
　　　　　　ﾄ::::::::i:〉く::::....　＿　　　　　　＿／;::;:;:;＼::::::::::::::＼
　　　　　 | ヽ:::::! 　ヾ／＿ >、　　　　　 /　!;:;:;:;:;:;:;:;::;:＼::::::::::::::::＼
　　　　　　|::::::ヽ::ヽ、ヽ／　　l 　　　　i|i|/ 　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;;:ヽ:::::::::::::::::ヽ、
　　　　　 |:::::::::::::∧　 ', 　　ﾉ　　　i|i|／　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;.:;:;:丶:::::::::::::::ﾄ!
　　　　　　｜,::::::::::::∧　ヽ-‐'　　i|i|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;: |:::::::::::::|
　　　　　　 |;:;:;:,::::::::::::i|　　州　li|i|i|　　　　　 ',;:;:;:;:;:;:;:;::;:;;:;:;:;: ﾄ,:::::::::|
　　　　　 !;:;:;:;:;:;:,::::::::i|il|l|ili|l|i|i|＿＿,.┬―┐　├‐┐;:;:;:::,;:;:;:;:| |ﾉ~V
　　　　　　 l;:;:;:;:;:;:;:;:,:::::::::::li|l|ili￣　　　 l 　　ｌ　　ヽ　 ',;:;:;:;:;:|ヽﾉ
　　　　　　　＼;:;;|＼iヽW::::/　　　　　　l　　　|￣￣ i　　',_,､ﾉ
　　　　　　　　ゝ'r -ー'￣￣｀--､＿ l　　　|　　　 l__　ﾋfi＿

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また独り肩をすくめると、洲藤はつい先程の理性的な決意も忘れて、紙コップにウイスキーを注ぎ足した。

本当に、今夜はツイていないようだ。

184 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:12:33 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　,､---―‐.'､´ ￣｀'ヽ､,
　　　　　　　　,.ｨ:':.´ヽ_　ノヽ`　ヽ　　　　　＼
　　　　　　,.ｨ'´: : : : : : :ヽ　　　　ヽ　　　　　　＼
　　　　／: : : : : : : : : : : ヽ　_､lﾉ__ヽ　　　　　　　`ー-､_
.　　　 /: /: : :/: : : : : : l: : l:ヽ.ﾉlヽ　ヽ　　　　　　　　　　｀,ゝ
　　　/: /: : :.l: : : : : : :/!: :ﾘ: :.l　　　.l　　　＼　　　／
　　 ,': /: : : :i!: : : : : ://: / l!: :l! ､ l ﾉ_.l　　　　,.ｨ'ｰ､_／
　　 l:.,'!: : : :.i!: : : :／/／＿ヽ:.ヽﾌlヽ. l　　 .／: : : :∧
　　 l:l l: l: : :.l: :／　f:又:ﾘ　.ﾉ/.､ヽ　 l-‐.'´: : : : : : :∧　　　　　　　　　　　　　キスして
.　　.l! ヽ:l: : :lｨ'´　　|ﾙﾝ .イ/: /＼!　/: : : : : : : : : : : :∧
.　　 |　 `!: : :l　　　 ´　　 ./／ヽﾉ__ l: : : : : : : : : : : : : ∧
　　　　　l:ﾄ､:.l ｨ'´ヽ　　／ / フ.lヽ/: : : : : : : : : : : : : : :∧
.　　　　 l!　ヽヽヽ .i　　／　　　 /＿: : : : : : : : : : : : : : :∧
.　　　　　|　 .l ｀.ヽ｀＿,/ヽl ﾉ_. ／::::::::｀ヽ､: : : : : : : : : : : : ∧
　　　　　　　 l _ヽlﾉ_ l/ フ.lヽ　l::::::::::::::::::::::＼: : : : : : : : : : : ∧
.　　　　　　 l ノ lヽ/　　　　/::::::::::::::::::::::::::::＼: : : : : : : : : :.∧
.　　　　　　　ゝ―/　　　　 /ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::`ｰ-､_: : : : : :∧
　　　　　　　　　ゝ-―‐‐'´三ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l: : : : : :.∧
　　　　　　　　　　 |三三三三ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l: : : : : : : ∧

　　　　　　　　γ　￣　｀ヽ
　　　　　　　　,　　　　　　 l
　　　　　　　　|　三　　三 |
　　　　　　　　|　　　　　|l| !
　　　　　　　　| |　　　　　｜
　　　　　　　　| U r　- 、 ,
　　　　　　　　|　　｀ - '　 !
　　　　　　　　ゝ、＿＿ノ
　　　　　　 /￣ﾌ　γ -┐
　　　　　　入_／ト-┴,,,く|
　　　　 /　　 /::::| |:::::|　,

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いきなり云われた。

大八木はかなりうろたえて、隣に坐っている千歳を見た。

彼女は大八木の方ではなく、空を見上げていた。

185 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:13:20 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　　　 "'' … - =- - … ' "´

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視線を追うと、そこには黄色く丸い月の輝きがあった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. ィ´　,ﾊ iヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／.イ`ヽ/:.| iﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　,.　-=ﾆﾉ: : : : : :.人i'j´　　　　　　　　　ね、キスして。
　　　　　　　　　　　　　　〃　_,ィ´: : : : : : / ` ､ヽ
　　　　　　　　　　　　　_, -‐'´: : :./: : : : / ./: : ﾍ.',
　　　　　　　　　　,.ィ: ´: : : : : : :ノ: : : : 7イ,': : : ハ!
　　　　　　　　〃: : : : : : : : ／: : : : : 7::::::i: : : : : :.〉
　　　　　　 !: : : : : : , イ: : : : : : : :7::::::八: : : : /､
　　　　　　〈~:.ヽ､: : :/: : : : : : : : : :ノj::::::::: :ヽ､: :ハ,〉
　　　　　〃`ヽ､i､ノ｀ヽ､: : :. _,ﾆ彡'´ : : : : : : 7: : : i>!
　　　　 )ﾉヽ:ノ　{､: : -､: ヽ: : : : : : : : : : : :.i: : : : :/
　　　　　 '´　　　f_: ､: : :): ¨´: : : : : : : : : : :.八: : :./_,
　　　　　　　　ヾ=彳: : ヾー､_,､: : : : : : : : : : : ヽ;/ﾊ
　　　　　　,イ´: : : : : : : : : : : : : ｀`ヽ､: : : : : : : : : : i
　　　　,.../: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀`ヽ､: : : : :ハ
　　　　∨::::::::::::::≧-､_: : : : : : : : : : : : : : : : ｀`ヽ､: :.ﾊ
　　　　　ヽ;:::::::::::::::::::::::::::｀`ヽ､: : : : : : : : : : : : : : : `ヽi.,_
　　　　　　ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::｀`ヽ､: : : : : : : : : : : : : :f

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月光にうっとりと目を細めたまま、千歳は繰り返した。

186 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:14:07 ID:976fb80c

　　　　　　／￣￣＼
　　　　　「　　へ　　＼
　　　　（○）（○ ）　　　|
　　　　　　|　 |　　　　u　 .|
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　　　　　　｛`ー '´　　　　/
　　　　　　　lヽ、　　,ｨ'.) ./
　　　　　　　j　.}ﾝ／／　ヽ
　　　　　　ﾉ　'"´ ￣〉　　|
　　　　　.{　　　　勹..　｜
　　　　　ヽ　､＿_,,ﾉ　.　|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿___
　　　　　　　　　　　　　,､-‐''´/　※　／｀`ヽ､
　　　　　　　　　　　／　　／　　／::.::.::.::.::.::`､
　　　　　　　　　／　　　l　※　f::.:|::.::,::.::.|､::.::.:',
　　　　　　　　　　ゝ‐-､　 .|　　　|:.::.|::.:|::.:::.l V::.::l
　　　　　　　　　/::.::.::.:`､　| ※ .|::.::|::/|/!/ -ﾍ::|!
　　　　　　　　　/::.::.|::.::.::.`'ﾄ､.　 |::γﾇ､ /　,__ |!
　　　　　　　　/::.::.::|::.::.::.::.::ゝ､ .ﾍ:弋ﾘﾉ　　　 j
.　　　　　　　 /::.::.:.:/!::.::..|::.::.::.`ｰ､ヽ｀´　　。/
　　　　　　　/::.::.:.//|::.i::.::|:.::.::.::.:ﾊ.｀ヽ`ｰ-- '
.　　　　　　/::.::.:く_　|::.:|::.::|::.::.::.::.::.l/､-'´ｰ､
　　　　　 /::.::.::.::.:::`ｨ::::|::.::.|::.::.::.::.::.l................|
.　　　　 /::.::.:.::.::.／||::.::|::.::.l!::.::.::.::.::.',.............|
　　　／::.::.::.::／三!|!::.::.|::.::ﾍ::.::|::.::.::ﾍ...........|
　／::.::.::.／三三三!::.::.:.::.::.::.:∧::.::.:∧........|
／::.::;,ｨ'´.......三三三!::.::.::.::.::.::.::.::＼::.::.:`､....|
::.::r'´...............｀￣￣´|::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.`,ﾘ
:.:: {.....................................|::.:.＼::.::.::.::.::.::.::.::.:.::.: ﾘ
:::|...................i..................ゝ､::.::.＼::.::.::.::.::.::.::.::.l
:::ﾄ,................ﾘ...................... ﾄ､::.::.::.＼::.::.::.::.::.::|`ｰ､
::.::.}...............`........................|:::.::＼::.::.`::.::.::.::. ｲ´::.:ヽ
::.:: ﾘ.........................................|::.::.::.::.＼::.::.::.::.::`ｰ､:ヽ:`､
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._.....,........................`.............|::.::.::.`::.::.ｰ -､:￣::.::.´::ｲ::.::.ヽ
￣`ゝ､_ｨ -､..........._____......V::.::.::.:::.::..::.::.￣::.::.::.::.:|::.::.::.:l
.........｀`'"´｀ゝ="￣￣`ﾄ､_ゝ::.::.＼::.::.::.::.::.::.::/::|!::.::.:.::l!
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何と言葉を返したものか大八木が戸惑っていると、

彼女はふと、ぞくりとするほど婀娜っぽい笑みをふっくらとした唇に浮かべ、彼の方を振り返った。

夜気に混じり、甘いコロンの香りが鼻をくすぐる。

187 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:14:54 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　,,ﾉ"' .,　　　　　　｀'-、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,..　-‐''"゛　　　　　　　　　　嫌？
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　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　、 ,..,,,,_　　　　　　｀ﾞ'''ｰー-､
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と云って、彼女は大八木の太い左腕に手を絡ませた。

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　　　　　　　　　　＼______{__ｉ___/＿／ : ／: : : : : : /: : :.:/ : : : //　　 '.: :|: : : : : :|　〈
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　　　　　　　　　　　〉　|: :l／／: :イ圷万ミぇ　 /:.／　　,ｨｆ竓万ミ|: : : : : | |　〈　　　　　　　　　　　　抱きたくない？
　　　　　　　　　　　　 {　 :レ／ : : : : 从 _):::::i |　　／　　　　　_):::::i |丿: /.: :/|/ 　:}
　　　　　　　　　　　　 ∧ノｨ: |ｉ: : : : : : |　乂zン　　　　　　　　乂ｚン / /.: :/　　 ∧　　　　　　　　　あたしのこと。
　　　　　　　　　　　 / : 〉｜八: : : : :八　　　　　　，　　　　　 / ｲ : /　　　｜:‘，
　　　　　　　　 /: : (　 / 　＼: : : : :＼　　　　　　　　　　　　　　 /: :/　　　ﾉ.: : ‘，
　　　　　　　　　　 /: : : :〉　　　〈 : ＼: : ｀ﾄﾐ　　　　　<　 >　　　　／l :/:〉　　 (: : : : : ‘，
　　　　　　　　／: : : :/　　　 } : : : ＼ ( : ＞._　　　　　　　　 _イ: : :|/.:{　　　　}: : : : : : :＼
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　　　　／: : : : : : : : : : {　　 /:::::::::_］ ‘,　く　／￣￣｀Y´二二＼　　|　 { 　　〈＼ : : : : : : : : : : : ＼
　　／ : : : : : : : : : : : ﾉ　　::::::::::::(　　ｉ　｣　|/|￣￣＞／＼ﾍ　l/|　 _〉　}　　　 }、＼ : : : : : : : : : : : ＼
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188 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:15:41 ID:976fb80c

　　　　　　　　 ‐…‐　ミ
　　　　　Σ 〃　　　　　　ヾ
　　　　　　　l　__,、､__,ノ　 |
　　　　　　　l　Ｏ |　　◯ 　 |
　　　　　　　|　　j　　　　　 |
　　　　　　　|　　＿__　　 u
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　　　　　　｣　xく⌒^　　　＼
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　　　　　　　 |　｝　　　 |　　　　　　 `、

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大八木は更に戸惑った。

　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　．- ‐ ﾆ､＿,ﾆ＝､　｀丶
　　　　　　　　 ∠才'´　　　　　　　ヽ、　＼
　　　　　　　／´　　　※　　　　※　　￣ヽ＼
　　　　　／　※ ,r‐x＿ノ⌒ヽ、　　　　　　ﾍ∧
　　　　　ﾑ才｀￣: : : : : : : : : : :ゝ､＿　 ※ 　 Yﾍ
　　, -‐ 7: : : : : : : :./ : : : : : : : : : : : :｀Y　　　　l!　＼
.　￣´/: : : : : :.ﾉ: /: i!: : :ヽ: : :ヽ: : : ﾊ |　 ※　 l!.　　＼
　　　 ,': : : : :／／: :/|: : : ハ: : : ヽ: : :ﾍゝ、　　 l!　　 /
　　　ﾊ: : :／イ:.-－:.:|: : /ｲﾅ ‐ -: ゝ: : ﾍ: ） ※　l!　 /
　　　!: :.:."|: :/: x≠ﾐ ! l/: /孑テミx:|＼: ﾍl 　　 l!. /
　　　|:. :. :.ｉ: | く l ftｧ}|/　´　ﾏ:.rfｱﾘ| : :＼{　※　l!ｲ
　　入: : :.|: ｌ: ﾍゝ-"　　　　 `＝´/: : :入.　　　l!:|
　　　ヽ、!: ゝ':ﾊ ""　′　　 """/: :／: :l!　※　l!:.l
　　　　　　}: :l!: ｌﾉヽ　　ｰ '　　／イ´: : : :l!　　　l!:.:|
　　　　　ﾉ／}/　/: ｀＞　ィ ´ 　.ﾑ : : : :.l!　※　l!:.:.l
　　　　／ ※ , イ: ｉ : ≦ｰ- -‐・'´人 : : : l!　　　l!:.:ﾊ
　　／　　／ ./ : ｌ才冫、　　　　 `ー-l!　※　l!ス:ﾍ
　／ ※ ／_rt/¨￣ r ,=个､ヽ　　　　　　 l!　　　l!:.:.:＼
./　　　/／コ　　〃　/ﾊﾏヽ,〉　　　　　 l!　※　l!:.:.:.:ハ

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千歳はくすっと笑って、

189 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:16:28 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　｀　　,,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ _＞―宀冖宀=ミ　　`丶、
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　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ／　 _ノ´￣￣￣￣`: .、　ヽ／
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　　　　　　　　　　　　　　∠,,＿ﾉ〃:/: : : : : :.:l : :∧: {:＿ : :l:ヽ, ｉ
　　　　　　　　　　　　　　　　 { ｉ : l: : : /: : : |: /　イ:＼、:| : ｉ |
　　　　　　　　　　　　　　　　 { | : l: : /⌒／|/　　,ｨf亦Y＼:.:| |
　　　　　　　　　　　　　　　 /八: l: /: |示㍉　　　乂_ﾉ　|: :.|| |　　　　　　　　　　　　あたし、別にいいわよ。
　　　　　　　　　　　　 /※∧l∧: l､乂_〉　 , 　　　ﾉ| ｲﾘ｜
　　　　　　　　　　　　　　 /　 /: : : :∧l込、　　_ ノ　.ｨ': : : |※|
　　　　　　　　　　　 /　 /: : : :ｒ┬┬=:≧=ｒ‐= ´ l〉'ｰ=|　 |、
　　　　　　　　　　　　　 /※/￣￣ )_| _{ ／￣¨＞ｒくl　　　:|　 |マl
　　　　　　　　　, :/　 /:::::::::::::::)_| _{ ＼,／/}.八{ ＼　 :|※|｛::ヽ
　　　　　　　　　　／::/　 /:::::::::::::::: )_| _{　　 // j | l＼ﾉ　！　|_{::::::::、
.　　　　　　　く:::::/※/::::::::::::::::::: }_| _{: 　 / { //{_| {　　！　|_{:::::::::＼
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　__' : : : : {:::::::::::＼,ﾉ :::::::::: |∨　　　〉/////|_,,＞＜,__|//∧＼::::__ヽ_〉＼: : : : : :¨Ｔ:ヽ、: :',＿＿_
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: : : : :￣: : ∧:::::::::::::::::::::::::/: 八＿___/:::::＼////::::∨／:::::: ＼|ト-ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:⌒ヽ､:＿:｢＼
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頭一つほども高い位置にある彼の顔へ、すいと目を流す。

　　　　　　　　　　　 ´￣￣｀　､
　　　　　　　／　　　　　　　　　　＼
　　　　　／　　　　　　　　　　　　　＼
.　　　 Y　　　　　　　　　　　　　　U 　丶
　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ
　　　　|　　　　　　　　　＿　　　ｨ:::7;,ハ
　　　　|　　　　 |　　　　／　 ,＿、　　｀=彡　 |　　　　　　　　　　　　　　い、いいって？
　　　　|　　　　　ij.　　　　ィ::::厂;;　　＼　　│
　　　　|　　　　　　　 ^===彡　　　＼｜
　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　l
　　　　　＼　　　　　　　　 |　　　　　　　　　 |
　　　　　　＼　　　　　　　 U　　　　　　　　 |
　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　 ,_-、 |
　　　　　　　　＼　　　　　　　　 /こ´　!
　　　　　　　　　 |　　　＼　　　　　　丿
　　　　　　　　／|　　　　｀ニ＝=‐┬=≦ ＿＿
　　　　　　　　 |　＼　　　　＼:::::::::::::::::|　　　　 ∧
　　　　　　　　 |　　｀　　ー-=ﾆ二::＿::::| 　　　//∧
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　｀ヽ　 ////∧

190 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:17:15 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　_, - ＜￣｀'ー- ､
　　　　　　　　　　 _ -'≦￣｀'´｀'´｀'´ヽ　　￣｀'ー- ､
.　　　　　　　 γ　i/　＿/　　　　　　/｀ - ､　　　　＞- ､
.　　　　　　ノ　ﾌイ￣:.:.:.:.:.｀:.ヽ､　　＞ i ∠ヾ::...　....::::::::::/
.　　　　　 /'´／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼フ.i 匕　 }:::::::::::::::::/
.　　　　　./／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.＼　　　　廴::::::::::/
　　　　 //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.ヾ:.:.:＼:＼:.:.:}:.:.:.V　　　∧::::::∧
　　　 ∧i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:.:ﾊ:.:}ヽ:.:.:.＼.V:.:.:.:.:.:.V　　　　Y´:.:.ﾊ
.　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ :.:.:|:.:iⅣi　＼>:.:ゝﾐ:.:.:.:.:.:.V　　　 }:.:.:.:.:.:}
.　　　{:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:ﾊ:.:∧レ'´V＿ヾ｀＝-:.:.:.i　　　<:.:.:.:.:.:ﾊ
.　　　 |:.:.:.:.:.:.::i:.:.:.:i:.:i l:.:|´i/ ,行芯ゞ }:.:.＼:.:.:.|　　　 }:.:.:.:.:.:.:.i
...　　　|:.:.:.ヽ:.:.:V:.:.ﾊ:.:ﾚ'　.i　　辷:ｿ　ﾚ.:.:.:.:.:∧> i <ﾉ:.:.:.:.:.:.:.ヽ　　　　　　　　　　　　　──抱いて
　　　ト:.:.:.::＼:.:ヾ+-ヽ　　　　 '｀'´　ﾉｲ:.:i:.:/　{ ∧ ｲ:.:.:.:.:.:.:.:..ト
　　　　iハ:.:.:.:.:.:ヽ:＼r=ｧ　　　　　　／/ l:/　/　　{::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ミ＼
.　　　ヽ＼:.:＼:.:＼弋' 　､　　　　　 /／　　　　人:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ }
　　　　　ト､:.:ヾ:.:.:≦ﾄ､　　- ´　　 {　　　　ノ:.＼:＼.:.:.:.:.:.:＼:.:.ヽ
.　　　　　 //　ヾ､_ーヾ:.＞- - -＜/　　　T/:.:.:.:.:.ヾ:.:.￣ヾ:.:.:..::.:.:.:}
.　　　　 i l　　 }:.:.:.:>　 }:.:.:.:.:／　　　／ //∧:.:.:.:.:.＼:.:.:.:.＼:.:.:.:.i
.　　　　 i/ .　 /:.:./　　/:.::／　　イフ::::::://::::::::V:.:.:.:.:.::}:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:ヽ
.　　　　 i　　/:.:.:::}　　{.／　イ'´ //::::::::::{ {::::::::::::＼:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼:.:＼

　　　／￣￣＼
　　／　u ─' 　＼
　　|　　（ ◯）（◯）　　　　　　　　　　　　　　今？
　　|　　　　　｜　|
　　|　Ｕ　　 __´___ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　ここでか。
　　|　　　　　　　´}
　　ヽ　　　　　　 }
　　　ヽ　　　u　ノ　　　ｺﾞｸﾘ…
　　　　/　　　く
　　　　|　　　　 |

191 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:18:02 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　__,,､---‐‐‐‐---､,,__
　　　　　　　　　　　　　 _,､-‐"´　_ヾ!!ﾉ_　　　__ヾ!!ﾉ_``､ｰ-､,
　　　　　　　　　　　 ,､ｨ"-‐"´｀゛ー----､､,__　ﾉ liヽ　　｀ヽ　`ヽ､
　　　　　　　　　,､ｨ"::.::.::.::.::.::.::.::＼::.::.::.::.::.::.＼｀`､_　　.ヾ!!ﾉ_`､　　 `､
　　　　　　　 ,ｨ"::.:/::.::.::.::.::.::.::i::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼::.:｀`､_ﾉ liヽ　`､　　ヽ,
　　　　　　／::.::.:/::.::.::.::.::.::|::.:.|::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.::.: ﾍ::.::.::.::.:｀`ヽ,　　`､　　＼
　　　　　 /::.::.::. /::.::.::.::.::.::.:|::.::.|::.:i::.:|::.:V::.::.::.::.::.::.::.:l::.::.::.::.::.::.::`､　ヽ,　　　＼
　　　　 /::.::.::.::7::.::.::.::.::.::.:l::.::.:.|::.:|::.|`､:::V､::.::.::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:`, 　　l　　　　＼
.　　　 /::.::.::.::./::.::.::.::.:::.::/::.::./|::./::.| .__＼`ヽ､::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.::.l .* |　 |　　　 ∧,
.　　　7::.::.::.::.:l:::.::.::.::.::.:./::.::/　|:/|:/￣　￣＼｀`ｰ-|::.::.::.::.::.::.::.::.:|.　 |　 |! ________､ゝ,
　　　l::.::/::.::.:l::.::.::.::.::.:/::.::/　 /　l/　ｨｮｴ又ﾊ'ｱ　　7::./::.::.::.::.::.::.::|　　| /::.::.::|　　／
.　　 |::./::.::.::.:|::.::.::.::／／　／　 /　　ﾔ::ひ:::::ﾘ　　/:/::.::.::.::.::.::.::.:.|　　|/::.::.::.::|／　　　　　　　　　　だめ？
　　　|:| |::.::.::.::l::.／／ｨｪ､,　　／　　　弋Z:ﾂﾉ　　///::.::.::.::./::.::./　　 |::.::.::.::.::|
.　　　|! |::l.::.::.:ﾍ"´〃::ひ||　　　　　　　￣　　／ /::.::.::.::/.::.::./.ヾ!!ﾉ_|::.::.::.::.::|
　　　 |　l::|::.::.::.:.ヽヾ弋Zﾘ　　　　　　　　　　／　./::.:.::.:./:::.:／　ﾉ liヽ|:::.::.::.::.::.|
　　　　 ∧:V::.::.:.::.ヽ.　｀´　ヽ,　　　　　　　　　 /:::.:.／/／|　　　　 |::.::.:::.:.::.::|
　　　　　|∧:∨:､_:::.::.:＞､_　　　r-､　　　　　 /::／　／　 |　_ヾ!!ﾉ_ |::.::.|::.::.::.::|
.　　　　　|　.＼　　￣￣￣　　　`ｰ´　　　　／　　　　　,ﾝ|　ﾉ liヽﾉ:::.::.|::.::.::.::.|
.　　　　　 |　_ヾ!!ﾉ_　　`.､　　　　　　　　　　　　　　／￣::.:|.　　　　|::.::.::.|::.::.::.::.|
　　　　　　|　ﾉ liヽ　　|::.::.:＞､　　　　　　　　　　　|::.::.::.::.::.| _ヾ!!ﾉ_.|:.::.::.|::.::.::.::.:|
　　　　　　ﾄ､.　　　　 |::.::.::.::.::.`＞- ､.,-‐"´　　　.|::.::.::.::.::.|　ﾉ liヽ |.::.::.:|::.::.::.::.:|
　　　　 |::.:`､　_ヾ!!ﾉ_.|::.::.::.::.::.::.:.::/｀`ｰ-､,,______,,|z:.::.::.::.::.|. 　　　|::.::.:::|:.::.::.::.:.|
　　　　　 |::.::.::.`､ﾉ liヽ `､　_,,､､ｨ"´　　　ｨｪ===又＝=ｪｭ､,::| _ヾ!!ﾉ_.|:.::.:::|::.::.::.::.::|
　　　　　|::.::.::.::.::.:fヽ､__,-‐-､　　　　 ,,ｪ="　　 .,ｲj ﾄj､　　　ゞ| ﾉ liヽ .|:.:::.::|::.::.::.::.:.|
.　　　　 |::.::.::.::.::.:i´"ﾄ-‐ｲ`､｀`ヽ､　《　　　　〃||X||ヾ､　〃|　　　 |:.::.::.|::.::.::.::.::.|
　　　　∧::.::.::.::.:.〉..............`ｰ-`､　ヽ .ヾ､,__ .､〃 ||.X.||　ゞ="　|._ヾ!!ﾉ_.|､:::::|::.::.::.::.::..|
　　　.∧::.::.::.::.::.|..........................ﾄ-､､　ヽ　￣　　 ||.X.||　　　　 | .ﾉ liヽ |..ﾍ::|:::.::.::.::.:::.|

　　　／￣￣＼
　　／　　｢　　＼
　　|　　（ ○）（○）
　　|　　　　　｜　|　　　　　　　　　あ、いやぁ──
　　|　////　__´___ﾉ
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　　ヽ　　　　　　 }
　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　/　　　く
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右手で胸ポケットの煙草を探ろうとして、やめた。

192 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:18:49 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　￣￣　､
　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　＼
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　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　 l　　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　 |　　　　　　　　ﾉ　_　ヽ　　　　　丶
　　　　ヽ＼　　　　ー"ｉ　ｲ::::ヽ l　　　　　　　丶　　　　　　　　　　　　　　あんまり急に云いだすから
　　　　　ヽゞ.._,,_　ヽゝ_ゞ::ノ '　　　　　　 ',
　　　　　　　丶ｉｲ:::ヽ　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　ゝゞ '　　＼　　　　　　　　　　　　＼‐､-..､
　　　　　　　　ヽ　　　　＼_　　　　　　　　　　　ソ:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　／　）　　　　 '　　　 /:.:.:.:.:.:／＼
　　　　　　　　　　　＼　　　ヽ＿ .　　　　　 /　　／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.ヽ､
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　/　／:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　／　 /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　ヽ　_＿　ィ　　　/:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:

　　　　　　　　　　　　　　　　　　／-――-､_ 　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　／ ,r-‐‐-､_.　　＼　 l
　　　　　　　　　　　　　　／／: :ヽ: : : : :＼　　ヽlヽ
　　　　　　　　　　　　　　/ ／: : : : : ヽ: : :ヽ: :＼　ヽ:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /'´: : : : : : : : : ﾄ､ﾍ:ヽ: :ヽ　ヽ:∧　　　　　　　ちゃんと一から手順を踏まないと、気が済まないタイプ？
　　　　　　　　　　　　　,': : : : : i:: : : :: :l:l ヽ:ヽヽ: :ﾍ　 ∨ﾍ
　　　　　　　　　　　　 i: : : : : :.l: l: : : :ll:l,､-ヽ!ヽ!､:.l.　　',: :ﾍ　　　　大八木さんって。
　　　　　　　　　　 /!: : : : :l:ﾍ:ﾍ:l:: :.l l　_,､ｪｪｭ l:.l　　 l: : l:＼
　　　　　　　　　　　 / .l: : : : : l: :lﾍ!ヽ//　´ ﾔツ l: l　　/: : l: : :＼
　　　　　　　　　　／　 l:l: : : :l: ヽ! ｨｭ､　　　 ´〃.l:/ .／: : : l: : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　l`､:ヽ:ヽ: ヽヽゞ'　,　 ,　 .,ｨ'`´ヽゝ､: :.l: : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　／: :ヽ!ヽ!＼:＼ヽ､＿´　/::::::::::::`j ﾘヽ:l: : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　／: : : : : `: `: : : :/`ｰ-､￣/:::::::::::::::::ゝj. ヽ: : : : : : : : : :.＼
　　　　　　　／: : ,.ィ'`ヽ､: : : : :./'´￣￣ /::::::::::::::::::/（ )　 ',: : : : : : : : : : :
　　＿,. -―:':´: : ／::::::::::::::::ヽ￣´　＿_　 /:::::::::::::::::::/:::〈 `i.　',: : : : : : : : : : :
´￣: : :r‐､__: : :／:::::::::::::::::::;ｨﾅゝ／| 　／::::::::::::::::::::l:::::::〔 .ﾉ　 l: : : : : : : : : : :
: : : :／:::::::::《ﾐ!､:ｨ=＝=＝彡:::::::|.-‐'l ／::::::::::::::::::::::::::l::::::::ゝゝ､ l: : : : : : : : : :
: ／:::::::::::::::::〉ﾘ::`ｰ､_::::::::::::::::::::::l/:: 〈´::::ヽ::::::::::::::::::::::::l::::::::::`ｰ､_`〉: : : : : : : : :
´:::::::::::::::::::::)ﾘ ':::::::::::ゞ!:＝＝＝/:::::::∨::::::＼:::::::::::::::::::l::::::::::::::::::l´: : : : : : : : : :
:::::::::::::::::::::《ﾐ!:::::::::::::::ゞ!,:::::::::_/ｨｱ=､_∨::::::::::`ｰ --:::::::l::::::::::::::::::l: : :l: : : : : : : :
::::::::::::::::::::ﾉﾘ::::::::::::::l::::::ゞ､_ｨﾁ"::::::::::::::l∨:::::::::::=―'´::l:::::::::::::::::,': : :.l: : : : : : : :
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.《ﾐ!::::::::ゞﾐ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉 /`'´:＿: : : : : : :＼: : : : :
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193 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:19:36 ID:976fb80c

　　　　　　　． ¨￣￣￣¨　、
　　　　　 , '　　　　　　　　　ヽ
. 　　　　/　　　　　　　　 ',
　　　　 i　　　　　　　　　、_　　!　　　　　　　　　　　　そういうわけじゃないが。
　　　　 | 　 -‐　￣´　　　　｀ヽ !
　　　　　│ 　 -tテ`　　　 tテ-　!　　　　　　　　　　　　俺のこと何も知らないだろ。
　　　　　 !　　　　　　 |、　　 |
.　　　　　',　　　　　 i! 〉　　　!　　　　　　　　　今日会ったばかりなんだぜ。
　　　　　　_.!　　　　　 ′ 　 ,'
. 　　　 r j　! '．　　と　つ　　/
. 　　　 _j　　 '. ＼　　==　　, ′
　　　 f'　　　 '.　　　、___ ／!
　　〈:　　　　　| ＼　　　　 / ＼_
　 -=∧:.　　　　|　/ヽ_　　　{ 　 /｀v
:.　　　∧　　　 |./、| 　|　 { |　/<　ト
. 　　　〈　　　　|:::::＼　|　　 /　/ .|　＼
　　　　/　　　 .l＼::: ∨'.　 ,/／l＼|　　　`　　、
　　　,/　　　　ﾑヽ.＼:∨'./´}:::: !
　｀＞- 、　_/　ヽ. 　ヽ∨__j::::/
　　　＼／∨ ┬l 　　 Ⅵ:::::: 〉
.　　　／. 　 |　∧ ',　　　|::::::_/　 _
　　 /. 　　￤ｲ_／　　', ﾊ::::〈　　|　￣　　=-
　ヽ′＼　　　|. 　　　∨:::::::'.　 |

　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼｀ヽ、
.　　　　　　　 _／　　＿　 --‐┬‐-ミ　_　＼　＼
　　　　　　　／/_,.．: :/: : : : : : : :.:.|: : : : : : : ＼＼　＼
.　　　　　　 /　/ : : : / : : : : : : : : : |: : : : : : : i : ＼ ‘,　ヽ
　　　　　　｛　/ : : : /: : : : : : : : :/: :|: : : : : : : |: : : :＼'　 /
　　　　　 У: : : : :|: : : : : : /: /: :八 : : : : : : |: : : : : :i∨
　　　　　 .: : : : : :| ／／メ: ｲ: /　‐＼|＼: : |: : : : : :| |
　　　　　　 |: : : :-=彡　／´　 |/　　　　　　＼|: : : : : :| |
　　　　　　 |: : : : : 八灯ТТ　　　下Т灯/: : : : :/ ｛!　　　　　　　　　恋人ごっこの気分じゃないの。
　　　　　　人: :＼: : :ヽ乂ｚｿ　　　乂ｚｿ /: : : ／　八
　　　　 /　　Ｔ|| |`トゝ　　　　　　　　　_彡: イ|　　ﾉ: :′　　　　　単に、今あなたが欲しいだけ。
.　　　 /　　／｢|| |　＼　　　　 ’　　　　　/　　V　　 |: : :′
　　　 /　　/: 八|　　　　￣＼￣　＿　イ　　ｒ{　　 ∧: : ′
.　　 /　　 ,|:::::::: {＞-　 ,_　　　ﾏ´　　　　　　ﾉ′　 |:::|: : :′
　　 /　　 l:|:::::::::::＼ .ｒ―‐|　　 |ﾌトミ､　／::|　　 |:::| : : ′
.　　{　　　｛:|:::::::::::::::::｝＼⌒Y⌒　ｲ､＼＼:::::::{　　　{:::|: : : ′
　　ﾉ　　 }:|:::::::::::::::::|//￣￣￣｢＼＼ﾉ /::::::::}　　 ∨: : : :′
.　/　　　ﾉ:.|:::::::::::::::::|/　　　　　|　ノ＼_/:::::::::{　　　｛: : : : :′
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吐息を落とすように、千歳は云った。

194 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:20:23 ID:976fb80c

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:.:.,:’　 .j{:.:.:／　　　　　　　 |:.:/ ]｢:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:. ／　　　　　　Λ:.: {　Λ:.:.:.:.:.:.j{ 　　.V.:.:.:.:.:.:.
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　　　　xz=＝ﾆ竺竺竺竺ミzx_　　}｢:.:.:.:.:.:.:.／　　　ﾚ'　　　　　　　　　　 ,xz=＝ﾆ竺竺竺ミzx,,._ V.:.:
　　,ア"~￣　,xf:.:.:.:.jI=ミ_:.:｀`､"ミx, V:.:.:.:,ｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　,ア"~,f:.:.:.:.:jI=ミ_:.:｀`､￣~^≧x:.:.:
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こちらを見る彼女と視線が合った。

蒼い闇の中、月の雫に濡れたその眼差しは、大八木の心を全て見透かすかのように妖しく光った。

　　　　　　 ,　-‐‐- 、
　　　　　　 / 、__　　　ヽ
　　　　　 ./　＿　　　　 Y
　　　　　 l７　　　　　　 l　　　　　　　　　　　　そんな、誰とでもすぐ寝るのか
　　　　 lヽ＿　　　u.　,'
　　　　　ﾊ´= 　｀　　　/
　　　　 |　　　　 _|　 l、
　　　　　 .ヽ-ィ''"´./　 .〉ヽ.._
　　　　　　 _,,-|　 /　 ./:::::::ヽ｀ヽ、
　　　　_,,-''／/ヽ　 ./::::::::::::::ヽ、ヽ
　　　 /:::::>::/、_,,..-'/<´｀"''‐-,,_ヽ::::＼
　 ,、/::::::|::/　　　 ./／:::::::::::::::::::::::::::::::|
　.ヽヽ、::|/_,,..-／￣:r''"ヽy::::::::::::::::::::::|
　|三_,,-''":::／::::::::::/　　／:::::::::::::::::::::/

195 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:21:10 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　／　＿＿＿＿ `丶、
　　　　　　　　　　／　／　＞'´　＼ｰミ__＼
　　　　　　　　　　　 /　 _」　／: : : : : :|: : ',: :＼ヽ＼
　　　　　　　　 /　 /　 / : : /: : : :.|: : :l : : : ＼　〉
　　　　　　　　　　 / 　｝　/ : : /: :／｜ : l＼: : : : 〈
　　　　　　　　　　　 ∨　:′／／ : : /| : l:|￣＼: : :‘，
　　　　　　　 | 　__{＿l彡: : :／／厶ｲﾉｨi灯7: : :l |　　　　　　　　　　嫌な云い方、しないで。
　　　　　　　 |　 __l｀¨Ｔﾆ／ィｘf圷　　乂ｿ |: : :ﾊ|
　　　　　　　　￣八　 ∨: :八Vｒﾘ　　、　厶 ∧　　　　　　　　　　　でも──そう、ただね。
　　　　　　　　　　　 /: : 〉　 ∨: : :＼＿　　 ,　,.ィ: / 　',:、
　　　　　　　　 /: : 人_ 　 }_＼＼＞‐┬ /_ヽY:{　　}: ＼
　　　　　　　／: : : : :八　　 } /￣ｰ‐ｖ|l {ニ｀∧＼　＼__＼
.　　　　　　／ : : : : : /: : ＼　ヽ,　　／介/　∧:∨: ￣＼￣￣＼＿
　　　　　　／ : : : : : : : : : : :_八　　ヽ　l| :||(人ｒ'∧ヽ∨: : : : ＼＿__　　　＼
　　　　／: : : : : : : : : : : : : :Y＾ヾ、　Ⅵl_ﾉ|〉}⌒　 ', }::＼: : : : : : : : :＼＿__/
. 　　 /: : : : : : : : : : : : : : : :.l:::::〈∧　＼:||八　　　＼::::}: : : : : : : : : :＼ :ヽ
　　 / : : : : : : : : : : : : : : : :/::::::::::)ﾊ　　 V 〉＼　　ヽV: : : : : : : : : : : ＼}
.　　 |: : : : : : : : : : : : : : : :./:::::::::::::)八　　 } ヽ八　　　　}:V: : : : : : : : : : : : :ヽ
. 　　|: : : : : : : : : : : : : : :./:::::::::::::人_ﾊヽ　＼( ｛　ト　__∧:∨: : : : : : : : : : : : :|
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　　八: : : : : : : : : : : : : :∧::::::::::::::::::::〉_圦　　　Vﾊ|::::::::::::::::|: : : : : : : : : : ＼ : |
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と、千歳はまた空を見上げ、

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　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　 |　丸くて大きな月　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
　　 |　あんな月が出てるとね、たまらなくなるんだ、あたし　│
　　　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／

196 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:21:57 ID:976fb80c

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　　／￣￣ : : ､- 、
　　)): : : : : : : : :＼}
　(´: : : : : : : : : : : :＼
／ : : : : : : : : : : : : : : ヽ
〉: / : : : : : : : : : } : : : : : :
: /|: : : : : ム: :.:.∧: : : : ｉ:ｌ
/: |: : : ／:/: : :/　`、: :.:|八
: : | ／.: :/: : :∧　　'.: : :ト. ＿_　　　　　　　　何だか、自分が自分じゃなくなっちゃうみたいな……。
: :イ: : : ｲ : 抖筏=　 i: : !　　　 }
: : |i／　≪ 乂ｨ少　 |: /　　　 ′　　　　　　　変でしょ。
: : |i　　　　^¨´ 　　|/　　　　〉
: 八＼　　　::::::::::::　　　　　　〈　　　　　　　　　狼男じゃあるまいし。
: : : :＼`ｰ―─=　　　　　＜ﾉ　)
_: : : : : ￣￣￣／　　　　　 {
. ＼＿＿＿:／　　　　　　〉
　　(　　　＿＿　　　　_,.．　 ´
　　　￣´　　　ヽ_ ￣｢
　　　　　|| 　　　￣＼
　　==　　　　==　　　　 )

　　　　　　　　 , 　　￣￣　　　、
　　　　　　／　　　　　　　＼
　　　　　　/ __　　　　 ,　　　　　　　ヽ
　　　　 / /　　　　／ _｀ヽ　　　　　ｌ
.　　　 / 'ﾓﾃ'! 　　￣じ'｀ヾ　　　　/
　　　 /　ｰノ　　　ヽ､＿,ノ　　　　/　　　　　　　　　月は人を狂わせるとかいうな。
.　　　　　 < 　　　　　　　　　　　/
　　　,′　　｀　　　　　　　　 /
　　 !　　ｒ－-　、　　　　　　　 /
.　　　',　　￣￣￣　　　　　　　/
.　　　ヽ　　　　　　　　／ ./
　　　　　＼_ _ _ _ _ ,. 　　　　 {
　　　　　 / 　　　　　　　　ヽ

197 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:22:44 ID:976fb80c

　　　　　 l　　　　 /: : :/: : : l: : : : : :l: : : :.:ヽ
　　　　　 l　 ※.　/: : :/: : : :/: : : : :/!l: :.l: : l:',
　　　　　 l　　　 /: : : l: : : :/: : : :／//!:l:l: : l!:l
.　　　　 l　　　i: : : :.:l: :／:￣／｀十‐!:/: :/.l!
｀ヽ､　　 l　※ l: : : : l:´: : ／ｲ´ﾊ`　//: /
: : : :｀ヽ､　l　　　',: : : :ﾍ‐'´　　　ﾔ!　ヽ'/　　　　　　　　　それとおんなじ台詞、今までに三回聞いたことがある。
: : : : : : : ｀'l　　　ﾍ: : : : ﾍ　　　　`''　　＼
: : : : : : : :.∧　※　＼: :ヽ` 　　　　　 /
: : : : : : : : : :ﾍ　　　　l｀`ｰ`-　　　　/`7/
: : : : : : : /: : :ﾍ　　　ﾍ　　　　　￣/
: : : : : : /: : : : ∧　※. ﾍ.　　　　　/
: : : : : /: : : : /ｰﾍ　　　ﾍ/`ー‐---'
: : : : /: : : : /　　ヽ　　ヽ
: : : /: : : ／　　　　＼　※ ＼

　　　　　　　　　　　　　 _ ＿＿＿_
　　　　　　　　　　　／　　　　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　／　　　　　 __　　　　　＼
　　　　　　　　　　 /／ヽ　　 -‐'''"　 `　　　　　＼
　　　　　　　　　　　/　　　ヾ"　　 ___　　　　　　　　＼
　　　　　　　　 /　 rｔｧ　ｒ´　 r´心》　　　　　　　　　ﾍ
.　　　　　　　 /　　｀´ 　　　｀¨¨´ 　　　　　　　 }　　　　　同じような状況で？
　　　　　　　 /　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;
.　　　　　　 /　　{:. 、　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　 /　 ,__　＿ _　　　　　　　　　　　　　　 /
. 　　　　　　 `　-= ＿￣　‐- ｧ　　　　　　　 /
.　　　　　 │　　　　　　　￣　¨´　　　　　　　　　　/
　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
.　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　ト､　　　　　　　　　　　　 , ′
　　　　　　　　　,′　`　　　　　　　　 , '
　　　　　　　　 ,′　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{

198 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:23:31 ID:976fb80c

　ﾍ　　　　 /　　　　/: : : : : : : : ＼
　/:ヽ　　　　,'　 ※　/: : :/: : : : :i!: : :ヽ
./: : :.ヽ　　l　　　 /: : :./: : : : : :l!: : : :.',
: : : : : : ヽ　 l　　 ./: : : /: : :/: : /!:l: : : i:',
: : : : : : : :.ヽl .※ i: : : :.l: :／: :././/!: : :l: l
: : : : : : : : : ',　　 !: : : : l'＿,／‐/　!: :./!/　　　　　　　　　そういうこと。
: : : : : : : : : : i　　!:.i: : :.l　,､ｪﾓ!　 /／ /
: : : :.r'´｀ｰ､ﾊl　　ヽヽ: ﾍ `　lﾘ　/､　　　　　　　　　　　　 ──こんなのって、やっぱり変だと思う？
:./`ﾉ´::::::::::::ヽﾍ ※ l``ｰ`-　　　 /
:.〉´::::::::::::::::::::l ﾉ､　 l　　　　ｰ'／
´ﾉ::::::::::::::::::::::l ヽヽ　!｀ー-　'´
`!::::::::::::::::::::::::l《》《ヽ l　 l　!
〉!::::::::::::::::::::::::lij ij ﾉl l　 l　l
ﾉ!::::::::::::::::::::::::lij ij:::l.l l　 l　l

　　　　　　／￣￣＼
　　　　／　　　　　　＼
　　　 |　　 -‐' 　へ　|　　　　　さあね。
　　　 |　（ ●) ( ●） |
　　　 |　　　　｜　　│　　　　　さっき、もしもコインで洲藤が勝ってたら、あいつとそういうことになってたわけかい。
　　　 |　　､__´___ 　ｌ
　　　　ヽ　　　　　　　 !
　　　　　ヽ　　　　ノ
　　　　　　/　　　く
　　　　　/　　　　ヽ

199 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:24:18 ID:976fb80c

/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : : : : : : : ヽ
: : : : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : | : : : : : : : ヽ: : : : : : : |
: : : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : | : : : : : : |　　　　　＿＿　　-‐
: : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ト､: : : : : : : :| : : : : : : |　／￣
: : : : : : : ｉ: : : : : : : : : : : : : : : /: : : : :＼ /　＼: : : : : :| : : : : : : |/
: : : : : : : |: : : : : : : : : : /: : ／: : :/: : : :/`‐-=ミ､＿: : :.|: : : : : : /　　　　　　　　　_　　-‐　　　　　　　　　野暮は云わないで。
: : : : : : : |: : : : : : : : : /: ／: : : :/: : : :/　　　　　＼: :|: : : : : /　　　　　-‐
: : : : : : : |: : : : : : : : /／: : : :／: : : :/　　　　　　　　ヽ|: : : : /_／
: : : : : : : |: : : : : -＜´: : : :／/: : ／　　　　／_,ｘ===≠ｘ: :／
: : : : : : : |: : : : ／: : : : ／　/: ／　　　　　 ,彳　):::::::::::ﾘ》'
: : : : : : :.ヽ: ／: : : 」斗芹芸ﾐ　　　　　　戈z二_:／
　 : : : : : : :＼ .〃´　)::::::::⊂ﾘ　　　　　　　　　::::;: ＜
＼: : : : : : : : :＼ヽ戈沙‐ ''¨´ 　　　、　 ,. ＜　　　　　　　　　　　　　　　＿
: :|＼: : : : : : : : :.＼　:::::::::::::::　　　　　,.’＜　　　　　　　　　　　　　　　　／　　〉
: :|　＼:_: : : : : : ＿＼　　　　　,. ＜　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／／　〉
:_」　　　￣「 /|　＼　　　,. ＜　　　　　　　　　／￣〉　 .／　　／／　／⌒〉
　|　＼|／　 .|/ .|　　_.＞ ´　　　　　　　　　　　　　　／　　／　／　　／　/　　/　／
　|　／|＼　 .|　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　／　／　　／　／　　/　/

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千歳はベンチ代わりの岩から腰を浮かせ、大八木の首に両手を巻きつけてきた。

.　　　　　／　　／　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　／　　　 /　　／: : : : : : : : ／: : : : : : : : : : : : /: :＼　/
.　／　　　　 j 　 ./: : : : : : : : : /: : : : : : :/.: :／.: :./ : /: :｀/
／　　　　　 / 　 /: : : :/: : : : :/: : : : : :／_／: : : :/ : /: : :/
￣ヽ　　　　　{　 ./: : : :/: : : : :./: ‐=7７￣／: : ／.:／!: : /
.　　＼＿_ ／　 .': : : :ｲ: : : : :.:.| ｒｆ千下ミ　/:／／＼_|: /
　　　 /: : {　　　i: :.ﾊ从: : : : : :|　乂:zン／　　ﾃ示ﾐｘ/　　　　　　　　　　　月が笑ってるわ。
.　　／.: : :/　　　|: :| 　ﾊ: : : : : :ヽ'''''　　　　　弋z_У
. ／.: : :／　　　 l: :l／: :＼: : : : : ＞　　　　 ,　　''''／
´: : : : :{　　　　　ヽ|: : : : : :＼:＼ゝ　　､　　＿_／
: : : :／　　　　　/ : : : :_: /´ヽ,へ､,　　 __｀ﾌ´　/
_:／　　　　　／: : ,ﾍ/　＼　ヽ　ヽ＞/　/
　　　　　　／――{ ヽ＼__〉､__〉ー' /
　　　　　　　　／　ヽ_〉　＼　　〉　/

200 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:25:05 ID:976fb80c

　　　　　　　　 :.:.:.:.:.:.::::::::::::::.:.:.:.:.:. 　く　　　:.:.:.:.:.::::::::::::.:.:.:.:.:.　　 |: : : : : : : : : : :!
　　　　.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、　　　:.:.:.:.:::::::::::::::::::: 　ｌ: : : : : : : : : / 　　　_　――
　　　　　　　　　　　　　　 _＿　　ノ｀　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : : :/ /__-‐" : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　 (　　｀ヽ（　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : ／ /: : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　　　｀　､ノ　、　　　　　　　　　／: : : : : : ／　 |: : : : : : : : : : : : : :
　　　　.　　　　　　　　　　　､_　　ﾉ　　､ゝ　　　　　　 _,.- " : : : ,.-‐'´ 　　 /: : : : : : : : : : : : : :
　　　　.ヽ　　　　　　　　　　　　`　　　　.〈　　　　　　　　　　￣/　ヽl!/ 　 |: : : : : : : : : : : : : : :
　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　イ. ｀　　　　　　　　　　　　|　= 　 =　/ : : : : : : : : : : : : : : :
　　　　 ..＼　　　　　　　　　　　＜　　　　ｌ　　　　　　　　　/　/ i! ヽ /: : : : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　ヽ　　　　　　　.イ　　　　　　ヽ　_＿＿__ 　,, 　　|　　　　　 |: : : : : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　＞.---.＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　ハ: : : : : : : : : : : : : : : : :

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何を答える間もなく、赤く柔らかな唇が大八木の口を塞いだ。

ルージュの味が、今までに関係したどの女のそれよりもほろ苦く感じられた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　 .|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ‐　 ─　Ｖ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　゛'-.,,　　i: : : : : : : : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : :ヽ |　ヽ　Ｖ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ |: : : : : ､/: :／/: : ,.ｲ |: : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 .!' : : ‐/‐ｧ'-/､／,′|: : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（｀゛' ‐-, 　　　./∠ _/／｀ﾒ､　,|: : : : : : : : : : : : : : : :i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ　　　 _+----　._ヽ,,.: : : : : : : : : : : : : i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,...-'´´::　　　フ,＝,＝,彡''´＼: :.|: : : : : : : : : : i | ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .┌‐":::::::::::::　　　　´　´　´　　　　　ヽ|: : : : : : : : : : :|　―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛　　　　:.:.:.:.:.::::::::::::.:.:.:.:.:.:.　　　　　　|: : : : : : : : : : :i |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::ヽ、　　:.:.:.:.::::::::::::::::::::u　　　　　 /: : : : : : : : : : i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くノ｀　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : : : ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : ／l　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ　　　　　　　　　／: : : : : : : : ／-　　―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ　　　　　　　　／: : : : : : : : :／　ノ　|　ヽ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　）　　　　　　＜＿: : : : : , イ　　　　　　 /:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　イ　　　　　　　　　　　　￣　 /　　　　　　　　 |: :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i/ }　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 /: :
　　　　　　　　　　　　　　　 _＿＿、_____ ノ　ﾍ　　　　　　　　　　./ 　　　　　　　 /: : :
　　　　　　　　　　　　　　i¨´　　　　　　　　　 | ヽ、　.　　　　　　　 |　ヽ　|　ノ　　　|: : : :
　　　　　　　　　　　　　 i"　　　　　　　ﾉ　　|　"''‐‐-...,__ 　　　 / 　―　　 ―　　ハ: : :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　ノ　|　＼　　/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一度唇を離すと、今度は大八木の方から彼女の唇をむさぼった。

彼女は満足げに目を閉じた。

絡みついてくる舌の動きが、大脳を熱く刺激する。

201 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:25:52 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　　 _.． -‐: :＼_ー-､
　　　　　　　　　　　　　　 |　　_.．: : : : : : : : : : : : :＼_
　　　　　　　　　　　　　．: :´: : : : : __: : : _.．: ' ´: : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　／.: : : : ．: : :´: : ／: : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　　　／: : : : :／.: : :／／: : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　 .: : : : : :／:＿:∠／: : : : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　／ヽ　/: : : :.／:￣／／/: : : : : : : : : : : : ／: : :
　　　　　　 | カ .|　|: : : ,ｲ/: ／／__/: : : : : : : : : : : ／: :|: : :
.　　　　　　　 l フﾟ l.　',.: :/　=≠ミｘ, /: : : : : : : : : :.／.: : : :|: : :
　　　　　　　＼_ﾒ　 ∨　　　　　 '--―　_ﾆ=‐'' ＿＿＿:!／
　　　　　　　　　　／ ∧／／／　　，　￣￣￣　　　　　ヽ
　　　＿＿＿＿／　 ′＼　　　　　　　　　　　　　　　／
　／　　　　.／　　 {　　　　　/⌒ヽ　　　　　　≠ﾐｘ､　　／.: :　　　／＼
／　　_＿／　　　　八　　　　/　　　　　　　　　　　　ヾ／:／: : 　　 | あ　〉
　　　　　　　　／: : ヽ　　ゝ　　　ﾉ　　　／／／　}}:∠:／:　　 ./　っ |
＼.／￣〉￢_ｒ‐ﾍ.／＼: :.　　　￣　　　　　　　ｲ!／: : :　　＼__／
／　　__/　　　／／'＼ヽ'.　　　 ,ィ┐　　　　＼￣￣: : : : :イ
　　/´　＿>二L⊥＿　 | |　ｰ-／ィ /　　　　　　_ ＞―― ' /　 / ＼
　冫／／,-―――､ヽ| ﾚ'／／/ /￣￣７￣／ィ⌒ﾞイ⌒i_　 .| ：　|
.　　　／／　　 |_└―‐┴"／ ,/ /--―‐┴―7/‐┘￣｀ヽ　|　| や |
　／／＿／￣ヽ／/二7ﾆ二_／／￣　　　　//　　　　　　＼　＼／

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顎から首筋へと唇を這わせながら、黒いブラウスの上から胸をまさぐった。

見かけ以上にその感触は豊かだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,..イ　　　 |
　　　　　l　　　　　　　　　 _,,,...イ´ 　 |　　　　　|
　　　　ヽ、ヽ＿_,,..-t''"´:::::::::::|　　 l　　　　　|　　　　　　　(何か──)
　　　　　　　　　 |　　ヽ:::::::::::::ノ　　 /　　　　 .|
　　　　　　　　　ヽ、　　￣　　　／　　　　 |
　　　　　　　　　　｀　　　　　　　　　　　　　 |
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　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
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ふと、先程の「妙な」感覚が大八木の脳裏をよぎる。

202 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:26:39 ID:976fb80c

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::::::::::::.:.:.　　　!　　　　　　　　　　　　　　__`　.､　:.:.:.::::::::::::::'
:::::::::::.:.:.:　　 /　　　　　　　　　　　弋(ッ''ミﾐヽ .::::::::::::,'　　　　　　　　　(何かに操られているような……)
::::::::::::.:.:　　/　　　　　　　　　　　　　　　￣彡" 　i:::::::::;.'　　　　　　　　　　　 ¨¨¨¨¨¨¨
::::::::::::.:.:　/　　　　　　　　　　　　　　　.:.: " 　　　l:::::::;'
::::::::::::.:. /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::;
:::::::::::／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　　|:;
::::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣,.'
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:::::::::::　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　￣:::;
:::::::::::::..　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　:::::;
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しかし、それは一瞬のことだった。

:.ヽ　　　＿　　　　　＿ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:~:::..... ﾉ~::::: ... ヽ　 ,:::::::...)　::::::::::::::::::::::::::::::::::　 ―　-　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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::.....::::....　　゛::　　..:...........::::::ヽ　　　　　　/ 　　　　　　　　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　,....:::::::::........　.........　　.....く::::....　　　　| 　　　　　　　　　 |　　:::::::::::::::::::::::::（;;,,,,,　＿＿＿）:::::::::
....: ::::....ノ....::::.:::: .... ﾉ:::::::: ............ノ........ 　| 　　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::（,,,,＿＿_):::::::::::::::::::::::::
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ヽ　　,',:.....:::::::::..........　.::::..,　.........:::::::::ﾉ::::　::::　　::::::　　　::::::::　　::::::::　:::::::::　:　＿,,,
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ii::　 :;i;:　,,V:;iiii;/　　:::　　::ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|li　　/ii　　ゝ,　　　　,,
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_i;::;.ii:.; ヾii.|　　　　 /::.. . .　　　　　　,, ,,　　ヽノ　　　　,,,　　,, ,.＿＿_ 'ヽ'''i /^/　 ii　　/ii
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;iiii;,,;i ; , 　;|""　　　　　　""　　　　　　　 .ｰ七ﾞ―z　　　 .!　(乂）　ｌ　 .⌒　　ヽ,,l＿＿
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i;;ﾉiiiiii;i;i::..ﾍ; ヽ,..""　　　　　""　　　　　　　 {　　ツ　|　　　　l　　つ　ｌ.,,,　,
"""",,""",,,,"""",,,,　"""　""　　　　　,,,, ,　＼　　 /　　 ,, .＼　　　 /
",,,,""",,,,　"""""　　　""　　　　　　　　　　　 Y⌒　　　　　　￣￣

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大きくうねる激しい流れに呑み込まれるように、

大八木は(そして千歳も)、闇の中に広げられた快楽の網に搦め捕られていった。

喘ぎ声が高まる。

203 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:27:26 ID:976fb80c

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彼は巧みに夜の闇を身にまとい、その光景を見ていた。
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正常な人間の心を持たない彼には、その行為の意味を正しく理解することができない。

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だが、その場に渦巻くエネルギーが、彼を支配する邪悪な衝動と共鳴し、

それを増幅する役割を果たしつつあることは確かだった。

204 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:28:13 ID:976fb80c

..''-､.;;;;;;;;;;;;;ﾞ'-､,　　､,　　`'､;;;;;;;;;;;;;;ヽ,　　　　 .!;;;;;;;;;;;l　　.|,!　,i";;;;;;;;;;;;;;;;;;./　/ ;;;;;;;;;;;ﾉ|彡
..　　｀''-､.;;;;;;;;;;;;ﾞ''-､ .ﾞﾞ!ｭ、　ヽ,;;;;;;;;;;;;;ヽ　　　　l.;;;;;;;;;;!　 /l　/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;./ . il!7;;;../ ﾞ,〃゛　　　　　　　,／
. ﾐヽ､.　　｀''-､;;;;;;;;;;;;ﾞ''-,,ﾞ'ﾐヽ、ﾞ'│;;;;;;;;;ヽ.　　　.!;;;;;;;;.!　 !lﾞ,/;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ . / ./／　/ 　　　　　　 . ,／／
　　｀ﾞ''＝ii､　　ﾞﾆ;;,,.;;;;;;;;`-,,ﾞ'-~'-.ヽ.;;;;;;;;;;ヽ　.i,　!;;;;;;;｝ .|;lゞ;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　　,〃　 ."　　　　　　 ,./ ン"
　　　　　　｀''‐　｀''-､;;;;;;;;;;;;｀'-ﾐi､;;;ﾞ";;;;;;;;;;;;ヽ.ｌヽ|;;;;;;;｝ l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　 .,i'./ 　　　　　　　 ,／／　　 .,
ﾞ''―　..,,,_、　　　　　　｀''-､,;;;;;;;;;;;ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ｌ|;;;;;;;;;;;| !;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/゛　 ./;/　　　　　　 .,..‐ﾞ;;ｒ'"　　 _./ ﾞ;;;
.ﾞ_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;~ﾞﾞ''''''―--　..,,_｀''-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾔ;;;;;;;;;;;;;;;;;,/　 .,ノ;ｉ|　　_〟　.,,./ ;..-'"　　 .../ ;;;;;;;;;;;
　￣ﾞﾞ''''''―-∠,,;_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;´ﾞﾞ'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|.,,ir'";;;;;;.ｌ..ｒ'";lン彡'"゛　　　,,-'";_,,r‐''''"゛
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　　　　　　　　 ,,ｒ'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;_..у;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ﾞ''､;;;;;;;;;＼｀-､;;;;;;;ﾞヽ,`'r､;;;;ﾞ'-,ﾞ'''ｰ､､;;ﾞ'-､、
.　,.. -/″　　　._./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ ´ / ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｯﾞ｀''､;;;;!|　ﾞ'､;;;;;;_;;＼｀'-､;;;;;.＼｀'-､.;;ﾞヘ､ .｀ﾞ''ｰ､,ﾞ''-
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..ﾞ゛　　　　.,./ ;;;;;;;;;;;.ン'゛　　 .,/.ンﾌノ./ ;;;;;;;_;;;/ !;;;|　　　 !;;;;;.ｌ,　　 .ﾞ' !､　　　　　　　ヽ.＼　　｀''-､;ﾞゝ､
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何をするために、ここまであの二人のあとを尾けてきたのか。

もちろんそれは、殺すためだ。

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憎しみや怒りが、彼らに対してあるわけではない。

そういった当たり前な感情は、彼の中には存在しない。

205 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:29:00 ID:976fb80c

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殺す。そしてその殺し方は、残虐であればあるほどいい。

それだけのことだ。

ただそれだけのために、彼は今夜、闇の中で目覚めたのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ／＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ:::::＼.／
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　　　　　.ヽ／

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彼の手には、二つのものがある。

左手には、大振りな斧。

山小屋の裏手にある、今はもう使用されていない物置小屋から持ち出してきた品である。

206 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:29:47 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ! 　　　　／
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　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　　　　　　　／.i:i:i:i
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　　　　　　　ヽ'　　　　 ,,..　　　　　　　　　　/.i:i:jI斗=
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　　　　　　　　ｌ　　,′　　　/''　　　　　 :.:i:i:i:i!
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　　　　　　　　　　　　　　{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
　　　　　　　　　　　　 }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
　　　　　　　　　　　　　　 }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!

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右手には、長さ一メートル余り、太さが七、八センチの木の杭。

山小屋のまわりに打ち込まれていたのを、さっき一本引き抜いてきた。

　 ,. -一ー　､
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彼は息を殺し、淫らに喘ぐ二つの影を見守る。

207 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:30:34 ID:976fb80c

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夜空を流れる雲が、やがて月を隠した。

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自分たちが意識している以上に、二人は酒に酔っていたのかもしれない。

あるいは、古来より語られてきた月光の魔力が、その時本当に、二人の心に働きかけていたのかもしれない。

あるいはまた、もっと他の何か──その夜のその山、その時間とその空間そのものが作り出した

妖しいひずみの中に引き込まれた結果だったのかもしれない。
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208 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:31:21 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　ヽ　八: : : 筏ミ_´　／　＼､: :/ : : : : : : : |
　　　　　　　　　｜ﾄ､_＼: |乂リ　　 ≠ミ　∨ : : : : : : : /
　　　　　　　　　　　 | ＼￣`ﾄ:::: ノ　　込ン≫: :.／: : : :/
　　　　　　　　　　　　|　　ヽ　＼ｒ　､:::‐=二: : :イ : : : : /
　　　　　　　　　、　　＼　 ┬= ７´ : : : : : : : : : 厶、＿＿
　　　　　　　　　　＼_ 　 }、 ´　　＼: : : : : : : :／: : : : : : : :

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彼らはすでに、原始的な欲望を満たし合う単なる雄と雌だった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-──--‐-ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _／｀* ＿ *＞─-ミ＼__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／/*／: : : : : ｀: : : : : : :＼',　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 |.'ﾞ: : : : : : : : :!: : : : : : : : ヾ　/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /|: : : ┼-- :／　 ´,ｨf斥: i: : : :! *.＼
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屹立した大八木のペニスがズボンの中から取り出されると、千歳は一度身を離し、自ら下半身の衣服を脱ぎ捨てた。

209 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:32:08 ID:976fb80c

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: l: :./: /: : :/: : : :./::｀/ノ￣:::::ゝ,　　　/　ﾍﾍ, ヽ.　 i^/　l/: :.＼
:..l:./: /: : : : : : : : :〉:::´:::::::::::::::::〈__, ィ´　　 lﾉ_`l　　l/　 /: : : : :.＼
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: : : : :..:/: : : : : :／ヽ:ゝ-:l:::/:::::::!´三l　ゝ' ヽ: : :´: : : : : : : : : : : ヽ: : ＼: : :＼

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はだけた黒いプラウス。

乱れた下着の下からこぼれた乳房が、闇の中に青白く照らし出され、大八木の興奮を煽った。

／　/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ＼
. 　/: /: : : : /.: : : : : : :/: : /: : : : :＼: : : : : i　 '.,
　/: /: : : : /: : : :_,: : :/: `ﾒ-――--､ヽ: : : :| 　 i
./ ;ｲ.: : : :/:／￣: : 〃: :/　　＼: :＿: :.i: : : :.!　　|／
' /｜: : : |": : : : ／/:.／　ｘ=≦云¨ﾞ》､!: : : :|　　|:ヽ
i/　|: : : :.|ｘ=≦云/; '　　　　Kノ　} 　 .}: : : ;'　　ヽ
　　|: : : :.《　Kノ:::}　　　，　　`¨¨~´　/.: : :∧
.　八 : : : ヽゞ¨~ 　　　　　／／／/.: :／.: :ヽ
　　＼: : : ＼／／／ i￣ヽ　　　,/:／: : : : : :i
　／: : ` =―-≧　　　ヽ-‐fｌ　　／: : : : : : : ヽ
. /_,.z=ヽ＿: : ＞ .､ _　　　　}}　ィ: : : : : : : : : : : :＼
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:::::::::::::::::::::{ | {　　￣＼　＿　 .」: : : : : : : : : : : : : :
:::::::::::::::::::::{ | {　　　　zｪｪｪｭ､二､＼: : : : : : : : : : :
::::::::::::::::::ヾ} | }　　〃　　　,ｲハ¨ﾞヾｭ､￣Y´,￣ヽ
:::::::::::::::::::::::ﾍi }　　《　　〃∥|ヾヽ　　》　ヽヽ::::::
::::::::::::::::::::::::::ﾍi　　ヾ,≠" ∥/ﾄﾏ,ヾ〃　ヽヽ::::
:::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　　　　 || ｌ｜| ﾏ､　　　　} ヽ:
::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ. 　　　　 ||｜|. !　ﾏ､　　　　ヽ｀
:::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　 ||. |｜| 　ﾏ､　　　　ヽ

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岩のべンチに坐った大八木の膝の上に、そして千歳は跨ってきた。

210 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:32:55 ID:976fb80c

　　　　　　　＿
　-―　　￣　　　＿　　￣￣￣^
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　　＼ i　　／　　／: : : : : : : : : : : : `ヽ
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／: : : :ヽ/　　　/　――/‐ヽ―∥: :/ヽ: : : ヽ　　　　　　　　　　　ああ……。
: : : : : :./　　　/: : :,=＝＝=ﾐｉ: ∥: :/＼|: : : : ',
: : : : : :ｉ　　　 |: : :.／／／　／/／　　ヽ: : :.:i　　　　　　　　何だか変。
: : : : : :|　　　 |: : : /　　　　　　　’　ﾞ㍉.!: : : :.|
: : : : : :|　　　 |: : /　u 　／￣￣7／／/|: : :/ }　　　　　　　　　　　ほんとに……変なの、あたし。
: : : : : :.',　　　|: /　　　(　　ヽ/　　∧!: :./　ヽ　＿＿＿
: : ,..-―ヽ　　Ⅳ　＼　　｀ー　　　. ＜: /／　　　`ー､: : :
:./:::::::::::::::|　　ヽー、＼_　,..ｪ≦――､＿_ヽ　　　　　　＼
/::::::::::::::::ﾍ　　　＼ヽｰ､　{ー==､　　　　/Y`ｰ､＿
::::::::::::::::::::::ﾍ　　　＼＼｀／￣￣￣￣｀| H　ト､　＼＿
::::::::::::::::::::::::::ゝ.　　　ヽ／　　　　　　∪.! | ,ﾍ_／:::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::::::＼　／　　　　　　　　　　 ∪' 〈ﾉ､:::::／ｰ
:::::::::::::::::::::::::::::Ｖ::::／　　　　　　　　　　　　　　＼´￣`
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:::::::::::::::::::::::::::::::|　　／　´∠二二_　　　　　　　　　　　 |ー
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==ｭ:::::::::::／　　ヽﾉｰﾍ_　., -―一 ' 　　　　　　　　 |
:::∥ ￣　　　　　ヾ　　~7

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彼女は切なそうに声を震わせた。

千歳のその部分は、先程からの愛撫でもう充分に潤っていた。

大八木が上体を抱き上げるようにして支えてやると、彼女は怒張したペニスに手を添え、ゆっくりと腰を落とした。

喘ぎが更に高まる。

　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　〉　　　ヽ
.　＞./　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　〉_ _　_　_
": : : :ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　 |つ＼＼＼ヽ
: : : : : : ＼　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　 |　　＼ヽヽ ! |
: : : i: : : : 孑ヽ､　　　　　　　 /　　　　　 |　　　　ヽ〉〉/￣｀ヽ
: : : '; : :i:/ i/＿_ヽ.　　　　　　 /　　　　　　 /　　　　　　　　＼
: : : :ヽ: i　　￣　' __,､_,.┐ 　／　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
ヽ: : : : :ヽ.　 """"　〈_.Yノ＞'　　　　　　.／　　　　　　　　　　　　　　＼
: : ＼: : : : :`ｰ―一　　l／　　　　　 .／|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
: : : : ｀ヽ:_＿: : ／　／　　　　　　　／i　｜　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
: : : : : : : :＼　　／　　　　　　／　 i ＿|　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　ヽ　　　／￣￣ヽ
: : : : : : : : : ヽ／　　　　　／ _ ／　　　!　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　ヽ／　　　　　　＼
、 : : : : : : ／　　　　　　　／￣ /　　　　ヽ　　　　　　　　 |　　　　　　　　　／　　　　　　　 '.
. ヽ､: : : :/　　　　　　　／　　　　　　　　 i　　　　　　　　|　　　　　　　　／　　　　　　　　　　 |
. 　ヽ.: :{ 　　　　　／　　　　　　　　　　　　 |　　　　　　 |　　　　　　／　　　　　　　　　　　　 |
　　　 ',:.ヽ　　　´（　　　　　　ヽ　　　　　　 | 　　　　　 |　　　　　　／　　　　　　　　　　　 |
　　　 i: : :＼　　　　　　　　　　　＼　　　　 | 　　　　　 |　　　　／　　　　　　　　　　　　　 | ヽ
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　　　　|: : : : : : :＼　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　|、／　　　　　　　　　　　　　　　／　　　 !　　､
　　　　|: : : : : : : : : : ‐. .　　　　　　　　　 /　　　　　　　| 〉'　　　　　　　　　　　　　 ∧　　　　　 |　　　　､
　　　ヽ: : : : : : : : : : : : :￣{__)＞'￣〉-､_　　 /　　　　　　　 |/　　　　　　　　　　　　　　　 /　､　　　　 /　　　　　､
　　　　ヽ: : : : : : : : : : : : : :.ヽ＿／／ /-､/　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 /　　、　　 /　　　　　　､
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やがて大八木は、胴に巻きついてきた千歳の両足を下から掬うように持ち上げると、結合したまま岩から立ち上がった。

両手で彼の首にしがみつきながら、彼女は悲鳴のように小さく叫んだ。

211 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:33:42 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　／ ∧／／／　　，　￣￣￣　　　　　ヽ
　　　　　　　／　 ′＼　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　.／　　 {　　　　　/⌒ヽ　　　　　　≠ﾐｘ､　　／.: :　　　　　　　　　うあっ。
　　　_＿／　　　　八　　　　/　　　　　　　　　　　　ヾ／:／: :
　　　　　　　　／: : ヽ　　ゝ　　　ﾉ　　　／／／　}}:∠:／:
＼.／￣〉￢_ｒ‐ﾍ.／＼: :.　　　￣　　　　　　　ｲ!／: : :
／　　__/　　　／／'＼ヽ'.　　　 ,ィ┐　　　　＼￣￣: : : : :イ
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　冫／／,-―――､ヽ| ﾚ'／／/ /￣￣７￣／ィ⌒ﾞイ⌒i_
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　／／＿／￣ヽ／/二7ﾆ二_／／￣　　　　//　　　　　　＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そのまま一歩、歩いた。

ずん、と振動が腰に伝わり、彼女を突き上げる。

大八木と、比較的小柄な千歳とでは、大人と子供ほども体格差がある。

そうやって彼女を抱えたまま移動することは、彼にしてみれば造作もないことだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-‐　￣￣￣　 ‐-
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　　　　　　　　　　　　　 /i: : : : : /／: ／/: : :/___　ヽ: : : : | ｛　／
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　　　　　　　　　　　　 /: : | : : : 代苡ぅ/: :／丈式ぅ　|: :/　｛∧　　　　　　　　　　　凄い。あ、凄い……。
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　　　　　　　　　　　 /: : : :|　＼: :＼　　　　’　　 u／イ　　　 |: :∧
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〈＞＜二}:::::::＼　　/: : : : :_/　　　 |: :/＼　　　　 .ィ＼:|　　　　ヽ: : ∧
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//:::::::::::::::::::::::::「i{=┬＜//　　　 / |　ヽ　、　　　　＼　｜∨　　|: : : : :＼
∧::::::::::::::::::::::::::ヽ∨,　/ ￣￣￣＼l/⌒iﾄ､＼　 /　　＼|ｉ｢＼ｰ┤: : : : : : ＼
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歩を進めるたびに、彼女は声を上げた。

首にぶら下がるような体勢で、大きく上半身をのけぞらせる。

212 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:34:29 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　,.､.ﾞ､　ﾞ､ /l　,;'　　,.　 ,;'r'"⌒ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽﾄ､;.,､　,.;'　　,,._;;')
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|､wv从/l'|､wv从/l'|､wv从/l';.,'|l! l|.　|i!l| |i!|.'|i!|' ､.,;'ﾞ:､.,;., ,.;_..;')
川　/|ﾉﾙ'川　/|ﾉﾙ'　ﾉﾙﾊﾞl 彡ﾊ/／/vw彡|i!|,,;.､,:'ﾞ､,:' ,:;ﾞヽ,;.,ヾ
VjjNw/〃lVjjNw/〃ﾚ'ﾍ　 lﾙ'/vwjj/从jj/彡彡,..|i!|,,,,,,＿＿__ハ
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大八木は、坐っていた岩をゆっくりと迂回した。

岩の後ろには、緩い斜面があった。

短い草で覆われた、ちょっとした土手のような斜面である。

服や肌が汚れることも気に懸けず、大八木は抱え上げていた千歳の背中をその斜面に押しつけた。

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　　　　　　　　　　／_ノ　 7|ヽ／￣￣￣￣: : : :￣: : : : : `ー‐ﾍ　　　丶、
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　　　 .′　　｜ : : |: : : :|: : : :l: : :＞‐:/　 |: /　　　 _,斗==ミ!: : : : : ;
.　　　　　　　 | : : : Ｖ/ : ,: : :.:l／: : :,:'　　 !/　　　ィf圦::::::リ个 : : : /|　　　　　　　　　ね、何か云って。
　　　 | 　　　 : : : : :V : :'; ／|: : :／　　　′　　　ゞ'ﾟﾟ”￣｀　| : : : '|: |
.　　　＼　　人: : : : :､: :∧:.:|／,.ｨf乞勿　　　　　 :::::::::::::::　|: : :/ i:∧　　　　　　　何か……ねえ。
　　　　　 =‐-ミ、: : : :ヽ: :∨x伐:::::＞'´ ::::　　．　　　　　　/ ／ﾞi |: :∧
　　　　　　　　　　＼: : : : ＼汽ー''ﾟ ::::::::::::　　,　-‐=::、　　/:ｲ　７｢|__｢＼
　　　　　　　　　　　 l:＼: : : : ＼＼　　　　 {/:::::::::::::}　　' 人　　/　　　ヽ
.　　　　　　　　　 /| : : ＞ミ: : :＼:＼_　　　　ヽ:::::__／　／　　＼i　　　　　ヽ
　　　　　　　　　 /斗-く　_>､)_二ﾆ=‐＜._　　　　　／}　　　 i　|　　　　　　、
　　　　　　　　　　,/＼ノヽ,　＼＼　　　　＼二二二／　　　ﾉ　　　　　　　　｀、

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湿った草の上で頭を振り動かしながら、千歳は息をはずませた。

213 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:35:16 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　 ´￣￣｀　､
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.　　　 Y　　　　　　　　　　　　　　　丶
　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　丶
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　　　　|　　　　　　　　　＿　　　　ｨ泛;,ハ
　　　　|　　　　　　　／　 ,＿、　　｀=彡　 |
　　　　|　　　　　　　　　　ィ泛厂;;　　＼　　│　　　　　　　　　　　ああ。
　　　　|　　　　　　　 ^===彡　　　＼｜
　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　l
　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　 |
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　　　　　　　　＼.　　　　　　　　｀ ―‐'　｜
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　　　　　　　　 |　　｀　　ー-=ﾆ二::＿::::| 　　　//∧
　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　｀ヽ　 ////∧

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しび痺れるような快感に浸り、そして耐えながら、大八木は声を返した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ニ=--―━━―-=ニ
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.　　　　　　　　　／　　　　／　　　　　-――=ミ　　　　＼＿　　＼
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　　　　　　　　／　　　/ 　　／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　ヽ　　ヽ
　　　　　　／　　　　ﾉ.　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼　　',　　`、
　　　　／　　　　 /　　/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l : : : ヽ　〈
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　　　　ヽ＼_____{__:|_彡: :´: : : :／:/: :／ :/ : : ／　 /: :/ ＼|: :|: : : : |ﾉ⌒ヽ|
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　　　　　　　 /　 :| : : :.l: : : : :.《　 | {::::.心　　　／ｘ===ミ |.:/: : : : ' /
.　　　　　　　〃　八: : :.|: : : ::| |:　ヒｚン　　　　ん::::} |》/: /: : ://　　　　　　　　いい？
　　　　　／: |　　　ﾉヽ从:: :.:八|　::::::::::::::　　　　　ヒｚン/ : /: /:/〈
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　　 /: : /　　　 /.: : : : : : : : : :/　　＼　└― '′ 　_,　＜: :イ　 /　/
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喘ぎつつ、千歳が訊く。

215 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:36:03 ID:976fb80c

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.　　　{＿＿_／　ハY　　 =┬ '´　　／　　　 /　　　　　　　　ね……。
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夜空を流れる雲が、月を隠した。

自分たちを包んだ闇が濃くなったのに気づくこともなく、二人は次第に加速度をつけ、高みに向かっていく。

216 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:36:50 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　 |:八: : : : : i灯豕ﾊ /　　　　下豕圷ぅ./: : :／:/ 　　　 }
―――――--､　　　　　　　|i／＼ヽ: :八乂_リ　　　　乂ｚン　/: ／/∨　　　　　|i　　　　　　　あ……あ、あたし、もう……。
ニニニニニニニ＼　　　　 .{　　　＼＼ﾄ /／　，　／/／/／ /／_ノノ:{　　　　　〈:|
ニニニニニニニﾆﾆヽ　　 .／　　　　 } 人　　　r ‐､　　　　　 .-=≦: 八　　　　ヽ
ニニニニニニニニﾆﾆ.,. ノ　　　　　 { : : : ト､.　`　ｲ　　　 ..イ: : : : : : : : ヽ　　　　　 }
ニニニニニニニニニﾆ',.　　　　　　　ﾉ : : :/: : : ≧ ∪.-＜　　ﾄ､: : : : : : : :八　　　〈
ニニニニニニニニ,ｭﾆﾆ!　　　　　__ノ: : : ;ム-‐'　/|　　　　｛　`ー＜: : : : :}　　　　ヽ
ニニニニニニニニN}ﾆﾆ:　　　ｒ' (⌒く￣　　 _／　　　　　人　　　　￣ヾヽ　　　 {､
ニニニニニニニ./{/{ニﾆ!　　..ノ7'ノ厂　　ｒ‐/(　､_　　　 _彡イ j〈ﾞｖ―--= .._} }　　　　､: :.
ニニニニニニニ{/ﾑﾑニﾊ___ノ/７('´　　　/{ ( (　　　　　　　 ) (｛├─―　　＼ヽ　　　＼＼
ニニニニニニﾆﾆ､/ﾑﾏ:.ニ､　ゝ〉７　　　_ノﾉ 7　　　　　　　 (_人7'｢￣￣¨　　 i八　　　　 ⌒
ニニニニニニニニ｀ヽ_ﾘニﾊ.(_ﾉ_ﾉ　__∠ノノ　〈　　　　　　 ) ｲ、∨￣¨　　　_}＿ヽ
ニニニニニニニニニiニニﾆ}.フｒ‐／'＾⌒ー‐'´　　　　　　　　ゝ(＼ﾚへ┐　〈_ {　〉､‐┐
ニニニニニニニニニ|ニﾆﾆﾘ._/У　　　　　　　　　　　　　　　　　 (_＞-厂}､_ノ⌒}‐{　ヽ::､＿

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千歳が、早くも絶頂の声を上げようとした時──。

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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ

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彼──殺人鬼は、大八木の背後数メートルのところまで近づいてきていた。
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217 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:37:37 ID:976fb80c

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最初は二人に勘づかれぬよう、獲物に忍び寄る野獣の足取りだった。

が、それはすぐに不要なことだと分かった。

自分たちの行為に没頭し、彼らは周囲に気を配るどころではない様子だからだ。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　>　ｺﾄｯ

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殺人鬼は、左手に持っていた斧を、さっきまで二人が坐っていた岩の上に置いた。

ことんと小さな音がしたが、彼らは気づくことがなかった。

219 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:38:24 ID:976fb80c

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右手の杭を、両手に持ち直した。

地中に埋まっていた、尖った方の先を前に向け、長刀のように腰の高さで構えた。

息遣いが、鋭さを増す。

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狙いを定めた獲物の、橙色のシャツを着た背中めがけ、殺人鬼は猛然と突進した。

220 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:39:11 ID:976fb80c

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　...l.!　ll　||　 .l,!　 !.llﾞ　 |.! .l　、 ./ .、　./ .〃　 ./　　 / ...／　　　　　　　　／　　....／゛　　　　　 ,..ｒ'"
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..Λ.l ! .l.! !.!　l |　i|.!|　 lﾞ,! ! 〃　! ./　/ .,〃　〃　./ .／　　　　　　　　／　　.／　／　　　　,／´
...l,.ﾞll│,!|.! l　! ! .il］lﾞ,/lﾞ.l !.// ./ ./ ./ .// .//　 / ／　　　　　　　　／ . .,／　,y!″　　 ,..-'´　　　　　 _..-''
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およそ人間離れした凄まじいカで繰り出された杭は、その一撃で大八木の腰に深々と突き刺さった。

背骨を掠めて腎臓を貫き、腸を裂く。

221 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:39:58 ID:976fb80c

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//////|..i!ニﾆニニニ./　　　　　　　　　ノ　ヽニニニニニニニニニニニニニニニ/ニ,
//////|..!ニニニﾆﾆｲ　　　　　rー　て__　ノ/:.:.ﾏニニニニニニニニニニニニニ /ﾆﾆ,

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凶器の尖端は、そのまま大八木の臍の辺りから外へ飛び出し、密着していた千歳の下腹部の肉をも突き破った。

子宮を直撃し、その入口にまで届いていた大八木の肉にもう一度掠る。

背骨を砕いて身体を突き抜けると、彼女が背にしていた斜面の土に、何センチか刺さって止まった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　,／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノし'(／/
.　　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼　　 .ー-ミ　て
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.　　　　／ ..;'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::';.. ＼　　　　} γ´￣
.　　　／　 ;:::::: ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::: ／::::::::; 　＼　　/　ゝ
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　　 │　/＝≡＝=､､＼::::::::::::::,,／ ,,=＝≡＝ヽ、 !
　　 │ //　　　　　　ヾ､ :;:;:;:;:; ﾂ〃　　　　　　ヾ,|
　　 │　　　　　　 ◎　......:;:;:;:　　　 ◎　　　　　　│　　　　　　　　　　　ええっ
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最初に大八木が発したのは、単なる驚きの声だった。

222 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:40:45 ID:976fb80c

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　　　 l　　　　　　　　　　,.ｲ　i　((__　　　 .|
　　　 |.　　　 '´￣二二´///　　￣二￣｀ |
　　　 |　　　　＜__●_,.ヽ//! 　<´●_｀> │　　　　　　　　なな何だぁ？
　　　 |　　　　 ........:::::::::://l　　　￣　　 l
　　　 l 　　ii　　　　　　//|　　　　　　　l　　　　　　　　　何だよ、いきなり。
　　　 | 　　||　　　　　 ///l　　　　　　　!
　　　 | 　　||　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　|　',　ij　　　　　　　_＿_　　　　　/
　　　l　∧　　　　　　‐'´　　｀ヽ　　/
　　/＼. 　＼　　　　　　　　　　　　/
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　/:::::::::::', 　＼　＞　　　　　／ヽ、__
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何が起こったのか、大八木にはまったく分からなかった。

腰をバットで殴りつけられたような、鈍い衝撃だった。ぐらりと、激しいめまいを感じた。

痛みにではなく、没入していた快楽の行為を中断させられた不快感に、まず顔を曇らせた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　:::::::＿＿,,」　　　　　　　,-‐─‐-、　　　|
　::::::: ￣￣　　　　　　　　　　　　　　　 |
　::::x三ニﾄ､　　　　　　 ,xr≦=ｭ=x､　　 │
　:::〃　ｆr=㍉ヾ::::: 　　ﾊ!　 fr‐㍉Y　　│　　　　　　　（誰だ？
　::::::､＿ゞｪ1:::::::::::ｉ　　　:::ヾ=`ｰ"
　:::::::: ￣´::::::::::::::::|　　　　　　　　　　 !　　　　　　　　邪魔しやがるのは)
　:::::::::..　::.::::::::::::::::|　　　　　　　　　 }
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　::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ　　　　　　　　　 /
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　　ﾄ､::::::::::::,-‐― 　 ――-､　　　,.ｲ
　　fﾆヽ::::::::::::::　 -‐-　　　　／　|
　／!⌒ヽ::::::::::::::::　　　　　　／　　│
　::::::ﾄ:::::::::ヽ::::::::::　　　　／　　　　,ﾄ―- ､
　::::::!::!:::::::::ヾヽ-----イ:::::　　　　.:/1　　　!￣ヽ＿＿ ,.--.､
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　::::::::!:::::::::::::::::::::::::::::　　　　　　:://..:::　/／　　　／:::::／::::::::::::::ヽ

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洲藤だろうか、と一瞬──ほんの一瞬──思った。

223 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:41:32 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　 r.ｖ　,' }r.ヽ｀ヽ　　　　　　（__)　　　　　 ,　;　　　　　　　(あいつ……)
　　　　　　　　　　 / / /　｀￣!i!||　　　　　　　　　　　　　　 /
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　　　　　　　　　　 i / /　　　　　　　　　　／　　　　　　　　 / ；
　　　　　　　　； | ヽ　　　　　　　　 /　　　　　　　　　 / ；
　　　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　 ,′　　　　　　 / ;
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何故かしら、強烈な吐き気を覚えた。

どうしてなのか、わけが分からなかった。

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首を後ろに向けようとした──

225 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:42:19 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　 |　　ノ´　＿_　　　　　＼＿_　ノ　　|
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　　　　　　　　　　　　 |　　　ミﾆﾆ彡　　|　　　ﾐﾆﾆ彡　　　 |
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　　　　　　　　　　　　 ',　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　ﾉｉ　 ,'
　　　　　　　　　　　　　',　　　　　　　　　　　　　　　　（_,ﾉ　,'
　　　　　　　　　　　　　 ',　　　 ∧￣￣￣￣￣￣ﾊ　　　,′
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　　　　,. ―――‐|　　　　{:i:iト}＞-------------／／:i:ｉ|　　　　 ‘.―――‐
　　　 {　　　　 |　　　 ∨:i:i:i:i:i:ヾ≧=----- イ:i:i:i:i:i:i:i:/　　　　　}
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　　 / .|　　　　　　＼　　　Ｖi:i:i:i:ｉ/　　　　 ∨:i:i:i:i:/　　　／
.　 / 　＼　　　　　　　＼　　 ∨i:i/　　　　　Ｖi:i:i/　　　／

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そこで、全ての感覚が物凄い痛みに急変した。

あまりの痛さに、上げた悲鳴は声にすらならず、下手くそな口笛のように虚しく空気を震わせた。

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: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :￣￣≧x、: : : : : : : : : : : : : : : : : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀ヽ: : : : : : : : : : : : 〃Ｖ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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: : : : : : : : ／￣￣￣￣￣￣￣＼: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ／￣￣￣￣￣￣￣＼: : : : : :
. . . . . . ／　　　　　　＿_　　　＼ヾ. . . . . . . . . . . . . . . . . 〃／　＿_　　　　　　　　　＼: : : :
. . . . . 〈　　　　　　　 /　　ヽ　　　　　　. . . . . . . . . . . . . . .　　　　　/　　ヽ　　　　　　　　　〉: :
　　　　　　　　　 |　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　|
　　　　ヽ　　　　　　　ヽ＿ﾟノ　　_ノヽ　　　　　　　　　　　　　 ,' ,　ヽﾟ＿ノ　　　　　ノ　）
　　　　　( 　./三三三三三三　., ' , ´　　　　　　　　　　　　 ) ,!　三三三三三三三三ヽ (
　　　　　.i　,'　　　　: : : : : 　./　(　　　　　　 ....::　　　　　　　 i i　: : : : : : : : 　　　　　　　ヽ）
　　　　　 ! {: : : : : : : : : : 　　 .i 　i´ 　　　　 .....::::　　　　　 .l |　　　: : : : : : : : : : : 　　　 i |
　　　　 i .{　　　　　　　　　　し´　　　　　 ........:::::::　　　　　　 .i.ｊ　　　　　　　　　　　　　　 i l

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身を動かそうとした。

が、下半身がびくとも動かない。

無理にもがこうとすると、腰と腹の辺りを中心とした痛みはますます激しくなる。

226 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:43:06 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　　　 ―――――
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　 ,'
　　　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　 |
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　　　　　　　　　 | ＼　 _,／ /　,- 、＼　　　　｜
　　　　　　　　　 | '~iヽ　　　 _　`’' _,.-'　　　　 |
　　　　　　　　｜_ じ| 　二_ ￣￣　　　　　　｜
　　　　　　　　　 | ￣7　´　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　 !'u　、　　　　　　　　　 u　|
　　　　　　　　 '., 　丶´　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　ヽ　　 _,.. _--_ 、　　u　　／ l／
　　　　　　　　　　　　　ヽ　ヽﾆ-_‐.. -`　　／ .／
　　　　　　　　　　ヽ　￣　　　　　／/／
　　　　　　　　　　　　ヽ　　　／　 /
　　　　　　　　　　　　　　　ー‐　´＼／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 _　-― ´
　　　　　　　　　　　　　　　 - ´
　　　　　　　　　　　　　　/

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大八木はやっとの思いで首を捻り、最初に感じた衝撃の正体を探った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 -─-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ　　　　　　　　　　　 ' ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ノ￣´　　　　　　ノ´｀ヽ　∨
　　　　　　　　　　　　　 /　　 .＿_　　　ヽ　＿_　　 ∨
　　　　　　　　　　　　　　　　|　／´￣｀　　　｝〃￣｀＼　|
　　　　　　　　　　　　　　　　|.〃　Ｏ　　　　 |　 .Ｏ　　}}　|　　　　　な……。
　　　　　　　　　　　　　　　　|　ミﾆﾆ彡　　　　しﾐﾆﾆ彡　|
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　f　　　|　　　　｝. 　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　し| 　　 |l　　　｛j 　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　∧　　　　　　 `　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ' ,　　 u　,--―‐--，　　 , '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　 ´￣￣￣｀　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,／| ｀ ‐---‐´ |＼_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /「 /　　　ｉ　　|　, ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /l∨　　　　｜　　 ∨　 |

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太い棒の影が見えた。

身体の陰になってちゃんと確認はできなかったが、それはどうやら自分の腰から突き出しているらしい

227 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:43:53 ID:976fb80c

　　　　　≧ﾆ=ミ　　　　　　　　　　　　　　　　_ノ
　ゝ≧"　　　　　｀＜　　　　　　　　　　<　≪＿＿ =二≦ノ
　ヽ　　　　　i!i{}!i!il |　　　　　　　　　　＞l!i!{}!ii　　　　 /　　　　　　　　な、何だよ。
　　` ､　　　　ゞ=''／　　　　　　　　　　　＼ゞ=''　　　　つ｡
　　　＼　　　／　　　　　　　　　　　　　 `ﾐ三イ', /　　　　　　　何なんだよぉ、これ。
　　　　(_　;xｭ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:i
　　　　　| :i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:j
　　　　　| :i
　　　　　| :i
　　　　　' J

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

下を見た。

千歳の下腹部と密着した部分か、黒くぐっしょりと濡れていることに気づいた。

心臓の鼓動にリズムを合わせ、生温かい液体か腹から溢れ出ている。

　二二////////////////∧八　　　 ',　　　　　　　　　　　 }　 .} 　　 .| l : :ｉ: : :.
　ニニ{ ////////////////∧　ゝ　＿入　　し　　　　　 ,　　.ｉ　　　 l.: l : :ｉ : : :.
　二二V//////////////////∧　, ´　　丶　　　　　　イ　　 .|　　　 Y l : :ｉ: : : :.
　ニニﾆ＜ /////////////////｀ヽ　　　　　≧=―‐=≦　　 __ .ｨｌ　　　 |: l : :i: : : : :.
　二二二二＞‐‐--== 、//////////丶　　　　　　＿＿　ィ升///}　　　 {: :l: : : : : : : :.
　ニニニ／ニニニニニl＼///////////＼ ‐=≦/////// ＞　T ´.!　　　 i': :l: : : : : : : : :.
　ニニニニニニニニニ{　　＜ ///////////////////＞ｆ　　 {: : !　　　 .{: l: : : : : : : : : :.
　ニニニニニニニニニ′　　/ ヽ ////////////＞ ´ : : {　　　 , : 　　　 .｝.: l : : : : : : : : : :',__
　二ニニニニニニﾆﾆ/────‐＼.//////＞ ´/: : : : : :ﾞ　　ｉ: : | 　　ﾞ...: : : : : : : : : : : :∨: ｀ヽ、
　ニニニニニニニﾆﾆl.... r;;;;ッr‐'''''"゛｀ー== ´　　,;{: : : : : : : ﾞ　　 |: : ',　　 .',ﾊ: : : : : : : : : : : :∨/: : :＼
　ニニニニニニニﾆﾆ{;:‐''"二..,,,＿,..--'''";━…<ﾞ;;;ﾞ;,: : : : : : i　　 {: : :..　　　　 i .: : : : : : : : : : ∨/: :.i: :ヽ
　ニニニニニニニニ∧──────‐'ﾞ　　　ﾞ'､;;;', : : : : }　　 |: : : : ﾞ　　 uﾊ: : : : :i: : 、: : :.:∨ : :| : : ｉ_
　ニニニニニニニニニ＼　　 j,　 ´　　　　　　　ﾞﾞ'∨ニﾆ≧s。ｌ: : : : :', 　　　',.: : : : :ｌ: : ｉ : : : : |: : ﾘ: : : i:｀ヽ、
　二ニニニニニニニニニ＼／　　　　　　　　　　　 iニニニﾆﾆ≧s。: : ,　　 .ﾊ: : : : :l: : ｉ : : : : |: :/ : : : |: : : :＼
　ニニニニニニニニニニ／　　　　　　　　　　　　　　 }ニニニニニニﾆ≧',　　　ﾞ: : : : l: : ｉ: : : : /:/: : : : : : : : : : ｉ :
　二二二ニニニニニﾆ／　　　　　　　　　　　　　　　 :ニニニニニニニﾆ∧　　 ∨ : : : : : : : ／: : : : : / : : : : / : i
　二ニニニニニニﾆ／　　　　　　　　　　　　　　八ﾆ　 -‐====‐-　ﾆハ　　　}: : : : : : ／: : : : : ／: : : : ／: : :ﾊ
　二二二二ニﾆﾆ／　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲ≦ニニニニニニニﾆ≧s。　: : : : : : : : : : : : ＿_彡: : : : : : :/: |
　二二二ニﾆﾆ／　　　　　　　　　　　　｡s≦ニニニニニニニニニニニニニ≧s。: : : : : : : : : : : : : : : : : ／: : |
　ニニニニﾆ '　　　　　　　　＿_　　｡s≦ニニニニﾆﾆγ´ 　＼ニニニニニニニニニ=‐ : : : : : : : : : : : : : : : : : ∧
　∨ニニニ/　　　　　 __,　'"´ 　　｀ﾞ＜ニニニニニニニ乂　　　　｀＜ニニニニニニニニ＝=‐ : : ―==彡: : : : ／

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大八木はゆっくりと身体を後ろへ引いてみた。

ぐちっ、と気味の悪い音がして、激痛が倍増した。

血に染まった黒い棒が、僅かに二人の肉の間に見えた。

229 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:44:40 ID:976fb80c

　　　　　　　u　　　　　　　　　　　　　 ',
　　￣ﾞ`ｰ-.､　　　　　u　　;,,;　　　j　　　 !
　　　J　　　ﾞ`ｰ､　　　"　;, u 　　ﾞ　 u l
　　　　　_,,.. -─.ゝ､　　　;, "　;;　　　_,,..._l
j　　　／　　 ,.- ､　ヾヽ、　;; ;;　_,-＜　　|
　　　:　　　　､・丿　　￣≠乂ｲ´,-､　ヽ　l　　　　　　　　こりゃあ……。
　　　＼_　　　 _,,......::　　　´ﾞ;､　`¨　/　 .!
　u　　　　￣￣　　彡"　　　 i 　￣｀　　 l
　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　 i 　　　 i
　　　　　　　　　　　　u 　　　 i　　　 . i
　　　　　　　＿＿　　　／　　　 '
　ﾞ　　　u　,.／　 "　｀`- ､_ 　　　 ./
　　　　　 ./＿_　　　　　　　　ｰ７　 ./
　　　　　/;;;''"　￣￣ ───/　ﾞ/
　　　　 i:⌒`─-､_,....　　　　l 　 /
.　　　 l　　　　　｀　｀ヽ、 i　 /

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ようやく大八木は、状況を把握した。

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　　　　|::::::::::::::::::::::八 0　　,ノ::::::::::::::::::::::ヽ
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誰かが、俺たちを襲ったのだ。

誰かに、俺たちは襲われたのだ。これを──何だか知らないがこの黒い棒を、俺の腰に突き刺して、そして……。

230 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:45:27 ID:976fb80c

　　　　／￣￣＼
　　　／　「　　ヘ＼
　　 | 　（○）（○）　|　　　　　　(何故だ？
　　 |　　　| 　　　│
　　 |　　　__｀___　　.|　　　　　　こんな……)
　　 |　　ｨ劣ヾ州） |
　　　ヽ　：Y!　　ヾ：/
.　　　　ヽ　　　 /
. 　　　 /　　　く
　　　　 |　　　　 |
　　　　 |　　　　|

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喉を焼き、熱いものがロの中へ逆流してきた。

消化途中の酒と胃液、そして内臓から流れ出た血だった。

　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　／　　／￣￣｀´￣￣｀ヽ　　　　＼
　　　　　　　　／ _＿〃　　＊　　　＊　￣｀ヽ　　＼
　　　　　　　　　　／／　　　　 _＿,、＿＿,、＿_　＊　￣｀ヽ .＼
　　　　　　　／　〃＊　_＿ノ. : : : : : : : : : : : :｀ヽ._　　　i}　　＼
　　　　　　 '　／　　　 l}. : : : : : : : :| : : :ヽ : : : : : : : ｀ｰ‐､ .l　　　＼
.　　　　　 /　 {l　　　_ ノ. :/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :.､: : : : ヽ.　　　　 >
　　　　　 /　〃＊ _ ノ. : : /: : : : : : : : : : : : : : : :､: : : : ヽ : : : :∨　　／
.　　　　 /　 :{l　　/. : /.: : : : : : : :. :. :.i: : : : :.､: : : ＼: : : :': : : : :.V. ／
.　　　　　　 ∨ //. :.'. :././ . : : : : : : |l : : : :ﾊ＼: : : ヽ: : :'.:. : : :..V
.　　　 ′　　V ' : : i. /./ :// : /. :.:.!|l : : : : :} : :_＿ : Y.: :|: : : : : i
　　　 , 　　　|i : : :.l/./ :/// / :/: 八:、: : :/´　ヽ＼｀|:.:.ｉ|: : : :i :.|
.　　　　|＿＿＿|l : .:.:.∨ //７/￣／｀　ヽ:.:./ ,,z斗＝ミ､: :ﾘ. : : :| ﾘ!
.　　　　　　 | ∧: : : :..∨// '　　　　　　 )/〃Vr':::::ﾟﾘ/|.:/.: : :/,'/.:|　　　　　　　　……何なの。
　　　　　　 ,.:{ｌ.∧: : :.:.:.＼ z斗＝ミ､　　/　　ゞ─ ' ﾉ// : // i}: |!
.　　　　　 ,.:八 ∧ : ＼: : ＼　　　　　　 /／/ ／/ : //　《:.:|!i
　　　　　　 //.: :》　丶: : :＼: :.:ヽ/／/ 　｀　　　　　厶イ　　 i} |i∧
.　　　　　 //.: : {i　　＼: : :＼:.:_:＞　　　r -っ　　／ {i　　　　ﾉ |ｌ:.∧
　　　　　//.: : :八　＊　《￣￣/:＞､　　　　　　　ｲ: : : :》　＊　《: :|l: :.∧
.　　　　//.: : :/ /{i　　　　∨: :/:/ : : : !　｀　ー ´　{￣j〃　　　ｉ}┬-.､ ∧
　　　 //.: :.:./ / 八　　　ｉ}:./:/: : :／}　　　　　　＼{i　　　　ﾉ'､入:::丶丶
.　　 //.: :.:./ / /. : 》　　　《/:/ :／ ,ノ　　　　　　　　i｀》　　　《 ∧　入::::＼
　　//.: :.:./ / /. : : :ゞ -r＝= /　<､　　　　厶-‐ _ﾞ!i　　　ｉ}　∧　入::::::＼
.　//.: :.:./ / /. : : :/:::::::::rZ/　＼　丶￣｀　 ´ 　　( {i　　　　ﾉ Y. ∧　入:::::::::＼
. // : : / / /. : : :/:::::::::rZソ　r'＝==z＼　　　　 /ヾ》　　　　《　 |　∧ 　,入:::::::::::＼
// : : / / /.: : : /:::::::::rZソ' 　| !　　　ﾞﾐ∧　　　ﾉ　〃　＊　 i}.　|　 ∧　　入::::::::::::::＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

千歳の声が、どこか間の抜けた感じで、痛みに朦朧とした大八木の耳に聞こえた。

彼女はまだ、何が自分たちの身に起こったのか分かっていないらしかった。

231 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:46:14 ID:976fb80c

.　 < /: : :/: : : : : : :l: l:.l: : : :.ヽ: ヽ　 ',　, -‐'´
　　/: : :./: : : : : : :/l:/∧: __: :.ヽ:.:ﾍ　l'´!
　 ,': : : :l: : : :＿／ /'/'' ´ヽ､｀:l: : :.!　!:.l
.　l'l: : : :l: : ´／／ /　,ｨｪｭ-､`l: : /　 l:.:',
.　lヽ: : : l-'´,ｨｮｭ　/ 　弋::ﾘ　/: /.※ l: : ',　　　　　　　　　　　ねえ、どうしたの。
　　＼:.ﾍ `弋ﾂ　　　　￣ /／　　 l: : :ﾍ
　　　　 l`ｰ`-´　　'　_　　　'´/: l 　　!: : :.∧
　　　　 l ※ ゝ､　 ´　　　／ |: l　※ !: : : :.∧
. 　　　 l　　 l: : :｀' ｰ- ,'´　／´l　　 /: : : : : ∧
　　　　/l　　 l:,､r-､-'´l' ／　　 l　 /｀ーｨゝ: : ∧
.　　　/: l ※ l:〉ﾉ,.ｨ＝示ﾐ､＿ /　/r‐'ノ｀´ヽ: : :∧
　　 /: : :l.　　l〈《　 //ijヾ､¨¨ﾘ!　l ﾉ l´:::::::::::l: : : :∧
.　 /: : : :.l　　lﾉ.ゞ彳/.ij ヾ∨/l　lﾉr'´::::::::::::::!: : : :.∧

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾏﾑ
　　　　　　　　　　　　　　　　 /／／∠二二.＼　　　　　　　　　ﾏ圦
　　　　　　　 u　　　　　　 //／／´￣￣｀ヾ、＼　　　　　　　　　　｀气ｭ､
　　　　　　　　　　　　/〃// 　 ∠二:、　Ⅵﾄﾊ丶　　　　　　Ⅵｭ､　｀气ｭ､
　　　　U　　　　　　　　　 |〃|从　仁ﾆ=-; 　 ,ﾘ厂l　l　　　u　　　Ⅵム　　　｀气ｭ､
.　　　　　　　　＼　　　|ﾄ-Ⅵﾄ､　｀¨¨´　　ｲ/　/ /　　　　　　　 Ⅵﾆ=
ｭ_　　　　　　　　　　ヽ_ｨ儿ﾆ乂仆=‐-　_,.:彡'′　　　Ｕ　　　　 Ⅵﾆ=
Ⅵｭ_　　　　　　　　　　　ヾ＜ﾆﾘ　｀￣￣´　　　　　　　　　　 i二ﾆ=
　Ⅵ℡ｭ＿,ｨ　　ヽ　　　　＼＼＿　　　　＿,　　　　　　　　　U　　　l二ﾆ=
.　寸三三/　　 ,ｨ〉.　　　　　　｀　二ﾆ= ￣　　　　　＿＿＿　　　　　l二ﾆ=
　　　寸三廴 ,ィ≦=≧=‐- ..、　　　　　　　　／仄三≧ 、　　 !二ﾆ=　　　　　　　　　　ああ、あう、う、あうあ……。
　　　　　寸三l///'￣,_ _、　｀｢ﾄ､　　　　＿　／　 /仁三二ﾆヽ　　仁ﾆ=
.　　　　　寸Ⅵﾄ、ヽﾆﾉ　ﾉﾉ |ﾄ　　 ,∠二/　ﾉ　　 //三三三Ⅳハ　　l二ニ=
　　　　　　＼三≧=≠彡　└=＝ﾆ三ノ／　 _,∠二二ﾆ厂Ⅳ　,ﾘ　 l三二ﾆ
　　　　　　　　｀¨⌒ヽ､三二ﾆ=‐-　..＿'⌒ ｰ'⌒　￣｀ヾ〈　'′／　　 |二ニﾆ
　　　　　　　　　　　　　　｀ｰ=＝ニ二三三三二ニ=‐-　､｀￣′　　　厂二二
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ⌒丶、　　_,.ｲ二二二

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舌がぐちゃぐちゃにもつれ、言葉にならない。

千歳がどんな顔をしているのか、目が霞んで見えない……。

232 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:47:01 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　 │　　　　　　　　　　　　 / : : : : l
　　　　　　　　　　　 { 　　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : :.|
　　　　　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　 /: : :＼､: ::|
　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　 /:u: i{＼li|: :l
.　　　　　　　　　 /　　　　　 .: : ∧. 　　　ｕ / : : :. ､○ﾍ j　　　　　　　　　　(何故だ？)
　　　　　　 .----- '- 、　　　　: : /: :}　　　　 . : : : : : ::｀^: r'´
.　　　　　 /:: :: :: :: :: :: :＼　　　:/: :/ 　　　 /: : : : : : :ij : :｜
　　　　　/::_::_::_:: :: :: :: :: ::＼　 /: : {　　　u　/: :_:_.:.:.: : : : : ::.､
　　　／:: :: :: :: ＼:: :: :: :: :: ::＼{: : :∧:　　　/: :{(⌒ ､ : : : ､::./
　　∠::__:: :: :: :: ::　＼: : : : : |:.:.:＼//∧: 　/: : : :＼ヽ＼_/｀´
　 /:: :: : 二ﾆ=-:: :: :: :: :: :: ::.|::.:.:.:.:.＼/∧/: : : : : ､: }⌒´
／:::∠二二二ﾆ=- ､:: :: :: :: |:.:.:.:.:.:. : Χ∧: :u: : : /´
:::／::／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼:: : : |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.､ : : /
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苦痛の中で、大八木は問いつづけた。

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　　　　　　　　　 ,. -''"´　　｀ﾞ''-､　　　　　　　U
　　　　　　　　,."　　　　　　　　　｀ヽ.　ヽ＼
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　｀、　Y､
　　　　　　 ,'　　　　　　　　　　　　 i.　　| 〉
　　　　　　 !　　　　　　　◎　　　　　　l　　i　　　　　／.:.:.:.:. . . . .　　　　　　　(何故だ？
　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　i.　　　　 /.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　丶　　　　　　　　　　　　　/　　j　　　　　　{.:.:.:.:.:.:.. . . :　　　　　　　　　何故……)
　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　 ,.'　　ﾊ　　　　　 i.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　　　｀'-､_　　　　　　_,.-'´　　ノ　　　　　　 .i.:.:.:.:.:.:.:. . .
　　　　　　　　　　｀ﾞ''ｰ-‐'''"´　　　イ　　　　　　　　　V.:.:.:.:.:. . .
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　　　　　　　　　 U 　　　　　　　 /:.:.:.. . .
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つい何時間か前に自分が語った「双葉山の殺人鬼」の話は、しかしついに、彼の頭に浮かぶことがなかった

233 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:47:48 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　　ヘ ,.ヘ
　　　　　　　　　　　　　ヽ＼/
　　　　　　　　　　　 }:::::¨＼
　　　　　　　　　　　　／∧::::::::::ゝ、
　　　　　　　　／／　.|:::::／／
　　　　　　　　　／／　　 |／／
　　　　　　／／　　　　 .￣
　　　　／／
　　 /´￣ヾ
　　ｧ､ヽ｀ﾝ　　ｽｯ
　' ／-'´

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殺人鬼は、串刺しにした二匹の獲物を満足げに眺めながら、岩の上に置いておいた斧を取り上げた。

　　　　　　　　　 ‐――――‐‐ ､
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　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ
　　　　 ,；|　　二二二二三二二二二　　ｉ,；
　　　　　 | u. ― ― ― ＝＝ ― ― ― ‐　 |
　　　　 ,；l　　 _＿＿ノ　　　 ^ー―－　　　|,；
　　　　 l 　 / 　　ヾ≧=≦Ｙ　　　ヽ　　 l
　　　　　,；!　 |　{:::::::}　| }llllllll{ |　{::::::}　|　　 l,；
　　　　　　l. 　ヽ.　　　彡!!!!!!ゞﾐ､　　 /　　 '
　　　　 ,；',　　　　　　　|　　　　　　u. 　/,；
　　　　　　　ヽ　　＿＿｀＿＿　　　 /
　　　　　　　,；ヽ　　|!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i|　u.　∧__,；
　　　　　　　　　＼　｀ー―‐一 ´　／ / 〉::｀丶、
　　　　　　　　,；／＼　　　　　／　/ /::::::::::::::丶、,；
　　　　　　　／:::::l　　ー――‐ ´　／ /:::::::::::::::::::::::｀丶 _
　　　　　-‐::::::::::::::l　　　　　　　　／　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::

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月がまた、雲間から顔を覗かせた。

静かに色を変える闇。

その中で、交わっている女もろとも杭に貫かれた男は、

女の白い足と腕を胴に巻きつけたまま、びくびくと瘧がついたような動きを続けている。

234 名前：普通のやる夫さん[sage] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:48:31 ID:5cd86e1d
逆に怪我がやばすぎて気がつかないのは怖い。

235 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:48:35 ID:976fb80c

　　　癶,,＿rzzzz┐＿＿＿_∧
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　〈‐〈　〉　｜(__)　|　　　　　　', ',　 ,,,,.,,,,..,,,__
.　 `､`ﾞ xｚ､|,xｚz､ |-ー-､　　 ; ｉ}　　　　　 ´゛'''ｰ-..,,
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女の口から迸る悲鳴を聞きながら、殺人鬼は両手で斧を振り上げた。

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　　　　　　　　　　　　　〆
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月光を裂き、その黒い刃は、大八木の右の頸部へと水平に叩きつけられた。

236 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:49:22 ID:976fb80c

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─=ﾆ二　lﾆOニニニ>::::::::<∴;．゛;．:　::゛;．″:: :゛;∵
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斧は深く首に喰い込み、血飛沫とともに、大八木の最後の声が地上に放たれた。

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　　　　　　　　ヽ./ 　｀ﾞヽ,;;;;__ゝ,, ..,,lﾞ;;;;;;;;;;./ 　　　　　　　　　　　 _,,iiiﾆｿ一'" : ii、
、　　　　　　　　　　　　 _,,ﾐ/゛　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ‐'―― .... r;;;;ッr‐'''''"゛　 .y､_
;ヽ、　.,ﾉ７　　　　　　　ヽ‐゛　 ,r''ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,i‐'"　　　　　　　　ヽ;.|
'''-､ﾞﾞア'"　　　　　　　　 {,ﾞ二､,,-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r‐┘ : :lﾆ;;．　　　　゛
　 ...ｌ′　　 :l";二ﾞ''''┐　　　　　 ,l´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ-'''''-、　　　　　　　　　　　［'l、
._..．　　　_.　 ´　,〉;;;;;;ﾞ'ｰ､,　 . _,._..ﾐ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;7　　　　　　　　　　　｀ﾞ"
;;;lﾞ　　　.ヽ;;￣￣;;;;;;;;;;;;;;;;;.!　 .l､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.!　　　　　　　　　　　　　　　 _,,
.､!､　　 .,i┘;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ^'''"　　 ,|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,..;＞ｰ'ﾞﾞﾞﾞﾞヽ　　　　　　　　　　　　ﾞ‐'　|.ｌ
..l;;;;ﾞゝy レ;;;;广'L;;_..ｺ　　　　l;;;;ン'ｯ;;;;;;;;;;.,,.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　｀''､_;;;;;;;;|　　　　　　　 .,,,　　　　 .　ｌ､;ﾞ￢．
. ﾞ'''''″ .ﾐ､;;;;ﾞ''''l:ﾞ'"　 ` .、　｀''" : l.;;;;;;;;;;lﾞﾞ'<;,v､;;;;;;;;;;/'　　　 .｀''''"　　　　　　　 !;;ﾞ''┐　　　　.ﾞ'ｰ'"
　　　　,-シ､;;_ﾉ　　 . _,　｀　　　 .tナ‐'￣″ ∥ .｀'―ｰ!lｌt;;． .'　　　　　　　　　　!､;;;丿
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,! .／　　,i";;{_ 　　　　　　　　　　　　　　　 =!.!.ｌ　　　　　　　　　　　　　　　,i'''；　　　　 .|;;;;ﾞﾞ''''''";;.ｌ､
! 　　　　ﾞL;;;;;ﾞ＞　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　マ　, ､,,, 　　　　　 `''".ｨ;;-一'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
..,i￢―''>.ｌ..､/ﾞ　　　　i'ﾞﾞ~ﾞﾞﾞ'-|!!ゝ　　　　　　　　　i'''j　　.!､,,;l,ﾞ,,r‐ｰ､　　　　　　　｀''-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｨ
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　.ｨ";;;;;;;;;;;;;;;;;,,､;;;;;.! ---'''ﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; !　　 .〔;;;;;;;;;;;;ヽ :lﾆ二'ﾞ'';;．　　　　.,.. -ﾆ＝''"゛　./;/''''i;;;;;;;;;;;;;;;;
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何かが狂い始めたその夜の、最初の犠牲者であった。

238 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:50:09 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　 __／￣. : . : . :⌒ヽ. :＼
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　　　　　　　　　ヽi: |.:ー)＼|ー).:l :l./:!.:./
　　　　　　　_rーー‐‐- ､ _ 　''iﾚ!ｲ /ﾚ￣ヽ
　　　　 __ノ￣￣￣￣｀ヽ__`-ー´⌒ヽ＿ノ
　　／￣　　　　　ヽ_　_　　ーー　ヽ__　ヽ、.
　ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ／
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　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ　　　　　　γ´
　　　　　　　ミ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　ト　　　　　　ゝ..,,＿＿
　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　＼　　　 .　　　　　　 γ´
　　　　／　　　　　　　/　　　　　} 　　　＼　　　　　　　　　ミ　　　ヘ　　　　　　ゝ、
　　／　　　　　　l　　l　　　　　/ 　　　　　　＼　　　　　　　　ヽ　　　∧　　　　　　　　`
　　/　　　　 l　　l　　l　　　　　l　　　／　/l　　＼　　　　　　　ﾍ　　　ハ
　 /　　　　　l　　l へl　　　　　l＼／ﾊ　/　l　/l 　＼　　　　　　ト　　　ト
　l　　　　 l　　　 l　　 l＼　　　l　　 .l　V____V__ l　　　j＼　　　　　 l　　　　＼
　l　　　　l　　　 ∧　/ヽ　　　　ﾊ　　l／::::::::::::::::::ll　　 j　＼　　　　ll　　　　l
　l　　/l　　　　/ _,,i/‐--ヽ　　l　l　l　l::::::::::::::::::::i l　 j　　　＼　　　　i　　　　k
　l　/　l　　　/ l　y::::::::::::|　ヽ l 　ﾍl　i::::::::::::::::::::l　l /　　　　ﾍ　　　k　　　　ヽ
　 l　 l　　/　 l 　 i:::::::::::::i　　ｿ:::::::::::::　i::::::::::::::::::::l　/　　　　　ﾍ　　　ﾑ　　　　l
　　　 l　/ﾍ　ﾏ　 !:::::::::::::il　:::::::::::::::::::::: `=====''' /　　　　　　/ﾍ　　/　　　　　ト
　　　 l/l　　ﾍヽ li::::::::彡::::::::::::::::::::::::::::::　　　　 /　／　　　 /　　　/　　　　　<
　　　　/ゝ　 l＼i　=='''　　　　　　　　　　　　 /／　/　　／　　　/　　　　　　 k
　　　/　　／`l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　／　　　ハ　　　　　　　k
　　/　／　　 l　　　　　　　　　, - 、　　　　　　　 /／　ｲハソメ　　　　　　　　ム
　/／　　　　ヽ　　　　　　　　　`---'　　　　　　　　≦　　　ハ　　　　　　　　　マ
　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　_,,. -‐''"´￣￣￣￣　＝＝　从　ハ　从
　　　　　　　　　　　　＞　==,,. -‐''"´＝＝三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　_,,. -‐''"´==三三三三三三三三三三_,,. -‐''"´三三三三
　　　　　　　　／　三三三三三三三三三三三_,,. -‐''"´　三三三三三三三
　　　　　　　＼　三三三三三三三三三,,. -‐''"三三三三三三三三三三三

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ぎくりと、茜は目を開いた。

何かしら物凄い波動が、虚空に放射されていった──そんな気がした。

239 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:50:56 ID:976fb80c

　　　　　　/　　　　　　　　　　 /
　　　　　 .′　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾑ弋
　　　　 .′:/　　　　　　　　 /　./ 　　　　　　　　　　　　　　　　　､　/.ﾑ　＼
　　　　 l .,ｲ　　　　　　　　.ｲ　./ .|　　　　　　 .､.　　＼　　　　　　.V　.ﾑ　、__ニ-
　　　　 |/｜　　　　　　./ | ./　 |　　　　　　　＼.　　＼　　　　　.∀.ﾉ|　.|
　　　　 l 　|　　　 r ､　./ヽ}./　　|　　 i　　　　　　.ﾄ､　　＼　　　　 V ,| 　|
　　　　　 l　　　 j　'　.{　 }'　　 |　　 | 　　　　　.ィf´＼.　　}　　　　V.,　 .|
　　　　　　.l 　　.i　 .i　i　〈､　　l 　 .|　　ー´ i x===x､. 　}　　　　.|´　ﾙ
　　　　　　　ﾄ　　l 　 {　|l　.i　`ー从　|　　　　　if:ﾆﾆﾆ:V}　 !　　　ﾊ/　ﾉ　　　　　　　　　(何だろう、今のは)
　　　　　　　| i 　.l 　　ﾘ　辷ミx/　 )'　ノ｀　 |.ﾞ弋三ノ | /i　　/| .'　ｲ
　　　　　　　ﾚﾍ : |'， .} / 　ヽ__,/　.i!　/　ﾉ　,'　　　　.ﾘ.从　ﾘ　　　|
　　　　　　　　ヽ| ヽ /｀ヽ　　　　 .L/　 ,´ﾙ'　　　　　　　/　)ノ　从　.l
　　　　　　　　 /从＼　　　　　　　　　　/ 　　　　　　, f´＼从i　｀ﾉ
　　　　　 _／三三L　ヽ　　　　　　　　　|　　　　　　　／::l　.=;|ー'、
　　　　　》三三三三=ヽ　　　　　　　　 j　t　っ　　 ´ 　,ﾉ .=/三三'__
　　　　 ./＼三三三三三＼　　　　　　　 |ー-- ´ _＿／　=/三三《三＼

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自分を目覚めさせたものの正体を探ろうと、彼女は横たわったままの姿勢で左右に目を配った。

　　　　　　　　　/　　 /　　/
　　　　　　　　./　.／/ 　 /　　　　　　　　　　　.仆
　　　　　　　 / ／　,′　 }　　　　　　　　　＼　 /｜
　　　　　　ｰ ´　　｜　 /|　　　　　　.ﾊ　ﾙi　Χ　｜
　　　　　　　　　　 .,!　 / |.　　　　　 l　V 　V　＼｜
　　　　　　　　　　ﾉ.!　ﾊ l　　　　　　 | xぁ壬ミヽ　 X　　　　　　　}
　　　　　　　-=´__　!´　ハ. 　　　　　ド;Vｲ￣｀ヾヽ.　｀、 ,　　　　.ﾊ
　　　　　　　　／./三三;|. ｀　　　　　.| V ﾊﾟCxz::ヾ＼　y'!　　　 ./{ .X´　　　　　　　　　　　　　　　(暗い山小屋の中……。
　　　　　　／　/三三=;|　　　　　　 |　か::ゞﾂ::::::バ　　i!,从　/　￣ヽ、
　　　　　　{　 ./三三三;|.　　　　 1､　!　ゞ.＿_＞'　　　　´　 .)　　　　 ,,x示　　　　　　　　　　　　 ……そうだ。
　　　　　 r|　/三三三=∧　　　　 |.!ヽ|　　ー-‐　　　　　　　　　　　　　 ,か
　　　　 /=|/三三三三三ﾍ　　　　|.l.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　L_x　　　　　　　　　　　わたし、山に来てるんだ)
　　　／三}三三三三三=| ﾊ　　　 |::'.　　　　　　　　　　　　　　　　　　た_
　／三三|三三三三三=.＼}从　　|:::丶　　　　　　　　　　 ,　　　　　　.ゞ≠
／三三三＼三三三三三三＼:.).从::::::::＼

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彼女は自分のいる場所を思い出した。

240 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:51:43 ID:976fb80c

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　　　　　　／ . : : : : /: : /: : : : : : : : : : :ヽ : : : . ＼
　　　　　　　/ . : : : /.:./: : :.|: : : :.／: /.:.ハ.:.|: : : : : : : ヽ
　　　　　　 i : : : :.:.| : |.:.:__⊥_／ /:./:./　ヽﾄ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i
　　　　　　 | : : : : :| : |:i: : ::|:/´｀ﾅナ/　　 _ﾘﾑ_i.:.: |:.:.:..:.|
　　　　　　 | : : : : :| : |:|: :.:.>　　　ﾒﾒ､　　,l/ /,ﾊ:.:.:|.:.:.:.:.|
　　　　　　 | : : : : :| : |:|: :.:.|　___＿＿　　＿__　i.:.:.| .:.:/:|
　　　　　　 | : : : : .ﾊ: ::|:.: :.|　￣￣￣　　￣　/.:./.:.://:|
　　　　　　 | : : : 〈　ヽ:.:.: :| '''''''　　　　 ,　 ,,,,/.:./.:.:// ﾘ|
　　　　　　 | : : : : :＼ _＼.:|　　　　_ _＿_　　「:i￣
　　　　　　 | : : : : : /:/:.:>､　 ,.　´ 　　　＼ｲ.:.|
　　　　　　 | : : : : /:/: :ﾉ　／　　　　　　　＼.:|
　　　　　　 | : : : /:/:／／　　　　　　　　　　〉
　　　　　　 /. : : , ィ´／　　　　　　　 /　　　　/ |
　　　　 /. :／　 l/　　　　　　　　 /　　 |　/.:.:.|
　　　　　/.／　／　　　　　　　　 / 　　K^ヽ.: |
　　　 //　　, ｲ　　　　　　　　　/　　　 |　　＼
　　　〃　／　|　　　　　　　 / 　　　 |　　　　＼

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板張りの、がらんとした小屋の中、左側には赤い寝袋に潜り込んだ磯部夫人がいた。

すうすうと寝息を立て、よく眠っている。

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右側は壁。少し目を上げると、窓が見えた。

月と星の放つ光が、暗闇を青白く滲ませている。──真夜中だ。

241 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:52:30 ID:976fb80c

　　　　　　　　　　　ｲ´／￣イ-
　　　　　　　　　{、 | {/　＿―二ア、
　　　　　　　　　ゝ＼´＿_ ´　　　　＞、
　　　　　　 , イ´　￣　　￣ヽ、"´　　＼
　　　／´｀/、　_　　　　　　／´￣｀ヽ　、　　,
　　/　／　　｀　　　　　　　　　　　　ヽ　 ',
　 ,'　/　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 }　 }
　ｉ /　　　　　　 /　　　　ヽ　　 ',　　　 }　.l　 |
　 |'　_i 斗-‐＝/、.ｉ　　　斗-‐=| 、　ﾘ　, 　 }
　 | ´ }　|　 /、_ {　|　　　　}.　　 |　｀ /　/　　ﾘ
　 |　 :|　ゞ‐-r、_ヽﾊ　　　 }_z-r=ｧ　 ,　 {　　ﾄ　　　　　　　　　　(何だったんだろう)
　　,　.|　 { | ら云ド　ヽ　 /ら云} "　ﾊ、ﾊ　　{
　　ヽ ! 、ヾ弋-ソ　　　｀"弋‐ｿ　/ ｲ　} ヽ　 |ヽ
　　　ヾ　ゝ＼_　　　　,　　　　　//}　ノヽヽ l
　　　　 ,　ヽ￣　　　　　　　　　　人　　　ヽﾐ
　　　　 ', 　 i＼　　　 --　　　イ　i ＼　　　ヽ、
.　　　　ﾊ　 i　｀ i 　、　　イi　{　　ヽ　ヽ　　{｀

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今、確かに何かを感じた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌━─━─━─━─┓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃ 何だったんだろう. │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─━─━─┛
何か、とても激しいもの。

とても激しくて、そう、異常なもの。

真っ暗なもの。底知れぬもの。何か……。

　　　　　　　　　　　　　　　　ヽヘ　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼,　　　　　ヽ
　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　V∧　　　　Vヽ,
　 /　　　│　　　　　 !　　　　　　　　 V|ヾ　　　　　ゝ
　.　　! 　│ 　　 │　　|　　ヽ:　　　ヽハ　　　　　　＼
　　| ∧ ハ　　　.│　　 |　　　　ﾊ　　　　ヾゝ::.:.:.:.:.:. 　ヽヘ
　 ::, -┴ ､　　　::/l　　:::ﾄ､　　　 ::l　　　　..:::Nl :.:.:.:.:.ヽ:.:. |
∠´　　　ヽ ::__:ｉ l　　:::l　｀､　　 :l　　　　.:::::ｊ:::.:.:.:.:.:.ハ:. ,
　　￣｀~ヽ｀y　l　l :∧:l＿_ ｀､ .::l　::::::::::::___:ｊ:::.:.:.:.:.:!　j/　　　　　　(あれは……)
　　ヽ､　　 l/　/| -V￣ヽ　　　W|　::::「二ヽ|.:.:.:.ﾘ V
､　　　l 　 /イ´:::! __＿＿＿＿＿ |　:::|┌j　l.:.:.:/
_ ＼.　L／ /!::::::| 　　（●）　〉　　|　 ::|/／/ .:（
ｉ　ノ｀'´　 ∧ ヽ::|　　￣￣￣　´　l　::::|　／　:.:ゝ＼
二__ __ ,イ /　　｀　　　　　　　　 }　::::|く´　 :.|　`ー
　||　|「　|l |　　r､　　　　　　　 ,ィ　:::::|　ヽ　jﾉ

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いつかどこかで、一度それと同じものを感じたことがあるように思った。

ずいぶん昔のことだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌━─━─━─┓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃　あれは…… │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─━─┛
あれは、ああ、そうか。

あの日──熱を出して幼稚園を休んだ、あの時……。

242 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:53:17 ID:976fb80c

　　　　　/:/: . :/: . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :ヽ: . :}: .| ﾉ
.　　　 /:/|: . /: . : . : . : . : . :/: . : . : . : . : . : . : . : .:',:.:|:∧
.　　　 |/ :|: /: . : .:/: . : . : . :{: . : . : . : . : . : . : . : . : ', |'
　　　　 j:/!: . : .,': . : .:／: .|: . : . : /: . ｨ: . }: . : . : . Ｎ
　　　　　　　|:|: .:.:|: . : /ｌ: .:.∧: . : .:,': ./ |: . ﾊ: }: . : . |
　　　　　　　|:|: .:.:|: . /‐|: ./-､',: . :.|: ﾑ-|: /‐}:.|: . ://
　　　　　　　 :ﾊ: . {:.:ム⊥/二　',:.::.|/.二L' .⊥ｊ: .:/
　　　　　　 ∧: ∨ ゞ( ・ )ﾉ　'ヽ:j ゞ( ・ )ﾉリノ/:.　　　　　　　(そんな……)
　　　　　　　 /: ∧:_＼　￣　　　　　　￣ ∠:イ::.|
　　　　　　 !:/;;/|:∧ 　　　　　 ; 　　　　 /: |ヽｊ
　　　　　　　　 };ｌ |' /;＼　　　-　-　　　　ｲヽ:|　〉〉
　　　　　　 !;L./;ム};;＞ .. 　　　 .. イ;∧ﾆﾆノ

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あの時に感じたもの。

しかしそれとて、はっきりとは思い出すことのできぬ遠い記憶にすぎない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌━─━─━─┓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃　そんな……. │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─━─┛

　　　　　　　／　　/　　　　　　　　　　　　　从　　　　　　　＼ゝ
　　　　　　 /　　　 i　　 |::::　ヽ　　　　　　　　　ゝ,　　　　　　　ヽ
.　　　　　 ′ '　　ﾊ　　ヾ:::　 |＼　ﾊ　| 　ヾ;.　 |:::::　　　　ヽ　|
　　　　 | | │　/-＼-　ヾ　|ニ| /-i!│　 |: i::::::ト.::::　　　　 ∨
　　　　 | | │ﾊ／　　　、　 │　　　　ヾ|　 /　i::::/:::∨ヽ::::::　/
　　　　　 |ﾊ　Vｨ＿＿, 　＼|､＿＿＿　 /／ ,/ V:::::::::::::::（::::::!|
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　　　　　　　「 ` 　　ヽ　　　　　　／jｲr '_ノ::::::::::::::: ﾊ::::ﾉゝ
.　　　　　　　　ﾊ　　　　　　　　　　　　 rイ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　ゝ.　　-　-　　　　　 ..イﾊi!:::::::::::::: //
　　　　　　　　　｀　．.　　　　　＿＿　--――-､
　　　　　　　　　／￣￣￣｀￢ｰ-￣＿　　　　＿＿＿_ヽ

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耳を澄ましてみた。

磯部夫人の寝息。

他に聞こえるのは、誰か（磯部先生だろうか）がかいている軽い鼾の音、小屋の外で鳴いている虫の声……。

何も異常なものなどない。

243 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:54:04 ID:976fb80c

　　　　　　　　／　　　　　ヘ　　　　＼　　　ミ巛　　　　ヽ
　　　　　　/　　　　　　　　　　ヘ　　　　　　　　巛　　　　　＜
　　　　　　　　ミ　　　　　　＼　　　　　　　　　==-巛
　　　／　/　　　ヽ　　ヽ　　　＼　　　　　　　　　　巛
　　 /　　/l　　 l　　ヽ　　ヽ　　　ミ　　　　　　　　彡　　　　　　∧
　　/　 / /l　　 l　　l　ヽ　 i　　　　　　　ニニー　　彡
　 j　 /　i　i　　 l　　l　_,,ヽ-l‐''"´　　　 r t　ミz_　　　ミ　　　　　 {
　 li /　　l　　　　k　'' x==-ﾘzx　　　　ヽヽ　　　　　　ﾉﾄ　　　　　ト
　 l/l　　ﾊ　k　　ヽﾍｲヾ汐'ｲ　ヽ　　ﾍﾍ　i　　　／/VI　}　　　　　ヽ　　　　　　(夢を……)
　　　l　li　　zxミ　 kﾍ　 '　　 l　　ヽ　ﾍﾍ iﾉ　　　　/　VI
　　　i　lﾍ　弋ﾀ `　、　　　　j　　　i　 l ﾉヽ　　　ハ／ VIi{　　　　　　{
　　　ヽ {　ヽ　ﾍl　　　　　　 /ｲ　il　l /　　／/　l　ト　 VI ﾍ　　　　　∧
　　　　ヽk　ヽ　 `　 _　　　　/　/ l　l　　　　　lk　　ハ　VI　从　　　　入
　　　　　ヽ　l　 iﾍ　 -` 　 /／l/ l　lﾍﾊﾍ　k il,,. -‐''"´ VI＼　ハ　从
　　　　　　　　l lﾍ k.ヽ　　　　　　ﾘ　l_x‐''"ヽﾉ　三三三三三＼
　　　　　　　　l/　ヽ　ﾍ　　イ-‐''l/　三三三三三三三三三　ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌━─━─━─┓
　　　　　　　　　　_,,. -‐''"´　　三三三三三三三三三三三三　ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┃　夢を……　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└━─━─━─┛

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夢を見たんだろうか、と茜は思った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,f´￣　　｀ー- 、
　　　　　　　　　　　　　,r ―-- 、　　　 _{{ ,;;;_/ヘ、　　　　｀ー-、
　　　　　　　　　 ,. --'　　　　　　　　ヽミﾐﾐ;;ヘ、　　　　　＼)
　　　　　　　／ ,./ 　.「　　　　　　　　　ｿﾞﾐj::::::} 　　　　 ( ヽ
　　　　　　　　／..:/　 |　　　　ﾍ　　　　　 }　ヽ、!.　　　　｀　｀ー-、
　　　　　　　ノ.イ　　 |　　　　 ..|　 . |.　　 / 　　.:}::i:..　　　　　　　＼　)
　　　　ー'´　/..::l　　ヽ　　　　 |　　|　　/　　　/.::|:.　　　　＼　　　＼
　　　　　　 /.,ｨ. |　　ヽ　　　　|　 . |:／　　 ./..:::{::.　　　　＼　　 !｀ .)
　　　　　　 //|.::{.:ヽ、　　　　　 l　l　|　　　/ ..::::::｀、　　　　　 } 　 |　 !
　　　　　 ,ノ'´ | { .::i､　　　　　　ヽ.ヽヽ　　　　.:: .:::/|!l＼.　　:　　＼ .ヽl.|　　　　　　　(そう。そうに決まっている。
.　　　　　　／..:ヽ .:|＼ r､　､　　　.::ヽヽ　.:　 ..:::. .::// i::::::} 　.:: 　　　＼ }ヽ
　　　　　／..::::::::r-'　　ヽ＼ヽ　　　.:::::V.:::　.:::::::. / .::::ﾘ:::/ 　::.　　　i、 :!ｿ　　　　　　　　また何か、悪い夢にうなされたんだ)
　　　 /.:／／ }　　　　｀　ヽi＼　　 .l..|::: 　　　/ .::::/:i/ 　 ::::..　　y.}..:::}
　　　 ./.:/ /.　　ヽ､　　　　　ﾘ}　＼　i l..|::: ..:::::／ ..:::/.::'　　.:::::ヽ　..:/ i:::/
　　　 {.:/　! 　　.|;ﾊ｀　　　　 /　 ..:::}//l..|...:::／..:::::／{::::.. 　..::::::∧:/　.l/
　　　｀{　　　　 {　ヽ___　／　 .:::::／:::i i.::::::::::::;／　　＼::::::::::::::{　i!. 　{
　　　　　　　　　　　　＿＞ .;;;;;;／'---ﾘ--wy´、＿_.　　＼ト､:::!. '
　　　　　　　　　　.r　´￣￣￣)'､＿_:::::::::::::::{:::::::｀ヽ::::＼　 .}　ソ
　　　　　　　　 _,.-|三三=-_　　　　｀ヽ二二二=-､::＼::t-――-、
　　　　　,. --'}´￣ﾐ三三三三ﾐﾆ-__ ..:::::::::::::::::::::::::..＼;}:::::::::::::::::.. ＼　　 ...
　　　　　　　.:::＼　　￣-二三三三三三三三ミ、:::::::::ー――――‐…¨

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小さく溜息をついて、茜は再び目を閉じた。

意外にすんなりと、元の眠りに戻ることができた。

244 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:54:51 ID:976fb80c

　　　　　　=-　=　　=-　 ≦_,,. -‐'/
　　　＜　　　　　　　　　__　　ヾ≦_,,. -‐
　イ　　　　　イ≦　=__　　　=-　　　　＜＿,
从　ﾊ∨／　　　　=-　-=≦　　　-　　 = =-
　≦ /彡　　=-ニ　　-=　ヽヽ　 il　　从　_
　ヽli-　　-=　　　ヽ　≦=-ヽヽｿ　ハ7
　≧ilヽ　　　　　　ヽ/ヽ k　ヽﾘ、/　/三三三
＼ l　ヽ　　=-　ヽﾊlヽ从　　l/　 l　l三三三
　　ﾍ　　　　　ヽ　ニフl　　　　　 l/ l三三三
　　　ヽ　　ゝ　へ　ヽ、　　　　　/ /三三三
　　　ヽ　　　ヽ =-ﾍﾘ　`　, ' /ヽ==--=三
　　　　l l ヽ　　ｿ≦メ `　- ＜///////////
　　　　ｿ l l ヽ　ミ　ヽ　人ｿ　 l//////////j
　　　　　ｿ r<`　、　ハ　　 ////////////l
　　　　　　 fニﾆy ∨　　　　l///////////
　　　　　　 tニュ'　　ヽ7　=-l/////////l
　　r-‐-- ,__ ＞- _／_/////l//////// l
　 r_ニ　　　　////////` z ┘////// l
　　f　_　　　 l///////////////////l
　　`=-' =≦l///=-　-　////////// l
　　　　　　　l／　　　=　￣　￣　￣

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その夜のその出来事は、それ自体が夢の続きの一コマにすぎなかったのかもしれない。

　　　　　　　　　　　　＿　　_,
　　　　　　　　　　＿__,＞Ｙ´'ー-､　　 ┏━┓
　　　　　　　　＿>ｚ二_　＿__`ー≧＿_　　┏┛
　　　　　　　　＞┴'´￣｀ ‐-､￣７＜　　・
　　　　　／　　　　　　　ヽ｀Ｙ′之＞
　　　　 /　 ,　　l、　、 ,　､ |　ヽ　}<
　　　　ｌ ,ｨ {７Tハ　T寸寸 |　　}ノ
.　　　　　　 l　r==　　 ==ｧ　 |　i 　l |
　　　　　　 j　弋ﾘ　　弋ﾉ lll/ / ,/ﾚ′
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.　　　　　 u j /Z〈　,ﾆr‐=〈
.　　　　　　　　７　.ﾄ､ｧ'ﾟ/　　ハ
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　　　　　／ r'二＞ー､　/￣｀ヽ、ヽ､
　　 ,. -‐'ｰ-(_､_f´￣｀ヽУ　　　　ﾍ、_`ｰ
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翌朝目覚めた時、彼女がそんなふうに考えたのは、だから、無理もないことだったと云えるだろう。

245 名前：◆Ek0ngtnZ.U[sage saga] 投稿日：2016/10/06(Thu) 23:55:38 ID:976fb80c

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　　　　　　　　　　　　　　　 |:八: : : : : i灯豕ﾊ /　　　　下豕圷ぅ./: : :／:/ 　　　 }
―――――--､　　　　　　　|i／＼ヽ: :八乂_リ　　　　乂ｚン　/: ／/∨　　　　　|i　　　　　　　あ……あ、あたし、もう……。
ニニニニニニニ＼　　　　 .{　　　＼＼ﾄ /／　，　／/／/／ /／_ノノ:{　　　　　〈:|
ニニニニニニニﾆﾆヽ　　 .／　　　　 } 人　　　r ‐､　　　　　 .-=≦: 八　　　　ヽ
ニニニニニニニニﾆﾆ.,. ノ　　　　　 { : : : ト､.　`　ｲ　　　 ..イ: : : : : : : : ヽ　　　　　 }
ニニニニニニニニニﾆ',.　　　　　　　ﾉ : : :/: : : ≧ ∪.-＜　　ﾄ､: : : : : : : :八　　　〈
ニニニニニニニニ,ｭﾆﾆ!　　　　　__ノ: : : ;ム-‐'　/|　　　　｛　`ー＜: : : : :}　　　　ヽ
ニニニニニニニニN}ﾆﾆ:　　　ｒ' (⌒く￣　　 _／　　　　　人　　　　￣ヾヽ　　　 {､
ニニニニニニニ./{/{ニﾆ!　　..ノ7'ノ厂　　ｒ‐/(　､_　　　 _彡イ j〈ﾞｖ―--= .._} }　　　　､: :.
ニニニニニニニ{/ﾑﾑニﾊ___ノ/７('´　　　/{ ( (　　　　　　　 ) (｛├─―　　＼ヽ　　　＼＼
ニニニニニニﾆﾆ､/ﾑﾏ:.ニ､　ゝ〉７　　　_ノﾉ 7　　　　　　　 (_人7'｢￣￣¨　　 i八　　　　 ⌒
ニニニニニニニニ｀ヽ_ﾘニﾊ.(_ﾉ_ﾉ　__∠ノノ　〈　　　　　　 ) ｲ、∨￣¨　　　_}＿ヽ
ニニニニニニニニニiニニﾆ}.フｒ‐／'＾⌒ー‐'´　　　　　　　　ゝ(＼ﾚへ┐　〈_ {　〉､‐┐
ニニニニニニニニニ|ニﾆﾆﾘ._/У　　　　　　　　　　　　　　　　　 (_＞-厂}､_ノ⌒}‐{　ヽ::､＿

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千歳は大ハ木の逞しい胸にしがみつき、彼が突き上げてくる動きに合わせて激しく腰をせり上げた。

きつく目をつぶりながら、急激な上昇感とともにひときわ高く声を上げた、その刹那──。

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綾辻やる夫は双葉山の惨劇を小説化するようです 第一話

綾辻やる夫は双葉山の惨劇を小説化するようです　第一話